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第六十七 迷宮脱出

戦いを終えたニーアたちは、命を落とした冒険者たちを弔いつつ、体力の回復を兼ねて数日滞在することにした。その間、ニーアがマジック収納Boxに入れておいた食料を提供しみなに料理をふるまった。

「こんなまともな食事は久しぶりだな。」

「まさに身も心も生き返るって感じね。」

マフレスの所属する冒険者パーティ虹の橋のメンバーから感動の声が上がる。

「私たちはニーアと一緒に来たから慣れちゃったけど、やっぱこの品質は普通じゃないよな。」

それを見てポツリとこぼしたジェイミーの言葉にエレンが頷きながら同意していた。


英気を養い過ごしたのち、みなと別れてダンジョンから脱出するために地上へ戻り始めていた。

「はーあ、僕らだけ歩きで帰るのかー。」

シンイチがだるそうにつぶやいた。

「まあまあしょうがないじゃない、脱出アイテムが足りなかったんだし。」

フルフェイスの兜を外したニーアが慰めた。家族以外誰もいないので久々の素顔での探索である。

途中で入手したダンジョンを一瞬で脱出することができるアイテムである帰還石は、救出した冒険者パーティの分とクワッドヴァルキリーの分しかなかったので、先に脱出してもらうことにした。治療はしたとはいえシュッタウのけがもひどかったためクワッドヴァルキリーも帰還石で戻ってもらうことにしたのだった。

敵対していた冒険者のうち、生きたまま捕えたものは、クワッドヴァルキリーが連行を引き受けてくれた、そのままギルドに突き出すことになるだろう。

「うちのパーティメンバはみんな元気だから自分たちの足で帰るでもいいじゃない。」

それを聞いてタカキが納得いかないと異議を唱える。

「おいおい、俺は結構なけが人だったはずだぞ。」

「眠たかっただけでしょ。シンイチがしっかり回復してくれたから大丈夫よ。それに、マジックアイテムのコテージも気兼ねなく使えるから他のパーティよりも快適に帰れるはずよ。」

「まあ、それはそうなんだけどね、、しかし、よりによって、ちょうど一つだけ帰還石が足りないなんてついてないよね。」

シンイチは残念そうだ。

「でもそのおかげで、弾丸練成用の鉱石や魔石、ポーションとかマジックポーションの材料となる薬草などを補充できるんだからよしとしようじゃないか。」

「お、タカキいいこというじゃん!さすが年長者!」

タカキの前向きなコメントにニーアも乗っかる。帰りの道中で、先の戦いで消費した弾丸の補給、つまり鉱石や魔石を採取して行こうという話になったのである。モンスター討伐、鉱石採取を繰り返している中でシンイチは度々ぼーっとすることがあった。

「どうした、疲れたか。」

タカキが心配して声をかける。

「ううん、ママは今頃何やってるんだろうなって思ってさ。」

「ママか、、、普通に寝てるんじゃないかな。」

「え、、、?」

「だってそうだろ、君たちの話だと現実世界に戻った時は次の日の朝だったんだろ。ってことは、現実世界ではその一日分の夜中のどこかの時間帯ってことじゃないか。」

「うーん、確かに言われてみればそうなんだけど、、もう1か月くらい冒険しているのに何か納得いかない感じだよ。」

シンイチは腑に落ちないといった表情だ。

「確かにまあそうだな。でもこのダンジョンの中は外と時間の流れが違うって言っていたじゃないか。それを考えるとまあそういう世界なんだろうなって納得するしかないよ。というかそんなこと言いだすなんて、現実世界が寂しくなったか?俺としては本当に戻れるのか不安になってくるけどな。」

「ほらほら、無駄口叩いていないで、またまたモンスターさんのご来訪よ。」

ニーアが後ろから声をかける。その声に反応して、シンイチとタカキも応戦する。

帝国側の冒険者パーティとの戦闘を経て、40階層のモンスターにも苦戦することなく対処できるようになっていた。シンイチはあえて魔法を封印し槍と体術のみの近接戦闘を訓練し、タカキはニーアから剣を借り剣術と銃を組み合わせて戦い方を模索している。二人とも先の戦いでの自分たちの力不足を痛感していた。

「そういえば、クワッドヴァルキリーのみんなに申し訳ないことをしたね。僕たちの用事につき合わせたせいで、最深階層踏破がお預けになってしまって。」

シンイチが少し残念そうな顔をする。

「まあ、でも俺たちがいなくても、結局暗殺者たちに足止めされていたわけだし、彼らの性格からして傷ついた他の冒険者を見捨てるなんてこともしないだろうから、同じことだったと思うよ。」

「ジェイミーたちもそう言ってくれていたけどね。」

「シュッタウさんも大けがだったからねえ、ちゃんと回復するといいけど。」

シンイチも心配そうな顔をする。

「応急処置はしたし、闇属性攻撃で受けたダメージもシンイチが治療したから後遺症にはならないはずよ、完全に回復するまでには少し時間がかかるかもしれないけど。」

上の階に戻る階段をすぐに発見することができたが、素材集めで時間の大半を使ったため、その日はそこでキャンプとなった。

宿泊のためコテージに入った後、タカキは武器の錬成に挑戦していた。先の戦いではニーアの予備の片手剣を借りて戦い方を模索していたが、剣の資質がないため、剣技がやはり劣ってしまい最終的には銃頼みになりがちなことを実感したのだった。ニーアの剣が強力すぎて、タカキの実力では扱いきれていないこともあるかもしれない。剣の修練をひたすら積んでいけばそこそこ使えるようになるかもしれないが、それはおそらく途方もない年月を費やさなくてはいけないだろうこともまた理解していた。そこを解消すべく何かオリジナルの武器をという考えに至ったのだった。

「うーん、何かいいものはないか。銃と相性が良くて、扱いやすいもの。剣よりも刀身を短くしてダガーみたいな感じにしてみようか。」

錬成スキルで刃物を作るのは初めてだった。本当はその道の師匠的な人に師事して教えてもらうのが良いのだろうが、、などと思いながらも手探りでやるしかなかった。とりあえず刃の切れ味はできたもので妥協するしかない。問題はサイズだった。ニーアに借りていた片手剣は刃渡りが50㎝から70㎝くらいのものだったが、さらに短くして40㎝くらいの長さにする。短剣まではいかないくらいの、片手剣の中間くらいの長さにした。出来たものを鑑定スキルで見てみると、ミスリルを使ったせいかなかなか攻撃力が高い。剣という武器は、刀とは違って切れ味というよりも剣自体の自重を生かして叩き切るという観点もあるということを聞いたことがあった。

「うん、悪くないな。これで試してみるか。」

ついでに魔力付与も試してみる。ニーアに聞いた話では、魔剣と呼ばれる類のものは特定の魔力が付与されているらしい。実際、ニーアの持っている片手剣でもいくつかそう言ったものがあった。しかし、火属性を付与しようとしたところうまくいかず、折角作成した武器が壊れてしまった。

「あれー、なんでだ。もう一回最初からだな。」

何度も試行錯誤していくうちに刃の部分は何回も魔力を通しながら往復してやることで刃の切れ味が増すことができることが分かった。ちょうど砥ぎ石で刃物を研ぐのと同じ要領である。

そうして、何度も武器作成からやり直し、夜が更けていくのであった。

「あれ、おはよー。タカキなんか目の下にクマができているよ。」

「ああ、いろいろと悩んでいるんだよ。」

「また、戦いのときに眠くなるのはやめてよね。」

ニーアに小言を言われ反論することもできずタカキは素直に頷くだけだった。


その後数日間は同じ階層にとどまってモンスター討伐と鉱石採取に従事し、十分な鉱石と薬草を補充したのちにようやく戻り始めた。戻り道は階層ボスもおらず順調に進み、潜ったときの半分ほどの期間で戻ってくることができた、採取などをしなけれもっと早くダンジョンを出ることができたかもしれない。すぐに最寄りの森林都市コールッシュに戻った。

「体感的には二週間ぶりくらいかなー。やっぱ町はいいね。人もいっぱいいるし。」

「そうね、まずは宿に戻って、それからそのあとはご飯食べに行きましょ。久しぶりにレストランで食べるのが楽しみなのよねー。」

「その前に、先に帰ったみんなに確認したほうがいいんじゃないか。何か手続き的なことがあるかもしれないだろ。」

タカキが心配そうに言う。

「それもそうね、じゃあ先にそれを済ませてそれからご飯ね。」

冒険者ギルドに行くと、受付の職員からジェイミーが来てすべて処理済みとのことで特にニーアたちに必要なことはないとのことだった。ただし、ラニキス王国軍への報告の結果次第ではさらに詳細を聞かせてもらうことになるかもしれないため、しばらくはこの街で待機していてほしいとのことだ。

ギルドを後にして予定通りレストランに向かう。かなり混雑していたが無事に席に着くことができた。ここ一週間で冒険者の中で話題となっていることも聞いてみた。意外にも、ワシュローン帝国の話はあまり表に出てきていなかった。近くの村で大量の魔物に襲われたが何とか撃退した話と、魔族が出たがSランク冒険者が倒したという内容が話題の中心だった。

「Sランク冒険者って、私たちのことかしら。参ったわね、まだAランクなんだけど、どこかで話に尾ひれがついたのかしら。」

ちょっと気になったが、食事が運ばれてくるとそんなことは片隅に追いやられ、食事を堪能し大満足してホテルに戻っていった。


次の日の朝、少し寝坊したが一番最初に起きたニーアがタカキとシンイチをたたき起こす。

「ほらほら、早く起きてよ。討伐したモンスターの素材を換金に行くわよ。」

タカキは意外にもすぐに目を覚まして支度を始めていた。まだ眠そうな目をこするシンイチを急かして着替えさせ、素材の換金を依頼する冒険者ギルドに向かった。

「おはようございます。今日は素材の買取ですね、まあ、こんなにたくさんの素材を!?」

そう言ってきれいなエルフの受付は奥に引っ込んでいった。そのあと、かなりの時間待たされることになったがようやく戻ってきた。約二週間分、しかも階層ボスを含む大物の素材も多数だったため仕方がないと三人で話していた。

「お待たせしました、白金貨10枚です。」

「なんだよ、たった金貨10枚か、意外と大したことなかったな。」

タカキが残念そうに言う。

「何言っているのタカキ、白金貨だよ、白金貨。金貨の100倍の価値があるよ。」

シンイチが訂正する。

「何っ、まじか。“円“だとどれくらいの価値なんだよ。」

「えーと、ちょっと待ってよ。金貨が一枚で銀貨十枚分の価値で、銀貨が約5千円だから、金貨は1枚で5万円、その百倍、、、」

「タカキ、白金貨10枚は5000万円相当みたいだよ。」

「なんだって!?おいおい、まじかよ、俺の年収の5年分以上のお金を、たった一、二週間程度で稼いだってのか。すげーな異世界ってのは、いや、冒険者って職業がすごいのかな。」

ニーアとしては、今回の報酬が特別に大きいという感じもなかったが、あまり日本の円換算で考えたことがなかったので改めて言われるとすごい金額だなと素直に感心した。

高額報酬に沸いている三人にエルフ族のギルド職員が声をかけてくる。

「あのー、ギルドマスターがお話ししたいそうなのですが、お時間いただけないでしょうか。」

「えっ、いいですけど。。なんか怒られるようなことしたかしら。。」

少し不安な表情を浮かべるニーア。シンイチとタカキも真面目な顔になって顔を見合わせた。エルフの受付職員がそのまま別室へ案内してくれた。


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