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第六十一話 連携

シンイチ達は、必死にけが人の回復に努めていた。シンイチが重傷の冒険者を回復し、タカキとエレンはそのフォローや他の人の治療にあたる。一命をとりとめるところまではシンイチが回復させ、そこからはタカキのポーションやエレンの回復魔法でさらに治療をするという形である。シンイチの魔力が多く、治癒魔法のレベルが高いということからの判断だった。全員の命に別状はないという目途がつくところまで回復させたところで、この惨状の元凶である冒険者がこちらに近づいてきた。タカキはやれやれと言った感じでため息をついた。

「おい、シンイチ。いったん回復はエレンさんに任せよう、お客さんの登場だ。」

「りょーかい。エレンさん、少しお願いしていいかな。」

「私は大丈夫だけど、あなたたちは平気なの?相手はAランクの冒険者達よ。」

「もちろん、けが人の回復のほうが落ち着いたらこっちにも協力してほしいけど、まずは二人で頑張ってみるよ。」

「分かったわ。なるべく早く合流できるようにするわね。」

シンイチとタカキは立ち上がり四人の冒険者の方へ近づいていく。

「おいおい、お前ら二人で俺たちAランク四人の相手をする気か。」

四人のうちの一人がへらへらしながら言った。油断しているようで隙がない。

「相当な自信だな。そっちの若いのは弱くはなさそうだが、どれほどのもんやら。」

「俺としては美人エルフと、遊びたかったけどなあ。」

「まあ、楽しみは最後に取っておこうぜ。」

相手が武器を抜いたのに呼応してタカキが剣を、シンイチが槍を構えた。油断していたら奇襲をかけようと思っていたが、早急に考えを切り替える。エレンが戻るまで相手の攻撃を凌ぐということも考えないといけないだろう。

その時、一人の冒険者が間に割って入ってきた。先ほどニーア達に助けられた四人の冒険者のうちの一人である。ニーアからの伝言を受けてこちらの助太刀に来たのだった。

シンイチたちと合流する前に四人で話し、中途半端な状態で全員が戦闘に加わるよりも、一人に回復を集中し、より万全に近い状態で参戦するほうが戦力になれるだろうという判断をしたのだった。他の三人は回復魔法の使い過ぎにより魔力切れを起こしていることもあり離れた場所に避難していた。

「シンイチ君だね。僕は、マフレスだ。助けてもらってありがとう。微力ながら助太刀をさせてくれ。あと、ニーアさんから、であっていたかな、伝言だ。遠慮せず、思いっきりやれとのことだよ。」

シンイチよりも少し年上、20歳前後といったところの爽やかな好青年はそういった。

「ありがとうございます、とても心強いです。よろしくお願いします。伝言についても了解です。」

藍ちゃんめ、僕がまた相手に情けをかけて隙をつかれるのではとか心配しているんだな、と思ったが、既に覚悟はできており、相手を思いやるほどの余裕もない戦いになるだろうことは予感していた。

「マフレス君、助かるよ。私はタカキだ、君の戦闘スタイルについて確認させてくれ。シンイチはタンクだが、魔法攻撃もいける、私はもっぱら遠距離攻撃専門だ、近接戦闘はたしなむ程度といったところかな。うまいこと戦略を組めるとよいが。。。それはそれと、ニーアは私については何か言ってなかったかな。」

「はい、私の扱う武器は長剣で、近距離戦闘が得意です。ただ、今の万全ではない状態で彼らのレベルが相手だと互角か少し押される形になる可能性があるかと。やはり、シンイチ君を主体として、私とタカキさんで横から攻撃していくのが良いと思います。あと、ニーアさんからタカキさんへの伝言は、、、特に無かったですね。」

藍ちゃんひどいよー、と心の中でつぶやいたが、それはおくびにも出さず引き締まった表情でそれで行こうとマフレスに応答した。

「おい、死ぬ順番は決まったか、そろそろ行かせてもらうぜ。」

そういうやいなや、いきなり攻撃を仕掛けてきた、さすがに動きが速い。シンイチが防御に入る、一人目の攻撃を難なく防ぐも、2の矢,3の矢といった形で次々と別の人間が仕掛けてきた。二人目の攻撃も、槍の長いリーチを生かし攻撃を防ぐ。タカキが使役しているスライム、クロコをシンイチに向かって投げ、3人目の敵の攻撃を受け止めさせた。そこに切り込んでいくマフレス、相手もマフレスの剣撃を躱し反撃する。そんな応戦を何度か繰り返いたあと、お互いに一旦、距離を取った。

「ふっ、やるな。思ったより楽しめそうだ。」

そう言いながら笑みを浮かべる。

「そのニヤついた顔が気に入らねえな。」

タカキが小声でぼそっといったかと思うと素早く銃を取り出し、打ち抜いた。金属弾で魔力検知ができず反応が遅れようだ、肩に命中した。流石に数メートル離れた距離での物理攻撃があの速度で来ることを予測していなかったようだ。それでも急所を避けたのはさすがはAランク冒険者といったところだろう。(あるいはタカキの腕の問題かもしれないが。)

「シンイチ!」

タカキがそう合図し始めるかどうかというタイミングでシンイチも動き始めていた。一気に距離を詰め槍技スキル、三段突きを繰り出した。その間もタカキは距離をとって他の冒険者の足止めをするべく撃ちまくっている。シンイチの一撃目は躱されるも、二撃目、3撃目は相手の体をかすめ血が流れている、致命傷とはいかないが、浅い傷でもなさそうだ。タカキの銃での初撃に加え、さらにダメージを蓄積させることができた。

「ぐっ、くそっ、調子に乗るなよ。」

その顔からは先ほどまでの余裕がある笑顔は消えている。シンイチとの間合いをさらに詰め、両手短剣のスキルでダブルスティングという連撃技を繰り出し反撃をしてきた。

手数が多く、リーチの長い槍で戦うシンイチには懐に入られると少し分の悪い相手であったが、先ほどの攻撃で与えたダメージのせいか相手のスピードが落ちており、左腕に装着した盾で難なく防御できた。盾で敵の攻撃を防ぎつつ、相手の胴体を真っ二つのように切り付ける槍技「一閃払い」、で懐にもぐりこんだ相手を弾き出そうとする。短剣の間合いから遠くに吹き飛ばすことができ、防御はされたもののダメージはゼロではなかったらしく、短剣使いが顔をしかめた。

その間(といっても数十秒程度だが)、加勢にいこうとする他の三人の動きをマフレスとタカキで封じ込めることができていた。タカキが遠距離からの連射で、三人に攻撃する隙を与えず、タイミングを見計らってマフレスが攻撃を仕掛ける。タカキの銃での攻撃にかなり警戒をしており、弾丸を躱すのとマフレスの攻撃を捌くことに終始し、シンイチと短剣使いの戦闘に加勢することができなかった。

のちに明らかになることだが、マフレスもAランク冒険者で、相手を倒す攻撃は得意ではないものの、相手の攻撃をいなす剣さばきは一流だった。負傷から回復したばかりで本調子ではないが攻撃を仕掛けることでうまく気を引き、敵のカウンターをうまくさばくこと相手の足止めをしていた。

「さっきは多勢に無勢でやられたが、これくらいの人数差なら負けない!」

マフレスの気持ちが乗っており、攻撃の勢いが増していく。

しかし、マフレスはこの勢いがそれほど長く続かないであろうことを自覚していた。みんなに回復してもらったおかげで表面上は傷もなく、痛みもないが、動くたびに体の芯から何かが噴き出すような感覚に襲われている。いずれこれが痛みとなって表れるのだろうと予感していた。

タカキはマフレスのフォローをしている間もシンイチの相手への攻撃も怠らない。

短剣使いがシンイチに集中した瞬間を見計らって、攻撃の狙いを一瞬だけシンイチの戦闘の方に切り替え、銃撃を打ち込むことで着実にダメージを与えていた。普段の会社の仕事をマルチタスクでしている感覚に近いなと思いながらも、作業としては狙いを定めて引き金を引くだけなのでかなり楽である。(但し、人を傷つけるということで心理的負担は大きい、、)

シンイチもギアを上げ、槍技二段突きからの、大車輪というスキルで圧倒し、最後はシンイチの上段回し蹴りにより短剣使いを倒すことができた。意識を失ったところでシンイチの拘束魔法で動けないようする。

「く、そんな馬鹿な。あいつはレベル100越えだぞ!あんなにあっさりとやられるとは。。」

残った三人は動揺が隠せない。それでも、そのうちの一人が声をかけて冷静さを取り戻した。

「落ち着け、バルツァ、サマジ。まずはあの遠距離野郎だ。3人でばらければ照準は合わせにくいはず、誰かは奴に届くはずだ。」

「よし、わかった。それで行こう。あのタンクと、死にぞこない冒険者に、一人づつ捕まったとしてももう一人は行けるはずだな。」

「じゃあ俺は、あの死にぞこない剣士に行くぜ、他は任せた。」

「オーケー、サマジ。じゃあ俺は若いタンク、ガジンは遠距離野郎だな。」

バルツァと呼ばれた男が応える。

作戦が決まるとすぐにお互い動き始めた。

一人倒したことで、敵の動きが変わったことにすぐ気づいた。どうやらバラバラに攻撃を仕掛けてタカキを狙いに来ているようだ。シンイチはすぐさまタカキのそばへ行こうとした。しかし、すぐに敵の長剣持ちの剣士が切りかかってきて、タカキのそばへ行くことを阻まれてしまった。

「くそ、足止めか。」

「へっ、さっきやられたことをやり返すまでだ。」

何とかタカキのフォローに行けないかとマフレスの方を見ると、マフレスも同じように斧戦士に攻め立てられていた。

互いの攻撃を防ぎつつせめぎ合っているが、マフレスが相手のパワーに押され始めていた。

「おらおら、死にぞこないが。そんな体で俺のパワーを受け止められるのか。」

通常攻撃を剣で防御していたが、敵の斧技、パワースマッシュで吹き飛ばされてしまう。すぐに立ち上がったが、その衝撃で傷口が少し開いてしまったようだ、マフレスは顔をしかめた。

「もう来てしまったか、、それでもこいつは僕が何とかしないと。」

先手を取るべく自分から仕掛け、クロススラッシュ、三連切りと剣技スキルを連発するが全て斧で防がれてしまう。

反対に、再びパワースマッシュで吹き飛ばれ体勢を崩した。開いた傷口の痛みが徐々にマフレスのスピードを奪う。近づいてとどめを刺そうとサマジが斧を振り下ろしたその時、二発の銃弾が腕と足をかすめた。

「ぐっあああ!、なぜだ?」

片膝をついて攻撃を受けたほうを見るとタカキとが銃を構えていた。その隙にマフレスはなんとか距離を取り体勢を立て直した。人を助ける余裕なんかないはずなのに、ありがとう、タカキさん。マフレスは心の中で礼を言った。それにしてもこの敵と自分では相性が悪い、1対1では足止めどころかこのまま押し切られてしまう。2対2にした方がいいかもしれない、タカキさんの方へ行かせないという意識は強いが、シンイチ君の方であれば近づけるかもしれない。マフレスはそう考え、じりじりと間合いを測るふりをしつつ、シンイチの方へ横に移動しようとした。


タカキは敵が三方に散って、そのうちの一人がまっすぐ自分の方へ向かってくるのを見て、瞬時に全員を倒すのは無理だと直感した。先ほど距離を取ったおかげで自分のところに来るには少しの時間がある。さらに距離を稼ぐべく移動しながら、せめてものフォローと思い、どちらかに攻撃できないか隙を狙っていた。両者とも戦闘の距離が近く、シンイチやマフレスに当ててしまいそうでなかなか撃つことができない。それでも、マフレスが地面に倒れ、対峙している相手を狙いやすいタイミングが来たため数発銃弾を撃ったのだった。

それが命中したかどうか確認する間もなく、敵が襲い掛かってくる。間合いを詰められ銃を構える余裕はなかった。構えた瞬間に吹き飛ばされるだろう。何とか剣で応戦するも相手の剣技と自分では差があるのが歴然だった。シンイチのところから呼び戻していたスライムのクロコの手助けを受けることで何とかしのいでいた。

せめてしっかり構える余裕ができれば、と考えるタカキだったが今のままではその隙を作るのは難しそうだった。


膠着状態のまま十分ほど経過した。徐々に劣勢になるタカキ、そしてそれをフォローに行くことができないシンイチ、そっちに気をやると自分がやられてしまいそうだ。槍技と体術をフルに駆使して何とかやり合えている状態だ。魔法が使えれば突破口になるかもしれないが、威力の大きい魔法は魔力を練るための時間が必要となる。さすがAランクの冒険者で、オーソドックスな剣技だがそれゆえに無駄がなく、1対1ではその隙は作らせてくれないだろう。相手の力が強く、今は槍でいなせているが徐々に押され始めている。

このままではじり貧だ、そう思ったシンイチは、スピードで負けて懐に入られることを防ぐため槍を収納し体術のみとすることにした。さらに身体強化したうえに、体術に属性魔法を乗せてみる、今まで同時にはやったことはなかったが、それぞれはどちらかだけというのは経験があった。あとは同時に発動させるイメージだけのはずだ。相手の剣技を腕につけた盾を駆使して防ぎつつ、パンチを撃ちながらファイヤーボールを放つイメージで拳での打撃を繰り出す。普段は蹴り技メインで攻撃しているため、簡単にかわされてしまったが、炎を帯びた正拳突きを繰り出すことができた。

よしっ、できた!心の中で叫ぶ。

身体強化をしてパンチを繰り出せば威力を高めることができるのだが(普段の蹴り技は実際そうして威力を上げている)、拳に炎をまとっているのでパンチの威力は普通の一般人レベルである。ただし、魔法を帯びているため打撃が直撃しなくてもダメージを与えることができる。ニーアがやっていた魔法剣をまねて拳に魔力をまとわせてみたがうまくいった、初めてやったにしては上出来だろう。自分の体であれば、武器に魔法を帯びさせるよりもイメージしやすく、簡単にできるのかもしれない。相手も少し驚きの表情を浮かべ、距離を取った。

「まだそんなのを隠し持っていたか、出し惜しみとはずいぶん余裕だな。」

特にそれに対して、返事はしなった。

出し惜しみしている訳ではなく、こちらの攻撃が通用しないので行き当たりばったりで試しているだけだったが、そんなことをわざわざ教える必要もないだろう。

とりあえず自分の仮説の検証の第一段階は成功だ、次の段階にシフトすることにした。

今度は拳に帯びた魔法を飛ばすことをイメージする。少し間合いがあるところで技を繰り出した。虚を突かれた相手は間一髪で身をかわした、体勢を崩したところに回し蹴りを打ち込んだ、相手の表情が苦痛でゆがんだ。よし、これならいけそうだ、シンイチは手ごたえを感じた。

ちょうどその時、視線の延長線上にタカキ達が目に入った。かなり押されており苦戦している。早く何とかなしないと、シンイチは気合を入れなおす。

再び間合いを取り、足と拳に魔力を集めるよう意識を向ける。そして自分と相手の位置取りをうまく調整し、一気に攻め込んだ。最初は、躱される前提の見せ技として炎の魔力をまとわせた蹴り技から入る。連続で攻撃するも、案の定、素早く体を入れ替え躱されてしまう。

蹴り技の流れが途切れ距離を取られた。シンイチは左右に動きながらじりじりと間合いを詰めていく。あと一歩踏み込めばというところで、相手が先に攻撃をしてきた。そこに合わせるように正拳突きを繰り出すが、相手との距離はまだ遠く拳は届かない。しかし、その空振りした正拳突きから炎の魔法が飛び出した。至近距離で高速の魔法、当たったと思った瞬間、相手が体を投げだし、斜め前方に地面に転がりながら躱す、そしてすぐに体制を立てなおし近づき横から切りつけた。シンイチのわき腹に痛みが走る、直撃は避けたが完全には躱し切れずダメージを負ってしまった。何とか距離を取りわき腹を抑えた。

「くくく、拳に魔法属性をまとわせた攻撃は見事だったが、魔法を飛ばしたのは失敗だったな。それじゃあ普通の魔法と変わらん、魔力を練る量が増えたことによって隙ができたぜ。」

ようやく手ごたえを感じたバルツァは笑みを浮かべる。一方、下を向き苦しそうな表情をしているシンイチだったが、バルツァに呼応するようにやりと笑った。

「・・・いや、成功だよ。元々、狙いはあんたじゃないからね。」

「なにっ!?」

振り返ると、その先ではタカキの相手をしているはずのガジンが大ダメージを負っている、辛うじて立っていたが、次の瞬間、そのまま地面に倒れた。

「まさかお前、最初からあいつを狙ってやったというのか。しかし、あそこまでのダメージを与えるとは。。」

「いや、やったのはタカキさ、僕はその手助けをしたまでだよ。さあて、それじゃあこっちも第二ラウンドと行こうか。ここからは遠距離の援護射撃に気を付けてね。」

シンイチが不敵に笑い返した。

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