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第五十九話 遭遇

「ニーア、おはよう!」

コテージから出てきた3人を見つけエレンが声をかけてきた、

「ああ、エレンおはよう。」

ニーアも笑顔で返す。

「そろそろあなたたちの目的の冒険者がいるはずの階層になるわね。この旅が終わってしまうのはちょっと寂しいけれど、私たちはさらに奥を目指さないといけないからね。」

「あなたたちならきっといけると信じているわ。それに、冒険者を続けている限り、またきっと会えるわよ。」

「それもそうね。」

エレンも同意する。そこへアトゥーサ達が遅れてやってきて、会話に加わった。

「うう、ニーアさんとお別れなんて寂しいですー、私たちと一緒に最深部まで行きましょうよ。」

「ごめんねアトゥーサ、私たちにも予定があって、他にもいろいろとやらなきゃいけないことがあるのよ。」

ニーアが苦笑いしながら、アトゥーサをたしなめる。

「ええー、そんなぁー。Sランク冒険者ですよ、Sランク冒険者。それよりも優先されるものなんて何があるんですか。」

「まあ、それは、いろいろとね。」

「アトゥーサ、もうやめておけ、ニーアも困っているじゃないか。」

ジェイミーが仲裁に入り、ようやくその場が収まった。場の空気を引き締めるかのようにシュッタウがみんなに向けて檄をとばす。

「くれぐれも、油断しないようにな。まだ何も終わっていない、他の冒険者パーティが見つかったわけでもないのだから。むしろ、俺たちパーティの戦いはニーアたちと別れた後に本格的に始まると思え。」

はーい、とまるで学生のように返事をするクワッドヴァルキリーの3人だった。


39階層に降り、再びクワッドヴァルキリーが攻略する番となった。しかし、ここからは他の冒険者パーティがいるかもしれないということで、ニーアも索敵スキルを使用して、人がいないか探すこととなった。数時間かけた探索もむなしく、結局39階層にも人はいなかった。タカキがまたミスリル鉱脈を見つけ、採掘できたことくらいが収穫であった。

40階層のボスモンスターは36階層で急襲してきたアークキラータイガーだった。タカキの鑑定では36階層で出会ったものよりレベルが低く90となっている。

「こいつは俺たちでやらせてくれ」

珍しく、タカキがやる気を出して言った。

「大丈夫なのか、別にみんなで戦ってもいいんだぜ。」

「ジェイミ―、いいじゃん、いいじゃん、やりたいって言ってるんだから。やる気は尊重しないと。オッケー、オッケー、お任せしまーす。じゃあ頑張ってねー。」

アトゥーサが弾んだ声で言う。昨日の戦いでの奇襲攻撃が記憶に残っていてちょっと嫌なのだろうかという考えがよぎったが、すぐにその考えを振り払いニーアはボスとの戦いに備える。

「じゃあ任せてもらいましょうか! 二人とも、昨日のシュッタウたちの戦いを見ていたわね、相手はかなり素早いから、どうする?何か案はある、シンイチ?」 

「うーん、僕がヘイト集めてシュッタウさんみたいに敵の動きを止めるでもいいけど、痛いのはちょっとやだなあ。動きを止めればいいなら、僕の範囲魔法で動ける範囲をなくしちゃうとか。」

「うん、悪くないわね、でも、その魔法攻撃が当たればいいけど、それがかわされちゃった場合、誰が追撃するのよ。ベストケースだけでなくうまくいかない場合のバックアップ案も考えておいたほうがいいわね。」

「うーん、そこはタカキが銃で遠距離攻撃とか?」

なるほど、悪くないかもなとニーアは思った。タカキの銃で水平方向、シンイチの魔法で垂直方向、という形で二人別々のベクトルで遠隔攻撃を仕掛けることで、逃げ場を完全にふさぐことができるかもしれない。特に案が出ないようであれば、自分のスピードでやつを捉えて、動きを止めたところでと思っていたが、、

シンイチの提案した方法なら相手との距離は取れているため失敗しても被害は少ないだろう。

「うん、じゃあそれでやってみましょうか。最初は私が相手の気を引くから、シンイチの魔法が作戦開始の合図ってことで。」

「おっけー、りょーかいっと!」

「よっし、やってやりますか。」

ニーアの言葉にやる気を奮い立たせる二人。

すぐさまニーアが階層ボスモンスターに向かって行った。間合いを一気に詰めて雷属性を帯びさせた剣で先制の一撃を食らわせる。

「うわっ、すごっ。」

「えげつない速さだな、俺たちだととらえられなかったのに。」

ニーアの剣撃がアークキラータイガーを捉えている、しかし、ダメージを与えられるほどしっかり捉えられるのは2回に1回くらいで、自己回復スキルを持っているということも考えると、このまま力押しで行くにはかなりの時間を要すると思われた。

「よーし、いくぞ!」

シンイチが魔法の準備を終えボスに向かってフレイムバーストを発動する、広範囲に発動させるため少し時間がかかった。ニーアも巻き添えになる形だが、これくらい躱すだろうと信頼しての行動だった。シンイチの期待に応え、ぎりぎりのところで魔法の範囲から外れたニーア、階層ボスをシンイチの魔法範囲の中に閉じ込めることができた。しかしさすがは階層ボスの素早さで、シンイチの魔法もほとんど躱していた。そこへすかさずタカキが銃弾の嵐を浴びせる。

幸いなことにこの作戦が効果的にはまった、頭上から来るシンイチの魔法を躱そうとするとタカキの銃弾を浴び、銃弾に気を取られるとシンイチの魔法攻撃を受けてしまうという悪循環に陥っている。但し、タカキは都度、銃弾を詰めなおさなくてはならず、その間はシンイチの魔法攻撃のみとなってしまう。その間はニーアが、エアスラッシュで代用してあげていた。暫くの間は全ての攻撃をかわそうと必死に動いていた階層ボスだったが、ひたすら攻撃を受け続け、5分も経つ頃には目に見えて動きが遅くなっていった。

「さすがボスだね、なかなかタフだよ。もう少し僕の魔法の威力が強くなればよいのかなぁ。」

「まあ、でもボス相手にこんな無傷での立ち回りなんて普通出来ないんだから上出来じゃない?あまり欲張ってはいけないわよ。」

実際、シンイチの魔法よりもタカキの銃弾やニーアのエアスラッシュを意識して躱しているように見える(そうは言っても5回に1回はシンイチの魔法以外の攻撃も命中している)。

タカキは、ニーアとシンイチの会話に加わる余裕はなく、必死に弾丸の補充と射撃を繰り返していた。


「何ていう、攻撃だ。あいつらは本当に一体何者なんだ、今までの冒険者パーティの戦い方を根本から覆してしまうな。」

シュッタウが驚きを隠せないといった表情でつぶやいた。

「こんなやり方があるなんてね。普通、縦と横それぞれでこんな広範囲で攻撃することなんて思いつかないしできないよね、いや、できたとしても、あのスピードの階層ボスを何もさせないなんて。。」

いよいよ我慢ができなくなって突っ込んできたところでシンイチが盾で攻撃を防ぎ、ニーアが剣で攻撃を加える。勿論その間もタカキは撃ち続けダメージを蓄積させていった。

それが数回繰り返されたところで階層ボスは倒れた。

「ふう、ようやく倒したね。」

「なかなかしんどかったー、素材採取に来ている冒険者も階層ボスをやっぱり倒しているんだよね。そう考えるとすごいよね。」

シンイチがタカキに話しかける。それを聞いていた、エレンが横から口をはさむ。

「他の冒険者パーティの人たちは倒していると言っても、複数パーティで何十人も集めたレイドバトルが前提よ。単独パーティでの討伐なんて、最下層記録を持っているSランクパーティーと私たち以外ではなかなかないはず。ましてやCランク冒険者がいるパーティでなんて普通ではないわね。今回、ほとんど攻撃を受けていないんじゃない?」

「ああ、普通は俺たちがやったようにタンクで敵の動きを止めたところでダメージを与えるのが定石だ。縦と横からの遠距離攻撃で逃げ場をなくすなんて戦法は聞いたこともねえな。」

シュッタウも会話に加わり補足してくれた。

「しかし、階層ボスがずいぶんと強くないか。普通、階層数の2倍くらいのレベルのはずだから、今の40階層に対してレベル80くらいが適正のはずなのに90超えていたぞ。」

戦闘が終わり、タカキもようやく話に加わる余裕ができたため、横からコメントをはさむ。

「タカキさん、そうですね。そこは私たちも気になりました。36階に現れたアークキラータイガーの件もそうですが。。何か良からぬことが起きている予兆とかでないといいのですけど。。」

「そうですね。」

タカキも同意する。とは言っても今ここで議論を続けても結論は出なさそうだ。そう考えていたところ、同じ考えだったのかシュッタウが

「とりあえず、そのことは今は置いておこう。必ず2倍のレベルとダンジョンが約束しているわけでもないし、誤差はあると考えるしかないだろう。」

といったので、その場はお開きとなった。

41,42階層はセオリー通り、階層数×2くらいのレベルのモンスターが出て生きたため問題なく攻略することができた。

少し早いが強力なモンスターの急襲に備えようということで、42階層で一泊することになった。まだ、夕方というには早いくらいだが、暫くは自由時間となった。シンイチとタカキは見つけた採掘場へ行き鉱石をを採りに行った、シュッタウも興味があったようで一緒について行ったのが、ニーアとしては微笑ましかった。

「なんだかんだで男三人は馬が合うのかしら。」

ニーアがそんなことをつぶやいていると、アトゥーサがいつの間にか隣にいて

「じゃあ私達も女の子同士で仲良くしましょう、コテージの中でつもる話でもしましょうよ。」

「いや、それは遠慮しておく。」

ニーアのつれない応えに悶えるアトゥーサ、それでもさらに追いすがろうとした瞬間、後ろから首をつかまれた。

「こら、アトゥーサ、今日の食事の当番だぞ、だべっている時間なんてない。」

そう言ってジェイミーに引きずられていったのだった。


翌日、42階層を探索し午前のうちに43階層に到着したときそれは起こった。

最初に異変に気づいたのはニーアだった。探知魔法に人の形跡が引っ掛かったのだった。

「あ、人がいるっぽい。ようやく前の冒険者パーティに追いついたのかしら。」

「やったー、じゃあこれで僕たちのダンジョン攻略も最終章を迎えるわけだ。」

「ああ、それは寂しいですわニーアさん。」

シンイチは少し弾んだ調子で、アトゥーサは少し残念そうに言った。他のみなも安堵の表情を浮かべ少し穏やかな空気が流れる。

「あれ、みんな待って、様子がおかしいわ!なんか戦っているみたい。しかもモンスターとではなく人対人で。」

ニーアのその言葉に一瞬緩んだ空気が吹き飛び、緊張が走った。

「確かに、よく観察すると、動いていない冒険者と思われる反応がいくつもあるね。」

ジェイミーも探知魔法を使い細かく探っていく。

「まずは回復だ、体力、MPともにポーションとか使って満タンにしておけ。」

シュッタウが皆に声をかけた。それと同時にタカキがニーアとジェイミーに声をかける。

「二人はなるべく敵の人数、救うべき冒険者の人数を正確に把握するように努めてくれないか。どういう行動が必要になるか把握したい。」

確かにそうねと、ジェイミーは探知を続ける、ニーアは言われるまでもなく探知魔法を続けていた。

結果、敵の数は10人、助けるべき冒険者の数は20名、そのうち今動いて戦闘ができているのは4名だった。

「かなりヤバい状況ってことだな、動けなくなっている16人もまだ生きているが重傷の可能性もある。一刻の猶予もないぞ。」

ジェイミーの声からも緊張が伝わってくる。

「俺とニーア、ジェイミーは戦闘部隊な、シンイチとアトゥーサは状況次第で戦闘か補助化に回ってもらう。エレンとタカキは後方からの支援がメインになると思ってくれ。」

「状況を見てすぐに指示を出すからいつでも動けるようにしておいてよ。」

シュッタウとニーアの言葉にタカキとシンイチは黙ってうなずいた。


「よし、いくぞ。」

意を決し、いよいよ戦いの場に入っていった。

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