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第五十六話 エルフィリア大迷宮(3)

34階層は相変わらず天井がどこかわからないほど高い空間で、ジャングルのような密林だった。鳥や獣の姿をした獰猛なモンスターが、うっそうと茂った木の陰から急に襲い掛かってくる。それらの急襲に何度も対応する必要があるも、一匹一匹が強いため厳しい戦いとなっていた。それでもニーア達はクワッドヴァルキリーの助けを借りず戦っていた。シンイチがヘイトを集めてモンスターのファーストアタックを受け止め、動きを止めたところをすかさず3人で攻撃するという方法を基本戦略として対処していた。しかし、敵の数が多く、シンイチ敵をひきつけても他の人の方へ攻撃が向かうことがどうしても発生してしまっていた。この辺のモンスターと比べるとタカキのレベルは低く、クロコで防御力を強化しているとはいえ何度か連続で攻撃を受けると致命傷になりかねないという状況である。そのためいちいちニーアがフォローに入ってタカキを守ってあげたため効率が悪くなっている。

「こりゃきついな、、早速行かせてもらいますか。」

そう呟くと、タカキが懐から銃を取り出し、シンイチが初撃を止めたモンスターに狙いをつけ撃ち始めた。命中すると、鳥類系のモンスターは消滅した。

「いいね、気分は大怪盗の相棒って感じだな。」

タカキはしょうもないことをひとりつぶやいた、どうやらかなりテンションが上がっているようだ、と自覚する。冷静になるように努めて、次のモンスターに狙いをつけまた一体と撃ち倒していく。タカキの銃の使用解禁によって戦況が一気に改善することになった。結局、シンイチが引きつけたモンスターを倒しきれないために後続のモンスターがシンイチ以外の方へ行ってしまうため、そこで滞留させないことが重要という訳である。

「何あの武器!魔法なの?すごいよ。」

「いや、あれ自体に魔力は感じないな、金属を飛ばしているのか。これが切り札って訳か。」

「へえ、なるほどねぇ。」

クワッドヴァルキリーのメンバーも驚きを隠せずざわついている。

先ほどまでの苦戦が嘘のように、タカキの活躍によりあっという間に敵を全滅させることができた。

「いやー、思った以上に調子いいね。タカキ!」

シンイチが笑顔でタカキのそばに駆け寄った。 

「まあ、初めての結果としては上出来かな。ただ、少し距離が離れると命中率が下がるのは課題だな。けっこう、弾使っちまった。打った時の反動でも照準がずれるし、今後改良の余地がありそうだ。」

「そうね、胴体の中心を打ち抜いたときは一撃だったけど、そうじゃないときは2,3発必要になっていたから、威力はまずますだけど精度が問題ね。」

ニーアも分析に参戦し意見を述べる。

「スコープでもつけたら?」

「いや、それはちょっとカッコ悪くないか、やっぱこの素の状態で打ち抜いていくからかっこいいんじゃないか。」

タカキは変なところにこだわりを見せる。

「でも、老眼入ってきていて厳しいんじゃない。外しまくっていたらそれこそかっこ悪くない?」

「おいっ!」

シンイチの辛辣な言葉に思わず突っ込んだが、あながち外れていると言い切れない部分もあり言葉に詰まってしまうタカキ。

「レーザー照準にしたら?あれならこてこてつかないんじゃない?」

「う、うーん。そうだな、、考えておくよ。」

ニーアが別案を提示し助け船を出してくれる。タカキとしてはその案でもまだ自分の美学完全にマッチするものではなかったが、弾丸節約という現実的な問題を考えるとその辺が落としどころかと自身を納得させようとした。

三人で簡単な反省会をしているところにクワッドヴァルキリーのメンバーが近寄ってきた。

「あんな武器を隠し持っているなんて驚きました。」

「おっさん、やるじゃん!なんで今まで出し渋ってたんだよ、ってあれか、修行のため、とか言ってニーアが許してくれなかったんだな。」

エレンとジェイミーが声をかける。

「ありがとう、実は昨日の夜中に夜通しかけて作って完成したのは今朝なんだ。もちろん、設計の概念は以前からあって、少しずつ作ってはいたんだけどね。」

自分の苦労が美女たちに認められて、思わずタカキは饒舌になった。

「こんな強い武器を作れるのか。錬成スキルってのも捨てたもんじゃないな。いや、普通こんなアイデアは浮かばないから錬金術士って職業は敬遠されがちなんだが。」

シュッタウも感心したように珍しい武器を眺めた。アイデア自体は既にあるものを借りてきただけだから大したことないんだが、とタカキは思ったが、自分たちの世界とは常識が異なると思いなおし黙って笑みを浮かべた。

「タカキのその知識は一体どこで仕入れたんだ。いや、、、まあ無粋なことは聞くまい。これこそがタカキがこのパーティにいる理由ってことなんだな。」

シュッタウは力不足と言われていたタカキの存在理由を見つけ一人で納得したようだ。家族だからパーティ組んでいるんだけどなと思っても、それを伝えることはしない。

「これって魔法じゃないんだね、それなら、いつでも連射できるってこと?あとは、他の人でも使えるの?」

「いや、弾に限りがあるからな。弾丸がなくなったら錬成スキルで作らないといけない。今の戦いでだいぶ消費してしまったよ。。」

「そうか、無限に打てるわけではないのか。まあ、さすがにそこまで万能ではないか。とはいえ、それでも十分すぎるくらいだが。」

「ちょっと、ちょっと!」

とニーアがタカキの袖を引っ張り、耳もとで小声でささやいた。

「調子に乗ってペラペラとなんでもしゃべらないでよ。この世界の軍事バランスを崩しかねない武器になってしまうかもしれないんだから。」

タカキも、分かったとばかりに数回小刻みにうなずいた。

この世界では近距離攻撃は武器で行い、遠距離攻撃は魔法でというのが一般的である。魔法が使えない人ようの遠距離攻撃としては弓があるが、威力が弱く、よっぽどの達人でないと使い物にならない。攻城用に投石機などはあるが、威力を大きくするためには石を大きくする必要が有り、規模が大きくなって個人用の武器とはならなかった。そのため、実質、物理攻撃による高威力な遠距離攻撃は皆無といってもよかった。

「あと、この武器は俺専用なんだ、魔力がそれほどないものでも使えてしまうということで悪用する人が出てくるかもしれないと思って、他の人が使えない制御を入れているんだ。」

ちょっと強引だったが補足の説明を入れる。それでもみな興味を持ってくれたようだ。アトゥーサとシュッタウが考察を始める。

「確かに軍隊とかに導入されたら大変なことになるね、魔法の資質が無い人員を集めて強力な遠距離攻撃部隊が作れちゃうと数で対抗できなくなっちゃう。でも弾丸をそんなに作れる錬金術師がいないんじゃない。」

「その場合、錬金術師の奪い合いになるだろうな。そして、囲い込んでひたすら弾丸づくりをさせるだろう。むしろその武器を作れるタカキが取り合いになるかもしれん。というよりも帝国なら仲間に引き込めないと分かったらすぐに抹殺しようと考えるだろうな。」

「だからそうならないよう、内密に頼むよ。」

タカキが神妙な顔つきで頭を下げる。それを見て、クワッドヴァルキリーのメンバーも分かったとうなずいた。

「とはいえ、このダンジョン攻略中については当てにしていいんだろうな。」

シュッタウが鋭いまなざしで聞いた。

「ああ、もちろんだ。目的達成のために出し惜しむつもりはないさ。次の休憩の時にまた弾丸を作って補充しておくさ。」

タカキも力強く応えた。


その後はタカキの活躍もあり、34,35階層を楽に踏破することができた。36階層でクワッドヴァルキリーと交代になったが、こちらも順調に攻略を進めていく。不意を突き攻撃を仕掛けてくるアサシンバードに対しては、エレンが常にウインドウォールという強力な防御魔法を展開することで防いでいた。自分たちの周りに強風を張り巡らせる魔法で、アサシンバードの突撃を完全にシャットダウンするとまではいかないものの、突進の勢いをかなり落とすことができている。そのため、エレンの防御魔法を突破して攻撃してきたとしても、ダメージを最小限に食い止めることができていた。

「さっき見せてもらっていた感じだと、奇襲は全て物理攻撃だったから、この魔法が最適ね。」

そういいつつ、突破してきた敵を他のメンバーが楽に撃退していく。

「あれま、僕ら最初は結構苦労したのにね。。」

シンイチが少し残念そうに言う。

「仕方ないわよ、私たち初見だったし、あとパーティの成熟度も全然違うからね。」

ニーアが慰めるように言った。Aランク冒険者パーティということもあり、クワッドヴァルキリーのチーム練度の高さが光っている。最初に模擬戦をしたときに、チームとしての戦いにこだわったのも納得の強さである。

暫く探索を続け、ようやく次の階層へと続く階段を見つけることができた。


「やっと見つけたわね、よし、これでニーア達に交代ね。またニーア様の戦いを最前列で見れるなんて幸せ。」

「やっと、って言うけど私達一階層しか攻略してないんだからね。」

ジェイミーがアトゥーサに突っ込みを入れたその瞬間であった。横から大きな影が飛び出し、アトゥーサを吹き飛ばした。

「うわっ!」

吹き飛ばされ、木に衝突するアトゥーサ。そこに姿を現したのは体格10メートルはあろうかという巨大な虎型のモンスターであった。

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