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第五十一話 戦闘開始

夕食の後、三人で話し合いの場を持つことにした。

すぐにモンスター襲撃がありそうで時間もないということで、戻ってくる前の状況の確認、向こうに行ったらどのように行動するか、目的は何かということを意識合わせしておこうという多佳棋の提案だった。

ママは今週も海外出張で不在である。水曜日までは日本にいたが、木曜日から来週末までアメリカに行くらしい。キャリアウーマンっぷりには困ったものだ、、いやいや、家族のために働いてるのだから感謝しないといけないのだろう。

一方のパパは、、今週は心なしか帰宅が早かったような。しかも図書館や本屋に寄り道をして向こうの世界で役に立ちそうな技術を調べていたようだ。社会人として大丈夫なのだろうか。。と藍は少し心配になる。しかし、所詮子供の心配なんて杞憂で終わることがほとんどだろう。


「大量のモンスターが湧いてくるんだろう?どうやって倒そうか。やっぱまたニーア頼りになっちゃうかな。」

「そうね、モンスターの強さが分からないから何ともだけど、あまりにも強力な個体がいたらそうなるわね。シンイチの魔法もかなり強力になっているから、範囲攻撃魔法でかなりの数は倒してもらうつもりよ。」

「オッケー、頑張る。」

「おいおい、当初の目的を忘れるなよ。元々は、帝国の戦争を仕掛けようとする動きへの対策だったろう。そこに向けていつまでに何をするかも考えないと。」

「あ、そうか、確かにー。冒険者パーティが帝国に味方しないように説得だったよね。もちろん、覚えているよ。。」

上の方を見ながらうそぶく慎一を見て、絶対忘れていたなと多佳棋は笑いながら睨みつけた。藍も思い出したように話し始めた。

「なるべく早めにAランク冒険者パーティに追いつきたいわね。結構前に出発したって話だったから、あんまりゆっくりしているとさらに別の街に移動しちゃうかもしれない。」

「そうなんだよ、俺もそれを言いたかった。説得対象のAランク冒険者のパーティ名なんだっけ?」

多佳棋も我が意を得たりという感じで声が弾む。

「何とかバルキリーじゃない。」

「違うわよ、クゥワッド、ヴァルキリーよ。こうやって下唇をかんでヴァっていうのよ。」

藍は少しでも英語っぽく言おうと慎一に説明している。慎一もそれにつられて練習する。

「クワッドヴァルキリーか、どんなチームなんだろうな。美人のチームだといいな。。」

「ちょっと、そういう目で見るのはやめて。」

多佳棋のコメントに藍が怒る。

「いや、冗談だよ。ごめん、ごめん。」

多佳棋が謝ると、藍も我慢しきれないという形で吹き出して笑った。

「別に本気で怒ったわけじゃないけどね、パパも所詮は男ってことね。」

所詮ってどういうことだ、所詮じゃない男はどんな態度なんだろうと考えたが、この話題を早く終わらせたくもあったため多佳棋は突っ込まないことにした。多佳棋が黙っていると、都合よくシンイチが話を戻してくれた。

「早く追いつくためにも大量のモンスターの襲撃はさっさと片づけないといけないってことだよね。」

「ある程度めどが立ったら王国の騎士団に任せてしまうのがいいと思う。」

「そんなのいいの?ちょっと薄情じゃない?」

「まあ、確かに薄情かもしれないけど、、藍どう思う?」

「別に問題ないと思うわ。冒険者として依頼を受けているわけでもないし、何の責任もないわよ。まあ、ある程度めどは立てて王国に恩は売っておければそれはそれでいいかなくらいじゃない。」

藍のドライな考え方に慎一はいまいち共感できなかったが、二人がそういうなら仕方ないかと考えた。

「ある程度時間に余裕があれば乗り物でも作れそうなんだが、、」

「え、いいね。車?」

「そうだな、車かバイクだな。動力源のガソリン、あるいはそれに準ずるものがあっちの世界にあればいいんだが。。」

「私の知る限りないわね。魔法全盛の世界だから、あるけど使われていないってだけかもしれないけど。。別のもので代替できないの? 例えば、そう、、魔力とか。」

「あ、それいいね。」

「うーん、なるほどな。ありがちな考えだがやってみる価値はありそうだな。」

「でも、向こうにはないものを作るときは気を付けないとね。貴族や王族に絡まれて献上しろ、とかなったら面倒だし。。最悪の場合、国家反逆罪みたいな形で捕まっちゃうこともあるかも。」

「なんだよそれ、怖いな。気を付けよう。。」

「何日くらいできそう?」

慎一が目を輝かせて聞いた。

「すぐにできるかはわからないな。今の錬成スキルでどこまでできるのかも分かっていないから、手探りになるからなあ、、作り方、構成するパーツなんかは色々調べてきたからばっちりなんだが。。」

多佳棋の答えは慎一を喜ばせるものではなかったようで、少しがっかりした様子の慎一である。

「とりあえず大量のモンスターはなるはやで片づけて、次の街を最速で目指すってことでいいわね。乗り物はあるとうれしいけど、それができるまで待つってのはなしね。」

「分かった、分かった。隙間時間でちまちま作って行くよ。気長に待っていてくれ。」

話が逸れながらも盛り上がり、何とかまとまった。

よし頑張って村を救って、帝国からも国を救っちゃおう。

そんな思いを胸に三人は眠りについた。


ニーアが目を覚めると、さびれた小屋にいた。たいてい自分の家よりも豪華な宿で、大きなベッドで目を覚ますのが常だったので少し新鮮な感じがする。

そうか、村の小屋を借りてそこで寝泊まりしていたんだった。

そんなことを思いながら窓から外を見る、まだ外は薄暗い、朝四時くらいだろうか。平穏は保たれているようで一安心する。タカキとシンイチはまだ寝ている。タカキは現実世界にいるときはいつも早く起きているのに。こちらでは寝坊しがちなのが不思議だ。

誰かに見られないよう、念のため全身の防具を装備して、小屋の外に出る。

辺りは静けさに包まれており、まだモンスターの襲撃はないようだ。村の中を一回りして小屋に戻ると、シンイチとタカキが目を覚ましていた。

「おはよー、二人とも。」

「ああ、おはよう。予定通り来たな。」

「そうだね、来るだろうって思っていても、実際にこっちに来れるとなんかちょっとうれしい感じ。」

「うれしいのか、、」

隣で笑顔になっているシンイチを見て苦笑いするタカキ。

「モンスターの襲撃はまだみたいでよかったね、いつ頃来るんだろう。」

「それなんだけど、どこかから移動して来るんじゃなくて、何か召喚魔法とかで呼び出すんじゃないかと思うのよね。それらしい痕跡がないか調べてみましょう。」

中級魔族を倒してから三日経っている計算なので、そろそろのはずで時間の猶予はほとんどないかもしれない。しかし、もしも予想通りの方法で魔物が発生するのであれば、その召喚魔法の仕組みをうまく解除できればモンスターの襲撃を抑えることができるかもしれない。


早速三人は手分けしてそれらしい装置がないか周辺を探し始め、開始して一時間ほどで早速ニーアが発見した。

「二人ともちょっとこっちに来て。これが召喚魔法の仕掛けの一部よ。」

ニーアに呼ばれて二人が覗き込む。ニーアが魔力を送り込むことにより可視化が可能となっており、魔法陣のように見えている。

「うーん、これはかなり集中して魔力探知しないと見つけられないね。」

「魔石や魔道具を媒体として召喚魔法を発動させる場合もあるから、まずはパターン把握が大事なのよ。今回は魔法陣だけだからかなり苦労しそうね。」

「でももう見つけられたじゃん。」

「これ一つとは限らないわよ、多分だけど規模的には複数あるって考えるのが妥当だと思うんだよね。」

「うわー、それって大変だね。何個あるか、どこにあるかもわからないものを探し続けないといけないなんて。答えの分かっていないテストをさせられているみたい。一つ見つければ終わりかと思っていた。。」

「まあ、そういうな。学校のテストのように答えが分かっている問題なんて、社会ではほとんどないんだ。」

シンイチの悲痛な声に対してタカキが現実的なことを言ってたしなめた。シンイチもそっかと渋々納得したようだ。気を取り直して再びシンイチが聞いてきた。

「で、これ、どうやって解除するの?」

「それなんだけど、、、私もよくわからないんだよね。。」

「それじゃあ見つけても意味ないじゃん!」

「それを言われると辛い、、こんなときトォーリィがいてくれたら助かるんだけどな。。」

思わずかつての勇者パーティの仲間を思い出す。しかし、この場にいない仲間を頼る訳にはいかない。

「とりあえずいろいろ試してみましょう、確か昔の仲間はこうやって何か魔力操作的なことをやっていたような。」

魔法陣に魔力を強めに込めてみるが、特に変化はない。魔力の込める量を段階的に変えてみたり、風、雷、水と属性を変えてみたりと色々探ってみるがこれといった反応を示さなかった。

「ああ、もう面倒くさいな!」

我慢できなくなったニーアは魔力を込めた剣を叩き下ろした。

すると、魔法陣がはじけるように割れて消えたのだった。

「お、これで解除で来たんじゃないか、ちょっと強引だったけど。」

「ふふふ、何言っているのよ、計算通り、計算通り。さ、次行きましょう!」

シンイチとタカキは黙って顔を見合わせる。反論しないのが吉と判断して黙ってついて行くことにした。


その後数日間は同じように捜索を続け、3つの魔法陣を解除することができた。

しかし、賢明の捜索もむなしく、ついにその時が来てしまった。

残っていた魔法陣が顕在化し魔力を放ち始める。それにより空間のゆがみを作り出し、そこから魔物が出てきたのだった。

「おい、ついに来たぞ。やっぱ間に合わなかったか、まあ仕方ないな。」

「そうね、切り替えていきましょう。予定通り、まずは村を守るわよ。村人はもう柵の外にはいないかしら?」

「二、三日前からモンスターにつぶされないようにって畑の作物の収穫できるものを取り入れていたけど、さすがに終わっているよね、、?」

「タカキは、村の人たちに戻っていない人がいるか確認してきて。私とシンイチは念のため周りを少し見て回りましょう。どこか決まった目的地に向かってくれるモンスターだと助かるんだけど。。」

「もし村人がいたら助けるのは当然として、魔物との交戦もいいんだよね?」

「そうね、ほんとは一人で戦うのは避けてほしいところだけど、、、救出の過程で魔物を排除するのはやむなしね。」

「了解!」

そう言って三方向に分かれそれぞれの役目を果たしに行った。

別れてすぐにニーアは畑でのんきに作物を収穫している村人を発見した。

「ちょ、ちょっと、何やっているんですか!魔物が発生したので今すぐ柵の中の村の集落に避難してください、囲まれちゃいますよ。」

「おお、そうでしたかそれはすみません。」

村人はそう言って立ち上がり、収穫した作物が入った籠を背負い歩き始めた。

はあ、のんきなもんね。。ニーアは頭が痛くなりそうだったが、ぐっとこらえて捜索を続けた。ものの2,3分で二人目、三人目と発見した。相変わらずのんびりとした動きで籠を背負おうとしていたので、ニーアは思わずイラっとして、初級水魔法で作物の入った籠を集落の方に吹き飛ばした。村人は、ニーアが重い荷物を運んでくれたと勘違いをしたようで、お礼を言って去っていった。再び頭を抱えたくなった。

更に探していたが他に村人は見つからず、

約束した時間になったので集合場所に行くと、すでにタカキが待っていた。

「どうやら、あと五人戻っていないらしい。」

「私、さっき三人は家に戻したわよ。」

「ありがとう、じゃあと二人か。」

タカキとそんな話をしていると、

シンイチが走ってこっちに向かってくる。

二人の村人の手を引いて、収穫した作物の入った籠を持ってあげているようだ。

シンイチ、優しいっ! ちょっと過保護じゃない?

そんなことを思ったが、先ほどの自分の行動はちょっとやりすぎだったとニーアは少し反省した。


村人たちを無事に保護した後は、すぐに魔物との戦闘となった。それほど強い種はおらず、単体であればタカキでも何とか倒せる強さの魔物だった。ニーアとシンイチは、草刈りをするかのように簡単に倒していく。たまにB-Cランク相当の魔物が現れるも、シンイチとタカキが雑魚を露払いをしてニーアが直々に相手をすることで事なきを得た。

まる1日、戦いっぱなしだったが、魔物は定期的に発生を繰り返し、ニーア達と交戦しては消えていく。シンイチの範囲魔法で簡単にさばけるため、交代で魔物討伐を担当し、その間他の二人は休息をとるというシフト制で対応していく。

「まあ、このペースでこの強さの魔物なら何日でも問題なさそうね。」

「思ったより魔物が強くなくて助かったよ、あの魔族こんなんで王都を落とせると思ったのかな。」

「そうね、数で押すつもりだったのかな。あ、王都にはAランク冒険者がいないから、意外と十分な戦力なのかもね、ラニキス王国軍の戦力がどんなものかは知らんけど、、」

ニーアはそうとぼけてながら、確証はないが事前に召喚魔法陣をいくつか破壊したことで、魔物の発生規模が抑えられたのかもしれないと考えてた。


三人で防衛主体で凌ぐ中、その日の夕方、ようやく王都からの援軍が到着した。獣人族を中心に構成された部隊で数千人の規模である。ラニキス王国はエルフの国という印象だったのでエルフの軍隊が来るのかと思っていたため、タカキは少し意外だった。

ここ、コルク村は村長は人族だが、獣人族の住民の割合が多く、それも関係しているのかもしれない。

部隊長の獣人族がニーアたちの前に来るなり言い放った。

「ふん、お前らか、人族の冒険者ってのは。ご苦労、あとは俺たちに任せて、この村から離れていろ。」

「せっかくなので、戦況が落ち着くまで一緒に戦いますよ。」

「そんなのはいらん! 陣形が乱れる、邪魔だから失せろと言っている。」

シンイチが共闘を申し出るもむげに断られてしまった。

タカキも協力して戦うことのメリットを訴えかけたが、回答は変わることはなかった。


「タカキ、シンイチ、行きましょう。」

やり取りを黙って聞いていたニーアが二人に声をかけ、そして村の出口に向かって歩き始めた。

あ、これ絶対激怒しているやつだ。

シンイチは思わずタカキと顔を見合わせる、どうやらタカキも同じ感覚のようだ。

こうなっては何を言っても無駄である、黙ってニーアについて行き村を後にすることになった。

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