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第四十六話 出立

「お疲れさまー、どうだったって、え?なにそれ、スライム?」

早速、クロコを見つけてはしゃぎ始めるシンイチ。スライムを触ってムニムニ感を堪能している。

「え、なになに、クロコって言うの?黒い子ってこと?単純な名前だけどかわいいね。」

「そうだろう、今日一日で結構強くなったんだぜ。」

タカキも少し得意げに言う。クロコの話で盛り上がりつつ、例のレストランに向かった。いつものようにお互いの状況を報告するためだ。


シンイチからは待っていた情報を聞くことができた。

「この前、タカキが約束を取り付けてくれた冒険者たちが、夕方に戻ってきたみたいで声をかけてくれたから話をしたよ。彼らはワシュローン帝国とセルディス王国の争いを知っていて、セルディス派だって言っていたよ。」

「そうか、そりゃよかったな。それにしてもよく俺の連れだってわかったな。」

「ギルド職員の人が教えてくれたって。ここ数日毎日入れ替わりでギルドに出張っていたらそりゃ関係者だってわかるよね。最初に声をかけてきたやつ(タカキ)になんか雰囲気が似てるけどもしかして、親子か?って言われちゃったよ。」

「む、鋭いなその冒険者、大丈夫かな。。にしても、教えたのはあの受付の女性か?名前はなんだっけか、確か、、、」

「ハーティアさんだよ。タカキの話を聞いていたから怖い人かと思ったけど、僕に対してはそれほど辺りは強くなかったよ。」

どういうことだ、俺に対してはつんつんしていたのに。。とタカキは憤る。

「愛嬌の差かしらね、まあどんまい。」

そう言ってニーアに肩を叩かれ、うなだれるタカキだった。


そんなローテーションをさらに二週間ほど繰り返した。タカキは毎日の狩りや、他冒険者パーティの勧誘が終わった後、日々、錬成スキルの練習を続けており、こちらもかなりスキルレベルが上昇している。金属の加工もかなり自由にできるようになっていた。説得に応じてくれた冒険者パーティの数は15に上っており、ニーアとしてはこの活動かなりの手ごたえを感じていたが、全てBランク以下の冒険者パーティでその点が少し不満であった。とは言え、元々Aランク以上の冒険者パーティの数自体が少ないのもまた事実である。ギルドの窓口にはAランク以上の冒険者を見かけたら教えてくれと依頼していたが、一向に情報はなかった。

「そろそろ、王都エルフィリアを出る時なのかもね。」

三人で夕食を食べているときにニーアが提案した。

「えっ!随分唐突だね。」

「そうでもないわよ、最近、新しい冒険者に会えていないじゃない。次の街へ行って環境を変えたほうがいいかなってちょっと前から思っててさ。」

「確かにそうだなあ、Aランク以上の冒険者もいないようだし。やはり、王都だけあって治安もしっかりしていて平和なのかな、平和なところに高ランク冒険者の仕事はなさそうな気もするしな。」

タカキもニーアに同調する。

「それでね、東に500キロくらい行ったところ森林都市コールッシュって町があるらしくて、その途中にあるコルク村ってところで畑を荒らすモンスターを討伐するって任務があるのよ。それを受けて途中で片付けていくのはどうかなって。」

あーやっぱりちょっと難易度高めのクエストがセットで着いてくるのか、、、出来れば移動のみの単品でお願いしたいところだけど、、とシンイチは考えていた。

「ちなみにそのクエストのランクはどんな感じなの?」

「んーっと、そうね、確かCランク位だったかしら。二人にはちょっと難しいくらいでちょうどいいかなって。タカキも冒険者ランクを上げたほうが良いだろうし。」

「おお、それはいいな。確かにギルドに通い詰めている割に、クエスト任務を受けてないから、冒険者ランクが全然上がらないなって思っていたんだよ。」

シンイチは慎重に話を進めようと確認を入れる一方で、タカキは意外にも前向きである。

「上のランクをなめちゃだめだよタカキ。あくまでクエストのランクなんて目安で、予想外に上振れすることもよくあるんだから。」

「うーんなるほど、そうか。」

「それにパーティで受けるにしても、一番低い冒険者ランクの一つ上のクエストまでしか受けられないんじゃなかったっけ?」

シンイチが一生懸命に抵抗する。

「確かに言われてみるとそうだな。そうすると今受けられるのはEランクまでってことか。その点はどうするんだ、ニーア?」

「あら、FからEなんて今のタカキなら一日あれば上がるわよ。EからDランクも一週間もかからず合格、ってところかな。」

「え、ほんとに?凄いね。」

「まあ、多分だけどね。」

「おかげさまで、厳しく鍛えられているもんでねって感じだな。。」

タカキはじろりとニーアを一瞥したが、意に介している様子はない。

「タイムリミットは大丈夫かな?」

「まだ三週目くらいだから、あと三,四週間は大丈夫なはずよ。」

「うーんじゃあ、大丈夫なのかなあ。いざとなったらニーアに任せるからね。」

シンイチもついに指摘するポイントがなくなり、提案を受け入れることにした。今回は他の冒険者がいないので若干心細さがある。それでもAランクのニーアがいるのでCランクのクエストは問題ないだろうと思う、いや思い込もうとするシンイチだった。


翌日、調合や採取任務など軽いクエストを一気にこなし、ニーアの予告通りタカキはEランクへと昇格することができた。、さらに4日後にはDランクに昇格しエルフィリアの冒険者ギルドでちょっとした話題の人となったのだった。スピード昇格の裏には、これまで地道に鍛えていた錬成スキルがかなり役に立った。材料から加工して金属のインゴットを一定量作る依頼などはかなり評価ポイントが高かったようだ。戦闘系のクエスト3割、調合系のクエスト6割、採取系が1割といった形で戦闘技能よりも内職で点数を稼いだ方たちであった。

「ようし、予定通りDランクになったから、例の依頼を受けられそうだな。俺もやるもんだ、たった一週間で2つも冒険者ランクを上げるなんて。」

「私の見立てが正しかったってことよ。それに私たちの助力があってのことなんだから、あんまり調子に乗らないようにね。戦闘系の依頼は特にね。」

浮かれているタカキにニーアがくぎを刺す。これからモンスター討伐の依頼となるので気を引き締めようとしている。

「分かっているよ、こっちに来て初めてこう、主人公っぽいというか、他の人から一目置かれたから、つい、な。」


良いことは続き、タカキのランクアップをしたときに、ギルドから新たな情報がもたらされた。以前からお願いしていたAランク冒険者の行方について、ようやくその成果が表れたのだ。クワッドヴァルキリーという冒険者パーティで、通称、「戦慄のヴァルキリー」と呼ばれているらしい。クワッドというパーティ名からも分かるように4人組で、エルフ、人族、獣人族の3人の女性と一人の男性ドワーフからなるパーティらしい。ヴァルキリーなのに一人男なのかいと突っ込みたくなるところではあるが、その実力は確かなものらしい。数週間前にちょうど次の目的地である森林都市コールッシュに向かったとのことだった。本日エルフィリアに到着した冒険者が道中ですれ違ったとのことだった。もう一組はシャドウワイズという冒険者パーティらしいが、こちらは男が一人ギルドに来たがすぐにいなくなってしまったたため、パーティの人員構成や今後の行き先など詳細は不明とのことだ。

ただ、ギルド証ではAランクであることを確認し、クエストの受注を進めたが、すぐに街を出る旨の話をされ受注を断れたということなので、王都にはいないという話だった。

「シャドウワイズの方は今朝、の話だからもしかするとすぐに追いつける可能性もあるわね。」

「でもどっちの方角に行ったかわからないよ。」

「そうだな、可能性としては東か北だろう?」

「そうね、王都エルフィリアの西はワシュローン帝国との国境を分ける険しい山脈だし、南はセルディスとの国境だからね。まあ、モンスター討伐のためあえてモンスターの多い山脈に入るとかはあり得ないことはないかもだけど。」

「なるほどな、その場合はしゃあないな。ただ、王都の冒険者ギルドにわざわざ来るくらいだから、何かしら人と関わる必要がありそうな気はするんだよな。セルディスに行く場合も仕方ないか。北はなんか大きな都市はあるのか?」

「北はかなり遠いけど、イスエールトって言う城塞都市があるわね。その手前にいくつか小さい町はあった記憶だけど。」

「まあまあ、どちらにしても早く出発しようよ。そうしないと、同じ方向で会えるはずのものも会えなくなっちゃうかもよ。」

シンイチに急かされて、それもそうかと二人も思った。

とはいえ、すでに日が落ちているため明日の早朝出発のために早めに寝ることとなった。


翌日、日の出とともに王都を出発する。旅立ちの時はいつもさみしい気持ちとなる。

ユニテアには前日のうちに挨拶を済ませていたが、わざわざ朝早く見送りに来てくれた。

「また会いましょう、まだ助けてもらったお礼もできてないからね。」

「そんなことないわよ、冒険者の説得では色々助けてもらったわ。」

「ユニテアさん、ありがとうございました。ギルドの受付のハーティアさんにもよろしくお伝えください。」

そんな会話をしたのち、三人は次なる目的地、コルク村を目指して歩き始めた。

「エルフィリアも慣れるといい町だったね。」

「そうね、表面上は言われていたほど人族の差別も感じなかったし。」

「表面上だけじゃなく、心も通じ合えるといいけどね。。」

「少なくとも今回はユニテアとは通じ合えた。そういう、小さな積み重ねが将来的な種族の垣根を取り除いていくんじゃないかな。」

「タカキ、たまにはいいこと言うわね。」

「おいおい、たまにじゃなくていつも言っているぞ。」

タカキのつっこみにシンイチとニーアは声を出して笑った。

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