第四十四話 薬剤師カンナ
翌朝、ユニテアが宿屋に迎えに来てくれた。タカキはユニテアの案内でギルドに行き、説得する対象を見つけるべく張り付き始める。ギルドについて早々にユニテアは別の用事があるということでタカキを残していなくなった。
タカキが一人になったタイミングでちょうど人族のBランク冒険者がいたので話かけてみると、朝はなるべく割のいいクエストを受注して急ぎ出かけたいとのことだった。相手の都合を無視して話をしてもと思い、とりあえず後日クエストから帰ってきてからの約束だけは取り付けることができた。
その後はあまり冒険者自体来なかったこともあって不調となり、待ちの時間が長くなっていた。
「なんだかな、こんなのんびりでほんとにいいか迷うな。」
思わずつぶやくタカキ、受付のエルフのお姉さんににらまれ思わず目をそらす。美人ににらまれるとつい委縮してしまう。おどけモードに入っていれば、明るいノリである程度話はできるのだが。そんなことを考えながら午前中は時間が過ぎて行った。
午後からユニテアが戻ってきてタカキに加わった。エルフ族のBランクパーティ3組と話をして、いずれもオスティア寄りの中立の立場をとってくれると表明してくれた。同族のユニテアの説得が大きかったようだ。タカキ一人だと話を聞いてもらえたかも怪しかっただろう。
今日は上がろうとユニテアと話立ち上がった時、ユニテアが受付のエルフから呼び止められた。
「ユニテア、ちょっといい?」
「なんだ、ハーティア。」
どうやらハーティアという名前らしい。ユニテアがカウンターの方へ行くと何やら小声で話をしている。
「そんなことない!タカキ達は恩人なんだよ。」
突然、ユニテアが大きな声を上げる。そしてそのまま向きを変えこっちに来た。
「タカキ行こう!」
そう言って出て行ってしまったので、タカキも慌ててついて行く。
しばらく歩いてからユニテアの怒りが収まっていそうなのを見計らって話を切り出した。
「なあ、さっきのは何だったんだ?俺に関することだろう?」
「うん、、なんか騙されるかもしれないから人族とは距離を置いた方がいいみたいなことを言われたんだ。」
「なるほど、人族への不信感ってやつか。」
だから午前中は睨まれていいたのか、と納得する。
「うん、ごめんね。全てのエルフがそうって訳じゃないんだけど。。。昔、仲間が人族に騙され捕えられて奴隷として売られたり、見世物とされたりしたから、、そう言うのを引きずっているんだ。。本人たちにしたらよかれと思ってアドバイスしているんだろうけど、私は自分の目で見て相手を判断したいんだ。その結果、タカキ達は、そう言ったうわさで聞くような人族とは違うって思ってる。」
「そうか、ありがとな。」
ユニテアもたいがい美形だが、なぜか真面目な話をしてもタカキは調子を保てている。ユニテア冒険者らしい話し方のせいか、あるいは信頼を得ていると感じているからか。
一方、ニーアとシンイチはモンスターを狩りながら冒険者探しをしていた。ピンチの人たちがいたら助けてあげて、そのままオスティア側に引き込もうという、ちょっと恩着せがましい戦法だった。しかし、初日はピンチに陥っている冒険者はおらず、ただただひたすらモンスターとの戦闘で一日が終わった。
「敵は全然強くないけど、戦闘の感覚が鈍らないようにはなるかなって感じだね。」
「そうね、明日以降、もう少し町から離れて強い敵がいるところの方がピンチの冒険者が見つかりやすいかもしれないわね。どのへんで強い敵が出るか後でユニテアに聞いてみましょう。」
「でも明日はタカキとなんじゃない?」
「あ、そうだったわね。まあ、仕方ない。タカキのレベルに合わせた中でもなるべく強い敵がいるところかな。さ、もう少し戦いましょうか。」
そう言って日が暮れるまで狩りに明け暮れたのだった。
夕食時にニーア達と合流する約束だったが、まだ予定の時間までにしばらくあるということで、タカキはユニテアと町のはずれにあるマジックアイテム屋に向かった。
店の扉を開けると怪しげな薬瓶が棚いっぱいに並んでいる。ほどなくして店の奥から店員らしき人物が現れた。人族のように見える。20代半ばくらいだろうか、金髪の女性だった。
「いらっしゃい、珍しい組み合わせなのね。」
「カンナさんも知っての通り私は人族を差別したりしないよ。こちらは薬草採取の途中でモンスターの群れから助けていただいた冒険者でタカキだ。それと薬の調合をお願いしたくってね、頼める?」
ユニテアが自分は差別主義ではないと反論する。
「ふふ、そうだったわね。で、何の薬の調合するの?」
「仲間のジェイニス衰弱状態になってしまって、そいつを回復させる薬が欲しいんだよね。もう三日目なんだよ。」
「あらまあ、それは大変ねえ、もうあまり時間がないじゃない。今すぐ作るからちょっと待っててくれるかしら。」
そういうと薬草を両手で包み集中し始める。見た目の感じから接客要因の店員だろうと思っていたが、この若い女性が店主だったようだ。
調合を始めたカンナの手の中でほんのりとした光を発している。そのまま数十秒ほどで薬が出来上がる。
速い、とタカキは思った。
「はいよ、銀貨5枚ね。6時間ごとに3回飲めばよくなるわよ。で、次はあなたの番ね。どんな薬を調合して欲しいのかしら?」
「いや、俺は特に。調合するところに興味があったのでユニテアさんに頼んでついてきました。独学だと限界があったので、プロの仕事を見てみたいなと。」
「へーあなたは調合スキル持ちなのね、珍しいわ。」
「いや、調合というよりは知りたいのは錬金スキルなんだが、、」
「なるほどね、まあ出来るものは異なるけど、基本の部分は一緒よ。作りたいものを強くイメージして、魔力を手に集中する感じね。大きさや形、使用効果をより鮮明にイメージできると調合成功率やできた薬の効果も高まるのよ。錬成も同じで、これ系のスキルってイメージが大事だと思うわ。なんだか不思議だと思うかもしれないけど。」
「なるほど、鉱石から金属を取り出しての成形するのもそれで行けそうだな。ありがとう、やってみるよ。」
「ところで、あなたってどこから来たの?」
カンナが不意に質問をしてきた。
「え? えーと、セルディス王国からだ。」
「ふーん、そう。ま、いっか。それはそうと、初対面の人にやたらと鑑定スキルを使うのはやめたほうがいいわよ。私みたいに人によっては気付くし、気付かれた場合、いきなり切り付けられたって文句は言えないわよ。」
ばれていたようだ。実は、店に入ってカンナが現れた際に鑑定スキルで能力を見ようとしていたのだった。残念ながら名前以外のステータスはほとんどわからなかったのでそのままやり過ごしていた。
「申し訳なかった、悪気はなかったんだ、許してほしい。」
「うん、まあいいわよ。どうせほとんど見えていないだろうし。私は隠蔽魔法使っているから、よっぽどの高レベルの鑑定スキルじゃないと見破られなはずだし。」
「ありがとう、忠告も痛み入る。これからは人に使う時は注意するよ。」
「そうねそれがいいわよ。ちゃんと許可を得ているか、戦闘になっている場合は問題ないと思うわ。」
そのあとも錬成スキルの知識をいろいろと教えてもらい店を出た。
「カンナさんはすごいな、博識で色々と勉強になった。帰って早く試してみたいところだ。」
「それは良かった。カンナさんはあの若さでかなり高度な調合スキルを持っている。不思議な人だが、貴重な存在なんだ。」
「そうなのか、まあ、確かに自分で高レベルって言っていたしなあ。」
「そんな相手に、無断で鑑定スキルを使っているなんて。。」
少しあきれたようにユニテアが言った。
「あ、ああ。その人が悪人か善人かとかが分かるから無意識につい、ね。いかんせん、こっち、いや最近は物騒だからさ。」
「確かに、物騒なのはその通りだけど、、、でも鑑定スキルなんて珍しいね。ここ、エルフィリアでもカンナ含めて数えるくらいしかいないはずだ。」
なんと、カンナも鑑定スキル持ちだったようだ。
「いや、ほんと、これからは気を付けるよ。」
反省しきりのタカキを見て、ユニテアが笑っている。ふと、じっとタカキを見つめた。
「私のステータスも鑑定済みなのか、何が見えているのかわからんが、なんだか急に恥ずかしい気分になるな。」
「いや、でもそんな変なものは見えていないぞ。名前とかレベルとか基本情報くらいだぞ。」
ユニテアが急に変なことを言い出したので、タカキは慌てて説明をするのだった。




