第四十三話 他種族国家ラニキス
次の日の朝、一番乗りで関所に向かう。
「昨日のお前たちか、身分を証明するものを見せろ。」
関所の兵士が偉そうに言った。3人とも黙って冒険者ライセンスを出す。
「ほう、Aランク冒険者か、ラニキス王国への入国の目的は何だ。」
「クエストを受注したのでそれの達成のためよ。」
「ほー、そうか、、、まあ頑張れよ。」
じろりと一瞥するも特に止められることもなく通してくれた。Aランク冒険者ということである程度の信用を得られたのかもしれない。実際にラニキスでしか達成ができないクエストを受注しているわけではないがうまくいったようだ。
関所を通過し、見えなくなるくらいまで離れてからシンイチが叫んだ。
「やったー、無事にラニキス王国に入れたね。」
「まったく、大げさね。」
と言いつつもニーアも内心ホッとしていた。人族以外が多いラニキス王国への入国で、人族が不当な扱いを受けるという話を聞いたことがあったためである。タカキは特に問題ないと気にしていなかったのか、止められることなんて全く想定しないのか特に表情を変えずにいる。
「さて、じゃあ最初の町を目指すか。そこのギルドへ行って冒険者を探して説得すんだろ。」
「そうね、ここからだと、エルフィリアが一番近い大きな都市かな。ラニキス王国の王都なんだけどね。徒歩だと3日くらいかな。」
「オッケーじゃあそこに行こー。」
ニーアの提案にすぐさまシンイチが賛成し、 エルフィリアへ向かうこととなった。
タカキは三日も歩くのかー、と文句を言っているが、冒険者の基本は歩きよとニーアがたしなめる。
森を避けて回り道をしていくこともできたが最短ルートで森を縦断するルートを選択する。森の中は平原よりモンスターが強くなる傾向にある。これは森に滞留する魔素が影響するという研究論文があるが、100%それで説明がつくことばかりではない。
森の中を歩いていると、ニーアは誰かが交戦している気配を感じた。
「ちょっと心配だから見ていきましょう。」
ニーアがそう言うと進路を少し変える。暫く進むと、戦闘音が聞こえ、一人のエルフがキラータイガーの群れと交戦中であった。
「ふむふむ、冒険者かな。Lv25 で名前はユニテア、ほう、種族はエルフのようだ。」
「Lv25かギリギリのところね。キラータイガーはLv 15くらい?」
「ん、いや、キラータイガーはいずれもLv20だな。」
そういっているうちにどんどん追い込まれている、キラータイガーの爪が冒険者エルフの袖の部分を切り裂いた、傷は深くないものの出血している。
「モンスターのレベルが想定より高いのと、数が多すぎてちょっと危ないわね、助けましょう!」
そういうとニーアはいち早くエルフとキラータイガーの間に割って入っていく、シンイチも後に続いた。タカキは戸惑っている。が、すぐに我に返り戦闘に加わっていった。
「助太刀するわ!」
そう言ってニーアがキラータイガーに切りかかった。シンイチがヘイトを集めキラータイガーの攻撃を集める、そこへタカキは魔法攻撃をしてダメージを与え、ニーアが剣での攻撃で倒していく。キラータイガーの攻撃対象がニーアやタカキ、または冒険者エルフに向いたときはすかさずシンイチが槍で攻撃して倒していった。ニーアの攻撃で倒せるので、本来、タカキの魔法攻撃は必要ないが、それだと経験値が入らないので、あえてひと手間入れてタカキにも攻撃させることでタカキのレベルアップに役立てようという作戦である。シンイチの攻撃をすり抜けタカキに攻撃してきたキラータイガーは、タカキが剣で応戦した。魔法を使いながら剣でも攻撃と“師匠”のニーアと似たようなスタイルになっているが、当然動きはぎこちない。よくこんな器用なことができるな、と思いながらタカキは必死に戦っていた。
そうして数十匹倒したところでようやくモンスターを撃退することができた。
「ふう、何とかなったな。Lv30近い奴もいたな。そちらのお嬢さんは大丈夫かな?」
タカキが言った。
「え、ええ。あの、助けてくれてありがとう。」
エルフの少女は少し緊張気味に答えた。
「そんなに警戒しなくてもいいわ、私はニーア、セルディス王国のオスティアから来た冒険者よ。こっちはタカキとシンイチよ。私たちオスティアの冒険者パーティなの。」
ニーアが自己紹介すると、少し安心したのか、エルフも自己紹介し始めた。
「私はユニテア、エルフィリアを拠点としている冒険者だ。」
「よろしくね、ユニテア!」
ニーアが笑顔で握手した。
「よろしく。」
シンイチとタカキも挨拶をする。
「ところで、けがは大丈夫か。」
「あ、そうだね、今治療するね。」
そう言って、シンイチがヒールライトをかけてあげる。
「何から何まですまないな。それにしても、無詠唱で光魔法なんて、、すごいな。」
ユニテアがつぶやいた。光魔法自体がそれほど使い手が多くないのに加え、無詠唱でということでさらにレア度を高めてしまったようだ。
治療が終わったところでニーアが改めて聞いた。
「なぜ、一人でこんなところに?」
「実はいつもパーティを組んでいるメンバーがけがをしてしまって、その治療薬を取りに行くために森にもぐったんだ。町のすぐ近くでとれると思っていたんだが、目的のものがなかなか見つからず奥まで入ってきてしまった。」
「それで、目的のものは見つかった?」
「ええ、ようやく見つけることができたのだけど、道に迷ってしまって、モンスターの群れに襲われたって訳なの。」
「じゃあ、ちょうど、私たちもエルフィリアに行こうと思っていたので一緒に行きましょうか。」
「すまないわね、ありがとう、お言葉に甘えさせてもらうわ。」
ユニテアも加え、4人となり再び、エルフィリアを目指す。しばらく歩いたところで、日が暮れたため、川沿いでキャンプとすることとした。
「うわぁ、凄く立派なテントね。昨日は野宿だったのに、こんなところで寝ていいのかしら。」
「いいに決まってるじゃない。さ、入って。」
ニーアが案内をしている。ユニテアはきょろきょろしながら部屋の中を色々と見まわしていた。
「この部屋を使ってね。」
「こんな個室を使わせてもらっていいのか?」
ニーアがもちろんと頷く。そんなやり取りを見て、このコテージ、初見だとやっぱりそうだよな、、、とタカキは自分のときと置き換えて思うのであった。
「さてと、錬成、錬成と。」
気を取り直して自分のやるべきことに向かう。
冒険に出てニーアに鍛えられ始めたころから、時間を見つけては錬成をするようにしていた。そのスキルを使えば使うほど熟練度が上がり、レベルアップすると聞いたためだ。まだ一週間ほどしか経っていないが、最初は、ポーションも3回に1回くらいの成功率だったのが今では錬成のレベルが3に上がり、100%成功するようになっている。夜遅くまでタカキの錬成の特訓は続いたのであった。
次の日も早朝から街を目指して歩き、夕方、ついにエルフィリアに到着した。町に入る前の検問の順番に並んでいる間に、ユニテアが気まずそうに口を開いた。
「みなさん、既に知っているかもしれないが、ここエルフィリアはエルフの町だ。過去の歴史からエルフは人族に良い印象を持っていないものもたくさんいる。もちろん自分はそんなことないけど。」
「なるほど、種族問題か。ありがちだね。ちなみに冒険者ギルドはあると思うのだけど、そこもやっぱりエルフの冒険者ばっかりなのかな。」
タカキ確認する。
「ええ、5割以上はエルフだね。ただ、ドワーフとか、獣人族とか他の種族もいて、人族も少しはいたはずだ。そういう意味では冒険者の方が普通の街の人よりも人族への理解はあるだろう。」
「そうか、それならまだ何とかなるかな。ちなみに仲間のために取った薬草ってどっかで調合してもらうのかな?」
「マジックアイテム屋があって、そこの店主が調合スキルを持っていて、いつもお願いしている。。」
「なるほどー、一つ相談なんだが、そこに行く時俺も連れて行ってくれないかな。調合をいろいろ勉強したくね。」
「ああ、それは構わないが、、」
不思議そうな表情を浮かべながらもユニテアは了承してくれた。やはり、人助けはしておくべきだ、とタカキはひそかに思った。
そして、いよいよニーアたちの順番になった。
「よし、次。ん、人族か。何をしに来た。」
「はい、クエスト達成のために来ました。」
国境の関所と同じ理由を述べる。
「ふん、何のクエストか知らんがエルフィリアに寄る必要が有るのか。」
冷たい視線を浴びせてくる。ユニテアが言っていた通りの塩対応である。険悪な雰囲気になりそうなところでユニテアが助け船を出した。
「ちょっと待ってくれ、この人たちはキラータイガーの群れに襲われている私を助けてくれたんだ。保証する、悪い人たちじゃない。」
「お、ユニテアじゃないか。そうか、お前がそう言うなら。お前たち悪かったな、通っていいぞ。」
ようやく、町の中に入ることができた。すっかり暗くなってしまったので、ユニテアに人族でも泊めてくれる宿屋を教えてもらいチェックインをした。ユニテアとはここで一旦お別れとなり、マジックアイテム屋に行く時にまた声をかけてくれるという約束をした。一人当たり銀貨2枚と、とてもリーズナブルな価格設定で、大きめの4人部屋を2週間とることができた。寝る前に明日からの動きについて相談し意識合わせをした。しばらくはエルフィリア周辺でクエストをこなしつつ、ギルドに通い詰めて冒険者の説得を試みることにした。二手に分かれて行動することとし、初日は、タカキがギルドに張り付いて冒険者の説得を、ニーアとシンイチはクエストをこなす。次の日はシンイチが張り付きニーアとタカキがクエスト消化、という形で代わるがわる役目をローテーションしていく方式だ。
これからの方針も決まり、ベッドに入る。
冒険者の説得、うまくいくといいな、たくさんの人をこちら側についてもらえるといいけど、と不安と期待にかられるニーアであった。




