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第四十二話 獣魔貴族の狙い

ニーア達がいるセルディス王国オスティアから遥か北東、ラニキス王国の北に位置する獣魔貴族ベライグ領地、ベライグの前に3人の上級魔族、三獣士長が片膝をついて並んでいる。重い空気が漂う中、ベライグが口を開いた。

「三人揃ったか、よくぞ来た。要件はほかでもない、人族への進行状況がどうなっているかの確認だ。」

その問いに対して最初に、エルファンスが口を開いた。

「はっ、私はラニキス王国を落とすべく、中級魔族にラニキスの首都から少し離れた村を襲撃させ拠点を作っているところです。そこから大量の魔物を呼び込んでの首都陥落を狙っています。」

「それはいつ頃に成せるのだ?」

「はっ、中級魔族による拠点構築があと約2か月、その後さらに1か月かと。」

「そうか、、、想定より進んでいないな。魔王様が倒されてから、早くも5カ月が経とうとしている。魔貴族のトップが集まる会合の開催まであと半年と迫ってきている。」

「通称デズアリカンですか。」

「そうだ、ちょうど魔王様が倒されてから1年後に開催される。あの場でそれぞれ魔貴族の人族に対する侵攻状況を話すことになるだろう。それまでには何とかするんだ、いいな。」

「はっ!いかんせん、先の戦いでかなりの戦力を失っているので、その補充に時間を要します。ただ、半年もあれば十分かと。」

「分かった、引き続き任せる。」

ふう、あぶねえ。エルファンスは心の中で胸をなでおろした。実際はまだ中級魔族に村を攻め落とすように命令すら出していなかった。とりあえず途中だと報告しておくことでなんとなく進んでいるように見せる、エルファンスが昔からよく使っている処世術だった。アドベアニスはくそ真面目に良く動き、ティグロムは逆にずる賢く姑息に立ち振る舞う、そんな他の三獣士長に後れを取らないために、いつの間にか使い始めていた苦肉の策であった。嘘だとばれたときのダメージは計り知れないが、ばれたことはなかった。後れを取りながらも、そのあとの打ち手には間違いがなく、帳尻合わせがうまいというのもエルファンスの特徴である。

そろそろ、実際にことを動かさないとな。。しかし、村を落とした後に首都を陥落させるための大量のモンスターも確保しないといかんな。まあ、何とか間に合うだろう。そんなことを考えながら、次の話題に移るのを待った。


「では次はわたくしの方からご報告を。」

そう言ってティグロムが一歩前に出て話し始める。

「セルディス王国についてですが、先日のアドベアニスの失敗を受け、状況の分析のためわたくしの配下を人族の町に潜伏させておりました。アドベアニスの侵攻を阻んだのは誰だったのかというところの情報収集しております。」

くっ、とアドベアニスがティグロムを睨んだが、ベライグ様の前で暴れるわけにもいかず堪えるしかなかった。

「ふむ、興味深いな。相手はSランク冒険者、あるいはSSランクと呼ばれるやつらだったのか?」

「いえ、それが3組のAランク冒険者パーティが中心となった合同パーティだったようです。」

「Aランクでそれほどか、奴らもレベルを上げてきているのか、意外と人族も侮れんな。」

「はい、おっしゃる通りでございます。しかも最近セルディスのオスティアでSランク冒険者二人と数名でクラーケンキングを討伐したという話もありまして、国軍も健在な今はセルディスの戦力が充実している状況にございます。」

「しかし、それではこのまま指をくわえて攻めあぐねたままでいるつもりか。そんなことが許されるとでも思っているのか?」

「そこは重々承知しております。私に一つ、考えがございます。ワシュローン帝国がセルディス王国に対し戦争を起こそうとしているという情報がございます。これを利用し、セルディスの国力が低下したタイミングを狙って攻め込むのが良いかと。」

「なるほど、悪くない。だが、それはいつ起こる?先ほども言った通りそう長くは待てんぞ。」

「帝国側の冒険者狩りの工作を我々魔族がアシストすることで、戦争のきっかけを起こしやすくしようかと。帝国側の人間もセルディスの仕業に見せかけて始末することでお互いをたきつける方針でございます。」

「我らが関与していると分からないようにうまくやれ。」

「はい、心得ております。」

深々と一礼をしてティグロムは下がった。アドベアニスの失敗を受け、慎重になっていることはティグロム自身も認識しているが、連続で失敗するわけにはいかなかった。動かせるものは帝国でも他の魔族でも使うつもりであった。


「最後に、アドベアニスはどうだ?」

指名を受けアドベアニスが立ち上がる。

「俺は、ティグロムに引き継いだ後、主にワシュローン帝国側の侵攻を画策していました。先ほどティグロムの話に合った通り、セルディス、そしてシュテインへの戦争に向けて色々工作を仕掛けているようです。なので、こちらも戦争後の国力が落ちたときに攻め込むというのがよいでしょう。ただ、、、」

「なんだ、言ってみよ。」

「他の魔族が帝国に対して仕掛けている気配があります。帝国の王都を探らせた際に他の魔族の気配を感じました。」

「何だと!それはまずいな。一体誰だ、不死魔貴族のデネアスか、あるいは悪魔貴族のドゥームか、、、他のやつに取られるくらいならそっちを先行して攻めたほうがよいか。。」

ベライグがイラつきをあらわにしながらつぶやく。

「いえ、帝国の戦力は人族の中でも最大です。我々だけではかなり厳しいでしょう。」

アドベアニスが冷静に分析をしてベライグを落ち着かせる。ベライグは分かっているというように手でアドベアニスの進言を制した。

「ふん、魔王様がいたときは数で蹂躙さえすればよかったのだがな。こんなちまちまと戦略を練らないといけないとは情けない話だな。」

「ベライグ様、それは、、、」

3人ともうまく答えることがきず、言葉に詰まる。

「ふん、まあいい。所詮、人族とは喰うか喰われるかの関係だ。生きていくためには手段は選ばん。いざとなれば俺が自ら出向いてやるぞ。」

「もったいないお言葉です、場を整えましたらご出陣を依頼させていただくかもしれません。その際はよろしくお願いします。」

ティグロムがそう言ってその場を収めた。

そして再び三者それぞれの現場に戻っていった。あるものは姑息に、あるものは失敗を取り戻そうとそれぞれの思いを持って人族の蹂躙に向け気持ちを高めていた。


港町オスティアからラニキス王国との国境までは徒歩で2,3日程度の距離である。ニーア達三人は、タカキのレベルアップをかねて周りのモンスターを倒しながらゆっくりと行くことにする。この辺は雑魚モンスターでもセルディス王都周辺よりもレベルが高いモンスターが多かった。

「ふむ、キラータイガー、レベル10か、俺のレベルは1のはずなんだけど勝てるのかな。」

タカキがつぶやく。確かにタカキの不安の通り、普通であればレベル1とレベル10の差は覆しがたい。

そこで、シンイチがタンクとして攻撃をひきつけ、ついでにモンスターの体力も削ってあげる。とどめをタカキが刺し、モンスターを仕留めていく。暫く、キラータイガーの群れを狩り続け、すぐにレベル7まで上げることができた。

「だいぶレベルが上がってきたわね、そろそろ最初から一人でやってみましょうか。レベルアップで力も強くなって、体も動くようになってきているはずだからね。」

「オッケー、オッケー。3レベル差くらいなら何とかしてやるぜ。」

タカキも俄然やる気を出している。

「ねえ、パ、いや、タカキはさっきモンスター名前とレベルを分かっていたの?」

シンイチは気になっていたことを尋ねる。

「ん?ああ、モンスターを見てたら、名前とかステータスが自然と浮かんできたぞ。ニーアとシンイチの名前やステータスもじっと見てたら見えてくるけどそういうもんじゃないのか?」

「そんなわけないじゃん!それって鑑定スキルだね、うわー羨ましい、めったに持っている人がいないレアスキルだよ。Sランク冒険者のスタークさんが持っていたっけ。」

シンイチが羨ましがった。

「へーそうなのか、それはラッキーだな。ようやっと異世界転生チートっぽくなってきたな。だけど、その分、戦闘スキルがお粗末ってのはきついけどなあ。」

「そうね、弱、いや、あまり戦闘が強くない人が鑑定スキル持ちだとばれると、色々と悪用されかねないから、あまり大っぴらにしない方がいいわよ。」

「マジかよ、物騒だな。。なかなか俺の思う異世界転生ものの流れにならないな、、」

タカキのテンションが少し上がったように見えたが、すぐにニーアの冷や水をかけるようなコメントにげんなりとした。

「変なジョブを選択するからでしょ。」

ニーアが自業自得だと言わんばかりにあきれている。

「そうだ、忘れてた、ステータスオープンって言ってみてよ。」

「ああ、おっけー。ステータスオープン。」

「ふむふむ、レベル7で攻撃が、、、。」

タカキがステータスを読み上げていく。

「資質は錬成だけだな、加護は火、氷、雷、風、水、土。」

お、おう。。ニーアは驚きの余り心の中で叫んでいた。ヘキサエレメントマスターとはやりすぎだろー、シンイチの時もそうだが、ちょっと盛り過ぎだろーと思うのであった。パパの言うチートに十分なっているよと教えてあげようかと思ったが、魔法の資質がないようなので属性の加護があっても高火力魔法をバンバン使うということにはならなそうだ。どうにも中途半端な加護である。

タカキに魔法を教えてあげると持ち掛けたが、資質がないことで大成はしないと知ると途端に興味を失ったようだ。それでも6属性持ちは珍しいと何とか持ち上げて、いやいやながらも練習はしてもらった。

一方で、鑑定スキルはレアスキルと知るやお気に入りのようで、いろいろと試している。ニーアも慎一も持っていないスキルということで優越感を感じているようだ。モンスターや人だけでなく、草花や、石などの無機物にも有効で、薬草や鉱石の種類を見分けるのにも役に立つ。ただし、ニーアのような高レベルの冒険者が遮断スキルを使用していると見ることができない。ニーアとしてもタカキにステータスを見せてもよかったのだが、あまりひけらかすものでもないし、(ニーアの強さを知ることによって)守ってもらえると油断されても困るので、そのまま遮断しておくことにした。タカキは、親に隠し事をするとは何事だとか何とか言っていたが、そこはとりあえず聞こえないふりをすることにした。

タカキの資質である錬成は、錬成スキルに寄り素材からものを作り出すことができる。早速試してもらったところ、薬草からポーション、魔力草からマジックポーションを作り出すことができた。まだレベルが低いため、今はこの二種類しか作れないが、錬成スキルのレベルが上がっていけばもっと色々なものが作れるようになるはずだ。ニーアもシンイチも回復魔法は使えるが、MPを節約したい場面も出てきて、そんなときにきっと役に立つと考えられる。とりあえずこまめに錬成させておこうと思うニーアであった。


キラータイガーやハイオーガ、ダークスライムといったモンスターを倒しながら進んでいく。結局、国境の関所まで5日かったが、タカキもLv18まで上げることができた。途中のハイオーガとの一戦は死闘だったが、何とかタカキ一人で倒せるようになった。両手で持つ長剣を武器として使用しているがいまいちしっくり来ていない。ジョブとしての得意武器もなく、自身の資質もないので仕方ないが、今後心配だなと思いながらニーアは眺めていた。それでも慣れてもらうしかないので、ニーアやシンイチとの立ち合い稽古も取り入れようかと画策しているところだった。

魔法についてもニーアとシンイチがそれぞれ使える属性を粘り強く教えてあげたことで、モチベーションが低いながらも一通りの初級魔法は使えるようになった。夕方には国境の関所に到着したが、既に今日は閉めてしまったとのことなので、近くでキャンプを張り明日に備えることにした。

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