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第三十四話 それぞれの役割

「便利そうな魔法だな、闇属性魔法か?」

シンイチの挙動を見ていたダミアンが聞いた。

「はい、一撃の威力が大きかったり、敵の攻撃が短い間隔で長く続くようだと回復が追いつかなくなりますけど、、」

「Sランクモンスター相手に成り立っているなら上等じゃねえか。俺と会話する余裕もあるようだしな。」

「今はニーア達がほとんどの物理攻撃を防いでくれていて、こちらには魔法攻撃がたまに来る程度なので、それが幸いしていますね。」

「そりゃなによりだ。俺としては今の状況だと体力よりもMPの回復があるとうれしいんだがな。」

「なるほど、そういう魔法もあるんですかね、ちょっと頑張って覚えようと思います。」

冗談のつもりだったんだがな、、そう思いながらダミアンは心の中で苦笑する。

「ちなみに、マジックポーションは持っているのでもし必要だったら行ってください。あと、会話する余裕があるのは三人でタイミングを合わせて魔法を放つ必要があるからですね。」

そういってシンイチはいたずらな笑顔を浮かべる。

実際、ダミアンとユータは無詠唱で魔法を放っていたが、ロザーティアは慣れない土魔法ということで詠唱していた(ロザーティアも火属性魔法では今回の特訓で練習し無詠唱を習得している)。

「壮大にして母なる大地よ、その大いなる力から強き意思を持った一撃として、我が道を阻むものを貫かん。アースキャノン!」

詠唱して魔法を撃ち続けているロザーティアにはシンイチとダミアンの会話に入る余裕はなく、二人の会話は聞こえていないようだ。一心不乱に詠唱魔法を繰り返している。3秒もかからず詠唱し魔法を発動しているので、十分速いと言えるのだが、どうしても無詠唱の二人とは時間差が出てしまう。そのため、ロザーティアに合わせる分、二人には余裕ができていた。

「ダミアンさんの魔法は本当に魔力の密度が濃いというか洗練されていますよね。今回、オラキ島に修行に来て、自分ではだいぶ良くなってきたと思っていましたけど、まだまだでした。」

「そうだな、ただ魔法を放つだけなら0.1秒でいけるな。そのあとは魔力を練る時間に使えるってことだから、いかに早く発動までの準備ができるかが大事だな。」

がらにもねえな、と思いながらもダミアンはアドバイスをしてあげる。シンイチはなるほどと感心する。魔法を放つ準備だけしておいて、そのあとに魔力を練る(洗練する)?

そんな段階を分けてできるものだろうか?

自分の場合は最終形の魔法を映像的にイメージしながら、並行して魔力を練り上げている。どちらの構築方法が良いかはすぐには分からない。自分のやり方の方が並行に実施している分だけ効率がよさそうな気もしてきて、単に魔力の練る速度や精度がダミアンの方が高いだけかもしれない。ニーアにも意見を聞いてみたいところである、今度暇なときに試してみようか、とシンイチは考えた。

そんな話をしながらでも、ダミアンは細かく魔法の発動制御をこなしている。三人の中で最も威力があるであろう自分の魔法を出来るだけクラーケンキングの本体に当てるために、タイミングを二人よりコンマ数秒遅らせて放ったり、ロザーティアの魔法で2本目の脚が破壊しきれない場合には、連続で魔法を放ち本体にダメージを与えたりといった具合である(但し、連続で発動の場合の2発目はスピード重視のため、魔力が十分に練られた高威力の魔法とはなっていない。)。シンイチ達はタイミングが多少ずれることがあるなとは感じていたが、ダミアンがそのような制御を狙ってしているとは気づいていなかった。

クラーケンキングの脚が復活するタイミングは2~5秒くらいと一定ではないため、毎回、脚を復活させるのを待っては攻撃という手順を踏んでいる(連続で攻撃して、威力の大きな魔法が復活した脚に阻まれることを防ぐためである。)。

「嬢ちゃん大丈夫か、無理するなよ。」

「はい、まだまだ大丈夫です。今回の修行で成長したので。」

実際、シンイチとロザーティアは十分な休息をとっていたこともあり、体力、MPともに充実していた。

「そうか、Bランク冒険者にしては大したもんだが、まだ序盤だからな、先は長いから少し休みたくなったら言ってくれ。一発の威力は落ちるが、俺がダブルキャストで二人分やるのも全然ありだからな。」

まだ、山嶺でのSランクモンスターとの戦闘の疲労が癒えていないはずなのに、、とロザーティアは心苦しくなる。実際、自分の魔法の威力が十分でないときはダミアンが連続で魔法を使っていて、足を引っ張っていると自覚はしていた。中級のアースキャノンではなく、上級魔法のエンハンスドアースキャノンにするべきだろうか。でも、消費MPも大きくなるし、Lvもまだ1のため発動を失敗するリスクも高くなる(中級魔法アースキャノンはLv5)。シンイチも同じ魔法で確実に脚を破壊できている。詠唱と非詠唱、あとは魔法の練度(Lv)の差があるのかもしれない(実はシンイチのアースキャノンはLv7)。

いやいや、弱気になってはいけない、そう言い聞かせてロザーティアは魔法を撃ち続けていた。

二人の会話を聞きながら、シンイチにはダブルキャスト(並行詠唱)という言葉の響きに捉われ、試してみたいという衝動に駆られるのであった。

ダミアンに引っ張られる形で魔法部隊の攻撃の形が出来上がり、安定してダメージを与えられるようになっていた。


一方、物理サイドでも必死に防衛をしながらも会話がなされている。

「こいつって倒せそうかしら。」

「どうかな、Sランクモンスターだからね。普通であれば攻撃をしつつ隙を伺って逃げるか、向こうからいなくなってもらう、つまりは追い払うってのが相場だね。」

ニーアのつぶやきにスタークが反応する。

「全然、向こうからいなくなってくれる気配はないわね。。」

「しばらくは我慢の時間が続きそうだね、ニーアはともかく、ユータ君も大丈夫かな。」

「は、はい、お二人が多くの脚を引き受けてくれているので、弱音なんて吐けません。この状態ならいつまででも行けます!」

ユータの言葉にスタークが笑顔でうなずく。

「ある程度ダメージを与えないと追い払えないってことなのかしら?それなら私が魔法で攻撃に加わるってのもありかしら?あいつが苦手そうな雷属性魔法は得意だし。。」

「雷属性が使えるのか、、そうだねえ、一瞬ならその布陣もとれるかもしれないけど、その攻撃で奴を追い払えないと、一瞬にしてこちらの負けが確定するだろうね。ニーアが担当している三本の脚を防ぐ手立てがなくなる。」

雷属性も使えると聞いて少し驚いたという表情のスタークだったが、すぐに現実に戻り考えを巡らせた。ニーはさらに提案をしてみた。

「ダミアンとシンイチの二人で何とか防いでもらうとかは?ダミアンは物理攻撃での戦闘もかなりできるでしょ。」

「ああ、そうだね。それでも1本が限度だろう。やはり魔法職だからね。シンイチ君もおそらく1本。いや、二人合わせれば3本くらいは行けるかもしれないな。」

スタークが皮算用を始める。

「いやいや、やっぱり駄目だ。結局ニーアの魔法を本体に当てるためには、防御の二本の脚を倒す火力が必要だから、、ロザーティアちゃんにそれを任せるのは荷が重すぎる。」

「そっか、確かにそうね。かといって、シンイチかダミアンを魔法攻撃側に残したら、物理側の防御が追い付かなくなるってことか。。うーん詰みね。。」

「まあでも、隙を見てここから遠隔攻撃スキルで本体を狙うのは続けてみようか。万全じゃないダミアンを少しでも援護してあげたいからね。」

「スタークさんはこの距離で届きそうなスキルって有ります?私はエアスラッシュしかないんですけど。」

「そうか、、雷系は届かないか、ちょっと期待していたんだが。。。僕の遠距離攻撃スキル、ヘヴィトマホークも射程外なんだよな、、」

「じゃあエンハンスドエアスラッシュしかないですね、さっきの普通のエアスラッシュだと全然効いていないみたいだったし。」

「ようし、それで行ってみようか。とは言え無理に攻撃する必要はないよ。あくまでメインの攻撃は魔法部隊だ。」

「ええ、分かっているわ。スキルを発動した時に少し遅れが出るかもだからその時は二人のフォローお願いね。」

「ニーアさん、分かりました!」

ユータが大きな声で反応し、スタークは笑みを浮かべて小さく頷いた。

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