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第二十五話 進路相談

セージの名前が出て、シンイチは思わず胸が締め付けられるように感じた。

あの夜、熱心に魔法について語ってくれ、自分の魔法の才能をほめてくれたセージがもうこの世にはいないということを改めて思い出させられる。

「その、セージさんのことは何と言っていいか、、お悔やみ申し上げます。」

思わずシンイチの目に涙が浮かびそうになってくる。

「ああ、シンイチさん、ありがとうございます。でも、あまり気にしないでください。って僕が言うのも変な話かもしれませんね。」

ユータが優しい笑顔を浮かべながら言った。

「セージさんも冒険者ですから、こういう不測の事態がおこることは常に想定していたと思います。そのため、常日頃から俺がいなくなったらリーダーはユータだ。と言い続けていたくらいです。そのおかげで特に揉めることなく次のリーダーを決めることができました。」

「そう、なんですか、、でも。。」

まだ気にしてそうなシンイチに対して再び笑顔を浮かべるユータ。

「もちろん、仲間を失ったことはつらいです。正直、すぐに気持ちを切り替えてという訳にはいきません。それでも、僕たちは前を向いて行こうと残ったメンバーで話をしています。そうすることをセージさんやアラタカも望んでいると思います。でも、それにあたって、今後どうしていこうかというところを相談したいと思っています。」

ふむ、明るい口調に反して思ったより深刻な相談だね、とニーアは思わず腕を組んだ。

こういう重い話はあまり特じゃないんだけどなー、さてどうしたものか。全く話を聞かないのもかわいそうだし、とりあえず話だけは聞くことにしようか。

そんなことを考えながらニーアが話をきりだした。

「最初にことわっておくけど、この手の話は最終的には本人たちの気持ち次第となるところが大きいわよ。何かしらのアドバイスはできるかもしれないけれど、それがすべての人にとって必ず正しいとは限らないし。。その前提でよければ話は聞くけど、いいかしら?」

「はい、それはもちろんです。最終判断は自分たちで決めるというところも了解です。」

「オッケー、じゃあ聞きましょう。で、今はどういう話になっているの?」

「実は、パーティで残った三人の中に、アンドレイという斧戦士がいたのですが、今回の件で冒険者を引退するつもりだと言っています。うちのパーティのリーダーだったセージさんとはブレイブファング結成時からの付き合いで、今回のセージさんの死は相当ショックだったようです。その一方で、自分を含めた残りの二人はまだ冒険者を続けたいと思っています。」

「そっか、意見が割れている訳ね。でも辞めようとしている人ってのはそれなりに大きな理由があって引退しようとしているのよね。それを引き留めて冒険者を続けてもらうにはよほどのことがないと厳しいんじゃないかしら?本人も真剣に悩んで引退という選択をしたわけだろうし。。」

辞めようとしている冒険者を無理に引き戻すのは、モチベーションの観点からもニーアとしては反対だった。中途半端な気持ちでやっていると仲間の命を危険にさらすという理由である。過去に勇者パーティに出会う前の話だが、そういう冒険者パーティがいたのを見たことがあった。

「そうですね、僕たちも辞めたいという人間を無理やり引き留めようとは思っていません。ただ、僕とロザーティア、残った二人でやっていけるだろうかというところは不安に思っています。そこでニーアさん、シンイチさんも二人パーティなのでどんなものか伺いたかったのです。」

聞くところによると、冒険者を続けたいと言っている二人、ユータとロザーティアはブレイブファングの中では若手で、今回ベテランの3人がいなくなるという状況のようだ。加えて、二人は剣士と魔法使いで、回復魔法が使えないため回復手段がポーションなどのアイテムに限られる。マジック収納Boxも持っていないため、持てる個数も限られるとのことだった。

話を聞いてニーアはしばらく黙って考え、そして諭すように話し始めた。

「状況は理解したわ。私たちの状況と比較するのはなかなか難しいかもしれないわね。私達は二人とも回復魔法が使えるとか前提が違うからね。」

ユータは真剣なまなざしでうなずいている。それに加えてニーアはチート級の強さの勇者だしなあと思いながらシンイチは隣で聞いていた。

「その差を考慮した上でのアドバイスとなるのだけど、やっぱり仲間を募集したらどうかしら。回復魔法が使える仲間がいるといないとではかなり戦闘の難易度は変わると思うのよね。そりゃ高レベルの人はなかなか来ないかもしれないけど、仮に自分達よりも低レベルで、レベル差があったとしても、そこは将来性にかけるという感じで一緒に戦って成長させていくつもりでね。」

実際の自分の状況に置き換えたようなコメントをしてしまったが、幸い、シンイチは何も気に障らなかったようだ。

「あとは、新メンバーが加入するまでは暫く二人で戦わなくちゃいけない期間ができると思うのだけど、そこは決して無理をしないことね。今まで倒せてたレベルのモンスターよりも一回り弱めのクエストを中心に消化していくのがいいかもね。マジック収納Boxが手に入れば、回復をたくさん持てるから少しは無理できるかもしれないけど。」

「ありがとうございます、とても勉強になります。同じレベルの人を仲間にしたいと思っていましたが、Bランクくらいになるとソロでやっている方は中々いないというのもあって諦めていましたが、少し下の階級の冒険者なら仲間になってくれる可能性が高いというのはその通りかもしれませんね。」

ユータもすっきりした顔をして同意する。

「大事なのは同じ目標を持っている人を仲間にすることかなって思うわね。例えばダンジョンの50階が目標だとして、仲間になる人が30階目標だったら、30階~50階は気持ちが乗らなくなってしまうし、30階層よりもっと高い目標だったらその人が不完全燃焼で終わってしまうことになる。」

「分かりました、意識の面は逆に低かったり高すぎてもよくなくて同じ志しが持てることが大事なのですね。時間はかかるかもしれませんが、まずは二人で少し難易度を落としたクエストを達成しつつ、仲間を探します。」

「うん、うん、その意気で頑張って! 」

正直、今の二人パーティでやっていくのはジョブのバランスとしても悪く、かなり厳しい道のりだろうとニーアは思っている。しかし、ここでやめたほうが良いと進言して一時的には引退したとしても、おそらくずっとどこかでくすぶり続けてしまうだろう。それなら本人の気のすむまでやらせてみたほうがいいというのがニーアの考えだった。

そのあとも少人数パーティでの討伐モンスターの選び方、戦闘での立ち回り方などいろいろなノウハウを伝授した。自分たち自身が強くなれば少人数パーティでも決してやっていけないことはない。また、上級職になることができれば違った道が開けるかもしれない。ユータとロザーティアが何かしらの加護や資質持ちだった場合、レベルが上がることによりその才能が開花し飛躍的な成長や能力アップをすることも考えられる。しかし、その位置に登り詰めるまでが非常に大変で、不断の努力が必要とされるのである。気が短い人が多い冒険者の中において、ユータはどちらかと言えば落ち着いているようだ。コツコツやっていくことを苦としない性格のようなのでその点は心配いらないだろう。


今後の方向性が固まり、そろそろお開きという空気になってきたとき、ニーアは熱心に話を聞くユータを見てせっかく自分たちを頼ってくれたということもあり、もう少し何か手伝いをしてあげたくなった。そこで一つ提案をしてみることにした。

「ねえ、暫くの間、修行というか特訓というか一緒にしてみない?うちのシンイチももう一度鍛えたいと思っているのよね。おそらく、1か月くらいの期間限定になってしまうけど。それでも良ければなんだけど。」

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