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第二十三話 任務完了

「皆さん、ありがとうございました。荷物を無事に運ぶことができました。これも全て、冒険者の皆さんが献身的な護衛をしてくれたおかげです。ただ、今回は魔族の襲撃もあり被害が出てしまったことは非常に残念です、亡くなった冒険者の方々のご冥福をお祈りいたします。。」

オムニが謝辞と弔辞を述べる。冒険者たちは黙って聞いていた。何人かの冒険者は仲間を失ったことを思い出し、うつむいていた。

「私の方から冒険者ギルドに任務完了の報告をしますので、そのあとでギルドから報酬をお受け取り下さい。またいつか、皆さんと旅をさせてもらえると幸いです。」

その挨拶が契機となりそのまま解散となった。

全体向けの挨拶の後もオムニが個別に各冒険者パーティにお礼を言って回っている。こういうところがオムニの人望の厚さを支えるのだろう。ライジングサンの次ですぐにニーアたちの番になった。

「ニーアさん、シンイチさん、今回の旅はありがとうございました。お二人がいなかったらどうなっていたことか。きっと被害もこんなものでは済まなかったでしょう。」

「いえ、そんなことは。。でもそういっていただけるということはお役に立てたようで何よりです。色々ありすぎて、、手放しで任務完了を喜べるような状況ではないですが、、、」

「そうですね、、早く魔族が襲ってくることのないような世界になるとよいのですが。。」

「そこは私たちも同じ気持ちです。冒険者としてそのような世界の実現を目指して戦っていきたいと思っています。」

ニーアが力強く言った。

「それは素晴らしいですな、期待しています。」

では、と言って去っていく。シンイチはオムニとニーアの会話を聞いてまた勇者とか英雄になることを目指しているのかと思ったが、黙っている。何か言いたそうなシンイチに何よ?とニーアが聞くが黙って首を振った。

そんなやりとりをしていると、ライジングサンのメンバーが近づいてきた。

「ニーア、シンイチ、じゃあまたな。どこかで一緒に戦おうぜ。くれぐれも味方同士でな。」

ツォーガがそう言って声をかけてくれる。

「あ、はい、ありがとうございました。またどこかで一緒になった時はよろしくお願いします。ところで、ツォーガさん達はこの後どうするんですか?」

シンイチが聞いた。

「俺たちは、北西に向かってヘルゲスに行くつもりだ。帝国との国境に面した都市だな。特に何かの依頼って訳じゃないんだけどな。お前たちは何か予定あるのか?」

「僕たちは、、、」

シンイチは迷うような表情でニーアの方を向く。

「私たちは特に予定はないから暫くここにいるつもりよ。」

「おお、そうなのか。俺たちもすぐに出発って訳じゃないから冒険者ギルドとかで会うかもな。」

そういって手を振り去っていった。

もう一つのAランク冒険者パーティのビースツガーディアンのメンバーは少し離れたところで他の冒険者と話していたが、気付いたらいなくなっていた。リーダーのレオンの話っぷりでは見直してくれたように感じたが、結局、彼らとの溝は埋まりきらなかったかと少し残念な気もしたが、Aランク冒険者パーティのライジングサンとは良い関係を築けたので、これは収穫と言えるだろう。今後何かあった時にお互いに協力し合えるかもしれない。

他のBランク冒険者達からもお礼を言われ、それらに順に応対していく。

「なんか、こういうのっていいね。最初は知らない人ばっかりだったのに、一つの目標に向かって一定期間苦楽を共にするっていうの? 一体感が出て仲間意識ができた感じ。もちろんいいことばかりじゃなかったけど。。」

「そうね。」

辛い経験もあったがシンイチがそれを乗り越えようとしているのが見て取れる。弟の成長にとっては良かったのかもしれない。

他の冒険者とのあいさつも終わり自分たちも行こうとしたとき、Bランク冒険者パーティ「ブレイブファング」のサブリーダーであるユータから声をかけられた。

「ニーアさん、シンイチさん。大変申し訳ないのですが、明日、冒険者ギルドに顔出せないですか?」

ブレイブファングは今回の任務で犠牲者が出た冒険者パーティの一つである。

「ええ、問題ないわ。どうせ今回の護衛任務の報酬を受け取りに行こうと思っていたから。」

ニーアとシンイチの二人は一度お互い顔を見合わせてから神妙な面持ちで答えた。

「それでは明日お待ちして言います。」

「多分、昼過ぎになっちゃうと思うから、そのつもりでお願いね。」

「はい、昼過ぎですね、よろしくお願いします。」

そうして、今度こそ誰もいなくなって二人が残った時、ニーアとシンイチは達成感と喪失感が同居する奇妙な感情を覚える。

「終わったんだね。」

「ええ、一応ね。結構被害も出ちゃったから、ミッションコンプリートと言えるかは微妙なところかもしれないけど。。」

「ユータさん、何の用だろう。」

「さあ、明日になればわかるんじゃない、今から気にしてもしょうがないわ。」

「それはそうなんだけど。。。」

多くの犠牲が出たことを再び思い出し口数少なく歩き始めた。ユータのパーティからも犠牲者が出ている事実もあり、余計に気になってしまう。

そのまま宿屋に入り、簡単な夕食を食べる。

「結構な長旅だったけど、よく頑張ったわね。初めての護衛任務にしちゃ上出来よ。」

「そうかなあ、でもやっぱり荷物だけじゃなく、みんなが無事だとよかったね。」

「そうね、でも冒険者ってそういう覚悟が必要な職業だから。。。」

「じゃあ僕たちも?」

シンイチの言葉にはっとするニーア。

「何言っているの!あなたのことは私が命に代えても守るわよ。」

「そんなのは嫌だ!アイが死んで僕が生き残るなんて、、」

シンイチは思わず姉の本名で読んでしまう。慌てて周りを振り返るが特に気にしている者はいない。

そのあとも護衛任務の反省会をしつつしんみりとした食事となった。夕食後、任務完了の開放感からかすぐに深い眠りについたのだった。


魔族領ビスヘイム。五大魔貴族と言われる魔王亡き後の魔族トップ5の一人、獣魔貴族ベライグが収める領地である。

デュークという階級をトップとしてそれぞれの種族ごとに集まっており、人自らの支配地域を領地として居を構えている。

そのビスヘイムにニーア達に返り討ちに遭い敗走したアドベアニスがボロボロになりながら帰還してきた。

「おやおや、これはアドベアニスさん。随分とひどい有様ですな。」

そう言って話しかけてきたのはアドベアニスと同じ三獣士長の一人、ティグロムだった。

「うるせーよ、ちょっとしたハプニングだ。俺が生きていたらまた挽回できるさ。」

「それにしてもあれだけの軍勢を率いて、それを全滅させるなんて、ベライグ様が聞いたらなんておっしゃることか。」

「ベライグ様には言うな。余計なことを言うと、たとえお前でも容赦はせんぞ。すぐに回復してリベンジしてやるさ。」

「はいはい、分かりましたよ。しかし、このままだといずれはばれてしまうのでは。」

「アドベアニス戻ったか、ベライグ様がお呼びだぞ。」

そう言って通路から現れたのは三獣士長の最後の一人エルファンスだった。巨大な体格をしているが一見すると普通の人間に見えなくもない。しかし、その腕力、体力は人間のそれとは次元が異なり、まさに魔族といえるものだった。アドベアニスのように外見が獣型の魔族と、エルファンスのような人型の魔族がおり、それらの外見の違いもあり魔族同士でも互いにけん制し合っているのであった。

「ふふ、早速ばれてしまったのでは。」

「くっ、まさか。。すぐ行くとしよう。」

アドベアニスはそう言って去っていった。

「どう思う、アドベアニスが普通の人間に負けるなんてあまり考えられないことだが。」

エルファンスが尋ねた。

「まあ、SランクとかSSランク冒険者とやりあったのではないのですか。そのクラスだと、束になってこられると、さすがに我々でもきついかと。」

「SSランク冒険者か。魔王様が討伐されてからまだ数か月程度しか経っていないが、奴らはどんどんと力をつけていくな、厄介な奴らだ。」

「全くですね、しかしそれは私たち魔族にとっても同じこと。そのために、アドベアニスはわざわざ人間を狩りに行っているのですから。まあ、負けてしまっては元も子もないのですけどね。デューククラスの方々は既に先代魔王様を超える力を持つと言われています。いずれデューククラスの5人の中から次期魔王が誕生していくのでしょう。もちろんそれは我らが主人、ベライグ様と信じていますがね。」

「確かに、魔族も含め全体的に強くなっているのはその通りだな。アドベアニスが戻ったら次は自分の番と思っていたが、想定外の敗北で予定が狂うかもしれんな。」

「ええ、わざわざ勇者がいる国を攻めていましたが、もっと近場の別の国ってことになるかもしれませんね。」

「ああ、他の魔貴族の配下魔族と会わないようにとあえて勇者がいる国を攻めていたがそれが裏目に出たのかもしれんな。もしかすると、アドベアニスは勇者にやられたのかもしれんぞ。」

「先代魔王様を倒した勇者パーティがAランクだったでしょうか、魔王様を倒した後の彼らの活動はあまり聞きませんね。まあ、これだけ力をつけた今の我々であれば、その勇者にも負けないようなきもしますがね。」

「ティグロム、お前、勇者パーティと戦ったことないからわからないかもしれんな。俺は一度だけある。俺自身、当時よりもかなり強くなっているが、いまだに完全に勝てるとはいいがたいな。1対1でならまだしも、やつらパーティでの戦いが基本だからな、お互いの弱点をうまく補いやがる。そこが俺たち魔族との大きな差なのだと思っているよ。」

「ふん、数をそろえてなんてのは弱い人間族がらしい戦法ですね。その方法で先ほどアドベアニスさんが敗北して帰ってきましたし、私たち魔族は、やはり個々の強さを極めていくべきでしょう。。」

「それが正しいと分かればいいのだがな。。」


呼び出しを受けたアドベアニスはビーストデュークのベライグとの謁見をしていた。

「顔を上げろ、アドベアニス。」

「はっ。」

片膝をつきながら顔を上げる。

「なぜ戻ってきた? 戦果は挙がったのか?」

「それが、人間族の強い冒険者が複数おりまして、そいつらにやられました。おそらくSランク冒険者かと。」

アドベアニスは隠すことはできないと悟り報告する。嘘は言っていないが、街を一つ落とす予定で、途中に見かけた旅の一行で経験値稼ぎしようとして返り討ちにあったということまでは伝えることはできなかった

「なるほど、それで負けたまま帰ってきたと。お前には少々失望したぞ。」

「もう一度チャンスをください、次こそは必ず。」

「まずは身体を回復してもらおう、その間にティグロムにいってもらう。」

「待って下さい、数日いただければすぐに回復します。なにとぞわたくしに。」

「俺に命令するのか。アドベアニスよ、勘違いするなよ、お前を赦すのはほんの気まぐれにすぎない。意見を言える立場ではないことを理解しているのか。」

「し、失礼しました!承知しました、ティグロムに引き継ぎます。」

慌てて頭を下げる。ティグロムに譲る形になるのは悔しいが、結果を出せていないので反論はできない。すぐに抹殺されなかっただけ良い方だと自分を言い聞かせた。

「もしもSランク冒険者が厄介ならば、こちらも複数の駒を使って叩き潰せとティグロムに伝えろ。そしてさっさと人族の国を支配しろ。あくまで目標はそこだ。小物の相手ばかりしていてはいかんぞ。もちろん、国攻めに向けての準備という位置付けであれば話は別だがな。」

「は、はい!必ずや国を落として見せます。」

そうは言ったものの、あの全身鎧の冒険者一人にやられているようではそんな簡単ではないと理解していた。

「差し出がましいですが、一つお願いをさせていただけないでしょうか。」

「なんだ、今のお前が願いを言える立場だと思っているのか。」

「ティグロムが戻るまでの間、周辺で冒険者狩りをさせていただきたけないでしょうか。今回の反省で自分自身さらに強くなる必要があると感じております。」

「まあ、いいだろう。せいぜい励むがよい。」

「はっ、ありがとうございます。」

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