第二十一 弔い
Cランク冒険者パーティ10名(2隊全滅)、Bランク冒険者6名(4組の冒険者パーティで被害有)、計16名が犠牲となった。今回の参加冒険者のうち半数近い人数に相当する。
Aランク冒険者パーティーはけが人はいるもののみな無事だったが、2つのCランク冒険者パーティは全滅、Bランク冒険者パーティも全員無事だったのは1パーティだけであった。
「そんな、さっきまでなにも問題なさそうだったのに。。」
シンイチは最初、何かの冗談だと思い、信じることができなかった。
「ああ、確かにお前がいたときはうまく回っていた。ニーアの方を助けに行ってからも、しばらくの間はみな必死に粘っていたんだ。だが、、、」
レオンが重い口調ながら説明した。シンイチは呆然と聞き入っている。
大型のBランクモンスターが急に方向を変えてCランク冒険者を襲い、それまで戦っていたBランク冒険者が対応できず、最初の被害が出てしまう。その穴を埋めるべく隊形が崩れそこを付け込まれ次々と被害が出てしまったとのことだった。ライジングサン、ビースツガーディアンの配置と離れたところで発生したため、かつ彼らも中級魔族やその他のBランクモンスターとの戦闘中でなかなか助けにいく余力がなく対応が遅れ被害が拡大した形となった。
16人の並んだ遺体の前にBランク冒険者パーティのメンバが座り込んでいる、その光景を見てシンイチも涙がこぼれた。今回の護衛任務で仲良くなったアキーヤ、タケシン、魔法についていろいろとアドバイスをしてくれたセージも犠牲者の中に含まれていた。
「僕が、もっと強くて、守ってあげれていれば、、」
彼にとっては初めての身近な人の死の経験。身近とは言っても、数日一緒に旅をしただけで、休憩の時、夕食の時、夕食後の宴会の時、などに談笑したことがある程度の関係なのかもしれない。それでも、シンイチは素直に感情移入していた。
「セージさん、もっと色々と魔法の話を聞きたかった。アキーヤもタケシンも、仲良くなれたばかりだったのに。」
シンイチは声を上げて泣いた。
シンイチの前には、アキーヤやタケシンのリーダーであるカイヅや、セージと同じパーティのユータが目元を抑えうなだれている。ユータの隣には同じパーティの女性メンバーが寄り添っている。犠牲者が出た他のパーティメンバーは、同様に悲しむ者もいたが、多くは普通の態度を装い気丈にふるまっていた。
そんな姿を見て、シンイチにとってはこの世界は厳しすぎるかもしれないとニーアは思った。何か声をかけてあげようとして近づこうとしたその時、ふと自分とシンイチの死の受け入れ方の差に気づきがくぜんとしてしまった。足が止まり、1秒、2秒と考える。そして、私の心は壊れてしまっているのかもしれないと感じた。先の魔王討伐の戦いで多くの死を見すぎたせいか、涙が出てこないどころか悲しいという感情もわかなかった。
その時、ツォーガがシンイチの背中を軽くたたきながら声をかけた。
「冒険者ってのは、常に死と隣り合わせの職業だ。あいつらだってそこは覚悟の上さ。お前が気に病むことはない。」
「でも、僕があの場を離れなければみんな助かったんじゃ、、」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。お前が助けに行かなかったらニーアが無事では済まなかったかもしれない、そうだろう。自分の取った行動を責める必要はない。必ず誰かの助けにはなっている。」
ニーアがシンイチの近くに寄り添い、肩に手を当てて頷いた。シンイチはようやく、涙をぬぐいながら黙って頷いた。
「けっ、ガキがうぬぼれるんじゃねえよ。低級ランクの冒険者がひとりいたところで戦況の大きな流れは変えられねえよ。」
タイガが相変わらずイラついた様子で言葉を吐き捨て、その場から離れていった。
カイヅが黙って立ち上がり、シンイチの前に来た。
「俺たちのパーティメンバーのために涙を流してくれてありがとう。君は冒険者としては変わったやつだな。ツォーガさんの言う通り君が気に病むことじゃない。」
そう言って、くるりと向きを変え生き残ったパーティメンバを鼓舞し始めた。いつまでもしんみりしている場合じゃないとシンイチに見せつけるかのようであった。
そんな姿を見て、シンイチの心は私が守らなくてはいけない、ニーアはそう固く誓い、決意を新たにしたのだった。
「こんな状況になったのは初めてだもんね、辛いわよね。慣れる必要なんてないわ、犠牲が出ないようもっと強くなりましょう。そしてみんなを救ってあげるの。いいわね。」
優しく声をかけて、シンイチの頭をぐいと抱える。
「うん、そうだね。僕は何も分かっていなかったみたい。ゲームみたいな世界で強くなっていく、楽しいってことしか思っていなかったよ。でも現実にはこうやって犠牲が出てしまうんだね。さっきの、上級魔族もニーアが正しくて、やっぱり見逃すべきじゃなかったかもしれない。」
再び、目に涙が浮かぶ。
「シンイチ、いいのよ。あなたのその優しさはこの世界の救いになるかもしれない、忘れないように大切にして。それに過ぎたことは、後悔しないの。もしもまた目の前にあいつが現れて、同じようなことをする場合はその時はしっかり仕留めましょう。」
シンイチはニーアに包まれ黙って頷いた。
レオンとタイガはビースツガーディアンのメンバーがいるところに戻った。
「珍しいな、お前があんなことを言うなんて。」
戻るなりレオンが声をかける。
「別に、、、めそめそしているやつを見るのが嫌なだけだ。」
「ふふ、そうだな、お前らしい。ところで、シンイチが残っていたとしても戦況を変えられないってのは本心か?」
「さあな、ただ、Cランクパーティのやつらがあんな無様な形で崩されることはなかったかもな。」
「ああ、俺はそう思っているよ、少なくとももっと早く彼がフォローに入っていれば被害は最小限に抑えられていたはずだ。そういう意味では低ランク冒険者とはいえ、すでに戦況を変えうる存在だったともいえる。」
「だが、それを言ってどうなる、あいつに責任を負わせる意味はないだろうが。あのガキ、シンイチ、はきっとさらに強くなる。そんないい素材が、くだらない感傷に流されて成長が止まってしまうのはつまらねえな、って思っただけさ。対魔族を考えたときに、強い奴は少しでも多い方がいいからな。」
「その通りだな、お前なりのフォローってことだな、ほんと珍しい光景だ。」
レオンがまた微笑みを浮かべた。
「タイガさんは口は悪いですけど、本当は優しい人だと思います。」
「うるせーよ、ラビリ。余計なこと言ってんじゃねえ。」
ラビリがびくっとしてジライヤの陰に隠れる。ジライヤはラビリに同意だと言わんばかりに頷き、レオンがそうだなと相づちを打った。




