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第十九話 局地戦の攻防

久しぶりの感覚だ、少し力を籠めるだけでいつもの何倍もの力が出せることが実感できる。その一方で全身からエネルギーを吸い取られていくような感覚。

ニーアは一気に距離を詰め反撃に出る。先ほどの苦戦が嘘のように相手の攻撃がスローに感じる。敵が一撃振り下ろして来るうちに三回攻撃を入れた。そのままラッシュをお見舞いする、5発、10発と連続攻撃が入り、アドベアニスはそのスピードについて行けず防御が間に合わない。スキル「マイティ・ストレングス」により攻撃力が大幅に上がっていることにより、魔法剣スキルだけでなく、通常の斬撃でもダメージを与えることができる。一気に相手の体力を削り、その巨体を吹き飛ばした。

「ぐはっ、なんだこの攻撃の速さと重さは、ありえん!」

上体を起こしながらアドベアニスが叫んだ。まだ30秒も経っていない。このペースなら問題なさそうだ。

「今までずいぶんと狭い世界で生きてきたみたいね。この程度で、おしまいかしら。」

「くそっ、くそがっ!」

アドベアニスが地面を殴り再び立ち上がる。そして距離を詰めて攻撃を仕掛けてくる。

右手の爪を振り下ろしての攻撃、その前に左手で何かを投げつけてきた。先ほど立ち上がった際に土をつかんでいたようで、目つぶしのつもりのようだ。ニーアは何の問題もなく瞬時に躱す。右手での攻撃もしゃがみながら移動しかわしたところに左手は魔法を発動しようとしていた。先ほどの土での目つぶしはこれを隠すためだったようだ。魔法が発動する前にアドベアニスの左腕を切り落とした。

「ぐおぁ!」

腕を斬られた痛みに苦しみながらもニーアに近づき、またしても体毛を針のように飛ばした。ニーアはすぐさまバックステップで間合いを取り魔法剣技スキルトルネードスラッシュを放つ、スキルにより発生した竜巻で針のような体毛を全て吹き飛ばした。

「ば、馬鹿な。」

アドベアニスは驚きを隠せない、攻撃力、魔力ともに数倍に上がっていることからトルネードスラッシュの威力も先ほどとは段違いになっている。

ニーア自身の動きが大幅に強化されているからなせることで、スキルで能力強化される前のままであれば針を放たれた瞬間に下がって間を取ることすらできなかった。

アドベアニスはすでに普通に戦っても勝てないことを本能的に悟っていた。その顔には先ほどまでの余裕はすでに消えていた。

「58秒か、思ったより早かったわね。」


ニーアがアドベアニスを圧倒した時からさかのぼること数十分前、シンイチは、ニーアに言われた通り他の冒険者パーティの手助けをしていた。ヒットアンドアウェイで槍術・体術で攻撃しては離れ、すかさず魔法を打ち込んでの攻撃を繰り返し、次々とパーティを移りわたっていく。

「大丈夫ですか。」

後衛の魔導士に襲い掛かろうとしているオーガを横から蹴り飛ばして声をかけた。

「は、はい。ありがとうございます!」

体勢を立て直してきたオーガに3段突きから、「ドラゴンフライショット」をお見舞いする。現実世界で虫取りをしてレベルアップしたときに覚えた新槍技スキルである。鋭い一突きから始まる連撃技で突きと斬撃を自由に組み合わせることができ、突きの攻撃が1.5倍、斬撃の威力が2倍になるという技である。最大で4回の攻撃を組み合わせることができる。シンイチは槍の斬撃は得意ではないため、突き主体での構成としているが、攻撃力だけを考えるのであれば本当は切りつけたほうが良いのだろう。

「シンイチ、ナイス!そいつをそのまま抑えていてくれ。」

そんな声が聞こえた次の瞬間、モンスタの死角からユータがとどめを刺していた。

「ありがとうな、俺のパーティの仲間を救ってくれて。」

「ううん、こちらこそ倒すの手伝ってくれてありがとう!」

自分だけでも倒せたが、まあいいだろう。ユータも元気そうで何よりだ。

「まだ、かなりの数がいそうだけどこの調子で頑張っていくぜ。シンイチも無理せずにな、絶対死ぬなよ。」

黙って頷き、お互い再び戦闘に戻る。

どの冒険者パーティも経験が豊富だが、朝からモンスター討伐続きだったことも影響し疲労がたまっており、敵の数が多く劣勢に回ることが多くなっている。

シンイチは広範囲炎魔法のファイアーストームで周辺のBランクモンスターを一掃する。(倒しきれなかったモンスターは他の冒険者がとどめを刺してくれた)

「サンキュー、シンイチ!」

遠くの方でアキーヤがの声が聞こえた。そちらをに目をやると、その隣でタケシンも黙ってぺこりと頭を下げている。軽く手を振ってこたえるシンイチ。

「よし、こんなもんかな。ではまたあとで。」

少し落ち着きを取り戻した戦況を眺めながら去っていく。


隣では、Aランク冒険者パーティライジングサンが中級魔族と数体のBランクモンスターと戦闘を繰り広げていた。はた目から見た感じでは、優勢を保っており問題はなさそうだ、パーティ内の5人の連携もうまく取れている。中級魔族相手でも後れを取らない点はさすがAランク冒険者パーティといったところか。助けに入ったことで変に流れが変わってもいけないと判断し、シンイチはライジングサンを素通りすることにして次へと向かった。

一方、もう一組のAランク冒険者、ビースツガーディアンは苦戦していた。もともと前衛の三人が後衛のヒーラー兼バフ役の支援を受けて戦うスタイルだが、後衛のヒーラーが魔力切れを起こしており、バフなしで回復も遅れがちという状況での戦いを強いられている。中級魔族に加えて、大型モンスター、アークリザードとアークオーガが連携しており、劣勢を強いられている。本来、バラバラでしか攻撃してこないモンスターも、魔族にかかれば即席の魔物パーティと早変わりし、とても厄介である。後衛魔法使いの代わりにシンイチがバフをかけられるとよいのだが、補助魔法は覚えていなかった。もっと補助魔法を練習しておけばよかったと思いながら、サポートに入った。

「これ飲んで少しでもMPを回復をしてください。」

回復役のヒーラにマジックポーションを手渡して、前衛に加わる。

「あ、あの、ありがとう、、」

ヒーラーのラビリは急に現れた若い冒険者に戸惑いながらも、もらった贈り物を飲み干した。先ほどまでの頭痛が治まりMPの回復を実感できた。ここまで効くのはかなり質の良いマジックポーションだろう。ラビリは無意識にその若き冒険者を目で追った、ちょうど中級魔族と連携して攻撃しようとしていたアークリザードを蹴り飛ばし前衛に加わろうとしているところだ。

「お前か、悪いな助かる。」

レインが声をかけてきた。

「いえいえ、これが僕の役目ですから。」

そう言いながらアークリザードの巨大なしっぽでの反撃を盾で防ぐ。さすがは大型のBランクモンスターだけあって、攻撃が重い、偉そうなことを言いながら吹き飛ばされてしまう。

「けっ、お前の助けなんてなくても余裕だけどな。足引っ張ってんじゃねえぞ。」

タイガが毒づきながらシンイチに対して追撃を仕掛けてきたアークリザードの攻撃を防ぎ、カウンターを入れる。

「そいつを暫く足止めしておけ、雑魚のお前でもそれくらいはできるだろ。」

シンイチが立ち上がったのを確認し、そう言い残してから再びアークオーガとの格闘戦に戻った。


シンイチが加わることで戦況が一気にこちらに傾いてきた。シンイチが大型モンスター1体を引き受けたことで、今までレオン一人で中級魔族の相手をしていたのが、ジライヤも加わることができるようになり、数的優位を作ることができた。シンイチは最初のアークリザードの一撃で吹き飛ばされたものの、それ以降は旨くモンスターの力を逃がしながら攻撃を凌げている、最初は防戦一方だったのが、徐々に攻撃を繰り出せるようになってきた。

「ずいぶん余裕があるな、ほんと成長が早いぜ。若者は羨ましい。」

レオンとそう言いながら中級魔族を切りつけた。その攻撃をかわした隙を見逃さずジライヤが追撃を入れる。中級魔族の右肩に深く攻撃が入る、魔族の顔つきが変わった。

その横でシンイチはアークリザードに二段突きでのフェイントから槍技ヴォールトムーンサルトで頭部へダメージを与えつつ、距離を取った。

「そんなことないです、いっぱい、いっぱいですよ。それよりもお二人もナイスコンビネーションですね。」

「へへっ、ありがとよ。」

ジライヤが応え、レオンに笑みがこぼれた。

「人間風情が生意気な!」

劣勢になった中級魔族が、アークオークの陰に隠れ一瞬の隙を作り、タイガに向かって闇魔法を放ってきた。

「危ない!」

とっさにシンイチが間に入って盾を構える。

この盾なら魔法も防げるはずと思っての判断だった。

しかし、魔法の威力が強く、全てを防ぎきることができなかった。闇魔法の何割かはシンイチに直撃し、黒い霧に包まれ身体から力を吸い取られるような感覚に陥った。今まで受けたことのない魔法だ。安易に受けようとするべきじゃなかったなと反省しながら何とか魔法から逃れようと試みた。

「ちっ!雑魚の癖に余計なことしやがって。」

タイガが悪態をつきながらアークオークを掌底で吹き飛ばす。そのまま追いかけて追撃を食らわし、一瞬のうちに粉砕してしまった。シンイチはタイガのパワーとスピードが急に上がったように感じた。怒りをパワーに変えるタイプなのだろうか。

「大丈夫か!」

リーダのレオンが、アイススラッシュを繰り出し、中級魔族の魔法をキャンセルしてくれた。幸い、シンイチもダメージはそれほど深くなく、疲労感を覚えるもすぐに立ち上がることはできた。

「魔法は魔力が付与された盾で受けることもできるが、魔法をぶつけて相殺するほうがより安全だぞ。」

なるほど、さすがは熟練冒険者、勉強になる。

「もちろん相手の魔法の威力が大きいときは押し切られるけどな。その時はさらに盾で防御だ。」

「ありがとうございます、勉強になります。」

「ふっふっふ、私の闇魔法ダークドレインを受けて無事とはずいぶんと丈夫な奴だな。しかし、おかげでだいぶ回復させてもらったぞ。」

中級魔族が不敵に笑って言った。なるほど、あれが闇属性の魔法か。名前の通り相手の体力を吸い取る魔法のようだ。外傷はないが、身体が全体的にだるくそのまま倒れこみたい気分だ。

「すみません、助けに入るつもりが足を引っ張ってしまって。」

「全くだ。自分の心配をしてろ。余計なおせっかいは早死にするぜ。」

「いやいや、そんなことはないぜ。タイガをかばってくれたんだろ。」

レオンがフォローする。

「多分、魔法耐性の強い君だからその程度のダメージで済んでいるのだろう。普通のやつならあれを食らっていたらまともに動けなくなっているさ。」

「ヒール!」

その時、誰かがシンイチにヒールをかけた、体が軽くなる。

「大丈夫ですか。」

振り返ると、先ほどマジックポーションを渡したヒーラーだ。情けは人の為ならずということわざが身に染みる瞬間だ。

「ありがとうございます!」

シンイチは礼を言い再び敵に対峙する。HPは回復したが、MPは回復していない。マジックポーションを使えばすぐに回復できるが、他のパーティでも魔法職の人がMP切れを起こすかもしれない。ここで減らすのは得策ではない、と考え温存しておくことにした。自分が他の人よりも魔力の自然治癒力が高いため、少し休めばMPも回復するだろうという目算である。槍技と体術を駆使してアークリザードの戦闘を続けることにした。

タイガがアークオークを倒したことにより、レオンとタイガが中級魔族の相手をし、ジライヤが手助けをしてくれる陣形となった。主武器が槍でシンイチと同じということもあり、共闘しやすかった。模擬戦で、一度手合わせをしてお互いの動きを分かっていることも有ったかもしれない。協力して様々な方向から突き技を繰り出しアークオーガを吹き飛ばした。

「サンキュー、あとは任せてくれ。」

ジライヤが言った。

「俺たちはもう大丈夫だ、ラビリのMPも回復出来て立て直すことができた。シンイチだったか、感謝する。」

「ふん、さっさと失せろ。」

残りは中級魔族のみとなり、レオンとタイガも同調した。

「はい、では他のパーティの手助けに行きます。皆さんもお気をつけて!」

まだ油断はできないが、レオンの言う通り後衛の魔法使いもMPを回復して機能しており、体勢を立て直すことができた。残りは中級魔族一人なのでおそらく大丈夫だろう。すぐさま次のBランク冒険者パーティの救援に向かった。


そのような形で何度か周回して各パーティの手助けをする。Bランク冒険者パーティは、どこもかしこも苦戦しており、シンイチが加わることで一時的に戦況は改善するものの、増援モンスターが続くため、他パーティを見に行っている間にすぐにまた劣勢に追い詰められてしまう。中心にいるオムニ商会の人たちを護るためには、この陣形のどこであっても崩させるわけにはいかなかった。物理攻撃主体で周回して手助けをしていたため先ほど、消費したMPもだいぶ回復することができた。もう一度ファイアーストームを放ち、広範囲で敵を殲滅する。

「ふう、これで少し落ち着くかな。」

Bランク冒険者パーティの皆に一息つく時間を作ることができたようだ。

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