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第十八話 襲撃(2)

一歩ずつ歩を進めニーアは上級魔族の前に出て行く。自分が相手をするといったものの、歩いている間もまだ考えがまとまっていなかった。

あの咆哮でみんながまたスタンさせられるのはやっかいだ、上級魔族の相手をしながら全体に状態異常回復魔法を何度もかけている余裕はなさそうだ。まずは引き離さないといけないだろう。孤立することで他の人からの援護は受けられなくなるが、全体最適の観点ではそれがベストだと考えた。そのあとは、 覚悟を決めアドベアニスの前に立ち顔を上げた。

「作戦は決まったか。まあ、何をしようと無駄だけどな。」

余裕を見せて待っていてくれたようだ、アドベアニスと呼ばれていた魔族が言った。

「ストームキャノン!」

ニーアはそれを無視して、上級風属性魔法を唱える。強烈な嵐が巻き起こりアドべニアスを吹き飛ばした。ダメージはほとんど与えられていないだろうが遠くに飛ばすことくらいはできる。すぐにニーアはそのあとを追っていく。

走りながら後ろを振り返りシンイチの顔を見る、いい表情だ。

そっちは任せたわよ。 そう心の中でつぶやきながら林の奥の方へ進んでいった。

ニーアが魔族のボスと離脱していくのを合図に冒険者各自が自分の役割を理解して陣形を整えていく。

「よし、行くぞみんな。無理に前に出なくていい、迎え撃つんだ。囲まれないようモンスターの位置に注意していくぞ。」

レオンがニーアに代わり全体に指示を飛ばし、早速襲い掛かってきたモンスターを一撃で葬った。

「へ、おもしれぇ、雑魚が何匹来ようと同じだってことを身をもってわからせてやる。」

タイガも続いてBランクモンスターのマッドボアを真っ二つに切り裂いた。それを見て中級魔族の二人が、モンスターに指示を出した。いや、正確に言うと指示を出したように見えた。モンスターにしかわからないであろう、人間の言語ではない音の様なものを発したあと、すぐにモンスターが方向を変えAランク冒険者パーティを避けるように向かって行く。

「やれやれ、あなたたちの作戦通りってことですかね。ちょっと気に入らないですが、まあいいでしょう。少し遊んであげましょう、力比べと行きましょうか。」

Aランク冒険者パーティのライジングサン、ビースツガーディアンのところにはそれぞれ中級魔族が1体ずつ対峙する形となった。

「へ、さっさと片付けてあのでかいBランクモンスターを倒さねえとな。あいつら雑魚冒険者だけじゃ少々荷が重そうだ。」

そう言って前に出て切りかかっていく。

「待て、タイガ!」

レオンが制止したその直後、空の上から闇が降ってきた。

レオンの声掛けのおかげもありタイガは間一髪のところで躱した、かのように見えたが、右手の腕の部分に大きな切り傷がついている。

「ちっ、くそっ。」

「おっと惜しいですね、ダークブレードを交わしましたか。なかなかいい反応です。次行きますよ、ブラックレイン。」

そう唱えると今度は直径1㎝程の雨粒のような黒く丸い球が大量に降ってきた。

「くそ、躱しきれねえ。いったん距離を取るぜ。」

そう言ってタイガは射程から外れる。術者を中心に20mくらいなので、射程範囲から逃れることはできなくはない。ただ、剣や槍など近接での武器攻撃は出来なくなる。タイガはブラックレインを無視して攻撃を当てる戦略をとっていたため何発も攻撃を受けていた。一つ一つのダメージは致命的なものではないが、多く浴びることで体力が削られる。

「大丈夫ですか、今回復しますね。」

距離を取ったタイガの元にビースツガーディアンの回復役である高位ヒーラ職のラビリが駆けつけ、すぐに回復魔法をかける。

「すまねえなラビリ。くそっ、めんどくせえ野郎だ。」

中級魔族が回復中の隙を狙ってさらに闇魔法で追撃を仕掛けてくる、それを魔法耐性を高めていたレオンが受け止める、無効とはならないもののダメージは最小限に抑えられた。その間にジライヤが槍技スキル フレイムジャベリンで槍を投げつける。しかし、これも難なく躱されてしまった。

「魔法を使ってそっちに気を取られている間にと思ったがうまくいかんぜ、折角リーダーがおとりになってくれたのにすまんな、どうやったら攻撃を当てられるんだ。。」

槍がジライヤの元に戻ってくる。

「俺は大丈夫だ、やはり距離を詰めないといけないだろうな。タイガのように、あの範囲魔法の攻撃はある程度我慢しながらいくしかないか。いや待て、思い切り近づけば射程の範囲外になるんじゃないか、じゃないと術者本人も攻撃を受けてしまう。」

「なるほどな、そこは試す価値がありそうだ。よし、俺がおとりになる、レオンが距離を詰めろ。」

「よし分かった、敵の注意を引き付けるのは任せるぞ。」

ジライヤが距離を詰めて攻撃していくことで魔族の注意を引く。

「芸がないですね、また接近戦ですか。まあそれしかやれることがないか。」

そう言って再び範囲攻撃魔法のブラックレインを発動する。黒雨がジライヤに降り注ぐ。ぐっとこらえながらさらに距離を詰めていくジライヤ、しかし、そうはさせまいと魔族はつかず離れずで対象を魔法の射程範囲内に留めるべく距離を取り続ける。

次の瞬間、レオンがジライヤと反対の方向から一気に距離を詰めて攻撃をした。

「やはりお前の周りには範囲魔法の攻撃は来ていないようだな。逃がさんぞ。」

そう言いながら距離を取らせないよう連続攻撃を続ける。しかし、その攻撃も魔族への有効打とはなっていなかった。

「射程範囲の中に入ってきたのは見事ですが、それでも私には攻撃が届きませんよ。」

そう言いながら、レオンの攻撃を防いでいる。有効打は入っていないものの、魔族も防御に集中して、レオンを振り切るところまでは至らない。

そこにさらに回復を終えたタイガが加わり魔族の死角から切りかかった。

「マルチプルエッジ!」

「何?!」

虚を突かれた魔族はタイガの攻撃を受け吹き飛んだ、その拍子に範囲魔法攻撃も解除された。


「タイガよくやった!ジライヤも大丈夫か?」

レオンの声にジライヤは左手の親指を上げた。一方、タイガは不満そうな表情を浮かべている。

「いや、浅かった。。」

倒れていた中級魔族が起き上がる。

「ふっふっふ、なかなかやりますね。だが、この程度では私は倒せませんよ。」

どうやら、ここからが本番のようだ、レオンが魔族の雰囲気の変化を感じ取った。


かなりの距離を吹き飛ばし、みんなとは200mくらいは離れただろうか、これくらい離れていれば十分だろうとニーアは思った。

吹き飛ばした上級魔族は、案の定、ダメージを受けている様子はなくゆっくりと起き上がった。改めて対峙すると、禍々しいオーラを放っており今までのモンスターとは格が違うことを実感する。魔王よりは強くないと思いたいが、あのときはパーティでの戦いだった、こいつにソロで勝てるだろうか。

「仲間を救うために自分が犠牲になるってことか、いい心意気だが所詮は少しの時間稼ぎにしかならん。俺の名は獣魔貴族の三獣士の一人、アドベアニスだ。すぐに死にゆくお前には覚える必要はないがな。」

そういって無防備に間合いを詰めてきた。ニーアはそこを見逃さず、剣技クロススラッシュを打ち込む。硬い、直撃しているのに刃が通らない。恐らく、従来の守備力の高さに加えて、体毛で衝撃吸収することで斬撃が貫通しにくくなっているのだろう。

「ふははは、そんなものか。全く効かんぞ。」

そういって、鋭い爪での連続攻撃。大きな体格からは想像もできないほど早い。剣で捌ききることは可能だが、なかなか攻撃に転じることができない。わずかな隙を見て足元に単発の斬撃を入れているが、これも効いていないようだ。一旦、間合いを取った。

「スピードはまあまあだな。だが、いかんせん非力だ。」

アドベアニスは余裕の表情を浮かべ得意げに言った。

「まったく、無駄に硬いわね。」

そう言って再び切りかかる。再び同じような展開、しかしアイは今度は魔力をのせた斬撃で反撃した。

「ファイヤースラッシュ!」

今度は手ごたえがあった。アドベアニスの顔がゆがむ。

「魔法剣士か、厄介だな、しかも火属性とはな。」

なんとなくで体毛だし燃えそうだな、と火属性を選んだが正解だったようだ。

これで、攻勢に出れるはず、と再び接近戦を挑む、アドベアニスは両手の爪で応戦する。

爪で剣を防がれるとファイヤースラッシュでもダメージが与えられない。何とか両手をかいくぐり体に当てる必要がある。アドベアニスも接近戦が得意そうで、ニーアの剣を片手で防いではもう片方の手で反撃をしてくる。何度も打ち合っているが攻撃が入るのは10回に1度くらいだろうか、こちらの攻撃が入るたびに咆哮で威圧してくるがニーアには耐性があり効果はない。

癖なのかもしれないけど私には効かないって学ばないのかしら、有効打が入ったことが確認できから便利だけど。ニーアはそんなことを考えながらも現状を分析する。

この戦いを継続することで敵の体力を削っていくことはできるだろう、だがこちらも消耗が大きいため先にガス欠となる危険がある。もう少し連続してダメージを与え戦闘を短縮する必要がありそうだ。今のところ火属性の技は有効そうだ。

それなら、こんなのはどうかしらね。

その場での思い付きで少し変化をつけ仕掛けてみる。ファイヤースラッシュで切りつけ、アドベアニスが爪で剣を防いだところに左手から魔法を放った。

「エクスファイア!」

炎系中級魔法を至近距離から発動する。普段は魔法剣の方が消費するMPが低く効率が良く、威力も大きいため使うことはないがこういう時には便利だ。

アドベアニスは炎に焼かれ悶えている、ダメージは与えているようだ、しかし、次の瞬間アドベアニスが急に全身に力を込めた。

「ふんっ!」

全身を覆っている体毛が針のように全方位に発射される。突然の変化技にとっさに距離を取るニーア。だが、至近距離だったこともあり、全てを躱すことはできなかった。

「へえ、そんな技も持っているんだ。」

全身鎧を装備しているためダメージは少ないものの、動きやすさ重視で関節部分などは肌が露出していたためノーダメージとはいかなかった。出血部位を抑えながらニーアが言う。

「しかも毒付与のおまけつきとはね、ほんと厄介な技ね。」

「くっくっく、よく気付いたな。普通なら気付く前に手遅れになるやつがほとんどだがな。そもそもこの技を使わせるやつに会ったのも久しぶりだ。」

不敵に笑うアドベアニス。

「切り札ってところかしら。その分、毛が減って攻撃が通りやすくなるとありがたいのだけど。」

「残念だったな。すぐに再生可能さ。」

会話でつないで時間を稼ぎその間にヒールウォータとキュアウォータを重ね掛けして治癒していく。その間に相手の毛の量も元に戻ったようだ。

「ふん、治癒魔法か。お前もたいがい厄介だな。」

「よく言われるわ。」

毒は治癒できたが、ダメージは完全回復とまではいっていない。しかし、これ以上は待ってくれなさそうだ。再び距離を詰めてラッシュを仕掛けて来た。この流れを続けるのは良くない、また毒の毛を飛ばされるとジリ貧になっていくのは目に見えている。何とか距離を取ったほうがよさそうだ。

暫くの間、近距離での戦闘が続いた。10分、20分と時間が経つも一向にあの技を使ってこない、向こうも体力消費が激しい技なのだろうか。

先ほどの会話を思い出す、自分が毒の回復のために話をつないで時間稼ぎをしたが、向こうは本来付き合う必要はなかった。向こうも体を覆う毛の再生を優先させた?もしそうだとすると、そうしないといけない理由があったということになる。つなぎの会話ネタで言っていた通り防御力が下がるとしたら、、確実とは言えないが、その可能性はある。すぐに再生できると言っても数秒はかかっていたはずだ。その隙を逃さずに攻撃することができれば。。

このままのペースで戦闘が続くと体力的に不利なのは人間である自分だろう、毒を受けて治療が遅れる点は心配だが毒が回りきる前に倒すしかない、そう考えてニーアは改めて決意した。

仕方ない、あれをやるか。魔力と体力ともに消耗が大きいのであまりやりたくはないけれど。

パーティでの戦いであればもっと色々な戦略が取れるのだけど、やはりソロでの戦闘は厳しいと実感する。

「トルネードスラッシュ!」

斬撃で竜巻を引き起こす魔法剣固有スキルを使用する。最初に使用した上級風属性魔法ストームキャノンと同様に上級魔族に十分なダメージを与えられるとは思わないが、効果範囲の広い魔法なので距離と時間稼ぐにはちょうど良いスキルであった。魔法を無視して突っ込んできた場合はどうしようと少し賭けであったが、予想通り距離を取ってくれた。脳筋に見えて結構頭脳派なのかもしれない。

すかさず、身体強化魔法マイティ・ストレングスを発動する。発動中はHP、MPが絶えず削られていくが、身体能力や魔法の威力を大幅に増大することができる。通常の身体強化スキルだと、力だけとか、魔力だけといった形で特定の能力を強化するが、このスキルだと全ての能力を一時的に飛躍させることができる。勇者の称号を得たことで習得した固有スキルである。

周りに人はいないため勇者ばれする心配はないだろう。といいつつ、このレベルの相手では他の人がいるいないに関係なく使用していたかもしれない。

強力なスキルだが、使い終わった後の反動も大きいためなるべくなら使いたくなかった、がそんなことも言ってられない。削られてジリ貧になってしまったあとでは発動すらできなくなってしまう。既にMPは1/3くらい、HP半分ほど消耗している。この戦いの中で魔法剣スキルを使い過ぎたかもしれない、HPとMP両方ともこれだけ減っているのは久しぶりだ。この状態だと持続できる時間は10分程度だろう。

「じゃあ、ここからは手加減なしよ、一気に決めさせてもらう。」

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