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第百三十話 月例ミーティング

「このタイミングで帰還か。。」

タカキは目が覚めて見慣れた我が家に戻ってきたことがわかるとポツリとつぶやいた。いつも通り二人はまだ寝ている。テレビ番組でクライマックスの前にCMに入りとてつもなく長い、それと同じような感覚に陥った気分だ。居間に移動してこれからのことを想像してみる。タカキの従魔であるエースがアンナたちにショーンの家族の無事を知らせ、心おきなく現ワシュローン帝国政権を打倒する。タカキたちもその一員として歴史に名を遺す活躍をすることになるはず。

「それで戦争が終わればいいが。。」

国のトップが方針を変えれば基本的には戦争は終結するはずである。しかし、帝国がやけになったりしないとも限らない、特にトップにいるものがすでに国を統治する力を失っていたりすると厄介である。

「まあ、考え出したらきりがないか。」

藍と慎一も起きてきたため、いったんその件に関する思考を停止する。いつもの休日のルーティンが始まった。

土曜日の日課となっている三人でのトレーニングでは、藍の対人戦の相手をしていたが押される場面も出てくるようになってきた。通常であれば問題ないが、瞬間的に身体強化をして攻めてこられると、反応が遅れ捌ききれなくなる。

「だいぶ、現実世界でも身体強化スキルを使いこなせるようになってきたわ。」

笑顔でそう言う藍を見て多佳棋は、すでに会社のリーダークラスの実力があるのではと思ったほどだ。さすがに、男性の大人の体力や筋力と比べると差があるため難しい部分があるかもしれないが、女性同士であれば結構いい勝負をしそうである。藍が言うには、レベルは変わっていないが継続的に身体強化スキルを使うことで身体強化を三段階くらいに調整ができるようになり、強化割合が一番少ないものだと数分間は持つということだった。MP切れとならないようにうまく手抜きしながら瞬間的に出力を上げる使いこなしができるようになってきたらしい。多佳棋は現実世界において使えるのは鑑定スキルのみで、レベルアップによる身体能力の上昇しかないため、大人と子供、および男女の基礎体力の差があってもかなり厳しいものがあった。

「多佳棋のおかげで素手での対人戦の動きの勉強になるから助かるわ。空手とかだと、型があってみたいなところがあるから、不規則な速さや角度からの攻撃とかへの対処がわかりにくいところもあるの。」

現実世界で強くなってもなあ、と思いつつ、本人が楽しそうに打ち込んでいるものを否定するのも違うかと思いなおし、第二ラウンドだと言って再び訓練を始めたのだった。


月曜日、いつも通り出勤すると、珍しく各チームのリーダーが出社している。何かあるのかと不思議に思っていると、隣チームのリーダーである晴峰がその答えを教えてくれた。

「おはよう、今日は月例ミーティングの日ね。」

「月に1回のミーティング?ついこないだだったような気がしたが早いな、それで皆来ているのか。」

「今日は珍しく、丞雷さんも来ているわね。自チームが抱えている案件の進捗報告も部下に任せて常に任務優先って感じで普段は参加していないのに。。それよりも、各チームでレベル変化があった人の報告をするのよ、私、今回報告できると思うとうれしくって。」

晴峰は自分のレベルアップの報告を楽しみにしているようだ。実際、レベルアップの報告は上のレベルになるほどほとんどなく、

多佳棋は仕事時間の中でスキルを定期的に使用する演習が組み込まれている。現実世界でMPの最大値が大幅に減るため使用可能回数が少ない。それを訓練により底上げするためだ。使用可能限度まで鑑定スキルを使い、自然治癒を待ち回復した多羅またスキルを限界まで使用する。その繰り返しによりMPの自然治癒速度が上がるというわけである。 最初は1回分の鑑定スキルを使用するために必要な回復時間が十分ほどかかっていたのに対し、今は五分を切るくらいまで縮まっている。最大MPはLvアップでしか変わらないので頻繁に増えるということはない(現実世界は向こうの世界の10分の1のレベルとなってしまうため)。つまり、藍もこれと同じようなトレーニングをしているため、MPの自然治癒速度も上がっているのだろう。

「ふーむ。」

自身のステータスウィンドウを見ながら多佳棋はうなった。

「Lv64(6): HP 390(39)、 MP 186(19)、 力 204(20)、 速さ 136(14)、 守り 146(15)、 魔力 146(15)、 精神 272(27)」

異動してきて1か月経ったが、その短期間にLv5→6と上がっていることは普通に考えるとすごいことなのだろう。晴峰は数年かかって現実世界でLvを一つ上げたと喜んでいた。そもそも、毎週、向こうの世界に行ってレベル上げができるという環境が異常だということを知った。この調子でレベルが上がっていくと自分のレベルを人に明かすのに躊躇してしまいそうだ。人のやっかみというのは侮れない、前の会社で同僚たちの足の引っ張り合いを嫌というほど見てきた経験である。

とはいえ、戦闘系のスキルを使えないため、Lvが高くても他のチームリーダには負けてしまうのが現実である、筋力なども普通のアラフォー男性と比べても段違いで20代のアスリートに近いレベルとはいえ、スキルの有り無しで実際の戦いではシビアに聞いてくる。

それに、向こうの世界だとCランク程度の力しかないという事実が多佳棋の気持ちを沈ませる。帝国との戦争では兵士相手が多く、それほど強くはないのであまりレベルアップは望めない。(強い相手はニーアが相手をすることもあり、、)

やはり強力な魔物や魔族との闘いでの経験値稼ぎが効率がよさそうである。


月例ミーティングでは、進捗報告は波風なく終えることができた。タカキの急成長っぷりにみなが驚いていたことと、雨流・雪平チームの合同作戦(先週タカキが見張り続けた施設の制圧の件)がうまくいったということが大きな話題となった。(Lv7になって喜んでいた晴峰には短期間でLvが上がったことを黙っていたので睨まれてしまったが、、)

「すごいですね、新幡さん。どうやって、レベル上げしているんです?」

会議後、今日初顔となった丞雷に声をかけられた。すらっとしていて背が高くまるでモデルかのような容姿である。どちらかというと支援タイプのスキルらしいが、Lvの高さとリーチの大きさを生かした近接戦闘も行けるらしい。

「いやあ、まあ、日々努力ですよ。スキルが平時でも使いやすいものなので、それがいいのかもしれませんね。」

「鑑定スキルでしたっけ?いいですよね。そんなに頻繁に使ってるのですね、私も鑑定されないように気を付けないと。」

笑いながらこちらの顔を探るように見つめてくる。嘘は言っていないが、頻繁に向こうに行けることは話しておらずごまかした部分もあり居心地が悪い。そのあといくつかのやり取りをしたのちようやく解放された。

その日は、会議の後は何事もなく平和な一日だったが、それは長くは続かず今週の後半もいろいろな厄介ごとが多佳棋に降り注ぐことになった。


月曜日の放課後、委員会で遅くなった藍は真唯や珠莉と一緒に下校する途中大きな公園を横切った。通学路としては道路に沿って迂回しなくてはいけないのだが、ショートカットができるためみんな使用しているルートである。

公園の真ん中くらいまで来た時、真唯が何かに気づいた。

「ねえ、あれ見て、あの二人うちの学校の制服じゃない?なんか絡まれてるっぽくない?」

少し離れたところに同じ学校の制服のカップルが1組、その周りに数名の男女が囲んでいた。一回り体格が大きいので、私服を着ているが、高校生以上の年齢だろう。

「確かに、なんかヤな雰囲気だね、ちょっと見ていこうか。」

そう言い終わる前に、真唯が、ずんずんと突き進んでいく、藍も続いた。

「ちょっと二人とも、ヤバいことに巻き込まれたらどうするの。」

珠莉は怖がりで慎重派だったので、躊躇した。二人についていかず、一旦、陰から見守ることにした。

「おら、どうしてくれるんだよ。何とか言えよ。」

「さっさと出すものだしたら。」

何やら同じ学校のカップルが責められているようだ。

「すみませーん、何してるんですか?」

真唯が空気を読まずに明るく声をかけ突っ込んでいく、藍もそれに続いてしれっと割り込んだ。

何とか穏便に済むといいけどと思いつつも、みんながけがをしないように何としても守らなくてはという決意も同居する不思議な気分だった。

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