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第百二十八話 拠点解放

アンナが言う通り1時間もかからずに、目的の施設が見えてきた。召喚士ショーンはアンナに抱えられている。

「ほぼランニングの速さだな、身体強化は偉大だな。。おっ、あの建物か。」

タカキがそう呟いた矢先、突然帝国軍の兵士二人が道にふさがった。

「なんだ貴様らは、ここになんの用だ。」

ぶっきらぼうで拒絶感の強い口調でその帝国軍兵士は言った。タカキが前に出て説明を始める。

「我々は見ての通り冒険者だ。クエストのためやってきた。この先にあるという薬草採取だ。」

「冒険者?この先にそんな特殊な薬草なんてないぞ、さあ帰った、帰った。」

そう言い終わらないうちにニーアとアンナが素早く後ろに回り込み手刀を首の辺りに落として意識を刈り取った。

「ちょっと眠ってもらったわ。」

あまりにも自然な言い方に、思わず優しく寝かしつけたのかと思うほどだった。

「ま、いいんだけど。。そいつらどうするの?」

シンイチが笑いながら聞いた。

アンナが、帝国兵を担ぎ上げて道から外れ森の中に入っていく、暫くして戻ってきた。

「少し外れに置いてきました。他の帝国兵に見つかるとやっかいですから。」

皆黙ってうなずき、再び進み始める。ようやく建物の前についた。木の陰から入り口の様子を探ってみると門番の兵士が四名、立って話をしている。

「あれどうするよ。」

シンイチがニーアに聞いた。

「さっきと同じでもいいけど、四人いるとさすがに誰かが仲間を呼ぶ隙を与えちゃうかもしれないわね。」

ニーアは考えるように腕を組んだ。

「ちょっと待ってくれ。試してみたいことがあるんだがいいか。」

タカキが間に割り込んだ。ニーアとシンイチは頷く。

そう言うとタカキは林の中に入っていった。

暫くすると高い木の上にタカキの姿が見えた。門番兵からは見えていないようで気づかれていない。ニーアたちはタカキの行動に注目していると、おもむろにライフルを構えて門番兵に向けて撃った。しかし、銃声はせず、門番兵もぴんぴんしている。

「タカキは何をしてるんだろ、狙ったのは門番兵じゃないとか?」

しばらくしてタカキが戻ってくる。

「よし、じゃあ行こうか。」

戻ってくるなりそう言って移動し始めたのだった。

「え、だって何もなっていないけど。」

そう言ってもう一度門番兵を見ると、いつの間にか座り込んでいたのだった。

「あれ、寝てるの?」

シンイチが驚いシンイチ。

「ああ、催眠弾ってのを前に作っていたんだ。精神が異常に高ぶっていたり、強い精神力で抗おうする人には効果はなかなか出ないけど、見た感じリラックスしていたからな。効果は数時間ってとこだな。強い刺激を与えると起きちゃうからなるべく触らないように。」

「へー便利ね。有無を言わさず殴り倒そうと思っていたけど。」

アンナがそう呟いているのを聞いて、ニーアと同じ脳筋だとシンイチはひそかに思った。

そう言っているうちに門の前まで到着し、扉に手をかける。

「鍵は掛かっていないみたいだ。じゃあ行くぞ、中の構造は分からないがさすがに戦いは避けられないと思う、覚悟はいいな。」

タカキの声掛けに皆が頷いた。


建物の中は天井が高く、薄暗い通路だった。人二人が並んで歩けるくらいの狭さで、数メートルおきにランプがついているが十分な明るさとはいいがたい。左右の壁それぞれに扉が一定間隔であり、ホテルや病院のような作りだった。

「どこか入ってみる?」

シンイチが小声でささやいた。ニーアが黙ってうなずき、一つの扉の前で立ち止まった。

そして、勢いよくドアを開けた、部屋の中にいた二人の帝国兵が驚いて声を上げる。

「なんだ、お前たちは。」

そう言い終わらないうちにアンナが攻撃を仕掛け気絶させたのだった。

「毎回これやるの?結構しんどいね。」

「しょうがないじゃない、他に方法ないんだから。」

この部屋の調査をアンナとショーンに任せ次の部屋へと向かった。

同じことを繰り返し部屋の調査を進めていく。誰もいない空室が二部屋続き、得られる情報もなかった。

「食料が置いてあるよ、これはもらって行こうよ。」

シンイチが言ったが、

「それはとりあえずあとで。」

とニーアに一蹴されてしまった。兵士がいる部屋は最初と同様に奇襲で気絶させを繰り返して1階の全ての部屋の探索を終えたが、特にめぼしいものはなかった。

「ニーア、どうする?ここははずれじゃない。」

「うーん、まだ2階もあるし地下室も残っているわ。」

アンナの言葉にニーアは自分に言い聞かせるようにいった。

シンイチとショーンを見張りのために1階に残し、タカキ、ニーア、アンナの三人で地下に続く階段を降りて行く。途中で急に何か生き物がいるような匂いがきつくなった。

降りてみると予想は的中しており、いくつもの牢屋があり、その中に多くの人が閉じ込められている。

「なんてこった、まじか。」

予想していたとはいえ、想像よりはるかに劣悪な環境にタカキは絶句した。シンイチを上に置いてきて正解だったかもと思うほどだ。一方、ニーアは冷静に探している人質がいるか確認を始めていた。アンナも同様である。

「スパースさん、いますか?助けに来ました。」

一通り声をかけて、いないことを確認すると、奥の方から次から次へとカギを壊して戻ってきた。

「助けていただけるのですか?」

「そうしてあげたいのはやまやまだけど、私たちにはやることがあるのよね。ここから出るまでは手助けはするけど、そのあとは自分たちで助かってほしいわ。」

ニーアはなかなか酷なことを言うなと思ったタカキだったが、実際ここで情けをかけていてはより多くの人を救うことができなくなってしまうとの考えだと瞬時に理解した。

「ここから出していただけるだけでも十分でございます。そのあとは我々でも何とかできますので。」

「皆さんの故郷はここから近いの?」

アンナが聞いた。

「はい、元々ここには強制的に歩かされて連れられましたので、私のいた町は歩いてでも帰れる距離です。とは言っても、また戻ってすぐに見つかると連行されてしまうと思うのでしばらくは別の場所に退避しようかと思っております。」

「そもそもなんでこんなところに。」

タカキが事情を聴いたところ、どうやら、帝国のやり方に不平・不満を言ったことが帝国軍兵士の耳に入り、危険分子とみなされてそのまま連行されたということだった。

「言論の自由が無いのか、、いかにも異世界の独裁国家って感じね。」

ニーアがそっと小さな声で言った。タカキは厳しい顔のまま黙っていた。

そこへ、一階で見張りをしていたショーンが慌てた様子で地下に降りてきた。

「アンナさん大変だ。2階から帝国兵が下りてきた。ざっと10人はいる。シンイチ君がこの地下への入り口で守っているがかなりきつい。助けを頼む。」

捕えられていた人たちが、にわかにざわついた。

「りょーかい。じゃあちょっと行くか。皆さんはここで待っていて、すぐに終わらせるから。」

そう言って皆、上階に行ってしまった。取り残された人々はお互い顔を見合わせてただ困惑するばかりであった。上の方で騒がしく争う音が聞こえる。しかし、5分もしないうちに静かになった。不安そうにしていると、先ほどのフルフェイスの騎士風の女性(顔は見えないが声で女性と分かる)と、少し年配の男の冒険者が下りてきた。

タカキは、捕えられていた人たちの気持ちを和らげるように優しい声で話しかけた。

「無事に終わりました。もう安心です、ここから脱出する分には問題ないでしょう。ただ、他の場所から見回りが来るかもしれない。何日間の周期で来るかなど分かっていないですが、なるべくここを早く出て追っ手に捕まらないようにすべきでしょう。」

解放された人たちは素直に頷いている。

「最後まで面倒を見てあげられなくて申し訳ない。だが、皆さんが安心して家に帰れるようにするつもりですので少しの間我慢してください。」

「それってどういう?」

年配の男性が少し困惑した顔で聞き返す。

「今の帝国を倒します。」

タカキは静かに、しかし力強く言った。

皆、驚きざわついたが、すぐに冷静さを取り戻し、神妙な顔でお願いしますと頭を下げたのであった。

解放された人たちは急いで建物から離れていった。彼らを見送っている間にシンイチ達が2階で捜索を続けており、他の施設があることを裏付ける資料を見つけることができた。親切なことに地図もあったので、迷うことなく進めそうである。

「思ったより数があるわね。他のみんなが合流したら手分けして進めましょう。」

地図によると元々聞き込みで把握していた四か所以外にもかなりの数が記されていた。

彼らを見送った後、ニーア達もデイトスに戻るため移動を始めたのだった。


その日の夜遅く後続のセルディス王国、ワシュローン帝国の混成部隊の皆が到着した。

「さすがです、すでに有力情報を得ているだけでなく一か所の捕虜開放が完了しているなんて。」

ラースの言葉に他の兵士たちも共感する。全員を収容するような建物を貸し切るのは目立つため、

デイトス郊外にて作戦会議をすることとなった。

「今日の調査で、帝国が言うことを聞かない国民を投獄しているということが明らかになったわ。同じような場所がまだ他にたくさんあることが分かっていの。」

その事実を知らなかったアンナの部下の帝国兵は少なからずショックを受けたようだ。

「まずはそこを開放して、ショーンさんの家族を開放するということですね。」

ラースが我が意を得たりと言わんばかりに発言する。ニーアも頷き同意を示したが、アンナが少し異なる意見を出した。

「私から一つ提案があるんだ。人質の解放はニーアとセルディス王国の兵士たちに任せて、私は配下のメンバーと共に王都に向かってもよいだろうか。もちろん、混成した部隊編成はそのままで構わない。」

「まだショーンの家族が見つかっていないけどいいの?」

シンイチが聞く。

「ああ、今日の惨状を見て、帝国側で捕えているということは確信したよ。」

王都に行くにもここからだとまだ一週間はかかる、少しでも早く動きたいということだった。

「じゃあその間に私たちが敵の拠点から捕えられている国民を解放していくわね。ショーンの家族も必ず見つけるから。」

「ニーアたちがショーンの家族を見つけたら、どうしたらいいか、、何か連絡が取れる手段があるといいけど。。」

「じゃあ、俺のエースを使おう。」

ニーアとアンナが頭を悩ませていると、タカキがテイムしたエンシェントホークを伝書鳩のように使うことを提案した。

「エンシェントホークか、確かにいいかもしれない。巡行速度は車にも劣らないだろう。」

王都の大体の位置はさっき手に入れた地図からわかるということで問題もなさそうである。アンナの部隊のメンバーが常に一人は外に待機しているようにして、いつでもエースを発見できるようにするということで話がまとまった。

そうして、二手に分かれそれぞれの役割をこなすために動き出したのだった。

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