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第十三話 護衛任務

目が覚めると、豪華な白塗りの宿屋の天井が目に入った、隣にはシンイチ。

手をつないで就寝したのが良かったのか、また一緒に来ることができた。カップラーメンは、、、残念ながら来ることはできなかったようだ。無機物は駄目なのだろうか、今度はヒト以外の動物を連れてこれるか検証しようと思ったが、アイの家はペットを飼っていないので検証は難しいだろうと思いなおした。シンイチが目を覚ました後、日付やステータスが現実世界に戻る直前であることを確認し、今後何をするかの認識を合わせた。

すでにこっち世界の前日(現実世界に戻る直前の最終日)に各方面への挨拶は済ませているので、早速、今日から次の町への旅立ちとなるはずである。

次の町への移動ついでにと受けた、護衛任務の詳細について改めてシンイチに説明した。王都から別の町へ行商に出る商団の護衛で、移動中のモンスターの襲撃などから商人の人々や荷物を護るのが仕事である。大規模な商談の依頼ということで、他の冒険者も同様に護衛として雇われており、報酬の面でもかなり実入りのいい依頼であった。シンイチに説明をしているうちに、冒険者ギルドで依頼を受けた際に、シンイチの冒険者ランクがDランクというのを馬鹿にされたのを思い出し、ニーアは怒りがこみあげてきた。


「おいおい、Dランクだって!? 勘弁してくれよ。そんな奴がいるパーティに背中を預けるなんて御免だぜ。」

そう言って挑発してきたのはAランク冒険者パーティ、ビースツガーディアン所属のタイガという冒険者だった。

「は!?何なのこいつ。」

クエスト登録の最中だったニーアは、後ろから聞こえた声にイラっとし思わず言葉使いも荒くなる。受付のエイミーが慌てて仲裁に入った。

「お二人とも落ち着いてください。タイガさん、この依頼はパーティランクC以上が対象なので、ニーアさんのパーティも問題なくクエスト受託の条件を満たしていますよ。」

「へっ、冒険者ニーアか、数年前に聞いた名前だが、当時はBランクだった。それから全く話を聞かなくなっていたが、いつの間にか俺たちと同じAランク冒険者になっていたとはな。全く噂を聞かなかったがどんな手を使ったんだか。ずるしてAランクに上がったんじゃないのか。」

「ふん、自分の情報収集能力の低さを棚に上げて何を言ってんのよ。あんたの狭い基準で測らないでくれる、思っているより世界は広いのよ。」

「なんだと、てめえ。言ってくれるじゃねえか。表に出ろ、俺が力を見極めてやる。そんな口きけないようにしてやるよ。」

実際は、冒険者としてではなく、勇者としての実績を考慮して、冒険者ニーアとしてのランクもAランクに上げてもらったわけだが、そんな細かいことは説明しない。ニーアの挑発によりタイガはかなり熱くなっているようだ。

「タイガ、その辺にしておけ。」

ビースツガーディアンのリーダー、レオンが後ろから声をかけてきた。その言葉で冷静さを取り戻したのか、タイガも少し落ち着いた。この辺の感情コントロールの速さはさすがAランク冒険者というところだろう。レオンがちらりとニーアに視線を投げた。

「私は君がAランク冒険者に上がったことについてあれこれ言うつもりはないが、Dランク冒険者が入ることに反対なのはタイガと同意見だ。守りに穴があるとそれだけ護衛が難しくなる。悔しければさっさと冒険者ランクをあげればいいだけのこと。」

そう言い捨てて、タイガを促しその場を去っていった。

「ニーアさん、、、」

「エイミー、ありがとう、大丈夫よ、手続きはもう終わり?」

笑顔を作って聞いたが、やはり無理があったようで、エイミーは心配そうに頷くだけだった。周りの冒険者たちもAランク冒険者同士のいざこざというは珍しかったらしく緊張感が走っていた。


数日前のそんなやり取りが、ありありと蘇ってくる、本当に腹立たしい奴らだった。

この先の旅でそんな奴らと一緒に任務をしないといけないことを思い出し少し気が重くなる。。。しかし、すでに依頼を受けてしまったあとなので仕方ないと気持ちを切り替えるしかなかった。

「さ、そろそろ行きましょ。」

そう言ってフルフェイスの兜を装着する。その言葉に反応し、シンイチは頷いて勢いよく立ち上がった。

結局、シンイチには事前にそのいざこざを伝えることができなかった、ニーアとしては希望を持って新たな旅に挑もうとしているシンイチの想いに水を差したくなかったのだった。果たしてこれが正解だったのか、、そんな自問自答をしながら宿を出た。


指定されていた集合場所である城下町の門の前の広場に行くと、既に人が集まっていた。

「これから暫くの間よろしく頼むよ。」

今回の雇い主である、オムニ・ファルビスがそう言いながら握手を求めてきた。オムニ・ファルビスはオムニ商会の会長である。オムニ商会は各国で商売を展開しており、この世界の中でも5本の指に入る規模の大きな商会である。

「こちらこそ、よろしく。」

と握手しながらニーアも応えた。

ニーア達が特別という訳ではなく、それぞれの冒険者に挨拶をして回っているようだ。けっこう誠実な人だという印象を持った。

「Aランク冒険者の方が護衛についてくれるのは大変助かります。最近は盗賊は出ないものの魔族の襲撃が多いと聞きますので。」

オムニが言った。

「こちらとしてもちょうどあっちに行く予定だったのでお互い様です。」

ニーアが明るい声で返す。

「今回はAランク冒険者は3パーティにいるようですが、いつもこれくらいいるのですか?」

けっこう厳重だなと思ったので、挨拶ついでにと気になる点を聞いてみた。


「特にAランク冒険者が何名必要と、数を決めているわけではなく、全体の護衛人数だけですね。この間はAランクは1パーティしかいませんでしたが特に問題ありませんでした。最近は強い冒険者が増えてきているから助かりますよ。それでも魔族に襲われたら被害は甚大になってしまうのですけどね。奴等、積み荷に興味がないから際限なく破壊と殺戮をしていくのですよ。」

挨拶も終わりいよいよ出発となった。

この度ではラスコ村、ビスク村を経由して港町オスティアまで計10日間の片道切符の行程である。荷物の護衛任務を受ける条件で、オムニ商会の馬車に乗せてもらうことで楽に移動しようという訳である。

城門を出るとまっすぐな舗装された道と草原が広がっている。その道を20台の馬車が連なって出発していった。先頭に冒険者、次に依頼主の乗る馬車と続き、それ以降は2台分の貨物を積んだ馬車の後に冒険者が乗る馬車という繰り返しだった。ニーアたちは最後尾から2番目の馬車に乗り込んだ。馬車には6名くらいが乗れる広さである。1台の馬車につき

1~2つのパーティが割り当てられている。


パーティメンバーが少ないニーアとシンイチは、タフライブという3名のBランク冒険者パーティと交代で馬車の中での休憩と、外に出て警備の役割を担うこととなる。最初はニーア達が馬車内で待機で、3時間ごとに交代することとなった。前方の馬車には、屋根に座って周りを警備している者もいる。

「あれだと楽できていいね。」

「あんなのは駄目よ、ちゃんと依頼を受けたのだから歩かないと、怠慢だわ。」

「えー、きびしいよ。3時間歩き続けるって、、普通に疲れない?」

「身体強化の魔法を使いつつであればそんなに疲労感はないわよ」

「そうなの?身体強化魔法まだあんまり得意じゃないんよな。」

「なおさらちょうどいいじゃない、修行の一環だと思ってね。」

「修行じゃなくて、依頼を受けた任務なんじゃないの?」

「う、それはまあ、一石二鳥ってやつよ。」

そんな話をしながら馬車の中ではリラックスして過ごすことができた。

3時間後、交代して今度は自分達が馬車の外で警備にあたる。荷物が積まれた馬車の両脇で歩きながら護衛となる。前方には他の冒険者も同じように任務についている。今回はニーアたちを含めてAランク冒険者パーティが3グループ同行している。先頭の馬車、中間、そしてニーアたちの後方とバランス良く配置されている。その間をBランクが4パーティ、Cランクが2パーティが埋めているという配置である。

歩き始めて1時間ほどして、モンスターの群れの襲撃があった。モンスターの強さとしてはランクB、Cくらいだろう、それほど大きな心配はないが油断は禁物だ。にわかに冒険者たちが騒がしくなる。

「私たちは積み荷の右側を、あなたたちは左をお願いね。」

「OK、了解だ。」

ニーアの指示によりタフライブのメンバーと持ち場を分担して、積み荷を護る。

フロッグウルフというモンスターの群れで、一匹であればそれほど脅威ではないものの、仲間と連携して攻撃を仕掛けてくるため厄介な存在である。

「相手は一人に集中して攻撃してくる。狙われないようこちらも周りと協力し合って一体ずつ倒すんだ。」

タフライブのリーダータサダキが大声を張り上げる。すぐさまタフライブのメンバーは集まり連携する。タサダキが挑発スキルでヘイトを集め、攻撃を受けつつ、他のメンバーが補助して敵を倒している。

ニーアはそれを見て、なかなかいい連携ね、という印象を持った。一方自分たちはというと、あまり芳しくない状況だった。1週間現実の平和な世界で過ごしていたせいか、身体の動きに心がついてこないという状況だった。シンイチも同じ状況で、こちらの攻撃は躱され、向こうの攻撃は受けるというひどい戦い方をさらし、致命傷にならないのは高性能な防具のおかげという状況だった。それでも相打ちで何とか倒したり、どちらかが攻撃を受けてできたすきをついて、もう一方がダメージを与えるなど一体ずつ地道に倒していく。それでもまだ数十体はいる状況で、

「やっば、修行の成果が全然出せてないよ。このままじゃ、やられちゃうよ。」

シンイチが弱音を吐いた。

「大丈夫、今の装備だったら攻撃を受けても致命傷にはならないから自信を持って戦って。一応回復もしておくわ。」

そう言いながら、ニーアはシンイチにウォーターヒールをかける。ニーアの装備であればフロッグウルフの攻撃はほとんどダメージが入らないが、シンイチには致命傷とならなくともダメージは蓄積する。そのため、こまめに回復をしてあげることにした。

効率的ではない戦い方ながら少しずつ倒していたが、突然遠くから魔法が飛んできて、目の前にいたフロッグウルフの群れが消えた。

前方を守っていたブレイブファングというBランク冒険者パーティのリーダ、セージによるフレイムバーストという中級火属性魔法だった。

「苦戦してそうだったから、手伝ったが余計なことだったかのう?」

「いえ、、ありがとう。助かったわ。」

本当はもう少し感覚を取り戻すべく戦いたかったが、そんなことを言うわけにもいかないので、素直にお礼を言った。そしてすぐにまだ戦闘を継続しているCランク冒険者パーティの手伝い回った。

幸いなことに特に大きなけがをした者はおらず、すべて退けることができた。

「はーあ、失敗だったわね。こんなに感覚が鈍っているなんて。」

戦闘後、ニーアはため息をついた。最初に来たときは王都周りの弱いモンスターと戦って徐々に強い敵に挑戦と段階を踏んでいたためあまり気にならなかったが今回はいきなりBランクモンスターだったため、ブランクがもろに影響してしまったようだ。次からは少なくとも一日は準備期間を取らないといけないな。そう思いつつも、どのタイミングで戻るかコントロールができない以上必ずしも縦鼻期間が取れるとは限らないということも認識していた。

「へっ、案の定、足を引っ張っていたか。」

そう言ってきたのはビースツガーディアンのタイガだった。

「わざわざ、こんなところまで嫌味を言いに来たなんていい性格ね。」

ニーアはきつくにらみ返して言った。(と言ってもフルフェイスなのでにらんでいるのはタイガには伝わらないのだが、、)

「ああん、わざわざお前らにかまっているほど暇じゃねえよ。他にもお前らみたいに足を引っ張っているやらがいるんでな。おもりは大変だよ。」

「ニーアさん、タイガさんの言う通りじゃ。我々もタイガさんに手伝っていただいたので早く倒せ、そのおかげでニーアさん達を助太刀できたのでのう。」

初老といった感じのセージが二人に近づいてきて言った。

「そ、そんなの。。とにかく、お礼は言っておくけど私たちはまだまだ本気じゃないんだから。」

するとシンイチが、ニーアの腕を引っ張って前に出た。

「ニーア駄目だよ、そんな言い方。すみません、助けていただいてありがとうございました。」

「ふん、お前がDランクか。礼儀だけはましだが、それだけで生き抜けるほど冒険者は甘くねえ。せいぜい死なないように無理せず馬車の中で震えているんだな。」

そう言い残して前方の自分の馬車に戻っていった。

その言葉を聞いてぴくっと反応したシンイチだったが、悔しさを押し殺すように拳を握り、その姿を黙って見送った。

「タイガさんを悪く思わないように、言葉は悪いですが、最前線からわざわざ見回りに来て、彼が私たちに後方の支援をしてやれと言ってくれたのです。」

セージがフォローする。

「そう、ありがとうね。」

テンションが下がったニーアであったが、改めてセージにお礼を言う。

シンイチは、あからさまに実力不足を指摘され悔しかったが、タイガの指示で手助けがあったというのを聞いて、それほどいやな奴じゃないのかもしれないと感じた。

「よりによって、あいつに見られるなんて、、最悪。。」

ニーアは一人呟いた。悔しさと後悔の念が押し寄せたが、過ぎてしまったことは仕方がない。次からは少し気合入れていくしかないと思うことにした。

幸い、戦闘の後半は勘を取り戻しつつあったので、前向きにだ と自分に言い聞かせる。


倒したモンスターの素材剥ぎ取りと休憩を兼ねて少し時間を取り、再び進み始めた。

今回の護衛任務において、モンスターの素材は冒険者の報酬という取り決めであったため、適度なモンスターとの交戦は任務に従事している冒険者にとって報酬の面でもありがたい(ただ座っているだけだと、護衛任務の依頼料しか入らない)。

「なんか思っていたのと違うなあ。思った通りに体が動かないというか。いや、逆かな。冷静に振り返ればこうすべきってのはわかるんだけど、そこに考えが行きつく前にモンスターが襲ってくるから反射的に体を動かすしかないって言うか。ニーアもそう?」

「そうね、戦闘の感覚が鈍っているってことだと思う。もう少し戦えば取り戻せると思うけど。」


その翌日も巨大なミミズのような虫型モンスターと遭遇する。ポイズンワームと呼ばれており、名前の通り毒の攻撃をしてくる厄介な敵であった。目の前にいる生物を毒で弱らせてから食するという習性で、運悪く出会ってしまったという感じである。

「身体全体から毒の粘液を出しますぞ、皆さん、素手では触れないように気をつけなさい。あと口からも毒を撒き散らすのでそれも要注意じゃ。」

昨日助けてくれたセージが、前方の馬車の近くで叫んでいる。味方のメンバーに声をかけているようだ。そして自身は魔法で遠距離攻撃をしている。

「あーも―うざったいわね。ちょっと思いっきりやるわ。シンイチ、15秒くらい稼いでくれない。」

ニーアがそう言って構えた。急に降られて慌てたシンイチだったが、すぐにポイズンワームの相手をする。敵の毒益を躱すことに専念し、攻撃は最小限とした。攻撃が当たったところから毒益が噴き出しそれを被ってしまう恐れがあるからだ。初級魔法のファイアボールなどで意識を集める。魔法防御力はそれほど高くないらしく、シンイチの魔法でもけっこうダメージが入っているようだ。

「シンイチ、OKよ。どいて!」

その声を聞いてシンイチが後ろにとんだ。

「ありったけよ! インフェルノスマッシュ!」

巨大な炎の斬撃が一直線に走っていく。数メートル幅で前方10mくらいまでの範囲が焼け野原となり、その攻撃範囲内にいた他の冒険者パーティーと戦闘中だった数体のポイズンワームが巻き添えとなり消し炭になっていた。毒液も飛び散る間もなく焼き尽くされたようだ。


「はー、スッキリした。グダグダ考えるよりもやっぱこうじゃないとね。」

周りの他の冒険者が驚きの表情で見つめる中、ニーアはさわやかな笑顔を浮かべるのであった。

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