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第百二十五話 ターニングポイント(1)

ニーアは場所を移し人目の付かないところでアンナの話を聞くことにした。住民が避難済みで人気のない倉庫に入る、さすがに立ち話をしているところを見られるのはお互いにとってデメリットしかない。

「さっきの話はどういうこと?」

ニーアが聞くとアンナは少し落ち着きを取り戻して語り始めた。

「セルディス王国は帝国側につきそうな人間に対して、人質を取って言うことを聞かせようとしているのよ。それを知って私はとらわれた人たちを開放するためにこの戦いに参加しているんだ。そこにいる召喚士のショーンが証人よ。ショーンの家族が行方不明になっているの。」

「行方不明はいつからなの?どこでいなくなったの?人質って?セルディス王国はそんなことしていないと思うわよ。そもそも、アストレアやオスカーが、国政の中心に据えられているのにそんなことすると思う?」

「行方不明になったのは戦争が始まる少し前だ、ショーンとシエラはカプトル商業都市国家に住んでいたのだが、シエラがセルディス王国に旅に行っていて、そのまま帰ってこなかったそうだ。ショーンや私が知ったのはもう少し後だが。確かにアストレアはそんなことはしないだろう。だが、すべての騎士団の細部まで把握しているのか?一部の騎士団メンバーはそうだってことも絶対ないと言い切れるのか?アストレアの知らないところで行われているだけの話かもしれない。」

「そう言われると、、」

二ーアは思わずこの間の第五騎士団の団長、カヤマオのことを思い出した。確かにセルディス王国騎士団のすべてが善人ということはないのかもしれない。それでも、そんなことをしているとは思えなかった。

「そもそも最初に攻め込んできたのも帝国だし、時間軸的におかしいと思うわ。戦争を仕掛けられて対抗策として一部の騎士団が暴走しているということであれば考えられなくはないけど。。」

「えっ、何を言っている?ワシュローン帝国が仕掛けたのは人質を解放するための戦争と聞いている。ショーン以外にも家族が人質になっているという帝国国民の声を多数聞いたぞ。」

アンナは困惑して声を荒げる、ニーアの表情は見えないが、声の感じからして嘘を言っている様子はない。

お互いの持っている情報を交換する。アンナはどうやら捕虜を盾に帝国にいいように操られているようだ。召喚士のショーンの妹であるシエラを救うためというのが今回の戦争の参加の理由であった。

「アンナ、セルディスが捕虜を取っているなんてことはないはだまされているわよ。」

「そんなことを言ったって、、すぐに信用はできないわよ。」

ニーアも今回の戦争におけるセルディス王国の詳細な部分まで把握しているわけではなかった。このままでは平行線である。

「わかったわ、アンナ。じゃあこうしたらどう?アストレアにもこっそり話して、王国軍とは別に内部の情勢を探らせる、その代わりアンナにも改めて帝国側の情報を確認してほしいの。セルディス側が拉致したと判断するに至った根拠とか。そもそもセルディス側からショーンに帝国側につくなという警告があったわけではないのでしょう?」

「それはその通りだ。誘拐後のこちらの動きを掴めていないだけと深く考えていなかったが、その点は確かに不思議ではある。わかった、帝国のトップ層と話すコネがあるから聞いてみることにしよう。アイ、いや、ニーアはどうする?」

「そうね、国内の動きはアストレアに任せて、私はこのまま帝国内の入ってみたいと思う。もしも、セルディスが人質を取っていないとすると、帝国が嘘をついている可能性がある。それに備えて探ってみたいの。私はあくまでセルディスを信じたいと思ってる。」

アンナはニーアの言葉の節々から意志の硬さを感じ取り、何を言っても聞かないだろうと悟った。

「分かったわ、そっちは任せるわね。ただ、帝国は広いわよ、どうやって探すの?」

「そこはまあ色々とね。」


一方そのころ、西の橋では遅ればせながら到着したレインが先頭に立ち突破を図っていた。レイン不在の間にセルディス側が押し込んだ分を一気に盛り返していく。

「相変わらず無茶苦茶な力ね、これ以上自由にはさせない。私が食い止めるわ!」

そう言ってカレンがそれを迎え撃った。

「セルディス王国、第二騎士団団長のカレンがお相手する。」

「レインだ、あんたみたいな美人を斬るのは気が引けるがこれは戦争だ悪く思うなよ。」

そういって互いに斬りかかっていった。敵味方入り混じっての乱戦となり、カレンは側近の部下のシグ、ホルンの二名とともにレインと対峙する。3対1で有利な状況であるにもかかわらず、こちらの攻撃はレインには届かない。三人同時に切りかかる連携技トライアタックで攻撃するも、シグの斬撃を躱しレインが反撃した。シグはそれを盾で防いだが、盾が真っ二つに破壊されたのだった。そして、その斬撃はさらに鎧も貫通して大ダメージを負った。

「なんという威力。。カレン様、この男は危険です、お下がりください。」

そういってシグは倒れた。

「どうだい俺の剣の威力は。強撃破斬は相手の盾をも破壊する威力があるんだ、なかなかだろ。」

「シグ!」

カレンが声をかけるが、動かない。一刻も早く手当てをしてやらねば、カレンの心に焦りが生じる。

今度は時間差でカレンの連撃スキル、マルチスレイを繰り出し攻撃する。しかし、それを凌ぐレイン、そこにもう一人の側近ホルンが死角から切りかかった。

「おっと、危ない。」

この攻撃を防いだレインは、この側近に対して再び剣で反撃する。それを何とか躱したホルンだったが、そこに土魔法アースブレッドを命中させ意識を刈り取ったのだった。

「つ、強い。」

カレンは改めて敵の強さを思い知った。団長付きの側近である二人の実力は決して低くはない、それを簡単に倒してしまい、しかもまだ遊んでいるかのように余裕さえ見える。カレン自身も剣術一つで団長の地位まで上り詰めたのでそれなりに腕に覚えはあったが、この男には勝てるイメージが全く沸いてこなかった。だが、セルディス王国軍の指揮官として逃げるわけにはいかない、もっとも、逃がしてもらえそうにもなかったが。たとえ私がここで敗れてもセルディス王国が負けるわけではない、他の騎士団長がきっと立て直してくれるだろう。そのために役に立てるのであれば悪くない、少しでも奴にダメージを与えてやる。ここが私の人生の終着駅かと少しだけ感慨を覚えたのだった。

側近の二人がやられてからは防戦一方のカレンだった、一撃一撃が思いレインの攻撃を何とかしのぎ反撃の隙を伺っている。連続で上下からの攻撃を受け流し、三回目の下からの斬り上げを受けたとき、その威力を流しきれずカレンの体制が大きく崩れ隙ができた。まずい!カレンがそう思ったがレインがこの隙を見逃すはずもなくさらに追撃を仕掛けてくる。

「これで終わりだな、それじゃああばよ。」

レインがカレンにとどめの一撃を入れようとしたとき、ライジングサンのリーダ、ツォーガと銃剣士のペドロがその剣を受け取めた。素早くカレンを起き上がらせるツォーガ。

「大丈夫か、騎士団長さん。」

「ありがとう、ツォーガ、ペドロ。奴が、帝国軍の将軍レインです。帝国二大将軍の一人といわれている実力者です、決して油断しないように。特に剣撃は武器や盾で防ごうものなら、そのまま破壊されてしまう恐れがあるので気をつけてください。」

「ああ、さっき見ていた、分かっているよ。あんたの側近は今、俺たちの仲間が治療しているが助かるかどうかは半々の確率らしい。」

「そう、ありがとう。」

カレンは視線を合わせることなくお礼を言った。今は祈るしかない、それよりも目の前の相手に集中しなくてはならない。

「へへっ、Aランク冒険者のお出ましか。お前たちか、この今の戦況にしてくれたのは。しっかりと礼はさせてもらうぜ。」

ツォーガは一瞬何のことかわからなかった。しかし、すぐにこちらが橋での攻防で優位に立って押し込んでいることと理解した。ニーアたちの活躍でこちらが優位な展開となっているということについても昨晩の作戦会議の場で聞いていたのだった。

再び3対1の戦いが始まる。レインの斬撃スキル強撃破斬は、相手の武器や盾を貫通して攻撃するには特定の角度でスピードをのせてきれいに入れる必要が有る。このAランク冒険者たちはその角度だったり、剣と剣がぶつかるタイミングを絶妙にずらすことで武具破壊されることを防いでいた。ただし、レインの斬撃スピードに対してこれを行うのはなかなか簡単なことではない。

「へえ、なかなかやるな。流石はAランク冒険者といったところかな。じゃあ、もう少し本気を出させてもらおうかな。」

そう言うと瞬時に間合いを詰め切りかかる。ツォーガは何とか受け止めたが、その剣撃の重さに吹き飛ばされてしまう。ツォーガに攻撃した隙をついてペドロが攻撃を仕掛けたが、レインはその攻撃を盾で防ぎつつ、さらにそのまま盾を押し当てる打撃技シールドプレスによってこちらも吹き飛ばした。壁にたたきつけられたツォーガとペドロ、それでも二人とも何とか起き上がった。

「くそっ、強い。帝国二大将軍といわれるものの強さがまさかここまでだとは。まさに一騎当千か。」

「ああ、Aランク冒険者クラス3人がかりでも傷一つ付けられないなんて、Sランク、いや、SSランク冒険者にも匹敵するんじゃないか。」

ツォーガの言葉にペドロも同意を示した。魔族と対峙したあの戦いの恐怖を思い出した。恐ろしさという意味では人あらずものである魔族の方が上かもしれないが、こちらの攻撃の手ごたえの無さ、純粋な技術力の差という点においてはあの時を上回っていると感じていた。片手剣と盾といったいかにも騎士といったオーソドックスなスタイルながら、その卓越した戦闘技術で帝国軍の頂点の一角をなしているというのも納得であった。

再びツォーガとペドロによる連携攻撃を仕掛ける、二人の攻撃を剣と盾で防いでるところにカレンも切り込んでいく、これを素早くかわすレイン、距離を取ったその瞬間、不意を突いて誰かがレインに魔法攻撃を仕掛けた。大きな炎がレインに命中する。

「やったか、」

ライジングサンの副リーダである、シモンが召喚したファイアーイーグルによる火炎攻撃である。敵を焼き尽くすまで燃える魔法だが、数秒後に炎が消えたあとには無傷のレインが立っていた。

「ふっ、惜しかったな。あいにくこの盾はほぼすべての属性の魔法の威力を1/10にすることができるんだ。まあ、それでも少し熱いと感じたからなかなかの威力だったぜ。」


「くそ、あの盾の性能がやばすぎるな。」

その後もしばらく戦いを続けていたが、3,4人がかりでも徐々に押され始めているとツォーガは感じていた。

「ああ、数で押してもダメ、奇襲での魔法攻撃でもダメとなると打つ手が少なくなってくるな。」

ペドロが悔しそうに呟く。ツォーガはみなに向けて言った。

「あいつは倒そうと思わない方がいいかもしれない。まずはやられないようにというのが第一だな。耐えて、チャンスが来るのを待つしかかない。」

「何を待つというのです。」

少しいらだった声でカレンが聞いた。

「団長さん、そりゃ俺にもわからない。。強力な援軍なのか、あいつが疲労してできる隙なのか。。だが、簡単にあきらめてあいつの剣のさびとなってやる訳にはいかない、そうだろう?」

ツォーガの言葉を聞いて、自分の使命を思い出す、ふっと力が抜けカレンに笑顔が戻った。私としたことが、相手の強さに呑まれてかなり追い込まれていたようだと気づいた。

「そうね、その通りだわ、そう簡単に帝国の侵攻を許すわけにはいかない、私は今セルディス軍の指揮官なのだから。」

再び4対1での戦いが展開される。激しい剣撃の往来を繰り返すことさらに数十分がたった。そして、ついに疲労と、受けた攻撃のダメージが蓄積してカレンを始めツォーガたちはみな動けなくなっていた。

レインがツォーガにゆっくりと近づき立ちはだかった。

「かなり粘られたけど、どうやらここまでみたいだな。だが、ここまでの戦いっぷりは大したものだ、俺の部下に欲しいくらいだぜ。どうだ、配下にならないか?」

レオンが敵兵に敬意を覚えることはまれであった。そもそも今回の侵略に懐疑的だったことも影響したのかもしれない。

「ふっ、残念だな。俺たちにも一冒険者としての矜持ってやつがあるんでね。」

「そうか、本当に残念だ。。。何か言い残すことはあるか。」

レオンは真面目な顔になって静かな声でツォーガに聞いた。ツォーガは少しだけ身を起こす。

「参ったよ、あんたの勝ちだ。だが覚えておくんだな、セルディス王国にはまだまだ活きのいい奴が残っているぜ、特にこの状況を作り出したAランク冒険者とかな。」

ぴくっと、レインの表情が動いた。

てっきりこのものたちが噂の冒険者だと思っていたが違うというのか。自身の中に動揺が広がっていることを自覚する。

「レイン様!」

そこへ自軍の兵士が息を切らして近寄ってきた。

「どうした?」

「それが、本陣が攻め込まれております、急いでお戻りください、召喚士様がやられました。」

その報告を聞いて目を見開くレイン。その後、少し力が抜けたような表情になり、ツォーガに話しかける。

「おい、あんたの名前は?」

「俺か、俺はツォーガ。Aランク冒険者パーティ、ライジングサンのリーダーのツォーガだ。」

「なるほど、覚えておこう。どうやらあんたたちの勝ちのようだ。ここでかなりの時間足止めされたことによって、戦況が大きく動いてしまったようだな。ここで今お前たちを殺しても何の価値もない、その命預けておこう。」

そう言ってレインは去っていった。殺してもよかったが、それによって奴らの部下が必死に抵抗してくるとさらに時間を費やす可能性があった。それによって本陣に戻ることが遅れるのは避けたかったのだ。

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