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第百二十一話 急襲

翌日、ニーアたちは早朝から動いた。昨晩の作戦会議で話したようにブレイブファングを後方に伴って、友軍として細い路地を利用してシンイチと突き進んでいく。タカキはさらに数メートルうしろで第二騎士団のメンバーと共に進む。第二騎士団のメンバーも一緒に行動することという条件をカレンにつけられたため、ニーアは一緒に来る第二騎士団員にタカキを守ることを依頼したのだった。

「この道はいいわね、帝国軍の兵士が少ないわ。」

「逆に誘い込むための罠なんじゃないかって気もしなくもないけど。」

確かにその心配が全くないとは思えなかった。先ほどから何度も帝国兵と遭遇しているものの、必死に止めに来ようとしていないという感じもしていた。とはいえ、ここまで討ち漏らし無しで全て戦闘不能にしているため報告ができておらず、帝国軍の司令部がこの状況を察知できていない可能性もある。

それでも、出兵した兵士が戻ってこないという状況であれば気にしても良いのではという気もしてくる。

「たとえ罠だとしても退くわけにはいかないわ、それごと叩き潰してやるわ。」

ニーアはそう言ってさらに進軍速度を速めていった。


一方、帝国軍将軍レインは、朝の出陣前の会議で戦闘開始の時間から少し遅れての参戦となっていた。レインは西を攻め落とすと自分で宣言したものの、昨日の中央の橋でのセルディス側の突破力が気になっていた。何事も自分で確認しないと済まない性格であるレインは少し寄り道をすることにした。

「しょ、将軍?!ルートが予定と異なるようですが、、」

「少しだけ中央の様子を見ていく。西は昨日の戦いの感じだと少し遅れても問題なく突破できるだろう。あまりこっちを押し込まれすぎるのも良くないだろ。」 

我ながら後付けの理由だと思いながらもそれで押し切ることにする。そう言いながら笑顔を振りまく指揮官に逆らえるわけもなく部下の帝国兵たちもついていくこととなった。

中央の橋に着くと、相変わらずセルディス軍が押している光景が広がっており、さらに少し離れた東の橋もセルディス軍が渡り終えてこちら岸まで戦線を押し上げていた。

「聞いていたよりもずいぶんと酷いやられようだな。」

その場にいた兵士の報告によると、中央を突破してきたセルディスの部隊が距離の近い東側にも攻め込み、帝国軍を挟み撃ちにしたとのことだった。

「やれやれ、こっちがやりたかったことをやってくれるとはな。少し掃除してから行くか。」

そう言ってレインは戦闘の中に突っ切っていく。側近の兵士たちも慌ててついていき戦闘に加わった。

「レインだ、奴を討ち取れ!」

セルディス側の士気がさらに上がり押し込んでくるも、レインが加わることで戦況は一変する。

「レイン将軍をお守りしろ!ここは絶対に抜かれるな。」

「ありがとよ、だが守られているだけってのは性に合わないんでな。」

そう言って先頭に立つと一気にセルディス軍を削っていく。レインの周りに一気に道が拓ける。

「相手がひるんだぞ、攻め込め!」

そのスペースにワシュローン帝国軍の兵士がなだれ込み押し戻していく、レインはその流れに乗ってさらに攻め込みながら辺りの強そうな冒険者を目で追っていた。しかし、目立って強いという冒険者は見当たらなかった。

「だいぶここは立て直したな。よし、我々は当初予定通り西の橋に向かう。あとは任せたぞ。」

「はっ!レイン将軍もご武運を。」

中央を任された大佐が敬礼をして見送る中、レインとその一団は西の橋に向かって進軍を始めた。

そのときニーアは既に別の通りを進軍しており、すれ違いとなっており対峙することはなかった。これにより戦況を決したといっても過言ではないかもしれない。


昼が過ぎた、先に攻め込んでいるユータたちはかろうじて視界に入っているものの、その先にいるはずのニーアとシンイチはすっかり姿が見えなくなってしまった。いったいどこまで攻め入っているのだろう。タカキとタカキを守る騎士団メンバーの一団は、最初はニーアについて行こうとしていたが途中から追いつけないと判断して、建物の屋上に上りユータや他の騎士団の援護射撃に徹していた。帝国の兵士は帝国式戦闘術というものをベースにしているらしく、槍使い2名、盾使い1名の3人組が基本である。近接戦闘で彼らが扱う武器は長い槍で、セルディス王国兵が主に扱う剣に対して間合いの観点で優位性を保ち一人の盾兵が弓などの遠距離を大きな盾で3人まとめて守っている。もちろん、ニーアのように実力差があれば搔い潜って接近戦で制圧することは可能だが、力が拮抗している場合、片手剣と盾など一人で二つ持ち攻撃防御をこなそうとするよりも、両手とも攻撃に集中し攻撃力が上がり射程が剣より長い点も含めても有利となるため、理にかなっているとタカキは感じていた。そしてその3人組部隊が4~5隊に一人の割合魔導士が配置されており、遠距離魔法からの攻撃を防いでいる。こちらも攻撃することなく、防御に専念することで効率的かつ、確実な防御を遂行しているようだ。突破はあくまでも近接物理攻撃による白兵戦と考えているようだ。そんな帝国式戦闘術をタカキが遠距離から銃で射貫くことで、いとも簡単に崩していくのであった。盾兵を狙い、麻痺させて防御不能とすることで、セルディス側の攻撃を有効化した。さらに直接槍兵を倒すことで攻撃力を低減させていた。盾兵は弓の速度であれば、距離もあるため、矢が放たれてから防御態勢をとれるが、タカキの銃の弾丸の速さには反応できず無力だった。眼下の敵には拳銃で、ユータたちと戦っている相手には遠距離狙撃用のライフルでと、それぞれ武器を使い分けていた。橋からまっすぐに道が伸びていたため百メートル先くらいまでは二人の姿を目視しつつ援護できていたが、今はもう見えなくなっていた。実際に戦ってわかったのは、自分の攻撃で十分に無効化できる強さということで、ニーアとシンイチが見えなくなってもそれほど不安にならずに済んだ。強いモンスターが出るわけでもないだろうしと安心していたのだった。唯一の心配は、敵の高位ランクの冒険者だが、開戦からまだ一度も姿を見ていないということだったので若干楽観していた。

「おっと、こんなこと考えていると変なフラグを立ててしまいそうだな。」

遠くを見ながら独り言をつぶやいた、そして、再びライフルを構えるのであった。


順調に敵を倒し進軍していくニーアとシンイチ。ブレイブファングもなんとか数十mほど遅れてついてきている。遠くの方に帝国軍の本陣が見えてきたその時だった。建物から一人のフードを被った男が現れ、それと同時に大きなモンスターが現れた。敵の召喚士がドラゴンを召還したようだ。ニーアとシンイチも思わず足を止める。ドラゴンはすぐに二人を視認し、敵とみなしたようだ。

「こんな街中でドラゴンを召還するなんて、なりふり構ってられないって感じね。」

ニーアがそう言い終わらないうちに炎のブレスを吐いてきた。シンイチがニーアの前に立ち、それを盾で防ぐ。魔法での防御壁も同時に展開しており、完璧な防御である。

「くっそー、もう少しで敵の本陣だってのに。」

シンイチも悔しそうに言った。

「なるほどね、これがいるからここまで簡単に進軍を許したってことかしら。でもまだこんなところで諦められないわ。あの召喚士を倒せばドラゴンも消えるはず。シンイチ、暫くの間、ドラゴンを頼めるかしら。チャチャっと召喚士を倒してくるわ。」

「えー大丈夫かなぁ。」

「大丈夫よ、こないだのカースドラゴンよりも全然小さいし、こいつは多分毒も吐かない通常のドラゴンを召喚したものよ。」

ニーアはそう言ってドラゴンをシンイチに任せて召喚士を狙いに行くため動き始める。召喚士の横には数名の兵士がいるが、シンイチが一人でドラゴンの相手をしてくれると考えるとあれくらい一緒に相手してもおつりがくるくらいだ。召喚されたドラゴンであれば、本物のドラゴン能力の3割落ちといったところである、それも考慮すると今のシンイチなら十分に耐えられると踏んでの作戦であった。

またそんな無茶ぶりを、とシンイチは思ったがすぐに第2弾のブレス攻撃が来たため考える暇もなく防御魔法を展開した。

「おいおい、ニーアさん、シンイチを置いて突っ込んで行ったぞ。」

後ろから前方の状況をみていたユータが驚いたように声を上げた。

「どういう作戦なんでしょうか、まさかシンイチさん一人であのドラゴンを?」

「まさか国同士の戦争でドラゴンが出てくるなんて信じられないけど、それを一人で相手させようっていうニーアさんの思考も信じられないよ。とにかく俺たちはシンイチさんをフォローするんだ!」

「はい!」

ユータはすぐにブレイブファングとしての作戦を決めて指示を出した。まだシンイチのところまでは少し距離があるため、まずはいち早く目の前の敵兵を倒して合流する必要があった。

ニーアがドラゴンの横をすり抜けたとき、ドラゴンは尻尾でニーアを振り落とそうとしたが、これを素早くかわして脇を抜けていく。ドラゴンの意識がニーア向いたすきを見逃さず、シンイチが水魔法ウォータスラッシュで攻撃を仕掛ける。水を高圧で打ち出すことで剣の斬撃に似た攻撃を繰り出して切り裂く魔法である。これが非常に効果的だった。ドラゴンの固い皮膚を切り裂き、ドラゴンもシンイチを無視できなくなったようだ。

「シンイチさんの魔法、凄い威力ですね。強くなる早さが常人では考えられない。」

ロザーティアが驚きの声を上げる。

「ニーアさんたちは常識で考えない方がいい、俺たちは俺たちのペースで成長していけばいいさ。」

ようやく視界に入る帝国軍兵士を片付けてシンイチの元へたどり着いた。

「シンイチさん、加勢します!」

ユータがそう言ってシンイチの横に並ぶ。その後ろにロザーティアとユニテア、ジェイニスが構える。

「ありがとう!助かるよ。」

五人で体勢を整えドラゴンとの対峙となった。

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