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第百二十話  作戦会議

カレンはそのまま話を続ける。

「今日対峙して一つ分かったことは、私一人ではレイン将軍を抑えきれないということです。持ってせいぜい数分がいいところでしょう。倒せないまでも彼をその場に留め進軍させないだけの戦力が必要です。私と一緒にレオン将軍と戦い、サポートしてくれるメンバーが必要です。」

「っ!!」

セリドラが信じられないという表情を浮かべる、副団長として団長のカレンを支えその実力をよく知っているからこその反応だった。

「それほどなのですか、、」

心配そうにつぶやくセリドラとは対照的に、大丈夫よとカレンはあくまで明るく話している。しかし、カレンと並んで戦えると自信をもって立候補できる騎士団員はおらず、しばらくの間、沈黙が流れる。ゆっくりと立ち上がりそれを打ち破るように名乗り出るものがいた。

「じゃあ、俺たちにその役をやらせてもらえねえか、それとも役不足かい?」

ライジングサンのツォーガである。騎士団の面々から注目を浴び、慣れない状況で少し居心地が悪そうだ。

「あなたたちは、Aランク冒険者パーティの、、いえ、これ以上ない適任だと思うわ。」

カレンもわずかな時間ではあるが、ライジングサンの戦いっぷりを間近で見たばかりだ、彼らの力であればいけると思わせるだけの説得力がある。

「しかし、団長、彼らはここまでにかなりの戦果を挙げています。対レインにばかり注力しているとその脇を抜かれかねないかと。」

西の橋で戦っている第二騎士団の兵士長が意見を述べる。確かに彼らの戦いは、今日の前線の押し上げに大きく貢献しているのは間違いないだろう、その懸念についてはカレンも同意だった。

「じゃあ、そこは第三騎士団がサポートしよう。あと、中央も激しくなるだろうからそっちにも分けて配置かな。」

ザンナートが代案を提示する。カレンは待ってましたとばかりにその案に乗ることにした。

「ザンナート、ありがとう。ヘルゲスに到着してからの初陣でいきなり山場となるけど大丈夫かしら?」

「ああ、やわな鍛え方はしてないから問題ないだろう、合同演習のとき以来の共同戦線だな、よろしく頼む。」

「ええ、こちらこそ。」

合同演習というのは、2年に1度、第一~第四騎士団が集まり一緒に模擬戦で競うものである。第一+第四騎士団vs第二+第三騎士団で演習をしており、拠点制圧か、大将を倒した方が勝利するという形式の団体戦の模擬戦で、前回開催時は一緒に組んでやっていた。最後はクロスウェルとセーラのコンビにしてやられたが、もう少しで勝利できるというところまで行っていたことを思い出す。

「あのー。」

そのとき、後ろの方から遠慮がちな声が聞こえた。みながそちらに視線を向けると、冒険者のニーアが手を上げている。

「私たちは、明日も突き進みます。中央の戦線の維持は任せても良いですか?」

「私たちというのはニーアのパーティ3名で進む気か?さすがに無茶じゃないのか。」

「いえ、私たちとBランク冒険者パーティのブレイブファングにサポートをお願いしようと思っています。この戦いを早く終わらせるためには、相手の拠点を叩かないといけません。もちろん大将であるレインを討ち取ってもらえれば一気に流れは傾くと思いますけど。なので、レインの討伐と、敵の本陣の撃破の二段構えで行きましょうということです。」

「わかったわ、でも許可するにはあなたたちだけでは駄目ね。第二騎士団の一師団を加えてもらうわ。ザンナート申し訳ないけど中央もかなり大変になりそうよ。」

「一気に勝負に出るって形か、いいだろう。短期決戦は嫌いじゃない。」

ザンナートは笑顔で快諾する。

「もう私たちはかなり長く戦っているから、正直、すでに短期決戦って感じではないのだけどね。でもこうやって勝負に出れるのも第三騎士団が来てくれたからよ、感謝しているわ。」

カレンはそう言ってザンナートと握手する。そうして翌日に向けた軍事会議は終了となった。


同じ時刻ころ、ヘルゲス北部に設けられたワシュローン帝国の司令本部は重たい空気に包まれていた。そんな空気を振り払おうとレインが明るい声で話始める。

「いや、まいったね。まさか中央が抜かれちゃうなんて。。」

「レイン将軍!そんな暢気なことを言っている場合ではありませんよ。明日は中央を総力戦で取り返さないと。」

レインが前線にいる間指揮を執っていた一人の軍師が進言する。

「中央に関しては、うちの戦力も決して弱くはない部隊を投入したつもりだったけど、どういうことか説明してもらえる?」

レインは軍師の進言には回答せず質問で返した。

「それが報告によると、遠距離からの攻撃で麻痺状態となり戦闘不能とされたです。そう言ったものは捕虜としてとらえられているかと。一部のものは武装解除されたうえで釈放されている者もいるとのことです。」

「ふーん、遠距離からの状態異常攻撃か、、そんな厄介なものをセルディスは持っているのか。こっちの遠距離攻撃でその出元を叩くことはできないのか?」

「いえ、かなり遠くから放たれているようで、今の距離ではこちらの攻撃は届きません。被害が出るのを覚悟でだいぶ押し込まないことには。。」

「オーケー、分かった。中央と東は捨てよう、とりあえず適当に止めておいてくれ。俺が西を抜いてみせる。今日戦ってみた感じだと問題はなさそうだ。そうしたら一気に挟撃できるようになるだろうさ。」

「そんなに攻め急がなくとも、よいのでは、、?」

「俺は、こんな戦争さっさと終わらせたいんだよ。命令だから仕方なくやっているけどな。それとも、お前はまだまだ続けたいのか?」

先ほどまでのおどけた雰囲気から一転して、レインの目つきが鋭くなった。

「そ、それは、、」

レインの質問に思わず言葉を失う部下の兵士たち、それを見てレインは小さなため息を一つつき、また穏やかな表情に戻る。

「まあ、いい。とにかくさっさと終わらせるんだこんな戦争、正義も何もない。早く帝国領にして終わらせてしまえば、一般の民は普通の生活に戻れるからな。」

レインの想いに兵士長たちの顔も締まった表情となる、さらに勢いづけようと軍師の男が口を開く

「そう言えば報告がございます、ついに秘密兵器が到着しましたよ。しかも2つもです。召喚士のショーンには得意の召喚魔法で中央を止めてもらいましょうかね。」

レインが視線を向けると、ショーンと呼ばれたその男は黙って頷いた。うつむいておりフードで顔が隠れ良く見えない、レインとしてはこういった何を考えているかわからないタイプが苦手だ、昔の帝国軍内の派閥争いの中で嫌な思い出があるためだ。

「先ほどのレイン将軍の話の通り、中央はある程度奥まで引き込んでからショーンの召喚で一気に叩こうと思います。万が一、ショーンの攻撃を逃れたとしてもさらに二つ目の秘密兵器がわれらの司令部を守ってくれるでしょう。」

ギュンターが作戦の解説を加える。

「非戦闘員は避難していることは確認済みなのか?あれを召喚するってことかなり建物被害出るだろ?」

少し探りを入れるべく質問を投げかけるが、黙って頷くのみである。代わりに副将軍に命じられたギュンターが答える。

「そこは大丈夫です、レイン将軍に命令を受け数日前から北部周辺に住民はおりません。」

せめて少しでも話ができれば信頼も得られるというものだろうにと思ったが仕方がない、これ以上問い詰めても状況は変わらないだろう。

「分かった、それなら任せるよ。」

ギュンターにそう言って、最後にギュンターの後ろにいる人物に視線を移した。

「そして、司令部の守りは任せたぜ、勇者アンナ。」

「、、、分かっているわ。」

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