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第百十九話 大将軍レイン

ニーアたちが中央の橋を制圧する数時間前、西の橋で大きな局面を迎えていた。

セルディス第二騎士団長カレンが複数の帝国兵を倒し、一息ついたときだった。カレンを追い越して前線を押し上げていった騎士団兵士と冒険者たちはが次々と橋の下に落とされていく。

「何が起きたの?!」

道が開かれ一人の帝国軍の男が現れた、服装からしてかなり身分の高い兵士に違いない。

「将軍、あまり前に出すぎないように。」

「そうは言っても前に出ないと敵の大将の顔が見れないだろ。」

部下の制止を振り払い前に出て、カレンに声をかけた。

「あんたがセルディス第二騎士団団長のカレンか。」

「その通りだ、そういう貴様は何者だ!?」

「俺か、俺の名はレイン、帝国の大将軍ってのをやらせてもらっている。」

場の空気が一瞬にして変わる。

「カレン団長、お下がりください。この男は危険です。」

側近のシグとホルンがカレンを守るように前に出る。名前だけは聞いたことがある帝国の二大巨頭と言われる大将軍、その一人が目の前にいる。ただそこに立っているだけなのに、凄まじいプレッシャーを感じる。先ほどまでのセルディス側の進軍の勢いがぴたりと止まった。

「さて、俺が来たからにはこの戦線はこれ以上進めさせるわけにはいかないぜ。」

軽い口調でへらへらとしているが決してそれが虚勢や傲慢さからくるものではないとカレンは感じた。しかし、一方で、ここでこの男を討ち取れば今回の侵略の終結に向けた大きな転換点となることもまた理解している。

「こんな奴は無視して一気に突破するぞ!」

功を焦ったBランク冒険者パーティがしびれを切らしレインを避けて通り抜け進軍しようとする。しかし、レインが二、三歩動いたかと思うと次の瞬間にはその冒険者たちは切り捨てられていた。自分の身長に近い巨大な剣をいとも簡単に振り回している。

「おいおい、つれないな。せっかく遠路はるばる来たんだから無視しないでくれよ。」

冒険者が倒されたタイミングに合わせてセルディス軍の後方部隊が弓で数十射と攻撃を浴びせたが、レインとその周りの騎士が全て叩き落した。間髪入れずにセルディス騎士団がレインへ攻撃を仕掛けるが、一振りで3人を切り倒し、後続で仕掛けてくる兵士に対しては相手の攻撃が届く前に体術で剣の持ち手や膝などのウィークポイントをつぶすことで次々と無効化していった。

「!!」

強い、カレンも一気に緊張感が増した。ここまで前線を押し戻してくるまでに戦ってきた相手とは比べ物にならない強さを感じる。シグの指示により、カレンとレインの間にはセルディス軍が入り、帝国軍も入り混じることで距離が開いていく。

「やれやれ、セルディス軍の騎士団長さんはつれないねぇ。せっかく出向いたのに手合わせもしてくれないなんて。」

レインの言葉にホルンが隣でカレンに言づてする。

「挑発です、乗らないでください。」

「わかっているわ、今は相手の力を分析でしょ!」

カレンもさすがに軽率には動けない。しかし、味方の兵士を盾に見守ることしかできな自分の不甲斐なさにイラついていた。その後の数時間はセルディス側が、これまでに押し上げた前線を徐々に下げる事態となった。しばらく戦況を見つめていたが、数で押してもどうにかなる相手ではないことがわかる。それならば単体の戦闘能力が高いものをぶつけるしかないのではないだろうか。味方の兵士が次々とやられていくのが我慢できなくなり、カレンはついに前に出てレインの攻撃を止めた。

「お、いいねえ。ようやく出てきてくれたか。退屈していたとこだ、楽しませてくれよ。」

レインが余裕の笑みを浮かべている。

「カレン隊長!お手数をかけすみません。」

「大丈夫よ。ありがとう、頑張ってくれたわね。いったん下がって治療を受けなさい。」

「はっ!」

カレンに助けられた兵士が下がるのと入れ代わって、シグとホルンがカレンの隣に並んだ。

「我慢してといったではないですか。」

「結局こうなるのですね。」

「私にはやっぱり無理だったわ、部下や仲間が傷つくのを何も手出しせずに見ているなんて。。いずれにしろ避けては通れない相手だわ。」

「ま、こうなることは織り込み済みでしたけどね。そのためについて来たという面もありますし。」

カレンたちが前に来たことでレインもがぜんやる気になったようだ、先ほどの攻撃とは比べ物にならないほどの速さでカレンに向かって斬り下ろした。それをシグとホルンが二人掛かり剣を交差する形で受け止める。カレンはその下をくぐるように素早く前に出て、ラピッドインペールズという二段突きの剣技を繰り出した。一撃目は鎧に阻まれたが、二撃目は腕の鎧の隙間に入り、かすり傷を負わせる、レインが一歩下がった。

「将軍!」

周りの帝国兵が動揺して声を荒げた。レインがそれを手で制する。

「やるな、さすがは団長様だ。もしも剣に毒が塗ってあったら勝負ありだったな。まあ、セルディス軍の騎士団長様ともあろうお方がそんな真似をするとは思わないけどな。」

あっけらかんとして言うレインの言葉に、カレンも内心、確かにそうしとけばよかったと思わないでもなかった。こんな強い相手と長い時間を戦いたいとは思わない。

「さて、第二ラウンド行ってみようか。」

そう言ってレインが構えたところに一人の帝国兵が後ろの方から前線に出てきて、「報告がございます。」とレインの耳元で何かを伝え始めた。それを聞いてレインの表情が曇る、しかしすぐに元に戻りカレンの方に顔を向けた。

「残念だが今日はここまでのようだ。やるじゃねえか、中央はお前たちの勝ちらしい。今日はあくまで顔を見に来ただけだからこれくらいでよしとしておくよ。本当の勝負はまた明日だ。」

「待て、逃げるのか!」

カレンが怒鳴るも、レインは片手をひらひらさせすでに後退し始めていた。追いかけようとするカレンをシグとホルンが制した。

「今日はこれでよいでしょう、相手に傾きかけた戦況の流れを食い止めることができました。明日以降に向けて本格的にレイン将軍の対策を練らないといけません。」

「そうですね、さっきの一撃でまだ手がしびれていますので、あのまま続けていたら二撃目は防ぎきれませんでしたよ。」

二人の話を聞きカレンは冷静になった。


日が暮れ、第二騎士団の司令本部に戻ると、副団長のセリドラが上機嫌で迎えてくれた。

「お疲れ様、カレン。大活躍だったみたいね、ワシュローン帝国の二大将軍の一人と渡り合って退却させたというじゃない。前線も、押し込めたし最高の結果ね。」

トータルとして前線の押し込みはプラスだったものの、レインが来る前に稼いだだけでそのあとはかなり押し戻されたという話をするが、セリドラはあまり気にしていない。

「それに他の橋もかなり前進したわ。中央はついに橋の制圧を完了して、いよいよ北部地区の奪還に入ろうかというところまで来たわよ。」

えっ!?速すぎる、中央は一体どうなってるんだ? カレンはにわかには信じられなかった。今日戦ってみて改めて帝国軍の兵士の練度の高さは実感した。レイン将軍は別格だとしても、他の兵士はどの戦場でも同じくらいの強さはあるだろう。西部の橋はようやく半分くらいまでである。数日前から押し込んでいたとは聞いていたがそんな簡単にいくものだろうか。

「ちょっと、どういうこと?敵の罠ってことはないの?」

思わず疑いの言葉が出るくらいには動揺していたようだ。

「周辺を十数メートルは警戒し、敵兵が潜んでいないことは確認済みです。何を根拠に罠というのですか?」

作戦会議の場にはそれぞれの戦場で活躍した冒険者も呼ばれていたようだ、ニーアという、第一騎士団お墨付きの冒険者に咎められ、カレンは失言だったと言い訳をした。

「まあ、でも、カレン将軍の言わんとすることはわかる。明日以降は中央が激しくなりそうだな、目立つ杭は打たれるというやつだ。」

「ザンナートさん! 来ていたのですか!?」

カレンはまたまた声を大きくした。第三騎士団の団長、ザンナートがいることに気づいていなかったのだ。

「ああ、今日ついたんだ。遅くなってすまなかった。明日からさっそく打って出るぞ。」

「ありがとうございます、私も。ご一緒します。」

「ちょっとちょっと、困ります。どうしてどの騎士団も団長が自ら最前線に行きたがるのかしらね。少なくとも一人は司令部に残ってもらわないと。」

セリドラが二人を諫めるが、カレンは主張を曲げなかった。

「私は出るわよ、あいつは明日も来るわ。ここで止めないと押し込まれるのは見えている。」

「オーケー、じゃあとりあえず明日は私は司令本部に残り、前線は部下たちに任せることにするよ。実際、私はカレンほどの武闘派ではないからね、適材適所というやつだ。」

「ありがとうございます。ただ、編成は少し相談させてください、西の橋の戦力増強が必要です。あのレインという男は、それほどの実力です。」

カレンはきつく口を結び、その場にいるみなの顔を見回した。

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