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第百十七話 反攻

下見と見知った顔との挨拶を終え、三人は部屋に集まった。明日に向けての最後の確認をしておくためである。

「じゃあ確認ね、前衛はシンイチと私で受け持つからタカキは後衛から援護をお願い、致命傷を与えないよう硬質ゴム弾、あるいは麻痺弾を使うってことでいいのよね。」

「ああ、相手を見て使い分けるよ。強そうなやつには麻痺弾だな、鑑定スキルで見る余裕があるといいんだがさすがにそんな余裕があるとは思えないしな。」

「そうね、手加減して自分の命がとられたらしゃれにならないもんね。本当にやばかったら麻痺弾と言わず実弾で対処することも頭に入れておいてよね。シンイチは、ある程度自由にやっていいわ。簡単に負けることはないと思うけど油断しないように、Sランクの冒険者もいるかもしれないって話だからね。闇属性魔法で相手の体力を奪うのであれば奪い過ぎないように注意してね。」

「うん、わかったよ。」

シンイチがやや不安そうな表情でうなずいた。そんなシンイチを見てタカキが肩に手を置き語り掛ける。

「大丈夫だ、俺も、ニーアも近くにいる。シンイチを危険にさらすような真似はさせないさ。」

「明日は、初日ってこともあるし様子見しましょう。他のみんなと足並みをそろえて無理をせず戦って相手の強さを測りたいわね。そのあと、二、三日して行けそうだったら一気に突破して、主力である騎士団が戦っている大橋の方の敵兵を挟み撃ちにするわよ。」

二人の強気な言葉を聞いてようやく笑顔がこぼれ力強く頷いたシンイチだった。


翌日、早朝から戦場行くと、第二騎士団から中央にかかる橋での戦闘を騎士団に依頼された。Aランク冒険者パーティを同じ橋に配置するのはもったいないということで、ビースツガーディアンは東の橋からの攻め込みとなった。

最前線は騎士団兵士が並びそのすぐ後ろに冒険者たちが控えている。状況に応じて騎士団を追い越して行っても問題ないとのことだ。

昨日も会ったブレイブファングのユータたちとの共闘となり、ロザ―ティアも喜んでいる。

「本当にまた一緒に戦えるなんて嬉しいです!」

「頑張りましょうね、セルディス王国を帝国から守るために。」

「それにしても今日は敵方の攻め込みがいつもより遅いですね。」

数日前から戦闘に参加しているユータが言った。

「そうなのね、逆にこっちからどんどん押し込んでいったりはしないのかしら?」

「ニーア達が来てくれたのでそれも可能かもしれないね。」

ユニテアが同調すると、Bランク冒険者パーティの一つであるタフライブのリーダであるタサダが口を挟んだ。

「へっ、何言ってやがる。昨日までBランク冒険者が4パーティもいて、防戦一方で押し込まれないようにするのが精いっぱいだったんだぜ。Aランク冒険者パーティーが一組来たくらいでそんな簡単に戦況が変わったら苦労はねえよ。」

隣にいたもう一つのBランク冒険者パーティのエスエスワンのリーダのゴウンもうなずいている。

「しかもBランク冒険者パーティーのピースシーザーは明日から別の橋に移るって話じゃねえか。入れ替えで、しかもAランクがあんた一人っていうパーティだとそんなに戦力は変わらないだろ、いやむしろマイナスかもしれないな。」

ここまで、この橋を守ってきたという自負があったのだろう。ぽっと出のAランク冒険者に好き勝手されたくないという牽制の意味があるのかもしれない。他の冒険者からもそうだそうだと反論の声が上がった。実際、街の外で戦っていたのがいつの間にか街の中央まで侵略を許してしまっている現状を見るに帝国の圧力は激しいものがあるのだろう。

騒ぎを見守っていたピースシーザーの副リーダー、ティークェイが口を開いた。

「いや、少なくとも我々よりマイナスってことはないでしょう。以前に護衛任務でご一緒させてもらったことがありますが、強さは折り紙付きですよ。」

味方を得たとばかりにユータとユニテアも続く。

「そうなんです!ニーアさん達ははっきり言って別格です。魔族とも互角に渡り合っていますし、実力的にはSランク冒険者と遜色ないといっても過言はないくらいで…」

まだまだ続きそうなユータの反論であったが、ニーアが途中で制した。

「話はそこまでよ、来たみたいね。」

そう言ってニーアは騎士団をすり抜けて前線へ出ていく。帝国兵が見えるや向かっていき戦闘を開始した。相手に先に攻撃をさせ、それを受けてからの反撃で一撃で腕を斬ることを徹底する。腕の負傷により武器が持てなくなるため、それ以上の戦闘ができなくなるようにするためである。攻撃範囲が限られるためかなり高度な技能が求められるが、致命傷となることはない。敵兵とのレベル差があるニーアだからこそなせる業である。

「戻ってすぐに治療すれば治るからさっさと引いてよね。あ、それと武器は没収するわよ。」

こうして、ニーアの周りには退却した帝国兵が落として行った武器が大量に散らばる状況になった。

その少し後ろでは、シンイチがタカキ特製の武器で戦っていた。コーティングされた剣のため切りつけるというよりは叩きつけるという形になるが、その分躊躇することなく攻撃ができる。とはいえ、相手の骨を折ることになり、その感触はあまり良いものではなかった。久々の剣での戦闘だったが、一般兵が相手だとちょうどよいレベルでの戦いとなった。ニーアのように一撃でとはいかないものの、何度か斬り合っていくうちに相手の隙をつき難なく制圧することができた。対人経験が少ないシンイチだったが、以前戦ったAランク冒険者パーティの人たちほどの脅威は感じない。

「慣れない武器でどうかと思ったけど、これならなんとかやれそうだな。帝国兵はCランクかBランク冒険者くらいかな。」

シンイチは少しだけ自信を深めた、これなら相手を殺すことなく戦闘不能にできそうだ。

一方、タカキは苦戦していた。やはり鑑定スキルを使う余裕などはなく、銃を撃つ間もなかなか与えられないため防戦一方となっていた。何とか隙を見て撃つものの、相手の鎧に阻まれ相手を倒すところまでいかないのが実情だった。

「くっそ、ダメか、せめてもう少し急所を狙う時間を作れれば。。」

仕方なくゴム弾を早々に諦め、麻痺弾に詰め替える。一発目が相手の体に命中し、麻痺を起こしその場に倒れた。

「よし、これでなんとかやれるか。」

しかし、その後も敵兵の鎧で阻まれしっかりと当たらなかったり、外れた弾の跳弾が味方の兵士に当たりそうになったため、かなり気を使った戦いを強いられ、大した戦果なく一日目を終えることとなった。


「まあ、最初はこんなものかしら。」

日が傾き、お互いに頃合いと思ったのか波が引くように戦闘が収まっていく。

「さすがニーアさんです、僕も腕を上げたと思っていたんですが、久しぶりにニーアさんの戦いっぷりを見せられるとまだまだだなって思います。」

「ユータもかなり余裕があるじゃない。ちゃんとパーティの仲間をかばいながら戦っているのに討ち漏らしもなかったし、戦い方がすっかり熟練の戦士って感じね。その若さでなかなか出せるものじゃないわよ。」

「そ、そうですかね。ニーアさんにそんな褒められるとは恐縮です。ちょっと前に受けていた依頼がハードだったので、、そこで一気に経験値を稼いだおかげですかね。」

「ユータも苦労したのね、そろそろAランク冒険者も見えてくるんじゃないかしら。」

「いやいや、僕なんてまだまだですよ。それより、明日からもよろしくお願いします。」

「こちらこそ頼りにしてるわね。」

ユータは照れたように笑い自分のパーティに戻っていった。

宿に戻った後、ニーアが二人に今日の振り返りと明日以降の作戦について話し始める。

「初日無事に戻ってこれたことを喜びましょう。やっぱりこんな戦争は早々に終わらせないといけないわ。敵兵のレベルもだいたい掴めたけどそこまで大したことなさそう。明日以降、奥の方まで攻め込みたいわね。」

「たった一日で?ちょっと早くない!? 僕はもう少し慣れないときついかも。1対1で後れを取るような相手じゃないけど、次から次へと囲まれるとやっぱ対処が難しくなる場面もあったし。ユータにはだいぶフォローしてもらったよ。」

「まあ、ユータは今日が初日じゃないし、こういう戦いに慣れた部分はあるわね。本人の実力もかなりアップしているみたいだし、ちょっと無双している感はあったわね。シンイチもあれくらいはできるはずなんだけど、殺し無しの縛りはやっぱ結構なハンデね。」

「そうだとしても、その縛り自体は継続するよ。」

シンイチが強い目つきで言い返す。

「大丈夫、私もそのつもり。じゃあもう数日待ちましょう、その間にしっかりと慣れてね。ところで、タカキはどうだったの?」

「俺は、あと数週間は必要そうだ。根本的に戦い方を見直さないとだめそうだ。。」

戦う前の強気な姿とは打って変わり、憔悴しきったおっさんがそこにいた。

「あら、そうだったの?特にけがもしてないようだったけど、そんなに駄目だったの?」

あまりにも哀れな姿だったため、思わずニーアも優しく声をかける。

「ああ、騎士団連中や、他の冒険者に助けてもらいながらだったから何とか、大きなけがなく切り抜けられたって感じだなー。完全にお荷物だったよ。。シンイチを守ってやるとかって言っておきながら情けない戦いだった。俺の場合、相手を殺さないようになんて言っている場合じゃないな。。」

「そうね、そこがやっぱ難しいか、、タカキは前に出てこなくてもいいんじゃない?」

「それでいいなら助かるが、、ニーア明日から少しの間時間をもらえないか?戦い方を大きく変えようと思うんだ、そのために武器の改造をしたくて。」

「そう、いいわよ別に。シンイチも慣れるのに少し日数がいるって言っているし。」

「ああ、二、三日あれば仕上げて試すくらいはできると思う。基本的には今あるライフルで麻痺弾を撃てるようにするだけだから。」


そこから数日間の間は、タカキは別行動で戦闘に参加せず部屋で武器の改造に勤しんだ。

その間、ニーアは単騎で前線に出て押し込んでいく。

「さってと、タカキが戻って来るまでにこの橋くらいは制圧したいわね。ユータ、フォローしてくれる?」

「了解です、ニーアさんによって戦闘不能にされた敵兵が落とした武器は、Cランク冒険者パーティが回収するようお願いしました。僕らもついていきますので、後ろは気にせずどんどん行っちゃってください!」

「おっけぃ!頼もしいわね。最近イライラすることも多かったから、思いっ切り暴れさせてもらうわね。」

ニーアもやる気満々のようだ、シンイチはやるしかないと気合を入れ直す。そんなシンイチにニーアは声をかけた。

「シンイチは今回は無理してついてこなくていいわよ、まだまだ序盤だし。今のうちに乱戦に慣れること、いいわね。このレベルだと一人で五、六人は同時に制圧するくらいになってもらわないと。」

ちょっと安心したような、残念なような悔しいような感情が広がる。しかし、ここがまだ山場ではないということだ、時間があるうちに自分を高めるしかない。気持ちを切り替えて自分の役割を果たそうと思い直した。

「分かったけど、相変わらずハードルが高くない?それはそうと、ニーアも油断しないように、気を付けてね。」

「誰に言ってんのよ、分かってるわよ。」

その後、数日のうちに全長100メートルの橋を一気に制圧し向こう岸の直前まで押し戻したのだった。


ニーアたちが来てから四日後の夜、セルディス王国第二騎士団本部、騎士団長カレンの元に兵士長が報告に上がった。

「カレン団長、戦況に変化があります。ここ数日の戦いで中央の橋と東の橋で大きくセルディス側が押し込んでいる状況です。どうやら新しく加入したAランク冒険者の功績が大きい模様です。」

「中央はニーアって言ったかしら、全身鎧の女冒険者よね。さすがは第一騎士団のお墨付きってわけね。クロスウェルやセーラが気にかけるだけはあるってことね。」

「はい、鬼神のような強さで敵兵を一日に200名以上倒しているとか、Bランク冒険者パーティのブレイブファングがうまくフォローして退路を断たれないよう立ち回っていると聞いています。」

「ふーん、200人以上ね、思ったより多くはないわね。橋の上とはいえ帝国兵の数はもっと多いと思うのだけど。」

カレンはざっと頭の中で計算する、一日中戦ったとして10時間戦闘があったとすると1時間当たり20人の兵士を倒すことになる。一般兵士のレベルであれば一気に10人くらい倒すことはカレン自身だってできると思ったのだった。

「それによって、わが軍の兵士たちの士気も上がっているようです。バランスが崩れるのであまり前進しないように伝えたのですが、聞き入れてもらえず。どうしましょうか。」

「東の橋の戦況はどうなの?」

「こっちも、Aランク冒険者パーティのビースツガーディアンを筆頭に中央ほどではないですが押し込んでいます。どうやら中央が押し込んでいるのを見て、合わせて前線を上げていったようです。数日前に中央から東に移したピースシーザーがうまく立ち回って騎士団とビースツガーディアンの間をうまくつないでいるとのことです。」

カレンはしばらく考えを巡らせた。第三騎士団も明日か明後日には合流できると聞いているため、後ろの守りについて心配はないだろう。

「分かったわ、西の橋は騎士団が押し込みましょう、私が出るわ。冒険者にばかり頼っているだけじゃ情けないものね。」

「団長!?自ら出陣するのですか?どうかご再考を。」

側近のシグが慌てて止める。

「いえ、こういうのは機を逃してはいけないわ。全体の指揮は副団長のセリドラに任せる。」

「しかし、万が一のことがあってはなりません。誰か腕が立つ別のものでも。」

「自分で言うのもなんだけど、セリドラより私の方が戦闘能力が高いと思っている。そして軍の指揮能力においてはセリドラと私は大差ない、いや、むしろ常に冷静沈着なセリドラの方が優れているかも。」

「カレン、本気なの? さすがに私もどうかと思うわよ。」

思わずため口で話しかけるセリドラ、しかし周りの目を気にしてすぐに体裁を取り繕い冷静になる。

「カレン団長、勝算があるということでよいのですね?」

「ええ、西の橋は任せて。その代わり全体の盤面はしっかり見ておいてね。」

黙って頷くセリドラ、もう一人の側近であるホルンが諦めたように言った。

「では側近の我々二人も出陣します、こればかりは団長が何と言おうと譲りませんよ。」

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