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第百七話 海のクエスト(3)

「ニーアの魔法剣技でもダメなのか。」

タカキが唸るようにつぶやいた。だが全く聞いていないというわけでもなさそうだ、巨大TPJの体の一部がジェル状になって崩れていく。その中には通常サイズのTPJになって海に落ちていくものもいた。

「もしかして、海のTPJが異常に増えたのってこいつのせい?」

ようやく回復して起き上がったシンイチが、海に落ちていくTPJを見て言った。

「もしかしなくてもそのようね。こいつを倒せばこの件は終わるはずよ。」

巨大TPJが反撃で飛ばしてくる無数の毒液を躱しながらニーアが言う。幸い、タゲとりをしてくれているためタカキとシンイチには飛んでこない。

「ニーア、あの連続攻撃を簡単にかわしているけどすごいね、僕だとちょっと無理かも。」

「そうなると、当然俺にも無理だな。」

「しかも、僕らと話をしながらだし、、あと、たまに僕らの方に飛んできそうな毒液をエアスラッシュで撃ち落としてくれているね。」

「もはや、サーカスの領域だな。」

タカキもシンイチも感心しきるばかりである。見とれている場合ではない、何とか倒す方法を考えねばと思い直し、シンイチがニーアに声をかける。

「地道に削るしかないかな?」

「ちょっと待って、もう一つ試してみるわ。」

そう言ってニーアはタイミングを計って雷属性魔法のライトニングを打ち込んだ。しかし、これも目に見えて大きな効果というのはなさそうである。

「うん、やっぱダメかも地道にいきましょう。」

「じゃあちょっと僕にも試させてよ、全力でやるよ。」

「ちょっとシンイチ、島ごと消し飛ばすのはなしよ。」

無人島は直径数百メートルくらいの小さな島で、陸上競技のトラックを一回り大きくしたくらいのため、強力な魔法を使うとあながちニーアの表現は大げさではないのかもしれない。陸地がなくなると、水の中で巨大TPJの相手をするのがさらに面倒になると思っての発言である。

「ブレイズキャノン!」

火属性上級魔法が命中し大きな炎が巻き上がった。その熱が自分たちのところまで届いた。

「おお、すごいな、シンイチがこんな魔法が使えるなんて。」

「まあまあね、だいぶ強くなってきているようで私も指導したかいがあって嬉しくなるわね。」

「へへっ、僕もなかなかやるもんでしょ。でもまだ全力じゃないよ、ニーアに言われたから少し弱めておいた。本当はもっと炎をぶつける速度が速くて、物理的な衝撃も併せてダメージを与えるんだけど、あのグニャグニャの体だからそっちの効果はいいかと思って。島の地面も守れるし。」

シンイチの解説を聞きながらなるほどと思いながら状況を見守るタカキ。シンイチの魔法が巨大なTPJを燃やし続けているが、岩肌しかないためそれほど周囲に延焼はしていない。その間にも、次々と普通サイズのTPJが崩れて海に落ちていく。タカキがそれを見て叫んだ。

「シンイチまわりの海水を氷属性魔法で凍らせてくれ。水の中に入られると厄介だ。」

「あいよー。」

シンイチがすぐさま氷属性上級魔法フローズンストライクで近くの海水を凍らせた。周辺の海が氷漬けになり固まった。先ほどまでの熱気が急にひんやりと変化したのを感じる。

「久しぶりに使ったけど、前よりも威力がアップしているみたい。凍らせる範囲が段違いに拡がっているよ!」

自分のレベルアップを実感し思わずうれしくなるシンイチ。

「シンイチ、ナイスだ!」

タカキが親指を立てる。先ほどまで海に落ちていた通常サイズとなったTPJが氷の陸地に溜まり始める。

「よしあれを、始末しよう。あんな強力な魔法を連続で使っているとMPが心配だが、シンイチ、ファイアストーム行けるか?」

「全然問題ないけど、せっかくの氷の陸地が溶けちゃうかも。」

「そうか、それはまずいな。。どうするか、、ん!そうか、逆にTPJ自体は凍らせられないのかな?」

「一番最初に試したときは初級魔法のアイスバレットでやったけど効かなかったね。上級魔法の威力だったら行けそうな気がする、ちょっとやってみるよ!」

そう言って、シンイチは普通サイズのTPJの群れに再びフローズンストライクを放つ。今回は、きれいに氷漬けにすることができているようだ。

「上級魔法だといけるみたいだね。でもあれどうするの?もう倒したことになっているのかな?」

「ちょっと待ってくれよ、確認してみよう。」

そう言ってタカキは銃を取り出し、通常の弾丸を打ち込んだ。命中した氷漬けのTPJは粉々になって砕けた。

「タカキの銃って効かないんじゃなかったの?属性付与した弾丸を使ったとか?」

「いや、普通の弾丸だ。あいつらの体が柔らかいから普段だと攻撃が効かないんだが、シンイチの氷属性魔法で凍らせて体内の水分を奪ってやれば物理も聞くと思ってな。」

「なるほどね、さっすがタカキ、頭いい!」

「へへっ、純粋な腕力や魔法力で劣る分、こういうところで活躍しないとな。これでどんどん狩れそうだな。」

そう言いながら次々と打ち抜いているタカキを見ながら、シンイチは素直に感心している。

「じゃあ、本体も凍らせられたらすぐに終わるんじゃない?ちょっとやってみるかな。もう一発、くらえ!」

シンイチはフローズンストライクを今度は巨大なTPJに向けて放った。

見事に氷漬けにすることができたが、すぐに表面がはがれ、また元の姿に戻ってしまった。

「あいつだとデカすぎて、体内の全身まで凍らせるのは無理みたい。」

「たぶん、魔法に対する防御も通常サイズのTPJより高いんだろう。ニーアの雷属性魔法でも倒せていないわけだし。」

氷漬けにすることで一時的に攻撃がやんだので、ニーアが二人に近づいてきた。

「だいたい攻略法としては見えたわね。私が本体を削るから、あふれ出る細かいのは二人で始末していってくれる? シンイチのフローズンストライク次第だけど、あと何回くらい使えそう?」

「感覚的には4,5回は大丈夫だと思う。もう少しペースを落とせば、MPも自然回復するから追加で1,2回は行けるかも」

「じゃあそれをめどに仕留めないとね。」

「一応MPポーションもあるぞ。」

「それはわかっているけど、目標の範囲でしっかりやれることをやらないといざって時に倒しきれないってなるのもまずいからね。」

ニーアの意識の高いのには感心するなと思いながら、惰性で倒すより明確な目標をもって取り組む方がよいだろうとタカキも賛成した。

三人がそれぞれの、役目を果たし、ボスのTPJを削っていくと、そのサイズがどんどんと小さくなっていく。

「これで最後ね!」

そういうとニーアが6回目の雷属性上級魔法ギガライトニングを使い、巨大なTPJを仕留めたのだった。

「やったー終わった! ギリギリだったけど、何とかMPもったよ。」

「お疲れ様、二人とも。あとは海に浮かんでいるTPJを片付ければ、完全にこの件は終わるわね。まだ、問題のカイフォースドシャークがまだ残っているけど。」

「とりあえず、素材回収しておかないと、TPJの麻痺毒で麻痺弾を作りたいんだ。」

「あら、それなら私これまで倒したのかなり保管しているわよ。」

「おっ、さっすがニーア!助かる。それでも、在庫はなんぼあってもいいからな、取れるだけ取るぜ。」「確か銃で人を傷つけないためだったよね、タカキはどんだけ模擬戦する気なの?」

シンイチもあきれ気味に笑う。

「そろそろ、応援の冒険者が集まってくるころだから、普通のTPJの始末はそっちに任せてもいいかも。素材回収はギルドの依頼として出しておきましょう。私たちがすでに出した依頼に追加事項として付け加えておけばいいと思うし。」

倒したTPJの素材回収を終え、岩肌の無人島を散策することにした。

着岸した場所からちょうど反対岸に着いた時、シンイチが何かを見つけた。

「あれなんだろ?」

そう言って近づくと、そこには巨大なサメが打ち上げられていた。

「これって、、」

「ああ、間違いない俺たちのクエストのターゲットだな。」

タカキが鑑定スキルで確認をした。

「なんでこんなところで、、」

ニーアがしゃがんでカイフォースドシャークをよく観察をする。

「これは、、?」

肌の表面にいくつも小さな穴のようなものが不規則に空いていることに気づいた。

「クラゲに刺された跡みたいだな。」

タカキが横からのぞき込んで言った。

「じゃあ、TPJにやられたってことかしら。魔物同士で縄張り争いでもやっていたのかしらね。」

「でもこれで今度こそギルドの依頼クエストも完了ってことんだよね?」

「ええ、ちょっと拍子抜けだけどそうなるわね。一応証拠だけもらっていきましょう。」


数日ぶりに陸地に戻り、ギルドに事の顛末を報告した。元々受けていたカイフォースドシャーク討伐の依頼は達成ということで認めてもらうことができ、かつ、明日には冒険者も集まり船も出せそうとのことで大々的なTPJの駆除も始められそうだ。

念のためにと冒険者ギルドに確認をしてみたところ、カイフォースドシャークによって命を失った人というのは今のところいないということだった。そもそも、この魔物はあまり人を襲わないらしい。このクエストを失敗したというBランク冒険者も船を沈められ戦闘継続ができなくなり戻ってきたとのことだ。最近の2組の冒険者パーティが行方が分からずとなっているが、TPJによってやられてしまった可能性もある。

「なんか、ある意味カイフォースドシャークは人間の海を守ってくれていたような感じだね。あいつがいなくなってTPJが増えてきたみたいだし。」

「そうね、魔物との共生っていうのかしら、何でもかんでも倒してしまうのも考えものなのかもね。」

「人間の自分勝手な側面がよく表れているな。この世界にはいろんな人間以外にもいろいろな生物がいる訳だから、何でも悪と決めつけて排除しようとするのはエゴだよな。実際、現実世界でもサメの中で人を襲うのはごく限られた種類だっていうしな。」

「でもそんなこと考えちゃうと、普段、魔物と戦うとき困っちゃうよね。今まで倒してきた魔物の中にも槍いうのがいたのかな。。。」

「そこは気にする必要ないわよ、基本的に人間に向かって襲ってきているんだから。」

ニーアの言葉に、シンイチはわかったと小さく頷いた。

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