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第百六話 海のクエスト(2)

翌日、朝早くから現地に向かう。着くや否やシンイチが声を上げた。

「あれ、昨日より陸に近づいてない?」

「ああ、そうだな。目印にしていた岩との距離がほとんどないくらいまで近づいている。」

「じゃあ、やっぱりまずいってことだよね?」

「そうね。昨日結構な数を倒したのに陸に近づいてきているってことは、さらに討伐ペースを上げないと。」

そういうとさっそくニーアは討伐を開始した。それを見ながらタカキとシンイチは考えてしまった。

「いちいち水の中から引き上げないといけないのがなぁ、」

「効率悪いよな。。水の中にいる奴に直接フレイムバーストぶつけるのはダメかな?」

「たぶん、水の中だとだめだと思う。」

「だよなぁ。。俺の銃も貫通してダメージが入らないっぽいんだよな。属性を付与した弾丸は試していないが、これだけの数がいると弾切れになるのは確実だしなあ。。」

仕方なくチマチマと一体ずつ倒し始める。しばらくそのやり方で討伐していると、ニーアがやってきた。

「何やってるの?ずいぶんと時間がかかるやり方ね。そんなんじゃ間に合わないわよ。」

「でも水の中だと魔法の威力が落ちて倒しきれないんだよね。ニーアみたいに雷属性が使える訳じゃないから。」

「じゃあこうしたらどうかしら?」

そう言ってニーアが中級風魔法ストームインパクトを使い竜巻を起こす。それに巻き込まれたTPJが次々を空に浮かび上がった。

「ほら、今!落ちる前に倒して!」

なるほど、と意図を理解したシンイチが空に向かって火属性魔法フレイムバーストを放つ。一度に複数匹を簡単に倒すことができた。

「おお、すごい。これはいいな。水の中じゃなければ意外と簡単にまとめて倒せるってことか。あとはどうやって、たくさんのTPJを水の中から飛び出させるか、そこが課題だな。。」

「じゃあタカキ、ニーアみたいに上空に飛ばしてよ。」

「おいおい、無茶言うなよ。俺は風魔法使えないんだから。」

ニーアは既に単独での討伐に戻ってしまっている、見本は見せたのであとは自分たちで考えろということだろう。なかなかのスパルタだが、思考停止で言われたことしかできないのでは、いざというとき役立たずだという考えは理解できる。

「うーん、よし、じゃあこれを試してみるか。」

そういうとタカキは錬成スキルで金属の平らな板を作り出す。それをどんどん大きくしていき、船のように水の上に浮かばせた。

「軽い金属だから、浅めの喫水で充分なのがいい点だな。そこにこれまでに釣り上げた魚を乗せてっと。」

そう言って、浮かべた金属板の淵に魚の一部を海水につけて並べていく。さらに中央部分にも敷き詰めた。

「あー、僕達が食べる分が。。」

「ん、そうか。じゃあ、これまで倒したモンスターの素材をおいてみるか。どっちに食いつきがいいか試してみるかな。モンスターでも行けるならモンスターをメインにしよう。」

モンスターも四辺のうち半分に敷き詰めて様子を見る。しばらくすると、それにTPJが集まってきた。魚やモンスターを餌と認識して、食べに来たようだ。

「ほら、上に登ってきただろ、板の真ん中までクラゲで埋まったらシンイチの魔法でやっちゃってくれ。俺は2つ目3つ目と板を作るから。」

「さっすがタカキ! これなら楽な仕事でいいね。」

「だろ、俺も錬成スキルを高められるしwin-winってやつだ。ただ、これだと俺のレベルが上がらない気がするな。少しは攻撃した方がいいかも。」

タカキが、最初に弱いファイアボールで攻撃した後で、シンイチが殲滅という形をとることで、

経験値もシェアできることが分かった。

「ところで僕の魔法で、この金属板は燃えないかな。何回もやっていたら金属でもある程度焼いちゃうきがするんだけど。」

「たぶん大丈夫だ、それアダマンタイトだから軽くて丈夫なんだ。」

「えーっ!そんな貴重な金属使っちゃっていいの?!」

「大丈夫さ、使い終わったらまた錬成で金属インゴットに戻すから。」

「そっか、再利用できるってことね、それなら大丈夫だね。やっぱ錬成スキルって色々便利だな。。」

「錬成スキルだけじゃなく、それをどう使うかってところが大事なんだ。」

タカキが自分の頭を指さしながら得意げに言ったので、シンイチもハイハイととりあえずおだてておく。

その後は黙々と作業のように討伐をこなしていった。

辺りがすっかり暗くなり、光魔法をライト替わりにして狩り続けていたところ、ニーアがやってきた。

「そろそろ今日はあがろっか? あら、考えたわね。やればできるじゃん!」

ニーアがタカキが作った金属板とその上で次々とTPJを燃やしていくシンイチを見ていった。

「あがるのはいいんだが、この金属板、ニーアのマジック収納ボックスに入るか?俺のだとサイズが大きすぎてはいらないんだ。10m四方で10枚くらいあるんだが。。」

「入らなくはないけど、なんか嫌!いろいろ汚そうだし。」

結局、金属板は海の上に浮かべたままで、船と紐でつるしてTPJの群れから少し離れたところで泊まることになった。

「まさか、本当に船に寝ることになるとは。。」

「大丈夫かな。。夜中に襲ってこなきゃいいけど。。」

「だいぶ陸の近くまで来たから大丈夫よ。」

翌朝目が覚めて、無事を確認し再び、TPJの群れがいるところまで近づいた。

「今日はあんまり押し込まれていないね。」

「そうね、昨日かなり狩ったせいかしら、さ、今日もやるわよ。」

再び一日中同じ作業を繰り返し、この海上生活を更に二日続けたことによりかなりの数を討伐することができた。目に見えて成果は出ており、目印の岩まで到達していたTPJの群れが数十メートル先の無人島まで押し戻すことができた。

四日目、島に上陸できるところまできてシンイチが異変に気付いた。

「あれ、なんだろちょっとでかくない?」

シンイチが示した先には大きなTPJがいた、通常、数十㎝~1mくらいがTPJのサイズ感だが、そのTPJは横幅が5mくらいある。波打ち際で足元だけが水につかっているという状態だ。

「でかいな。。あんなのがいるとは。名前を付けるならKTPJってところか。」

「キング(King)ってこと?」

「それでもいいが、巨大のKだな。」

「なんかダサいね。。」

シンイチがあきれる。

「まあ名前は置いといて、とりあえずシンイチの魔法でやってみてダメだったらニーアに任せるか。」

「オッケー、フレイムバースト!!」

シンイチの火属性魔法が命中する。しかし、その巨大なTPJは燃えている部分を自分の体から切り離し海の中へ投げ捨てた。さらにクラゲの足の部分から毒を噴射するように飛ばして反撃をしてくる。

「やばっ!マジックシールド!」

「あ、ダメよ!」

ニーアの声も間に合わず、シンイチが慌ててマジックシールドを展開する。しかし、それを貫通してシンイチに毒が命中してしまった。シンイチがゆっくりとその場に倒れた。

「シンイチ!」

タカキが慌てて近寄って脈を診るが、生きている、鑑定スキルで見るとどうやら麻痺毒だったようだ。ニーアも顔面蒼白といった表情で近づいてきたので、タカキが状況を説明してあげた。

「俺がTJPの解毒剤を持っているからシンイチは任せてくれ。その間ニーアはあいつの相手をしてくれるか。」

実は船上での生活で、夜は暇な時間があったためTPJの素材を使って解毒薬を錬成していたのだった。ただ、完全に解毒されるまでに少し時間がかかる。

「わかったわ、麻痺でよかったわ。まったく油断してるんだから。」

命に別条がないとわかって安心したのか、ニーアは少し怒っているようだ。


その間にTPJは反撃をやめ、体を大きくしているようだった。先ほど5mくらいだった大きさが1.5倍ほど大きくなり、そのあと体の一部が崩れ落ちた。

「あれ、なんか分裂してないか?」

タカキの言う通り、崩れ落ちた部分は通常サイズのTPJとなって海の中に落ちて行っている。

「こいつが元凶ってことね。」

ニーアが雷属性を付与した魔法剣技ライトニングスラッシュで切り刻んでいった。巨大なTPJの体が崩れていく。

「おお、さすがだな!」

シンイチの治療を終え様子を見ていたタカキが嬉しそうな声を上げたが、それとは裏腹にニーアは厳しい表情のままだ。

「どうやらそう簡単でもないみたいね。」

ニーアの言う通り、崩れたゼリー状の体が再びくっつき、巨大なTPJの体が復元していった。

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