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第百一話 トップ会談

宿に戻ったニーアは、さっそく二人に事の顛末を説明する。案の定、シンイチから反発の声が上がった。

「えー、やだよ、説明とか面倒だし。」

「もう断れないのよ、ある意味王の命令みたいなものね。自由に冒険ができるのもセルディス王の配慮があってのことなんだから、たまには恩返ししないといけないのよね。」

「うーん、それを言われると何も言い返せないけど。。。」

「結局、俺も行かないといけないってことか。」

タカキが念のための確認をすると、ニーアはうなずいた。

「一応、もう一人います、と軽く伝えておいたけど、私たちの関係性は特に説明していないからそこは注意が必要かな。」

「わかった、まあ、セルディスの王族は味方なんであれば親だってことを話しちゃってもいいと思うけどな。さすがにシュテイン王国の人間にまで話すのはどうかと思うが。それにしても王族同士の会談か、、偉い人と会うのは社会人としての経験で乗り切るから問題ないと思ってるけど、さすがに王族となると、、企業合併の際の社長会談に参加するようなもんかな。」

「そこは期待しているわ。むしろシンイチの方が心配かも。セルディス王はどちらかというと身内みたいなもんだけど、他国の王様に失礼のないようにしないとね。」

「えーそんなの分かんないよ。冒険者なんだから別に礼儀はある程度でよくない?」

シンイチの指摘に対して確かにと思うニーアだったが、それでも最低限のマナーは~、とくどくど説明を始め夜が過ぎていくのであった。


それからの数日間は簡単なモンスター討伐クエストの消化とマナーの勉強をする日々を過ごし、あっという間に会談の当日となった。三人で城の前まで行ったが、さすがに勇者パーティメンバと一緒に入るのはおかしいということで、ニーアだけ先に入城した。今回はニーアではなく勇者アイとして会談に出席するためである。少し時間をおいてシンイチとタカキは門番に取り次いでもらい中に入った。

「もうシュテイン王国の王様は来ているのかな?」

「さて、どうだろうな。さっさと終わってほしいところだけどな。」

しかし、二人の思いとは裏腹に到着まで待機してほしいと告げられる。

「こちらの部屋をお使いください、部屋の中では自由にしていただいて結構ですが、部屋からは出ないように。」

案内役の兵士がそう言って出ていった。タカキとシンイチの二人となったため、呼び出しがあるまで雑談をする。

「今日の夜ご飯何食べようかな。」

「まだ昼だけど、もう夕飯の話か。まあ、それはいいとして、一昨日行ったレストランおいしかったよな、ちょっと値段が張るけど。本当は狩りをして少し稼いだ上で行きたいところだけど今日はこの後モンスター討伐に行くのは時間的にきつそうだな。。」

「早く帰りたいよ。。」

ここ数日のゆったりとした日々は、平日の学校や仕事に行く過ごし方のようにルーティン化され二人にとって心休まる時間になっており話す内容もどうしても緩くなってしまう。こういった変な緊張感から早く解放されたい気持ちがはやってしまう。

30分ほど待たされた後にようやくお呼びの声がかかった。どうやらシュテインの国王も到着したようだ。タカキとシンイチも会談の広間へ移動し、端の席に座り自分たちの出番を待つことになった。

会談が始まり、最初はアイスブレイクとばかりにとりとめのない近況をお互い話している。

しばらくして話が進み、ラニキスでの魔族討伐の話となった。

「魔族の大きな派閥を一つ壊滅させたとか、いやはやすごいですな。」

「ええ、セルディス王国所属の冒険者も主力として活躍したのです、そこにいるシンイチを筆頭に。」

「おお、お主がシンイチか。噂には聞いておる。武器も魔法もいけると聞いておるぞ。」

いよいよか、とシンイチも身構えた。それにしても、調べているのか自分たちのことをよく知っている王様だ。

「お初にお目にかかります、冒険者のシンイチと申します。こちらは同じパーティのタカキです。」

シンイチの紹介に、タカキも立ち上がり一礼をし、シンイチは話を続ける。

「まず、初めにお伝えさせていただきたいのは、僕らだけではどうにもならなかった戦いでした。今日この場にはいないですが、Sランク冒険者のダミアン、Aランク冒険者パーティのライジングサンやクワッドヴァルキリーがそれぞれ主力となって、さらにBランク冒険者パーティの皆さんがサポートに入る形で魔族を各個撃破していきました。」

シンイチの説明に興味津々といった表情で聞き入るシュテイン国王だったが、何度か途中でシンイチの話に割り込んで質問をしてきた。

「最後に魔貴族を倒した冒険者はSランクのダミアンではなく、Aランク冒険者だと聞いている。それはいったい誰なのだ?」

「はい、それはニーアという冒険者です、僕たちのパーティのリーダーです。」

「おお、そうであったか。で、今日は来ていないのか?」

「ええ、そうなんです、、」

「実はですなシュテイン国王、、」

言葉が淀むシンイチを見かねたセルディス王が会話の間に割って入る。ワシュローン帝国がらみの緊急依頼を受けており、王都から離れているといった旨の説明でフォローしてくれた。

それをきっかけに話はワシュローン帝国の対策についてという内容に移り、シンイチも無事に御役御免となった。ほっとして席に戻ったシンイチに、タカキが軽く肩を叩きお疲れ様とねぎらってくれる。ニーアの方を見ると、ちょっとだけこちらに目線を向けウインクしてくれた。

帝国への対抗策として互いに協力していくことを再確認した両国だったが、最後に戦力の配分についての確認で少しもめているようだった。

「もしも、帝国が攻め込んできた日には、ぜひ我々の国にも勇者パーティメンバーを派遣していただきたい。」

「いやいや、それは確約できかねますな。そうなった場合、我が国にも脅威が迫っている状況と想定されますのでな。」

「しかし、それではセルディス以外の国は帝国の脅威にさらされ続けることになる。勇者派遣があった上でそれを対外的に発表することで、すべての国が帝国に対しての抑止力になるのではないですかな。」

「だが、そうなると我が国の抑止力に影響が出てしまいます。」

横から大臣のハーストルが口をはさむ。

「それでも、勇者パーティメンバーだって複数人いるのですから、一人くらいであればいいではないですか。」

「いや、それは。。」

双方の主張を聞いていてシュテイン国王の主張ももっともだ、とタカキは思った。シュテイン王国に所属しているSランクオーバーの強力な冒険者はいるが、やはり冒険者の性質か国に尽くすという意識は高くないらしく、有事のときにあてになるとは100%言い切れないという事情もあるのだ。それに対してしっかりと外部戦力でありながら国のために戦ってくれる勇者パーティの信用の高さは頼りたくなるのも道理であった。元々、セルディス王国所属の冒険者パーティが魔王を倒し、勇者パーティとなったという話だったはずだが、魔王討伐に向けていろいろと諸国を回りサポートを受けているはずである。

しばらくは押し問答が続いたが、結局セルディス王国が攻め込まれる危険性がないと判断できる場合に限り勇者パーティメンバーの派遣をするというところで落ち着いた。シュテイン国王は不満足そうではあったが最低限のラインには乗ったということで話をまとめることができた。

ニーアは話を聞きながら、自分たち勇者パーティをもののように扱う会話にイライラしたが、隣を見るとすました顔でアストレアは聞いている。

「こんなことでいちいち感情が揺れていたら持たないわよ。」

ニーアの視線に気づき、言わんとすることを察したのかアドバイスしてくれた。魔王討伐のあと、ずっと城にいるアストレアにとってははもう慣れっこなのだろう。


会談が無事に終了し夜の会食パーティが始まった。本当は出たくなかったが、どうか出席してもらえないかと大臣のハーストルに拝み倒され仕方なく了承したという形だ。ただし、シンイチとタカキも参加できることを条件とした。他にもセルディス王国の貴族も参加するため、かなりの大人数となるということですんなりと許可された。部屋の中央に王族の席が用意されている形で、他の人々は立食パーティーと、少し特殊な形式の会食となった。

「結局夕食の心配はなかったね。」

「ああ、そうだな、さすが王族同士の会食パーティーとあって、むしろレストランの食事より豪華だ、」

貴族と思わしき人々が交代で王族への顔通しをしている中、シンイチとタカキは無心にご飯を貪っている。ニーアも、勇者アイとして、貴族の相手や、シュテイン王国の要人、大臣や近衛騎士の偉い人と談笑しているようだ。

シンイチが食べ過ぎたと少し席を外し、タカキが一人部屋の隅で休憩していたところ、一人のエルフが声をかけてきた。

「あなた、どういった経緯でニーアのパーティに入ったの?」

「え、急に言われても困るなあ。普通にニーアに誘われてって感じだけど。」

「あやしいわね。ニーアの力を知って悪用しようとしていない?そういう人間じゃないと証明できるかしら。」

タカキに話しかけてきたのはアストレアだった、おそらくニーアにタカキの素性を聞いてはぐらかされたためこっちに詰め寄ってきたのだろう。面倒なことになりそうだな、、やっぱり説明しておいた方がよかったのでは、と思いながらも応対を始めた。

「いや、そんなことは思ったことはないぞ。証明しろと言われると難しいが。。いろいろと助けられているのは確かだが、利用しようなんてことは」

「じゃあなんであなたみたいな何の変哲もないおじさんがニーアのパーティには入れているのよ!」

「うーん、それは説明が難しいな。どちらかというと、俺の方がパーティーに入るようにオファーを受けたような感じだし。」

「ちょっと、アイ、ニーアがあなたを誘うわけないでしょ!そもそもそれほど強そうには見えないけど?」

さらに詰め寄るアストレアに対してタカキは冷静な受け答えに努める。

「それは俺に言われても困る。そもそも、人を見た目だけで判断するのは良くないと思うぞ。」

タカキの正論な指摘にアストレアはさらに不満そうな表情を浮かべる。勇者パーティの中では冷静沈着な人物と聞いた気がしたが、何か聞き間違えたかもしれないと思うほどだ。

さらにアストレアが言い返そうとしたときシンイチが戻ってきてくれた。

「あれ、どうしたの?」

「あら、シンイチさん。いえ、なんでもないのよ、あなたの仲間のタカキに興味があったので少しお話をと思ってね。」

急に表情を変え笑顔を振りまくアストレア。そしてそのまま去っていった。

「早く帰りたい。。」

不思議そうにしているシンイチに対してタカキが疲れた表情でつぶやいた。

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