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第十話 旅立ち

王都周辺でのレベルアップのための訓練を開始してから約1.5か月経ち、そして、いよいよ旅立ちを翌日に控えるところまできた。

この直近の1週間は、王都から少し離れた場所にも出向き、王都の周りよりも強いモンスターと戦う訓練をしていたが、シンイチも何とか一人で対応できるまでに成長していた。この分であれば中級(B, Cランク)以下の強さの敵であれば問題はなさそうというのがニーアの見立てで、ニーアとしても、この短期間である程度まではシンイチを仕上げることができた手ごたえがあり満足していた。

旅立ちに先駆けて王様をはじめとした城の人々にも挨拶をしに向かった。


ニーア達が王都を離れると聞いて、みな別れを惜しんだが、特にサーシャ王女が私も一緒に行きたいと言ってきかず、その場を収めるのにかなり苦労した。

「アイ様、サーシャも一緒に連れて行ってください。」

「別に永遠のお別れという訳ではないから、ね。サーシャ王女。」

「でも、いやなんです!ううっ、、」

「サーシャよあまり無理を言うな、アイも困っておるぞ。」

「あなたの気持ちはわかるわよ、サーシャ。私もアイと離れるのはつらいわ。でも私たちには、この国を治めていく義務があるの、あなたも王族としてその義務を全うしなくてはいけないわ。」

国王、王妃をはじめみんな総出でサーシャ王女の説得に当たる。

サーシャ王女は今のシンイチよりも強いので、正直なところ、連れて行っても足手まといになることはないだろう。しかし、王族を連れて歩くというのはいろいろなしがらみがあったり、万が一にもけがはさせられないと何かと気苦労が多そう、ということでご遠慮願ったという訳である。(もちろん、直接的な理由は説明せず、適当な理由をつけている。)

「せっかく目が覚めたのにまた離れてしまうなんて、、寂しいです。また、必ず戻ってきて下さいね。」

「分かりました、きっと。王女もお元気で、訓練も怠らないようにしてくださいね。」

「はい!」

何度も丁寧にお断りし、ようやく分かってくれたサーシャ。ニーアとしても最後の方はサーシャ王女が少しかわいそうにもなった。再会の約束もしたので、ひと段落付いたら旅の報告も兼ねて戻ってこようとニーアは考えていた。旅の途中で一度寄ってもいいかもしれない。戻るところがあるというのは、なんだかうれしいし安心感がある。

城を出る際、近衛騎士団の皆が整列し見送りをしてくれる。そのおぜん立てをしたのはもちろん団長のクロスウェルであった。

「ニーア殿、しばしのお別れですな。お元気で。」

「ええ、クロスウェルも元気でね。」

「またこちらにお戻りになった際には、ぜひ模擬戦をお願いします。それまで修練を重ね強くなっておきますので。」

「はは、そうね、考えておくわ。」

クロスウェルの愚直さにニーアも愛想笑いを浮かべるのだった。


城を後にして、冒険者ギルドにも顔を出し別れの挨拶を済ませる。

「そうか、もう行くのか。思ったより早かったな。シンイチは十分強くなったのか。」

「ええ、最低限の形にはなったので、そろそろいいかなと思いまして。」

「くれぐれも気を付けてな、魔王はいなくなったとしても油断はできない情勢だからな。」

「ええ、分かっています。」

最低限と言われピクリと反応したシンイチだったが何も言わなかった。以前なら文句を言ったところだったが、この数週間の特訓でいかに自分が弱かったか、そして今でさもまだまだ足りていないということを、十分に自覚していてためだ。

ギルマスとのあいさつを終え、受付のエミーにも声をかけた。別の冒険者の手続きをしていたため終わるまで待とうと思っていたが、その応対を途中で別のギルド職員に引き継ぎ、すぐにやってきてくれた。

「寂しくなります。お二人ともお体に気を付けてお元気で、旅が終わったら、ぜひまたセルディス王国に戻ってきて下さいね。シンイチさんも無理しないように、危ないときはニーアさんに頼ってくださいよ。必ずまた会いましょう、私待っていますので。」

エミーはとてもさみしそうな顔でシンイチとの別れを惜しんでいた。シンイチに何か気の利いたことを言いなさいよとせっついたが、悲しいかなこっちの方面は戦闘よりも経験値不足が否めず、ありきたりの挨拶に終始するばかりだった。

「まだまだ修行が必要ね。」

と言ってやったが、

「ん、何のこと?」

と全く気付いていない様子、先は長そうである。そんな偉そうに上から目線でいたが、ニーアも決して色恋沙汰が得意という訳ではない。自分のことになるとテンパってしまうが、弟のこととなるとなぜか冷静に考えを働かせることができるのであった。シンイチとエミーのためにもまた王都に戻ってこないとね、と心の中でほくそ笑んでいた。


旅立ちの前にシンイチの武器、防具を新調しに行こうとしたが、今使っているものが慣れていてこのままでよいということだったため、鍛冶スキルで研磨し少し改造を施してあげた。中級冒険者向けの槍としては少し高めの斬撃性能となってしまったがまあいいだろう。攻撃力が高い過ぎて困ることはない。

遠足の前日の準備のようにあわただしかったが、無事に全て終え、暫くはお別れとなるであろう王都の高級宿のベッドを惜しみつつ眠りについた。

明日からは、冒険者ギルドで受注した護衛任務が始まるため、いよいよ王都を離れることとなる。

シンイチは少し興奮していた。

ようやく本格的な冒険の始まりとなる。ゲームだと数時間もやれば十分にレベルアップして新しい街に行けそうなものだが、実際はここまで来るのに一か月以上かかっている。やっぱり現実はこうだよねとシンイチは思い知ったのだった。

ニーアとの修行を通じて鍛えられていく中で、まだまだ至らないところがたくさんあると気づくばかりだった。本当はもっと修行をしていたいところだが、いつまでたってもここに留まるのも違うということなのだろう。

いよいよ死と隣り合わせとなる旅が始まる、一人だったら旅立つ前に心が折れていたかもしれない。しかし、すぐそばには頼れる姉の存在があり、何と言ってもこの世界の勇者であるため、その点では不安はあまりなかった。それよりも、未知の世界への冒険に心が躍らざるを得ないのであった。


シンイチのステータス:Lv 8→38、HP 105→405、MP 64→360、力28→114、速さ26→116、守り27→185、魔力27→155、精神36→101。 火魔法Lv3、氷魔法Lv3、土魔法Lv3、光魔法Lv3、風魔法Lv1


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