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悲劇! 超レアバージョンリングがドロップされてしまう……後 キス


「レアモンスターだ。無駄に乱獲するとこういうヌシみたいのが出て来て、悪い人間に警鐘を鳴らすんだ!!」

「あのアホカップル何から何までっ!! キーーーー!」


 いかん、セレスティアがさらにぶちぎれる。


「……ものは考えようだっ! こいつを倒せば必ず通常のアイテムより数段上の綺麗な物をドロップする! 絶対倒そう!!」

「割と前向きなヤツだな……でも死んだら意味ないぞ」

「いや、こいつは本当に弱いモンスターだから死ぬことはないさっ!!」


 ビュッ!!

俺が言った直後だった、超大型ユリウルが口から水鉄砲的な攻撃を繰り出すと、当たった場所の岩が砕けた。


「わーーーーめっちゃ強いぞこれ!! お前で本当に倒せるのか!?」


 もう俺は死ぬ気で戦うしか無かった。俺は剣を抜くと、なるべく射程範囲に入らない様に切り掛かった。


「うおおおおおおおおお!!! セレスティア、爆弾とか魔法の札とか持ってないか? 援護してくれ!!」

「あ、おい!!」

「うおりゃああああ!!!」

 

 ガシンガシン!! 

剣で叩きまくるがなかなか斬れない。ただでかいだけで無く、防御力も数段上がっている様だ。しぬる……ガチで死ぬる……そう思った時だった。

 ボカーーン! ドカーーーン!!

セレスティアが次々に持っていた爆弾を投げつけてくれた。めっちゃ高いヤツだ、セレスティアの目には涙が流れていた。


「スマン、マジでスマン!!」

「お前これもちゃんと払えよ!!」


 俺は一か八か、爆弾の攻撃でひるんだ超大型ユリウルの頭の上にジャンプして飛び乗ると、弱点である脳天に剣先を突き刺した。


「危ないアルケイド! なんて事するの!?」

「絶対倒す!!」


 俺はぐりぐりと突き刺さった剣先をなおも奥に突き刺そうと押し込む。しかし突如大暴れしたユリウルに吹き飛ばされ地面に叩き付けられる。剣を頭上に刺したままのユリウルが迫って来る。


「うわっ!! 逃げろセレスティア!! 足をくじいちまった!」

「だめっ、貴方を残して逃げれない!!」


 セレスティアはユリウルが目前に迫るのに俺に覆いかぶさったまま動こうとしない。


「ば、ばか! マジで逃げろって」

「そんな事出来るわけないじゃん!」


 セレスティア……どうして。俺がなんとか立ち上がって反撃しようとした直後だった。

 どたーーーーん!!

突然超大型ユリウルが倒れた。俺が突き刺した頭上の剣が今頃致命傷になった結果だった。ユリウルは光の粒となって飛び散った。ユリウルが居た岩場にはキラキラした物が残されている。戦利品のペアリングだった。俺たちはもつれる足で慌てて二つのリングをそれぞれ拾った。


「やったーーーー!! あはははは、やったぜっ!! 見ろよユリウルのペアリング!!」

「みてみて! 凄いよコレ、色が一色じゃ無いよ! 見る角度によって七色に色が変わる超レアバージョンの凄いヤツだよ!! これあたしの宝物にしよっと!!」


 え? それ……俺の分は叩き壊すんだぜ……凄く心が痛んだ。


「セレスティア……すまな」


 飛び跳ねて喜ぶセレスティアに近付き、ちゃんとお礼をして謝ろうとした時だった、ユリウルに吹き飛ばされて、くじいた足がもつれた。


 どたどたどんがらがっしゃーん! 俺は足がもつれて彼女を巻き込んでコケたが、セレスティアを頭突きで強打しない様に必死に手を踏ん張った……


「ん!?」


 倒れた拍子に俺はセレスティアに四つん這い状態で上に乗っかり、それだけでなく唇と唇が偶然重なっていた。運良く歯が強打して血が出る……なんて事は無く、本当に触れるか触れないかの距離感のかすかに触れる程度のキスだった。一瞬その状態で二人は固まった。

 が、それだけでは無かった、なんとこけない様に踏ん張った右手は、セレスティアの胸をむんずと掴んでいた……と、言っても鎧の上からだが……


「きゃっ! やだっ!!」


 セレスティアは思い切り俺を胸ドンすると、俺は横に転がった。


「わっ痛てっっ」


 転がった俺は頭を岩で軽く打って両手で押さえる。


「はぁはぁはぁ……」


 セレスティアはぺたんと座り込んだまま、自分の鎧の胸を両手で押さえていた。俺はよろよろと立ち上がると、今度は正式にちゃんとセレスティアに謝った。


「あ……済まなかったな、ほんと、偶然なんだ……凄い怒った? 本当悪い、ここまで付き合ってもらっておいて……なんか最後変な事になっちまって」


 しかし謝りながらも俺は先程一瞬触れたセレスティアの唇の感覚が忘れられなかった。柔らかかったな……なんて。


「ふーーーーーーっ、はあ? 全然気にしてないし。あんなん皮膚と皮膚が一瞬触れただけだからな、キスには入らんわ。あたしああいうの全然気にならんから、マジで謝らんでも良いわ」


 セレスティアも起き上がると、髪を手でとかしながら視線を合わせず言った。でも見た目めっちゃ動揺している様に見えたが。いや、正直に言えば俺も動揺していた。忘れていたがセレスティアもとても可愛い女性だった事を思い直した。


「なら良いんだ」

「……でもよかったじゃん! これでソフィアさんの目の前で指輪砕けるじゃん!」


 セレスティアの表情を見ると、嫌味では無く本気で言ってくれている感じがして、再び心がズキズキ痛みだした。


「あ、ああ、ほ、本当にありがとうな……」


 何で人魚のユリウルのペアリングが恋人達の一大イベントになるか分かったよ。これこんだけ苦労して二人で手に入れて、それで時が経てばまた新しい恋人の前で叩き壊すの、すっごい勇気がいるよ。俺は今入手したばかりの七色にキラキラ光るリングをじっと見つめ続けた。


 これを……俺は本当に叩き壊せるのか??

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