戦死
僕の名はアリッサ。今、大祖国戦争(独ソ戦)でドイツ軍との戦いで苦戦してる所だ。
「まずい、弾薬盒の中も空っぽだし銃弾も尽きそうだ。でも、この戦争が終われば天使アリスに会えるのか?」僕はまたアリスに必ず会えると信じ、徴兵された時から御国の為、家族や国民を守る為に戦って来た。因みにアリスは僕の彼女でフルネームはアリス・アナベルだ。金髪で瞳が真っ青でとても可愛く人思いでやさしいんだ。
周りの兵士もドイツ軍が持つ機関銃の餌食になり殆ど生き残ってないし、敵前逃亡を防ぐため同志が後ろから銃を構えながら見張っていて戦況は最悪だ。「銃弾が無くなれば突撃しろ!同志の命令が守れない者は粛清だ」数メートル先はドイツ軍が支配する領地になっている、土嚢が積まれ機関銃が沢山配備されててドイツ軍もうじゃうじゃいて僕たち同志を睨む。しかも周りは土埃が吹き荒れていて,戦死した死体がびっしりと塹壕や土嚢に折り重なるように張り付いていた。でも今の季節は夏、猛吹雪が吹き荒れる冬に比べれば天国のような快適さだ。
「Ураааааааа!総員突撃ーーー!」
「ウラーーー!」
「ウラーーー!」
「ウラーーー!」
「アー!」
「ナチスを倒せー!」
「ドイツ野郎!死ねー!」
「これでも食らえ!」
「ドイツ軍なんかに負けるな!」
銃弾が尽きた兵士達は掛け声とともに皆銃剣突撃を遂行する。「声が小さい!もっと気合い入れて声を出せ!声が出てないものはスターリンに報告した後に軍の命令違反で死刑だぞ!お前らの家族も無事じゃ済まねーぞ!シベリア送りか最悪、粛清だぞ!」将校達の怒号も飛んでくる。けどドイツ軍の支配地に踏み入れる前に当然みんな撃ち殺される。悲痛な叫びを上げる兵士、重症を負って悲鳴を上げる兵士、お母さんの名前を呼ぶ兵士、腹から腸が飛び出し泣きわめく兵士達の声が塹壕にこだまし、四肢が吹っ飛ぶ兵士、体がバラバラに吹っ飛ぶ兵士等が周りに沢山いる。
「あーーー!」
「ウワー!あ母さんー!」
「愛してるよー!メアリー!」
「痛出ててて!」
「衛生兵ー!」
「スターリンバンザーイ!」
「ウワー!腹が暑いよー!」
「ウラー!」
僕はまだ銃弾が少し残っている為、塹壕から狙って敵であるドイツ軍を銃弾で仕留めたいが土嚢が邪魔で中々当らないし、気がついたら銃弾が切れる寸前になっていた。周りにいた同志もどんどん撃ち殺されていった。「どうしよう、当たらないな~。早くアリスに会いたいよ。銃弾は後3発、慎重に撃とう。」その頃、僕さは何とかなると甘く考えていた。
「ナアッハハー、共産野郎め!思い知ったかー!」ドイツ軍達は僕たち同志を睨み、嘲笑っている。「このヒトラー総統閣下様のチェーンソー、MG42の洗礼を受けろ!赤軍なんか一人残らず皆ぶっ殺してやるからな!投降するなら今のうちだぞ!」ドイツ軍はこちらを目掛けて怒鳴り散らしながら機関銃を乱射して来る。「おい、おい、おーーーい!訳の分からない奇声を発っしながら突撃したって意味ねーちゅーの!本当、共産野郎はバカで頭おかしくて助かるぜ!スターリンの首が斬られてモスクワに晒されるのをあの世で首を長くして待ってな!」ドイツ軍は、また怒鳴った。僕達が不愉快に感じる事を!僕は機関銃を乱射するドイツ軍目掛けて残った銃弾3発撃ったが一発も当たらなかった。「どうしよう?銃弾が尽きちまった。もうアリスに会えない覚悟で突撃するしかないのか?教えてくれアリス!」僕は最悪な状況に陥り、思考停止した。「おい、お前は何をしている?こんな事してる暇はないぞ!そんな所でグズグズしてたらテメエも粛清されるぞ!」同志の声に僕は決起した。銃弾が切れた為、モシンナガンに銃剣を着剣し、アリスに会えない事を覚悟して突撃することを決意した。「ドイツ野郎も覚悟しな!名誉毀損で必ず訴えてやるからね!ヒトラーが軍事裁判に懸けられるのが楽しみだよ!僕たちを誹謗中傷したテメェらもな!後、アリスに手を出したらあの世で呪ってやる!最後にアリスとキスがしたかったな。」僕はドイツ軍に向かって叫んだ。
銃剣とは、銃の先端にナイフを接続し、槍と同じ感覚で使えるよう工夫された武器である。又、銃剣を装着するとそれに合わせてサイトを調整し直さなくては成らず、銃剣本体が火薬で錆びたりする為、着剣した状態では射撃を行わないと言う話もある。
僕は、銃に銃剣を装着した後、塹壕から飛び出て機関銃の弾が飛び交う中ドイツが支配する領地に向けて走り続けた。走る途中、銃弾に当たって戦士する同志も沢山いた。「ウラーーー!これでも食らえ!ドイツ野郎!」何とか機関銃の弾が飛び交う中、半分まで辿り着き岩に隠れた。「無駄無駄無駄無駄!お前ら、こんだけ死人が出てもまだわからないのか?機関銃の弾から逃げられると思うな!」ドイツ軍はまたも怒鳴って機関銃を乱射し続けている。「怖いよー、生きて帰りたよ!そしてアリスに会いたいよ!」僕は機関銃の乱射が落ち着くまで敵陣に突っ込むタイミングを見計らっていた。でも機関銃の弾が当たり続けてて岩も限界で崩れそうだ。その時だった、ドイツ軍は僕が隠れてる岩に向かって手榴弾を投げ込んだのだ。「これでも食らえ!ソ連軍!隠れても無駄だぞ!」僕は慌てて右に向かって飛び出した。「キャッ、危ない!」ドガーン!岩は手榴弾の爆発によって粉々に崩れて壊れた。
隠れてた岩が壊れた為、さっきより小さいが隠れる事が出来そうな岩にとりあえず身をかくした。「どうしよう!ここでじっとしててもまた殺される。」僕の予感は悪い事に的中した。「だから無駄だっちゅーの!」ドイツ軍はまた僕が隠れてる岩に向かって手榴弾を投げ込んだのだ。「うわー避けなきゃ!」今度は左に避けた。ドガーン!小さい岩も爆発で粉々に壊れた。僕はこのまま死ぬ覚悟でドイツが待ち構える要塞まで突撃することにした。
「ウラー!愛してるよアリス!」
何とかドイツ軍の要塞まで辿り着き、土嚢へよじ登ろうとした時だった。ドガーン!耳を劈く爆発音と共にどこかへ吹き飛ばされる感覚を感じた。「あれ?何だ?何が起きた。」そう感じた時には手遅れだった。その瞬間、全身から猛烈な熱さと痛みが感じたと共に四肢の感覚がなくなり、目が見えなくなった。そして地面に叩きつけられた。「うわー!アリス助けて!真っ暗で全身熱くて痛いよー!手足の感覚がわからないよ!何とかしてよアリスー!」突然の出来事に何が起きたか理解できず、パニックになり叫んだ、そして僕の意識は遠退いていった。朦朧とする意識の中、兵士達の声が聞こえてきた。
「衛生兵!ここに負傷兵が!」
「んー、もう助からんだろう。」
「これは酷い、早く死なせた方が楽なんじゃないかな?」
「それもそうだな」
「何だ?この赤い肉塊は?」
「両手両足が吹っ飛び、軍服も略帽もボロボロで全身皮膚が焼き爛れてるではないか?」
「おい、ポケットの中見たら可愛い女の子の写真が入ってたぞ、彼女か?写真の裏に名前がえっと、アリス?あーあーかわいそうに。」
「こんなの死んだも同然だ!とっとと認識票を回収せよ。」
「何々?名前はアリッサ」
「それじゃ芋虫アリッサを埋めて銃とヘルメットで墓を作ってやれ!」
僕は、まだ瀕死の状態で生きてるのに地面に埋められる屈辱を感じていた。心做しか怒りと悲しみでいっぱいだった。しばらくしたら全身の苦痛がなくなって体がどんどん浮き、ヘルメットが被せてあるライフルが地面に刺さってるのも見えた、考えたくないが僕の墓でしょう。そう思ってるうちに周りが明るくなり、眩しくなっていった。