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「仕方ないですね。出てきやすくしてあげます。」
メイドは視線を向けたまま尾の先端で天井を破壊した。
しかし、そこに居たのはタツトではなく隣で振るえているアケノである。
タツトは咄嗟に握っていた手に力を入れて落ちない様に支えようとした。
だがその顔はすぐに焦りに染まり視線はアケノの下へと向けられる。
そこにはメイドが下で口を開けておりアケノの足先へと真直ぐに伸び上がっていた
「私が食べ易い様に支えてくれているのですね。」
「な!」
「え・・いやーーー!助けてタツトさん!」
アケノは自身の足先が生暖かい何かに包まれるのを感じ取ると視線を下へと向け叫び声を上げた。
その先にはメイドの口がありえない程に大きく広がり自分の呑み込もうとしている光景が広がっている。
しかもそれは這い上がる様に腰までを一気に呑み込むと更に奥へと吸い込もうと上がってくる。
そのまま何も出来ずに胸までを呑み込まれた時にアケノは上に居るタツトへと顔を上げた。
しかし顔は恐怖で真っ青になっているが口元には無理矢理に作ったような笑みが浮かんでいる。
するとその口からはタツトへ向けてハッキリとした声が発せられた。
「これまで・・ありがとうございま・・・。」
「アケノーーー!」
だがアケノは最後に伝えたかった言葉も言い切れず、手を払い除けた直後にメイドの喉奥へと消えていった。
その口が閉じられると先程まで崩れていた顔が元に戻り薄い笑みが浮かべている。
それが先程のアケノと重なりタツトの精神を逆撫でした。
「テメー!」
「さあ、次は貴方の番ですよ。でも先程のゲームで負けた分だけチャンスをあげます。そこに落ちている剣で私と戦いなさい。」
「なんだと!?」
「今回もあなたに選択肢はありません。ゲーム終了まで残り4分。しかし彼女が私の中であと何分生きていられるでしょうね。」
「人質と言うことか!」
「その通りです。」
見るとメイドの下半身である蛇の部分は大きく膨らみ今も僅かに動いている。
それはアケノが腹の中で動いている事を示し、同時に生きている証拠でもあった。
「早くしないと彼女が窒息してしまいますよ。さあ剣を取りなさい。」
「・・・分かった。」
タツトは下に降りて落ちている剣を拾い上げた。
これは館の至る所に飾られていた武器の1つだが、刃も付いている実用的な物だ。
念の為に天井裏に置いてあった物の一つで先程の衝撃で下に落ちてしまっていた。
「さあ、掛って来なさい。今度こそ私が勝ちます!」
「アケノは返してもらうぞ!」
しかし、剣の攻撃は蛇の部分を貫けず簡単に弾き返されてしまう。
それにメイドの顔には余裕があり、剣の経験のないタツトでも遊ばれているのが分かった。
「タツトにこれだけ思われているこの女が羨ましいですね。」
「ほざいてろ!・・・ここだ!」
そして無駄口の中でタツトは攻撃を続けメイドの上半身へと剣を当てることに成功した。
するとその部分は簡単に傷つき、赤い血が雫となって流れ出ている。
「人の部分が弱点か!」
「そうですね。でも簡単にはいきませんよ。」
メイドは傷に手を当てて拭うとそこには既に傷は無くなっていた。
化物なのは下半身だけでなく、治癒能力も化物なみのようだ。
「私を殺すなら首を切らないとダメですね。」
「なら遠慮なく切り落としてやるよ!」
「ええ、そうしてください。」
するとメイドは大きく体を持ち上げると上半身を天井近くまで移動させた。
これではジャンプしなければ攻撃が届かず、まして首への攻撃は不可能だ
すると足を止めて隙を見せた所へ尻尾が巻き付き、タツトの体をキツく固定してしまった。
「しまった!」
「フフ、これでさようならです。」
メイドはタツトとの距離を詰めるとその首元に牙を立てた。
その瞬間にタツトは痛みに顔を歪め剣を持つ手に力を込める。
しかし尾に巻き付かれている腕は動かす事が出来ず見ている事しか出来なかった。
「は~美味しい。これまで飲んできた誰の血よりも格別です。」
メイドは恍惚とした表情を浮かべると次に動けないタツトの唇を無理矢理奪った。
するとタツトの口の中に血の味が広がりそれと同時に怒りが湧いてくる。
「離れろ!それは俺のファーストキスだぞ!」
「御馳走様でした。」
するとその時、腕の拘束が緩むと不意の1撃が横一線で放たれた。
その斬撃はメイドの首に吸い込まれる様に触れると一瞬で切り飛ばし、頭は地面へと落ちて転がって行く。
「ど、どうして?」
その様子を呆然と見ていると床に転がっていたメイドの頭が動きタツトへと顔を向けた。
しかし、その状態でもメイドの顔には穏やかな表情が浮かび、血で赤く染められた唇から言葉を紡いだ。
「私はラミア、男を惑す化物です。」
「ならどうして俺を絞め殺さなかったんだ。」
「私は・・あなたへの・・・恋に・・惑わされて・・・しまいました。」
「ちょっとゲームをしただけだろ。」
「それでも・・・私には・・・・大事な・・・・初恋でした。」
そして、メイドは首だけで自分の気持ちをタツトへ伝えるとその姿を次第に崩れさせていく。
すると下半身も消えていき、そこにはアケノだけが残された。
タツトはメイドが消えるとすぐにアケノへと駆け寄り口元へと手を当て呼吸を確認する。
「クソ!間に合わなかった!」
体液なども残っていないが呼吸だけが完全に止まっていた。
タツトは即座に人工呼吸を試み鼻を摘まんで息を送り込む。
「息をしろアケノ!」
「・・・ゴホ!・・・ゴホ!」
すると何度か続けていると奇跡的に呼吸が戻ってきた。
初めて行った本気の救命活動で記憶も定かではなかったが、アケノの顔色が戻って来たのを確認して胸を撫で下ろす。
そして時計を見ると既に10分を超えており、ゲームが終了している事に気が付いた。
「まさか、アイツは俺を生かす為に時間稼ぎをしていたのか。」
タツトの考えは半分正解と言える。
彼女は好きになったタツトを生かす為に自身を犠牲にして時間を稼ぎ、更に実戦の経験を積ませるのを目的としていた。
その思惑は成功しタツトはこうして1回目のゲームを生き残る事が出来ている。
その報酬として好きな相手のファーストキスを貰う・・奪うくらいは安いものだろう。
ただ、そこにアケノが含まれていなかったので今回の事は偶然の産物であった。
「今は考察よりもアケノをゆっくり休ませないと。・・・俺の部屋で寝かせるしかないか。」
タツトは先程までの必死な気持ちが落ち着き始め、人工呼吸ではあるがアケノと唇を交わしてしまった恥ずかしさで頭がオーバーヒート寸前になっている。
そしてアケノを背負って背中に幸せを感じながら「これは人命救助」と何度も唱えながら自分の部屋へと戻って行った。
しかし、正面ホールではリリスは苦笑を浮かべ、執事は僅かに顔を歪ませていた。
「やっぱり思ていた通りの展開になったわね。」
「まさかラミアが裏切るとは思いませんでした。」
「あの子も恋するお年頃ってことよ。今頃はあちらに戻って好きな人と交わしたキスに身悶えているわ。」
「呼び戻されますか?」
するとリリスは苦笑を深めて首を横に振り執事の提案を却下する。
その顔から残念そうな感情が読み取れ、執事はどうしたのかと首を傾げた。
「残念だけどあちらから契約は破棄したみたいね。怒られるのが怖かったのかしら。」
「我々がそれくらいで逃げるとは思えませんが。」
「そうね。でも一度の死をもって契約は更新する様にしていたから仕方がないわ。それにあの子は最低限の仕事だけはしてくれたもの。今回はそれで許してあげましょ。」
するとリリスの言葉で顔を歪めていた執事もようやくいつもの顔に戻り恭しく一礼を返した。
「畏まりました。それとこの度の脱落者は20名になります。」
「あら?今回は簡単に捕まったのね。今までで一番張り合いが無いようだけど?」
「それはあの者のおかげと言えるでしょう。あの者はこの館を知り尽くしておりますので。」
「それでも一度には見つけられなかったの?」
「制限時間もありますし1日で終わると恐怖や欲望の質が下がると思い手加減させました。」
「それなら良いわ。あの子には後でご褒美をあげておきなさい。」
「畏まりました。新鮮な物を与えておきます」
そして話が終わるとリリスは姿を消し、そこには執事と使用されたティーセットが残された。
執事はそれを手にすると何も無かったかのようにその場を立ち去って行く。
だが、今日の事に気付いた者は殆ど居ない。
かくれんぼという性質上、相手から見えないという事は自分からも相手が見えないからだ。
しかも広い屋敷で殆どの者が離れて隠れていた為に見つかった瞬間を見た者も少ない。
しかし、それを見た者は尽くが捕まり屋敷の奥へと連れて行かれてしまっていた。
そして、時は数分遡り廊下を一人の女が走っていた。
ただしその動きは獣に似ており、猿の様だと表現しても良いだろう。
しかもその女は喜色に顔を歪め、1つの部屋の前に到着した。
「フフフ・・・も~い~か~~い。」
女は部屋に入ると扉を閉めながら笑い、かくれんぼとしてはお決まりのセリフを口にする。
そして迷いのない足取りで大きな棚へと向かうとその端を掴み手前に動かした。
するとその大きさに関わらず棚は簡単に動き、その後ろには人が入れるだけのスペースがある。
但し既に先客が居るようで一人の女性が隠れていた。
「ちょっとここは私が見つけたのよ!」
「フフフ、知ってるよ。私が見つけたもの。」
「何よ!入って来るんじゃないわよ!」
しかし、女はそんな言葉を無視すると中へと入り女性の腕を握り締めた。
すると途端にプレス機にでも掛けられたかのような圧力が襲い掛かり骨が軋みを上げる暇もなく圧し折られえる。
「ギャーーー!!」
「モート、モート、モート。ギャハハハ、あなたはこれでゲームオーバーね。」
「は、離して!」
「だ~め。だってあなたは・・・やっぱり我慢が出来ないわ。」
女は涎を溢れさせた口を大きく開けると女性の首筋へと牙を立てる。
その突然の行動と肉に歯が食い込む焼けるような痛みに女性は更に激しい悲鳴と涙を流した。
『ブチブチグジュ!』
「あああーーーー!!」
「新鮮なお肉・・・美味しい。悲鳴が良いスパイスになって最高。」
そして女性は何度も生きたまま肉を噛み切られ、流れ出る鮮血を吸われながら言葉にならない悲鳴を上げた。
すると再び棚が動いて光が差し込むと女性は僅かな意識と希望の中で視線を外へと向ける。
しかし、そこに現れたのは人ではなく、この世のものと思えない様な化物だった。
女性はそこで最後の気力さえも使い果たし薄れる意識に任せて気絶していく。
「オイ!お前の役目を忘れるな!」
「はいはい。分かっていますよ。私は隠れている奴等を見つけて教えれば良いんでしょ。」
「そうだ。その腐った脳みそにしっかりと刻んでおけ!」
化物は女から女性を取り上げると冷たい口調で言い放った。
それを女は気に食わなかったようで地団駄を踏み鳴らしながら指を差して言い返す。
「あ~今のは差別用語だと思います。グール差別反対!パワハラ反対です!」
「良いから働け!さもないとあの方の怒りを買って元に戻されるぞ!」
すると女は不貞腐れた様に頬を膨らますと腕を組んでそっぽを向いた。
その目には今も未練ありありと残っているが制限時間もあるため部屋の出口へと向かって行く。
「せっかく肉体を頂いたのに、また昔の様には戻りたくないですからね。それに以前の参加者であるこの体の脳は腐ってますけど、しっかりと残留思念が残ってますから問題ありません。」
「ならとっとと仕事をしろよ。」
「がんばりまっしゅ。」
「それとその軽い性格はどうにかならないのか?お前も元はゴーストだろ。」
「この体に残っている残留思念の影響を受けているのだから仕方ありません。それに参加者に紛れるにはこちらの方が好都合です。」
「まあ、儀式さえ成功すれば問題はないか。」
その後、女は館の各所を回っては参加者を見つけ悲鳴を上げさせていく。
そして、それを見た者も同様に捕まると館の奥へと連れ去られて行った。
ゲームが終了してタツトはアケノを部屋に運びベッドで寝かせていた。
今は意識が戻る様子は無く頼れる者も思い付かない。
館の者に頼むのは論外で救急車を呼ぼうにもスマホの電波は圏外のままだ。
タツトは自分達の置かれている状況に頭を抱えると不安を紛らわすために溜息を零した。
「は~・・・どうすっかな~。」
タツトには医療知識はなく先程の人工呼吸も偶然成功したに過ぎない。
もしかすると参加者の中に医療に携わる者が居るかもしれないが、信用できる相手が思い付かなかった。
そんな時に扉をノックする者が現れ、タツトは警戒心の籠った目を扉へと向ける。
「誰だ?」
「私です。」
声からして執事で間違いはなく、今は会いたくない相手でもある。
それに先程のメイドの件から考えて既にここの住人が人間ではないのではとも考えている。
しかし、ここから出られなければ衣食住の衣と食は完全に掌握されていると言えるだろう。
そのため避けたとしても消耗するだけでゲームに生き残るためにはどうしても関りを持たなければならない相手でもある。
仕方なくタツトは幾つかしていた準備を実行に移しながら部屋の外へと言葉を返した。
「何をしに来たんだ?」
「明日の予定をお伝えに来ました。扉を開けてもらえますか?」
「・・・分かった。」
タツトは既に今後の展開もある程度は想定できていた。
しかもゲームに関して言えば生死を問わないかくれんぼと言うことで予想は立て易い。
そして人生最大の不機嫌な顔で扉を開けると、そこに居る執事を部屋に招いた。
「思っていたよりも素直ですね。」
「どうせ鍵はそっちが持ってるだろ。どっちにしても結果は変わらないからな。」
タツトは部屋の鍵を持っていて昼間に車へと行く時にしっかりと扉の鍵をかけて出ている。
それなのに戻ると机の上には予定の書かれた紙が置いてあり、誰かが部屋へと入った事を示していた。
「それで、早く予定を教えてくれ。」
「それではこちらが明日の予定になります。」
執事はベッドに視線を向けたが、それに関しては何も言わずに2枚の紙を差し出してきた。
その事から病気や体調不良を理由にしてゲームを棄権、あるいは延期はしないということになる。
「・・・お前等の目的は何だ?」
「もう、お分かりでしょう。皆様の命でございます。今日はラミアの裏切りで失敗しましたが、明日からもあなたを最優先で狩らせていただきます。」
「それは宣戦布告か?」
「いえいえ、死刑宣告です。色々とお気付きでしょうが無駄な努力は苦痛を引き延ばすだけでございますよ。」
「まあ、参考程度に聞いとくよ。それで一応確認しておくがアケノはどうなる?」
「参加を辞退した者の運命は敗者と同じです。あなたがゲームに参加している間に回収させていただきます。」
「本当に胸糞悪い奴だな。」
「お褒めの言葉と受け取っておきましょう。」
執事は笑顔で一礼すると背中を向けて部屋から出て行った。
そしてその場にはタツトとアケノだけが残されたが、今の光景を見て聞いていたのは2人だけではない。
「絶対的強者、絶対的優位性は時に油断を招く。」
タツトは胸元からスマホを取り出すと録音機能をOFFにして机へと向かって行った。
そこにはこの部屋に持ち込んだカバンがあり、そこには色々な物が入っている。
それに元々観光をしようとしていたのでその中にはある物が入っていた。
「録画は・・・出来てるな。」
タツトはこの展開を想定してカバンの中にビデオカメラをセットし部屋の一部を録画していた。
そして奴等の証拠を掴むために危険であると分かっていながら執事を部屋に招き本音を聞き出したのだ。
これでどれくらいの者が信じるかは分からないが試してみる価値はある。
しかし誰を最初に選びこれを見せるかが問題であった。
「候補は・・・1人しか居ないか。」
今の時点でタツトとアケノは悪目立ちしていた。
先程の夕食時での出来事や、ゲーム中にやって来た他の参加者の言葉からも確信が持てている。
そんな自分達でも少しは話を聞いてくれそうな相手は1人しか思いつかなかった。
「問題は生き残ってるかだな。44番なんて縁起の悪い数字だから俺と一緒で真先に狙われていそうだ。」
それに部屋を知らないので女性エリアに行って片っ端から扉を叩いて回るしかない。
その間はアケノを残して行かないといけないがそれは仕方がないだろう。
しかし準備を整えて部屋を出ようとすると再び扉がノックされた。
「誰ですか?」
「私よ私。」
「私私詐欺の人ですか?」
「・・・良いわよ。せっかく医者として様子を見にきてあげたのにそんな対応をするなら帰るわね。」
「ちょ~っと待ってください!すみません誤りますから帰らないで下さい!」
ちなみに部屋の外に現れたのは目的の人物である44番のミヤである。
何処で聞いたのかアケノの事を知って部屋を訪ねてくれたようだ。
「お待たせしました。」
「最初からそうしていれば良いのよ。」
「仰る通りです。」
「それなら見せてもらうわよ。」
「よろしくお願いします。」
そして、ミヤを部屋に入れるとベッドに寝ているアケノの許へと案内していく。
「それで何があったの?」
「え~と・・・どんな話なら信じてくれますか?」
「そんなに荒唐無稽な話なの?見た感じだとかなり衰弱しているみたいね。外傷は・・・無さそうだけど。」
するとミヤは持って来ていたカバンから聴診器を取り出してアケノの胸に当てる。
その時に僅かに表情が変化したがタツトの位置からは見えず、ミヤは溜息と共に聴診器を外した。
「断言はできないけどしばらくは絶対に安静ね。明日からのゲームも棄権させるべきよ。」
「ああ、それは出来ないんだ。」
「どうして?言っては何だけどこのまま続けてるとこの子は死ぬかもしれないわよ。心音と呼吸音がおかしいわ。先天的か後天的かは分からないけど明らかに何かの病気である可能性が高いの。」
「それでも無理なんだ。理由はこれを見れば分かる。」
そう言ってタツトは先程録画した執事との会話をミヤへと見せた。
そこでは彼女には信じられない様な会話が行われているが、一度見ただけでもタツトの言葉を理解する事ができる。
しかも自分が知らずにデスゲームへと参加しているとは思っていなかった。
その衝撃は大きく先程までの余裕の表情は消えてしまい青褪めてさえいる。
「ねえ、さっき執事が私の部屋に来て脱落者が20人って言ってたわよ。」
「それなら20人殺されたんだろうな。それに男が一人消えてるからそいつも死んでるかもしれない。」
「かもじゃなくて確実によ!どうしてそんなに落ち着いてるの!?」
「俺達はメイドに襲われたんだ。しかも下半身が蛇で怪物の姿をしていた。アケノはそいつに呑み込まれて窒息したんだ。」
「な!・・・信じ難いけど・・・それが本当ならここの連中は全員そうなの!?」
「さあな。そこまでは分からない。でも何か目的があってこんな事をしているのは確かだ。神、悪魔、妖怪。何でも良いけど儀式か何かの可能性もある。」
「私達は生贄ってことなのね。」
「そういう事になるんだろうな。」
そして、タツトは今の段階で知り得ている情報を全てミヤへと伝えた。
執事からは死刑宣告を受けたばかりなので下手をしたら明日までの命かもしれない。
そのため情報を秘匿している意味はなく、こうして誰かに伝えて今後の役に立ててもらう道を選択したのだ。
「データは貰ったから女性陣の方は私に任せて。」
「スパイが居るかもしれないから気を付けろよ。」
「あなたからの話を聞いて目星は付けてあるわ。」
そう言ってミヤはデータの入ったパソコンを持って部屋から出て行った。
そして、タツトは先程までミヤが座っていた椅子に座るとアケノを見ながら溜息を吐き出し手を伸ばした。
「お前の引けない理由は病気だったんだな。」
タツトは緊張から冷えてしまった手をアケノの額へと当てた。
そこは少し暖かく、冷えてしまった手に体温を分けてくれる。
すると僅かに瞼が振るえ、ゆっくりと開くとその目がタツトへと向けられた。
「タツト・・・さん。」
「もう大丈夫だから今は寝てろ。」
「・・・はい。」
アケノは意識を取り戻したがすぐに眠りへと落ちていった。
病気に加えて先程の事で疲労が溜まっており、肉体が休息を求めているからだ。
まだ息も落ち着いておらず、寝ている顔もまだまだ辛そうに見える。
「さてと、早めに動くか。」
そしてタツトは明日を生き残るために男性陣の部屋を巡り情報の共有をする事にした。