リンコとカイトの関係――気になるフウカ
翌日、リンコを伴って登校した。見知らぬ顔に同級生たちの注目が集まった。制服は、同じ高校出身である近所のお姉さんから借り受けていた。校門を入ったところで別れ、彼女は校長室へ向かう。
フウカは、またしてもユウコから睨まれた。
「ダレよ、あの子?」
「遠い親戚の子だよ。家庭の事情で、一月ほど預かることになったの」
「……ふぅーん、そうなの――」
何か含みがある感じて答えた。
朝の朝礼の時、女性の担任教師がリンコを連れて教室に入ってきた。
「新しいお友だちを紹介します。田所鈴子さんです。家の都合で一ヶ月ほど臨時に、こちらで学ぶことになりました。短い間ですが、仲良くしてくださいね」
担任も今日の朝、校長に告げられたばかりで、戸惑っているようであった。
「田所鈴子です。リンと呼んでください」
短くスパッと自己紹介をした。声は、低めである。最後にニコッと笑顔を見せた。口元からのぞく白い歯が印象的だ。
ショートカットで、ホリが深く眉は黒々と描かれキリッとしている。眼力がある。胸はつつましやかなので、男装が見合うであろう。男子はもちろんのこと、女子からも熱い視線が注がれた。
一時間目の授業が終わると、リンコとフウカはクラスメイトに囲まれた。矢継ぎ早に質問が飛ぶ。リンコは、笑顔を絶やすことなく応えていた。彼女が主役で、フウカは、オマケ扱いである。とにかくリンコの「そつのなさ」が発揮され、いちやく人気者となった。
お昼のお弁当は、滝子のお手製である。卵焼きに赤いタコさんウインナー、ミニハンバーグ、キュウリとトマト、ブロッコリーといった定番の内容であるが、冷凍食品は使っていない。女の子たちが各自の弁当を持って集まり、「女子会」の様相となった。その中でユウコだけが憮然とした表情をしている。
放課後、フウカはリンコを連れて弓道部の道場へ向かった。ここでも、リンコの風貌とただずまいに注目が集まる。顧問の先生に紹介した。
「おお、君が田所君か! 全国大会の会場で見たことがある。よく来たね。歓迎するよ」
先生は、リンコのことを知っているようだった。二年生ながら沖縄県代表として活躍したらしい。
さっそく道着に着替えて身支度を整えた。部の弓を借り、ツルを張る。慣れた手つきだ。
「えっ、そんなに強く張るの? ちょっと見せて」
フウカは、驚いた。
張られたツルを引いてみる。引ききれない。
「やって見せようか」
顧問と部長の許可を取って立ち上がる。的に対して斜に構え、呼吸を整え、ゆっくりと弓を引く。放った。
矢は一直線に飛び、シュパッと的の真ん中を射抜いた。
「オオオッーー!」
驚愕の声が、挙がった。
フウカは、唖然とするばかりであった。力量が、違い過ぎる。護衛としては頼もしいが、ジェラシーも感じた。今日一日、打ちのめされてばかりだ。
部活を追え、帰り支度をして靴箱の前に立つ。リンコが手続きのため職員室へ行ったので、待っていた。
後ろから袖を引かれた。振り向くと腕組みをしたユウコが、ブスッとした顔で仁王立ちしていた。
「あの子、なによ。みんなにちやほやされっちゃって――」
事実ではあるが、ユウコと何の関係があるのだろう。
「えっ?」
フウカが反応に困っていると、続けて言葉が飛んだ。
「何かフウカを取られた気がして悔しい。でも、カッコいいから、嫌いになれない」
「はあ――?」
「紹介しなさいよ。私のカレシにしてあげる」
「女の子だよ」
「いいの! カッコよければ、男も女も関係ないの!」
言っている意味がわからない。一緒に並んで歩く時、目立てば良いということなのか。
(これは、世に言う「ツンデレ」というやつか?)
脱力してしまった。
何とかユウコの追撃をかわし、やってきたリンコの手を引いて校門を出た。
家にたどり着いたときには、疲れ果てていた。リンコは、状況がわからないといったふうでキョトンとしている。彼女に責任はない。フウカが勝手にドタバタしていただけだ。
夕食後、リンコの部屋でカイトの話をすると決めた。彼女が、ほとんど事情を知らずに来ていることがわかったからだ。それにカイトへの気持ちを知りたい欲求もあった。
(カイトに一目ぼれして、何も考えずにやって来たのかもしれない……)
なぜそんなことを考えたのかは、自分でもわからなかった。




