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戦略爆撃機「SUSANOO」出撃準備

 日本政府の対策準備も大詰めを迎えていた。作戦実施日を12月26日と定め、官邸と防衛省を中心とす極秘プロジェクト・チームが万全を期して各方面との調整をはかっていた。

 プロジェクトの柱は、三つあった。

 第一は、民間への情宣活動である。年末ということもあって、混乱を最低限に抑える必要があった。①マスメディアやネットを通じての広範囲かつ穏健な災害予測、②公官庁による災害対策準備、③現地における避難誘導など、なすべきことは山ほどあった。しかも、真実は秘して着実に進めなければならない。

 とくに津波が予想される島々や九州沿岸地域には、情報周知や避難準備を入念におこないつつあった。当然のことながら、当該地域からは非難が殺到した。しかしながら、火山噴火や地震に対する懸念は一般の人々にも共有されていたので、不承不承ながら受け入れられた。12月26日の避難行動は、念のための予備的避難を兼ねた避難訓練として位置づけられ、周知徹底された。

 災害対策にあたる地方自治体などへの指示は、多額の交付金を約束して納得させた。とにかく急がなくてはならないので、地方組織もてんやわんやの騒ぎとなった。

 自衛隊の災害出動準備は、これまでの経験があるので、比較的スムーズに進んだ。問題は、米軍との連携に関してであった。CIAなど優秀な情報機関を有する米国に対しては、真実を完全に秘匿して協力を要請することは、不可能である。よって、正規の災害予測と並行してフリーメイソンや原理主義的キリスト教宗派など裏のネットワークを通して、政府中枢要人への働きかけをおこなった。そうした努力の結果、ようやく戦略爆撃機と地下貫通弾バンカーバスターの出動を取り付けた。名目は、もちろん共同訓練である。年末の訓練は異例となるので世間的には不透明さとゴリ押しの印象を与えたが、押し切った。しかしながら、米国に対して多大な「借り」となったことは否めなかった。

 戦略爆撃機は一機当たり二本の地下貫通弾を搭載し、五機が出動することとなった。この弾丸は精密誘導ができるのでピンポイント投下が可能とされているが、空中から海中、海底への発射なので不確定要素は少なからずあった。それでも成功を祈るしかない。もし失敗すれば、「鬼界カルデラ」の破局的噴火及び霧島火山帯の連動噴火、さらには「南海トラフ」への影響を招きかねない。米軍としても、「世界規模での冷夏に見舞われるかもしれない」となれば、見過ごすことはできなかった。その甚大な被害は、想像するのも恐ろしい。まさに日本と世界の命運を賭けた作戦であった。

 実施日まで一ヶ月余りとなった頃、官邸主導で最高秘密会議が開催された。メンバーは、「日本の霊的防衛」に関する事情(霊界との関係)を知る人物ばかりである。

 プロジェクトの全体を仕切る年配の官邸関係者が、口火を切った。

「寺社関連団体への手配は、どうなっているか?」

「はっ、すでに済ませてあります。全国の由緒ある寺社が、前日から一斉に祈祷を捧げることになっています。九州地区での海底火山噴火と地震発生予見に対する行動と公表してあります」

 担当者が、即座に答えた。

「そうか。『わたつみの宮』への連絡と要請は――?」

「そちらの方も依頼を済ませ、返事を貰っています。全面的にご協力いただけるとのことです」

 宮内庁関係者と想われる担当者が、朗報を告げた。

「それは、良かった。それで、どのような対策を講じようとなさっているのか?」

「それは、定かではではありません。ただ懸念していた『周辺海域の水温急上昇』は、最小限に抑えることができるかもしれないとのことでした」

 胸を張って笑顔で報告する。

「おおっ――!」

 出席者の間で、どよめきが起こった。今回の作戦が上手くいっても、周辺海域の環境破壊は免れることができないと考えられていたからだ。物理原則に即して言えば、対策の打ちようがない事項であったからだ。

「表の作戦と同時に霊界での作戦を実行するそうです。詳細につきましてはうかがえませんでしたが、かなり大規模な措置となるとのこと」

「ヤマタノオロチと、直接的に対峙することになるのだろうな」

「――そうなのでしょう。我々には、想像もつきませんが……」

 神話的レベルでの措置が講じられるのであろう。

「ところで、『貴き御方』のお出ましは、確約されたのであろうか?」

 姿勢を正して、年配者は尋ねた。

「ええ、お聞き届けいただけました。極秘裏に準備を進めております」

 答える側の表情にも、緊張の色が表れていた。

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