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フウカ、思い悩む――ホントの気持ちは

フウカの心境は、複雑だった。勉強を手助けしてもらえることは嬉しかったが、何か気恥ずかしいような気分もあり、素直にうなずけなかった。

「……そう――」

 あいまいな応答となった。その後は、眠って過ごした。

「フウカ、ゴハンよ」

 ノックと共に滝子の声が聞こえた。

 自分のベットに居た。車から部屋まで運んでくれたのだろう。よほど疲れていたに違いない。

 服装は、変わっていなかった。起き上がって、階下に下りる。良い匂いがした。

(すき焼きだ!)

 一気にテンションが上がる。修行中は精進料理だったので、肉が食べたかった。

 駆けるようにして勢いよく食卓に着く。

 「いただきまぁーす」

 卵を溶き、牛肉を(ひた)す。大きく口を開けてパクッと食らいつく。

(うまい!)

 至福の味だった。

 滝子は笑顔で、その様子を眺めていた。

 お茶を飲み、落ち着いたところで、修行中の出来事を思い出すままポツポツと語っていった。いろんなことがあり過ぎて、まとめきれない。

 歴代の「つるぎ姫」が脳裏に浮かんだことから始まって、宇宙の最奥「星々のささやき」の場に送られたこと、そこで「男」に出遭ったことを話す。

「『俺がいないと、剣の力を十分に発揮させられない』ですってー―」

 男がスサノオであることはわかっていたが、その名を口にするのは、何となくはばかられた。

 だが、滝子には伝わったようだ。

「大変な方をお迎えしちゃったのね」

「そうなのよ。年末の儀式までの『仮住まい』みたいだけど……」

 日分の下腹に手を当てる。

 修行の目的が、剣の持ち主であったスサノオを迎え入れ、威力を最大限に発揮させるためのものであったことは理解できたので、文句は言えない。

 翌日は、一週間ぶりに登校した。友人たちが周りに集まって気遣ってくれた。

 部活がない日だったので、下校の途中で同級生の優子と一緒にマクドへ立ち寄る。二二階の窓際に座って休んでいた間の学校での様子について聞く。

 フウカはカフェラテとアップルパイ、ユウコはポテトをつまみながらコーラを飲んでいた。とくに変わったことはなぁったようダ。

「休んでいた分の勉強は、どうすの? ノート貸そうか?」

「ううん、だいじょうぶ。今日から一週間、家庭教師が来てくれるの」

「どんな人?」 

「知り合いのお兄ちゃん、〇山大学の学生さん」

「ええッ、いいなぁ。カッコ人?」

「……どうかな――」

 言葉を濁した。客観的に評価すれば、カイトの顔は比較的整っているし、身体つきもスマートだ。身長もある。大学を考えれば学力も高いのだろう。だが、これまで身近で見てきた言動を考えると、引っ掛かるものがあった。――かといって「キライ」でもない。これまでも何度か「ドキドキ」したこともあった。正直言って、自分でも自分の本当の気持ちが、わからなかった。

「今度、紹介してよ!」

 優子は身を乗り出して、迫ってくる。


 家に帰って部屋の整理整頓をしているうちにカイトがやってきた。午後六時半になっていた。一緒に夕食を摂ってから九時まで家庭教師をしてもらう予定になっている。

 夕食は、「ナポリタン・スパゲティ」であった。木型にはまった楕円形の鉄皿に薄い卵焼きが敷かれ、その上にタマネギとピーマン、赤ウインナーが入った麺が盛られていた。鉄皿を焼いてあるので、まだ熱アツで湯気が立っている。

 フウカはカイトに挨拶をし、食べ始めた。

「カイトさん、最近どうなの?」

「なんやかんやと忙しいです」

「今回は、無理言っちゃってゴメンね」

「いや、かまいません。フウカさんのことは気になっていましたし……」

 そんな会話をしていた。

 食事を済ませ、フウカはカイトを自室に案内する。男の人に部屋を見られるのは、何となく恥ずかしい。

 勉強机には、すでに教科書などを準備してある。

「さあてと、気合を入れてがんばろう。大仕事の前に気になることは、片付けっておかないとね」

 腕まくりをしながら、カイトは言った。

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