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スサノオ様から剣を渡される

 「奈良の大仏様」を見上げているようだった。

 ヤマトタケルと同じような服装をしていた、ただし壮年で髭を生やし、厳めしい顔つきであった。

(この人にも覚えがある)

 「神話物語」で見た。「スサノオのミコト」である。青みを帯びた白銀色の大剣を持っていた。

 スサンオオは、静かにフウカを見つめ、語り掛けた。

「そなたに吾が力と剣を与える」

 それだけ言うと、剣の柄をフウカの目の前に差し出した。柄の部分だけで、身長ほどもある。

(持てるののかな?)

 そう思いつつも、抱き着くように抱えた。

 すると、剣はスルスルと小さくなり、両手で握れるくらいの大きさになった。握り具合も、しっくりした感じだ。次いで、手の平から体内へ吸い込まれていった。フウカは、空になった両手を見つめる。

 再びスサノオを見上げると、その姿は消えていた。


 ドアをノックする音が、耳に入った。

 礼拝室の中で座っていた。正面の祭壇に目をやると、飾られている「御つるぎ様」が発光している。身体が動き、神剣を手に取ると、抜き放った。慣れた手つきだ。自分でも驚いた。刃が、青みを帯びた白銀色に輝いている。剣を立てて、じっくり眺めた「自分の剣だ」という思いが湧いてきた。常に携えてきた「相棒」といった感じである。鞘に収め、祭壇へ戻す。

お腹が減っていたので、準備室へ移る。夕食が用意されていた。おかずは、ダイコン、ニンジン、コンニャク、シイタケ、アブラアゲの煮しめであった。子どもの頃から好きだった「母の味」である。

 さっそく箸を取る。食べながら、「神話物語」に載っていた。

 スサノウの話について思い巡らせた。

 スサノオは、イザナギとイザナミの息子である。亡くなった母を慕っていつまでも泣きわめき、周囲を困らせた。また、姉であるアマテラスが住む所へ行って大暴れをした。

 それで天上界を追い出され、下界を放浪。その途中で、ヤマタノオロチへの生贄(いけにえ)として差し出されそうになっていた女の子を助けるため、オロチと闘う。仕留めたオロチの尻尾から剣を取り出した。それが、後の「クサナギの剣」である。――そんな話であったかと記憶している。

(なんて甘えん坊、乱暴者なんだ。でも、かわいそうな女の子を助けたのは良いよね)

 子ども心に、そんなことを思った。神様らしくない振舞いに興味を持った。、

 食事を終え、トイレを済ませて礼拝室へ戻る。これからの時間は、睡魔との戦いだ。寝落ちしてしまう危険性がある。

 瞑想状態に入る。しばらくすると身体の中から男の声が聞こえてきた。独り言のようなつぶやきだ。


 父は、家を出て行った。母は、その後を追った。俺は、独り残された。さびしくて泣きわめいた。誰も俺の気持ちをわかってくれない。だから、荒れた。

 姉の所へ押しかけ、田んぼの(あぜ)を壊したり、神殿に(くそ)を撒き散らしたり、皮をはいだ馬の死体を(はた)織り場へ投げ入れたりした。「姉なら俺の気持ちをわかってくれるだろう」と思ったが、「仕方がない」と言うばかりで、取り合ってくれなかったからだ。腹が立ったので大暴れしてやった。八つ当たりだとはわかっていたが、気持ちが抑えきれなかった。

 それで、天上界を追い出された。下界を彷徨(さま)い歩くうちに、ヤマタノオロチという巨竜に生贄として差し出されそうになっていた娘と出遭った。両親と共に泣いている姿に同情し、「退治してやろう」と思った。なぜそう思ったのか、自分でもわからない。

 オロチは、醜悪だった。怒りを表し、暴れていた。その様子を見た俺は、「俺のようだ……」と思った。姉や周囲の者から見た俺は、こんな姿に見えていたことだろう。

 自分の醜悪な心に立ち向かう気持ちで、立ち向かった。なんとか倒したら、尻尾か美しい剣が一振り出てきた。

(醜悪な竜にも、こんな美しいものが秘められていたのか)

 俺は、自分の心の内を省みた。人を傷つけるつもりは無かった。ただ俺の悲しみと怒りをわかってもらいたかっただけだ。

 取り出した剣は、俺の本当の気持ち「誠の心」のように思えた。よって、姉のところへ出向き、これまでの非礼を詫び、自分の「誠の心」の(しるし)として剣を姉に献上した。後に姉は下界の民を治めることになったニニギに、この剣を託した。「誠の心をもって民と接しなさい」という趣旨だったらしい。俺は、満足した。姉は、わかってくれたのだ。


 男のつぶやきは終わった。

(この神剣には、『荒れ狂う怒りや悲しみを鎮める』という意味合いもあったのか)

 瞑想を解き、改めて祭壇の『御つるぎ様』を眺めた。地震を「大地の怒り7」と考えれば、剣の役目を理解することができる。

(ちょっとコジツケぽいかな)

 そんなことも付けて思った。

 もう寝ることにした。

 夢を見た。

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