地下貫通弾を使用――米軍が協力
政府レベルでも具体的な実施計画が進められていた。
研究者たちの見通しだと、「良くて地域周辺の大規模環境破壊」、悪くすると破局噴火を誘発し「日本列島半分の壊滅」といったものだった。要するに「日本が立ち直れなくなるよりはマシ」という究極の選択であった。
一般社会には、「鬼界カルデラの噴火が、学界で心配されている。ただし百年以内」というアナウンスがなされ、そのための対策が政府主導で進められていることを伝えられた。
この内容自体は偽りではないし、人々も多少は耳にしていた。よって、危機感は覚えつつも「切羽詰まっている」とは、思っていなかった。
その上で政府は、年末に小規模な海底火山噴火と地震が起きる可能を告げ、「念のため、避難訓練を兼ねた予備的避難をおこなう」と周辺住民に知らせ、避難所の設置や避難の手筈を整えていった。範囲は、九州沿岸地域と奄美群島までの島々であった。規模としては数十万人が対象となった。実施時期が年末ということで、対象地域からは非難ごうごうであったが、押し切った。
「米軍の協力が得られることになりました。地下貫通弾を積んだ戦略爆撃機が、出動してくれます」
関係官庁の秘密連絡会議で防衛省の担当官が興奮気味に報告した。
溶岩ドームの表面に大穴を開ければ、暴発する。ならば、細い穴を空けて内部で破裂させ、冷媒物質を均等に拡散させなければならない。「気化爆弾」のあたちとなろう。
地下貫通弾は、それに適していた。面だって言われているのは、地下六十メートルまで貫通することができるとのこと。しかし、兵器である。本当の能力を敵に知られてはならない。よって、実際は、もっと威力があるだろうと推測されていた。
この爆弾は一本で数トンの重さがあるので、大型の戦略爆撃機が必要となる。それでも一機に二本しか積めない。作戦には、数機が参加することになろう。
米軍が、ここまで協力してくれるのは、破局噴火が起これば、世界的規模で気候に影響を与え、異常気象被害や冷夏による穀物相場の高騰などをもらたす恐れがあるからだ。
報告を受けた出席者たちは喜びはしたが、実行の困難さを想い表情は固いままだった。 針に糸を通すような精密さが要求される作戦である。成功の確率は低い。しかし、リスクはあってもやらなくてはならない。
一般の官僚や学者たちにとって「人知を超えた力」など信じられなかったが、本気で「神頼み」をしたくなっていた。
源造の家の前には、「建物改装工事中」という立て看板が置かれていた。改装業者らしい人間が出入りしている。何でもない光景であるが、通行人の中には、違和感を感じた人もいた。作業服が真新しく、ヘルメットや靴にも汚れ一つなかった。全員、白いマスクを着けている。さらに神官服を着た人も交っていて、荷物を運び込んでいた。作業者は、ガレージから下へ続く階段を下りているようだ。ちょっと疑問を感じただけで「地下室の改装なんだろう」と解釈し、通り過ぎる。
地下では、「御つるぎ様」の礼拝室の隣で工事がおこなわれていた。入り口には、注連縄が貼られ、手洗い用の水が用意されている。




