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活断層の近くにある古い寺社

 何も知らされていないことにフウカは、不満たらたらである。

(喫茶店で、いちばん豪華で高いパフェを注文してやる!)

 そう決意していたが、メニューを見ているうちに気が変わって「あんみつ」を頼んでしまった。外が肌寒かったので、あまり冷たいものは避けたかったのと、もともと好物であったからだ。カイトは、やはりホットコーヒーのブラックである。食べているうちに少し機嫌が直った。温かいカフェラテで、気持ちが落ち着いた。「女の子には、甘い スウィートを与えれば機嫌が直る」と思われたならシャクだが仕方がない。

「ねえ、カイトさん。どうしてお坊さんと神官さんに引き合わされたのかな? あの人たちって、エライの? 私と、どんな関係があるの?」

 矢継ぎ早に質問する。

「うん、そうだね。エライ人たちだよ。全国の寺院や神社に影響力を及ぼすことができる」

「そうなんだァ。でも、全国の寺院や仞社が、それぞれお経をあげたり、お祓いをしたりしても、気休めにしかならないいんじゃないのかな」

「そうでもないさ。いくら昔といっても効果のないことを繰り返したりしない。それなりの見返りは、あったんじゃないか」

「そうかなァ……」

 フウカは、納得できなかった。世の中には不思議なことがあるのは、前回の「旅」で思い知った。だが、現代社会に戻って7みると、「すべて夢だったんじゃないかな?」と、頬をつねりたいくなることさえあった。

「君が引き合わされたのは、寺社勢力の(かなめ)になる存在だからだろう。今回は全国の寺社の力を熱田に集めるつもりだろうから、『つるぎ姫』とは、ぜひとも顔合わせしておかなくてはならなかっただと思うよ」

「えええッーー! そんなァーー」

 変な声を挙げてしまった。周囲の客の注目を集めてしまった。あわてて手を口に当てる。

(今回は、『お人形さん』では、いられないということ?)

 それなりの働きを期待されているらしい。

「もっとも君だけでは荷が重いから、『貴き御方』のお出ましを願うみたいだから、二人で力を合わせることになると想うよ」

「『貴き御方』って、誰なの?」

「それは、まだ言えない。全国から集まって来る神々の力を受け止められるだけの器を持った方だとだけ言っておこう」

「……?」

 とてもエライ人のようだが、独りでやらなくてもよいようなので、ホッとした。

「ところで、なんで神社の力が必要なの?」

「それは、神社が各地に建立さてた理由にあるんだ」

「地元の人たちが、拝むためじゃないの?」

「それはそうなんだが、人々が『何を願ったか』が、問題なんだよ」

「ええーと、病気、日照りや冷害、治安……なんかかな」

 授業で習ったことを思い出しながら応える。

「正解。でも、他にも重大な願いがある。それは、地震だ。

 地震は、なぜ起こりのか、昔の人は、どう考えていたんだろう?」

「ナマズが地下で暴れるからじゃない?」

「江戸時代頃は、そうだったたね。でも、以前は、地下に巨大な竜が横たわっていて、それが動くこと地震が起こると信じられていたんだ」

 またまた竜が登場した。カイトは、話を続ける。

「有名なのは、茨城県の鹿島神宮に伝わる話だね。ここには、『要石』というものがある。地上に出ている部分は周囲六十センチほどの丸石だが、下は深く埋まっているとされているんだ。

 これは、神宮の神様が天から降りてきた際、地中に打ち込んだもので大ナマズを抑えるためと説明されている。だが、別伝では竜だとされている。

 要石は『石剣』とも称され、神様は、この剣の上に降臨して座したと伝えられている。だから今でも刀剣や武道の神様として信仰されている。つまり『剣で竜の頭を抑えている』わけなんだ。この神様は、『剣そのもの』とも見られている」

 流れるように一気に語った。ここでコーヒーを一口飲む。

(さすが大学で日本史を専攻しているだけあるわ)

 フウカは、感心した。長ったらしいが日本史は好きなので退屈はしなかった。しかし、「なんで神社の力が必要なのか?」という質問の答えにはなっていない。まだまだ講釈は続くのであろう。覚悟した。頭を働かせておくには糖分が必要だ。

「お姉さん、ソフトクリーム一つ追加ね」

 通りがかった店員を呼び止めて注文する。

 一息ついたカイトは、また語り出した。「先生」の講義の再開だ。フウカは、届いたソフトクリームを()めつつ、おとなしく耳を傾ける。

「要石は、千葉県の香取神宮にもある。ここの神様も『刀剣の神』なんだよね。鹿島がナマズ(竜)の頭、香取が尻尾を抑えているという俗説もあるね。

 通俗用語で要石は、『動かせないもの』の例えとして使われている。『地震を抑える役目がある』から動かせないんだ。熱田神宮の『クサナギの剣』が他へ持ち出せないのも、このあたりに理由があるんじゃないかと思っている」

「熱田の地震災害を抑えているということ?」

「うん、もっと守備範囲は広いと思うけど、直接的には、そう言えるんじゃないかな。

 少し話は変わるけど、愛知県で地震災害が最も心配されている所がどこか知っているかい?」

「知らない」

「じつは、この熱田周辺なんだよ。この地の下のは、十四もの『活断層』が存在している。だから県も注意喚起している。つまり『地震の巣』の上に僕らは住んでいるんだ」

「へぇ―、知らなかった」

 学校で習った覚えがない。それに、大きな地震に遭ったこともない。初耳だった。

「この辺りは江戸時代までは海岸部で、地盤はもろい。なのに大地震は起こっておらず、千数百年の歴史を誇る熱田神宮など古社が点在している。不思議だよね」

 フウカの顔を覗き込むようにして話す。

(女の子に顔を近づけるな。コイツは「歴史オタク」だ)

 ちょっと気分が冷めた。でも、話には付き合う。 

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