表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/71

国家鎮護のため寺社が力を合わる

「なんか肌寒くなったね」

 家から外へ出たとたんフウカは、ブルッと身を震わせた。

「そうね。秋物の服を出しておかなくては――」

 車の運転席に乗り込みながら滝子が応える。 

 十月最初の日曜日だ。例年ならば、まだ寒さを感じるほどではないはずだが……。

 源造宅に到着し、勝手に居間へと上がる。滝子は、慣れたものだ。

 いつもの座卓に源造とカイト、それに見知らぬ二人が座って茶を飲んでいた。遅刻したわけではないが、フウカは、なんとなく気まずい思いをした。

 座卓の四方に、左右一人、前後に二人ずつ座るかたちとなる。フウカは、源造の横に招かれ、カイトが滝子の横に移った。

 左側には質素な黒い袈裟衣(けさごろも)をまとったお坊さんが正座し、静かに微笑んでいる。かなりのお年寄りだ。なぜか気品がが、感じられる。右側の人は、白い神官服で、ちょっと仕事を抜け出してきたという風体である。胡坐(あぐら)をかいていた。こちらも普段着ながら威厳が備わっていた。

 フウカは正面に座らされ居心地の悪いをしながら両手を膝に置き、かしこまっている。上目遣いで、左右の人をうかがい見た。

「そちらが、『つるぎ姫』様でございますか?」

 お坊さんが、尋ねる。

「はい、御つるぎ様の承認を得て継承し、今回の火竜対策にも参加しました。お見知りおきのほど、願い上げます」

 源造が丁寧な口調で答えた。

 神官らしき人も、おもむろにうなずく。

「よろしくお願いします」

 正面の滝子が目で合図したので、ペコッと頭を下げる。

「今回の火竜対策、お見事でした。御礼申し上げる」

 神官も、そう述べつつ頭を下げた。

「さて、本当に困ったことになりました。すでに報告が届いているかと思いますが、長年の懸念が間近に迫っているようです。宗教界でも、総力を挙げて取り組まねばなりません。

 全国の寺社が共に力を合わせて立ち向かう必要があります。貴き御方のご助力も賜ることができそうなので、古来よりの使命を果たす時が来たようです」

 源造は、明言した。

「拙僧も御山に帰って協議し、態勢を整えることにいたそう」

 後で聞いた話によるとお坊さんは、比叡山の高僧であるらしい。

 滝子の説明によると、比叡山は都の北東部に位置し、邪気の通り道となる鬼門を護る役目があり、国家鎮護を使命とする寺院であるとのこと。

 元より日本に仏教が導入されたのは、「国家鎮護」が主目的であった。よって、国難に際しては、全国の寺院が一斉に読経を挙げ、「恨敵退散」を祈念した。主に病災害が蔓延(まんえん)した際に行われたが、「元寇」の時も大々的に実施された。その功績をもって朝廷から栄誉と報奨を受けている。

 神社も同様であった。すべての神々に対して、国を護るための祭事を催し、祈りを捧げた。

 ――そんな話であった。ちなみに同席した神官は熱田神宮に所属し、「剣の護り人」の存在と役割を知る数少ない人であるらしい。

 フウカも日本史の授業で概略は習っていたが、現代にまで続いているとは思いもしなかった。

「つるぎ姫様、詳しいことにつきましては、もう少し話が煮詰まってから、お話し申し上げます。今日は、顔合わせのみといたします」

 源造が、いつもとは違う丁寧な言葉遣いで話し掛けた。フウカは理解できず、キョトンとしてしまう。

「それでは、これで失礼させていただきます」

 滝子が一歩下がって両手をつき、左右の人に対して頭を下げた。そして、立ち上がり態度で「帰るよ」とフウカを促した。フウカは、わけがわからないまま、立ち上がり後を追った。

「買い物してから帰るから、またカイトさんに送ってもらいなさい」

 そう言い残すと車に乗って去ってしまった。

(なんで! 買い物なら一緒に連れていってくれればいいのに……)

 立ち尽くしてしまった。

「滝子さんは、僕から君に話しておいて欲しいことがあるんだろうね。

 近くの喫茶店に寄ろう。好きなものをおごるよ」

 そう言うと、先に立って歩き出した。フウカは追いかけ、並ぶ。「不可解でならない」といった顔をカイトに向ける。

(ママとカイトさんが、なんでわかり合っているのよ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ