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「破局噴火」を止めるには?

「皆さん、お忙しい所をご参集いただきまして、ありがとうございます」

 司会役の源造が、口火を切った。

 まず初めに「火竜の衝突懸念」に関して経緯を報告した。皆、危機が回避されたことを聴き、喜んだ。

 これに関して専門家からも「なぜか熱の流れが急に進路を変えた」ということで、学界でも不思議がられているとの話が紹介された。

 次いで本題に入った。最初に立ち上がったのは、「鬼界カルデラ」の調査研究を長年続けている研究者であった。彼はプロジェクターを使い、スクリーンに映し出されたカルデラの外観と「溶岩ドームのイラストを指し示しながら、解説していった。要点は、次の通りである。


 カルデラは東西二一キロ、南北約一八キロの楕円形。内部は山手線の輪、二倍くらいの広さとなっている。 

 カルデラ内部に世界最大級の「溶岩ドーム」が存在し、成長しつつある。直径一〇キロ、高さ六〇〇メートル、体積三二万立方キロ超。「桜島」が、すっぽり三つ分も納まるくらいの規模だ。

 マグマは七千三百年前の噴火以降に溜め込まれたもので、今もドームは膨張を続け、その速度は桜島の約十倍にも上る。カルデラの外輪山に当たる薩摩硫黄島の火山が昨年十一月、大きく噴火した。二〇一五年頃から、この地域の火山活動が、相対的に活発となってきている。

 世界規模で考えると「破局噴火」は、七千年に一度くらいの割合で起こる。「鬼界カルデラ」に関しては学界でも議論があり、今後、百年以内と推測する学者もいる。


「百年後ではなく、あくまでも『以内』なのです。明日起っても、不思議ではありません。その不安が、どうも的中してしまいそうなのですよ」 

 解説を終えると両手を降ろし、頭を下げる。その様子は、うなだれているかのようにも見えた。

 誰も声を発しない。沈黙が、その場を支配する。

「今年の年末頃が危ないというのは、確かなのかね?」

 白髪の参加者が、尋ねた。政府関係者のようだ。

「はい、最近の調査結果では熱水の噴出が激しくなり、振動も絶えず起こっているとのことです。薩摩硫黄島の噴煙も高く立ち上り、地震も頻発しています。様々なデータを基に観察チームが協議したところ、そのような結論に至ったようです。杞憂であれば幸いですが……」

 他に質問も出なかったので、席に戻る。

「とにかく当面は『年末』と考えて対策を進めなくてはなるまい。政府としても早急に取り掛かるとしよう。各方面の方々も、よろしく頼む」

 先ほど質問した年配者が、場を代表するかのように言った。一同、うなずく。

 会合は細々とした打ち合わせを済ませた後、解散した。

 政府関係者の年配者と説明役の学者は残って、源造宅の居間へ上がった。座卓を囲んで、話の続きをする。

「源造さん、そちらの方は、どうかね?」

 年配者が、尋ねる。曖昧な言い方ではあるが、意は通じたようだ。

「『御剣様』にお伺いを立ててから、宗教界の識者を呼び集めて説明し、動きます。ですが、今回は私どものだけでは、力不足となりましょう。貴き御方の御助力を賜る必要があるかも知れません」

 居ずまいを正して源造が応える。

「――そうなるであろうな。こちらとしても関係官庁に話を通しておくとしょう」

 タメ息混じりに、つぶやくように言った。

「対策の目途は、立っているのかね」

 今度は、学者に話を振った。

「いえ、まだ手探り状態です。ただ、何をしなければならないかは、見えてきております。――とは言っても、暴発を数十年、遅らせることができるか……といった程度です」

 頼りなげな返答であった。

「今のところは、それで良い。目の前の危機を回避するのが先決だ」

 身を乗り出して年配者は、言った。

 学者は、話を続ける。タブレットを取り出して、「溶岩ドーム」の内部構造図を見せた。

「このようにドームの『下三分の二』に溶岩が溜まっていて、上部に火山性ガスが、充満していると考えられています。

 『マントルの熱い指』と呼ばれる指先のような突起、これは深部から盛り上がったものなんですが、これがドームの下から突っつき、溶岩とガスをドーム内に供給しているのです。ですから、ドームは膨張し続けて、今や破裂寸前になっているとわけなんですよ」

 話しぶりに熱が入っていった。さすがに「学者」である。

「仕組みは、わかった。それで、どうすれ良いのかね」

 聴く側としては、対策が知りたいのだ。

「理屈で言えば、上部に溜まったガスを暴発しないように少しずつ抜き、代わりに冷媒物質を投入してドーム内の温度を下げればいいんですが……」

 具体策までは、わからないようだ。

「わかった。こちらでも検討してみよう」

 三人の話し合いは、ここで終わった。

 外へ出ると、秋風が急に冷たくなっていた。

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