年末にオロチがめざめる!?――パニくるフウカ
喫茶店に入ると、角のボックス席に陣取った。四人掛けのテーブルにゼンとマオ、フウカとカイトが座る。
「フルーツパフェとレモンソーダ、プリンアラモードとミルクティーを頼むわ」
注文を取りに来た店員にゼンが言った。
「ブラックコーヒーのフレッシュ無しと、カフェラテにイチゴのショートケーキをお願い」
フウカが、注文する。カイトは、ブラックコーヒー派らしい。
マオは、目の前に置かれた冷水のガラスコップとオシボリを珍しそうに見つめている。隣のゼンがオシボリで手を拭うのを見て、真似をした。次いで冷水を一口飲み、驚いた顔になる。まぁ、そうだろう。
運ばれてきた物が揃った。
「いただきまぁーす!」
久しぶりのケーキとカフェだ。フウカの口が、喜んでいる。マオも、ゼンに食べ方と飲み方を教えてもらいながら、恐る恐るスプーンを口に運ぶ。笑みが浮かんだ。
ゼンは慣れた手つきで、パクついている。カイトは、コーヒーカップを手にしながら、窓の外を眺めていた。
「旅」の思い出話など、軽いおしゃべりをしながら飲み食いをを終えた。
「どうだった?」
ゼンがマオに感想を求める。
「ふむ、満足であった。これがゼン様のおっしゃられていた『東京シティーライフ』と言うものかと思い、感服いたした。御礼申し上げる」
両膝に手を置いて頭を下げた。その古風な物言いと態度がが見た目とギャップがあり過ぎ、滑稽ですらある。むろん本人は、大真面目だ。似た話し方をするクンダルを思い出した。
(今どこに居て、どうしているんだろうか?)
クシャミをしていることであろう。
「今朝がたの源造さんの話だが、ゼンは、どう思った?」
側で聴いていたという前提で尋ねている。
「ああ、『有り得るな』と思った……」
やはり聴いていたようだ。
「いつ頃だと想う?」
「年末近くが、危ないな」
スパッと答える。
「ええっ! そんなァーー」
フウカは、小さく叫んでしまった。
何が起こるのかも知らないが、大変なことに違いない。
「何が起こるの?」
無関係ではいられないだろうから、問い詰めておかなけれならない。
「ヤマタノオロチが、目覚めてしまうということだ」
フウカの懸念は、的中した。いつかは起こるんだろうと想っていたが、近過ぎる。後、三ヶ月もない。
「ちょっとヤバな。急いで準備を進めなければいけない」
そう言いながらも、けっこう冷静だった。
「カイトさん、何を、どう準備するのよ?」
フウカは、ヤマタノオロチの夢を思い起す。とてつもない規模で、威力も桁違いであった。とても人間の力では、防ぎようがない。
「あそこへオロチを封じ込めたスサノオ様に責任を取ってもらうさ」
何を冗談言っているのだろう。他人事ではないはずだ。きっとカイトも駆り出される。当然、「クサナギの剣」の守護者(と言うよりお世話係見習い)であるフウカは、最前線に押し出されるに違いない。
「まあまあ、落ち着きなはれ。こうなったらジタバタしてもしょうがないやろ。総力戦で、立ち向かうしかないでェ」
関西弁でゼンが、口をはさんだ。憑依した女の子が、関西出身なんだろうか。軽口だとはわかっているが、腹が立つ。




