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ファル〇ン登場!――映画の通りの姿

「ファル〇ンだ!」

 思いっきり叫んでしまった。大好きな映画に登場するドラゴンである。垂れ耳の犬頭で、全身を白い毛で覆われている。モフモフである。何となく予想はしていた。

 ファルは火柱の直前で、白い息を吐きつけた。氷雪の吹雪のようだ。身近な例で言えば、消火器で火を消すときのイメージである。

 次いで身体を横に倒し、火口の縁に沿ってすり抜けた。そのまUターンする。激しい動きであったが、フウカは振り落とされなかった。まるで安全ベルトで胴体にくくり付けられているような感じである。

 目の先には、金竜に騎乗したカイトがいた。火柱を凝視している。

「カイトぉ――、ゼン!」

 腹の底から声が、出た。

 それに気づいたのかカイトがチラッと、こちらを見た。ニカッと笑って、親指を立てた。

「ファインプレーだったよ」

 念話で賞賛を送ってきた。自分ではなくファルの機敏な動きだったが、嬉しかった。

「ドドド、ドゴォ――ン!」

 轟音と共に空気が揺れた。ひときわ大きな噴火音が響き、光が満ちる。火口から燃え盛る炎が、吹き上がった。

 炎は、巨大な竜のかたちをとった。深紅の両目、切れ上がり開かれた口、そこからのぞく鋭い牙。上半身を現し、辺りを見回すかのような仕草で、身をくねらせる。

 正面に金竜を見つけると、炎を吐きつけた。二人が包まれる。

「わあッ!」

 フウカは、悲鳴を挙げた。黒焦げになり、(ちり)となって吹き飛んでいてもおかしくない。

 だが、そうはなっていなかった。炎が静まった後には、以前のままの両者が在った。「光の繭」の中に居る。

 金竜が、すかさず反撃する。微細な金の光の粒(微粒子)で成り立っている息を勢いよく吹き付ける。それは、広範囲に広がり、火竜にまで届いた。

 火竜は少したじろいた様子を見せたが、ダメージは負っていないようだった。

 その間にファルは火竜の横に付き、再び氷雪攻撃を仕掛ける。時を置かず背後に回り、攻撃を繰り返した。さらに、さっきとは反対側の側面を狙った。つまりグルッと半周して攻めたのだ。これには火竜も身をよじったが、うるさい仔犬が、周囲でキャンキャン吠えて噛みつこうしているくらいの感覚だったかもしれない。上体を振り回し、炎を撒き散らす。シッシと、手で追い払うかのような感じだ。ファルは、たまらず距離をとる。

(大きさと力が違い過ぎるよ! これでは相手にならない。軽くあしらわれるだけだ)

 フウカは、絶望しかかった。

「ゼン、あんたカミ様でしょ。何とかしてよ!」

 文字通りの「カミ頼み」だ。すがるしかない。

「任せな、大きさで劣るなら数で勝負だ」

 即答だった。

「マオ、出番だ。準備しな」

 続けて、呼び掛けてきた。

「お任せあれ!」

 マオの応答が聞こえた。

 フウカの魂が、スウッと背後に移動する。

 前の席にはフウカの肉体があるはずだが、なぜか若い頃のマオの姿をしていた。長い髪を後ろで束ね、くせっ気のある前髪がフワッと額にかかっていた。袖口と足首のところを紐でくくったカーキ色の作務衣風衣装をまとっている。背には、神刀がある。

 フウカは、ホッとした。

「眷属たちを呼び寄せるよ。御剣を立てろ」

 またゼンの指示が飛ぶ。

 マオは、ファルの頭上にまっすぐ立ち、両手で(つか)を握り、剣の切っ先を立てる。顔の横で構えた。微動だにしない。

 にわかに黒雲が湧き出し、空が曇った。風が吹き、海上が波立っている。いくつもの竜巻が立ち上がっていた。

(何よ、これ!?)

 景色の急変にフウカは、呆然とするばかりであった。

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