火竜を迎え撃つ――モフモフな背に乗って
火竜の到着予定日となった。迎え撃つため、カイトは金竜に騎乗し、フウカはハンググライダーの「ファル」で、トカラ列島「諏訪之瀬島」の上空へ向かった。ゼンが餌を投入したのが、この島の火山火口である。
天気は良い。青空が広がり、白い雲が浮かんでいる。平和そのものの光景だ。
火竜の形状は一定していないらしい。だが、出現するときは火口サイズの胴回りとなるだろうとのこと。推察するに直径二十メートルくらいであろうか。それでも、相当大きい。
フウカは夢で見た「ヤマタノオロチ」の出現シーンを思い出した。桁違いに巨大であった。振り返る。
周囲三十キロ平方メートルの海面が、真紅の円心から色調を暗く変えながら染まっている。取り巻くのは、塗り込められた漆黒の闇……。火口から炎が上がり、枝葉のように広がっていく。
主な炎枝は、八本か。その有様は、よく見ると、太陽から吹き上がるプロミネンス(紅炎)のよう。例えるなら、巨大な蛇か龍が鎌首を持ち上げ、くねっているかのようであった。
(直径二十キロの広い火口から吹き上がって身をくねらせていた八本の炎が、ヤマタノオロチだったんだろうな。あんなのが目覚めたら、ホントに日本が終わってしまう。
そのためには、どうしても火竜の激突を食い止めなくてはならないんだよね……)
その責任の重さを考えると、身体が震えてくる。ゼンの呑気さが羨ましくなった。
「来るぞ! 準備はいいか?」
念話で、カイトが声を挙げた。
思いにふけるのをやめて、集中する。操舵管を握り締めて、向きを火口に向ける。目の前にぶら下がっている「仔犬のマスコット」を見つめた。ぐんぐん近づく。
「ドドド、ドオゥーン!!!」
火口が輝き、勢いよく噴煙が噴き出し、火柱上がった。
真っ赤に焼けた噴石が、高く四方に吐き出された。
「キャァーーー!」
思わず叫んでしまった。
このままでは、吹き上がった火柱の中に突っ込んでしまう。だが、コースは、変えられない。また、「変えてはならない!」と直感的に思った。目を見開き、歯を食いしばる。顔に熱が、吹き付けてくる。熱いと言うより「痛い!」。もう目が開けていられない。ギュッとつぶる。
このままでは、ハンググライダーごと燃えてしまう。
「頼むよファル、マオ!」
心の中で強く念じ、呼び掛けた。
「ワン!」
犬の鳴き声だ。同時に輝きに包まれた。
顔を上げると、白いモフモフに下半身が包まれていた。目の前には後頭部があった。両側には、垂れた耳。今は後ろになびいているが――。いつの間にか、大きな犬にまたがっていた。首の所だ。振り返ると、胴体の部分が長く延びている。




