表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/71

「子守歌」の伝授と手筈の確認――臨戦態勢

その夜、また現れたゼンに風華の話を伝える。

「任せて――チャチャッと伝授するよ。

 笛、小太鼓、琵琶の演奏者を揃えておくように言っておいてね」

 すぐに請け負ってくれた。

(練習時間なんてないのに、どうするのだろうか?)

 そう思ったが、カミ様なので方法はあるのだろう。

 翌日の午前、神殿の祭壇前に風華と三人の楽師が、それぞれ楽器を前に置いて控えていた。緊張した(おも)持ちだ。

 乙姫姿のゼンが眼前に立つと、皆、頭を床に叩きつけんばかりに平伏する。

「頭を上げよ。身体を楽にしておけ」

 そう言いおくと、楽師たちに演奏の態勢をとらせた。独り最前に座す風華には、瞑目するように指示風する。

 ゼンは楽師の背後に立ち、一人ひとりの頭に手を置いて指パッチンをしていく。その度に楽師の身体が、ビクッとした。最後は、風華だ。やはり頭上に手を置いたが、わずかに時間が長い。

「唄い、奏じてみよ」

 ゼンがおもむろに命じる。

 楽師たちは最初、ボヤッとしていたが命じられたとたん、滑らかに演奏し始めた。前奏に続いて、風華がゆっくりとしたテンポで唄い出す。少女らしい声だ。歌詞は、和歌(長歌?)なのだろうか。京都の神社で奉納される平安時代の楽曲のように感じた。何度も繰り返されて続く。確かに眠くなった。ウトウトしているうちにゼンがパンと手を打つ。皆、ハッとした。意識が正常に戻ったらしい。

「これで良いだろう」

 ゼンの言葉で、解散となった。伝授は、アッという間に終わった。風華は、まだ信じられないという顔をしている。そりゃ、そうだ。カミ様の力を知っているフウカでさえ、近い思いでいるくらいである。


 午後からはカイト、ゼン、フウカで、手筈について打ち合わせる。

 カイトが、口火を切った。

「火竜は、進路に当たる火山を噴火させる傾向がある。つまり顔を出す。インドネシアでの事例がそうだ。だから、こちらでも激突前に顔を出させ、地上で対峙(たいじ)する。直前に防衛ラインを引き、進行を(さえぎ)り向きを変えさせる」

 ゼンも、うなずく。

「顔を出させるって、どうするの?」 

 フウカが、疑問を口にする。

「トカラに在る火山の火口に、火竜の好物であるエサを放り込んでおいた。食いついてくるはずだ」

 ゼンはこの地へ到着して、すぐに仕込んでおいたようだ。抜け目がない。

「マオには、敵の邪魔をすることに専念してもらう。俺たちは、防御に徹する」

「でも、マオは長く闘えないよ」

 フウカの肉体が耐えられないので、せいぜい十分余りだ。ウルトラマンで言えば胸のタイマーがピコピコ点滅して、フウカが身体に引き戻されてしまう。

「わかっている。だから、短期戦となる。『白い仔犬ちゃん』に頑張ってもらうさ」

 カイトたちは、「ファル」の能力を知っているのだろうか。

「まぁ、火竜様にお願いして、ちょっと進路をズラしてもらうだけだからね」

 ゼンは相変わらず能天気なセリフを吐き、胸の前で片手を小さくパタパタと左右に振る。

「まったく、もう……」

 フウカは言葉を継ぐのを諦めた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ