いよいよ災厄の巣へ――準備にかかる
「わたづみの宮」へ着いた。亀たちをねぎらい、見送る。護衛兵も、解散した。乙姫の玉座の下に向かい、次第を報告する。
「ご苦労であった。首尾よく再び神剣を迎えることができたこと、幸いこの上ない。ゆっくり休むが良い」
フウカとカイトは昼食を済ませ、居室へ下がる。芳一法師は、元の場所へ送り届けられたという。
「ふえ――、疲れた。緊張したよ」
フウカは、長椅子に身を投げ出す。
「上々だったじゃないか。よくやったよ」
カイトは、普段の言葉遣いに戻っていた。
「カイトさんって、たいした役者よね。おったまげたわ」
ちょっと皮肉も交えた声で、話し掛けた。むろん感謝の念も忘れていない。
「ああ、『勇者様』を何度も演じてきたので、だいふ板に付いてきたかな」
やはり肘掛椅子に身を委ねて、答えた。
そんなノンビリとした会話を交わしていた。
「乙姫様が、お通りです」
侍女の声と共に扉が開かれた。
乙姫だけが入室し、侍女たちは閉められた扉の外で控えているらしい。
「ホント、肩凝ちゃうね」
肩をコキコキさせながら、カイトの隣の肘掛椅子にドカッと腰を下ろす。
「今はゼンで良いの?」
フウカは身を起して、尋ねる。
「OK、OK、かわいい女子高生のゼンちゃんですよ」
彼女も時に応じて何役か演じているので、変わり身が早い。
持参した包みをテーブルの上に置く。甘い香りが漂ってきた。
「ご褒美よ。召し上がれ」
開かれた包みの中身は、揚げたてのサーターアンダギー(沖縄のドーナツ)だった。
「ありがとうね」
疲れた身体には、甘い物が一番だ。
部屋に用意されていた茶器セットとお湯で、フウカが茶を入れる。
おやつタイムとなった。モグモグと口を動かす。
「さて、いよいよ本番だ。正念場となる。十分に準備しないとな」
カイトが茶を飲み干し、口を拭いながら語る。
「――だよね。大変だぁ」
ゼンも同意する。
「私は、何をすればいいの?」
フウカには何が大変なのかわからなので、すべて指示に従うしかない。
「準備が整うまで、身体を鍛えておいてくれ。少しでもマオの動きに耐えられるようにね」
鬼コーチだったカイトが、思い出された。
「はぁ――い」
気のない返事をする。うんざりだ。でも、やるしかない。マオに迷惑は掛けられない。




