フウカが剣を手に取る――青白く発光
しばし沈黙が、場を支配していた。皆、感慨にふけていたからであろう。
「法師殿、素晴らしい語りであった。当時のことが、まざまざと思い起された。感謝する」
壇上から時子が、ねぎらいの言葉を述べた。腕の中の陛下は、キョトンとした顔で、祖母を見上げている。
「報奨を与えたいところだが、あいにく手元不如意である。我らにできることでで、何か望みはあるか?」
平家方の金銀財宝は、奪われたり四散したりしていた。
芳一は、顔を横に振った。
「ならば、二つほどお願いがござる」
カイトが、口を挟んだ。
「そちは、何者ぞ?」
時子が、睨みつけるような視線を送ってきた。
「法師どのの代言人であり、ここに控える剣姫の脇仕えでござる」
すまし顔で、シャアシャアと言ってのけた。そして、言葉を続ける。
「法師殿の願いは、身の安全だけでござる。皆様方の貴き霊威は害するつもりはなくとも、民である法師どの身体には影響が強すぎて負担となりまする。つきましては今後、放ちおき願いたく存じます」
「あいわかった。皆の者に周知しおこう」
こちらは、すんなり了解された。
「もう一つ、剣姫からの願いがござりまする」
間を置かずカイトは、言葉を継ぐ。
「剣姫とは、『剣の護り人』のことか?
宮中に参じているとき、耳にはしておる。熱田神宮の神剣に仕えし者であろう。それが、どう関りを持っているのか?」
関心を示した。表情も少しやわらいだ。
「宮中の神器である剣と神宮のクサナギの剣は、霊的に同体でございます。つまりお手元にある神剣の守護者でもあると考えられましょう」
きっぱりと断言する。
(詭弁だ。牽強付会だ。そんな理屈、相手に通じるわけがないよ)
フウカは、内心で叫んだ。
「なにを言うか!」
案の定、座がザワめき、いきりたった怒号が飛ぶ。時子も、顔をしかめていた。
「でしたら、お試しなさったら良かろう。もし偽りであったならば我は、ここの場において腹をかっさばいてみせようぞ」
カイトはスクッと立ち上がり、大音声を発した。大見えを切って、挑発したのだ。
(わっ、なんてことを言うの!)
フウカは、ビビった。
その様子を見ていた平知盛が、口を開く。
「よかろう。武士の言葉に二言はないな」
鋭い目つきで、言った。
「二位の尼様、差し出がましい言上ではございますが、この者に試させていただけませぬか。もし偽りであったならば、一刀のもとに切り伏せまする」
カイトの気迫に、何か感じ取ったのであろう。
「……そちの言葉ならば、否応もない」
時子は、玉座の脇で神剣を捧げ持つ侍従に命じて、前に持ってこさせた。
「つるぎ姫さま、謹んでお受け取りください」
座り直したカイトが、声を掛けてきた。そっと人差し指を立て、唇に当てている。「何も言うな」ということなのだろう。下手に口を開けば、「お里が、知れる」からだ。背を押され、玉座の正面に進んだ。
片膝を就いた姿勢で、錦の袋から出された神剣を受け取った。
目の前に両手で捧げ持ち、スッと引き抜いた。すると、ボワッと青白く発光した。
「おおっ――!」
何が起こるかと息を飲んで見つめていた皆が驚嘆の声を挙げ、「信じられぬ」という表情を表した。
カイトは「どうだ、言った通りだろう」といった態度で、衆人を見渡した。




