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現実世界と「霊界」の関係――共振する表と裏

「物理原則が支配する世界」と(から)み合って、「思念によって構成された世界」がある。

 それが一般に言う「霊界」だ。

 量子力学の分野に「エンタングルメント(もつれ合い)」という用語がある。

 「気味の悪い相互作用」とアインシュタインが述べたものだ。 

 空間的に離れていても、相互作用が生じる。

 心理学者のユングは、シンクロニシティ(共時性)という概念を提示している。

 ユングは、その理由を「集合的無意識」に求めた。「人間の意識同士は、そもそも集合的無意識によって交流している」と言う。

 人は、生れや育ちなどの環境や遺伝的要素によって「個性化」され、主観的な思考や感じ方をするようになるが、個人的要素を超越した「集合的無意識」が根底にあり、少なからず影響を与えていると主張した。

 物理原則のみに支配されているように見える現実世界においても、人間の意識は底辺でつながっており、交流している。

 人の「()(はい)」を感じたり、遠く離れていても「虫の知らせ」で肉親の死を察知したり、友人のことを「どうしているかな?」と想っていたら、その人から電話が掛かってきたりした経験を持つ人は、少なからずいるはずである。

 「思念」は、「個人の枠を超えて、互いに影響し合っているのではないか」ということだ。

 「思念」が同質的に凝り固まると「個人の思考」の域を超え、「現象」として「独自性を持った存在」が生まれる。

 「カミ」の存在は、その最もたるものであろう。

 長い歴史において人々から発せられた自然界に対する畏怖や敬意が、交錯(こうさく)し積み重なってきた結果、『思念が凝り固まって、独自の存在になったもの』だ。

カミは人々によって創造され、人々の思い、祈りによって支えられているとのこと。

 その一例が、「(つく)()(がみ)」だ。

 ツクモガミは、長年使い慣らされた茶碗や土瓶、道具などが「神性」を帯びて動き出したり騒いだりするものだ。百年くらいでなるらしい。

 むろんこのような神霊現象は「信じている人」の前でしか起こりえないし、見えもしない。

 御剣様も、一種の「ツクモガミ」かもしれない。二千年にわたる信仰が、剣に神性を与えたのではないだろうか。

――とのことだった。


「要するに『霊界の住人であるオロチを抑えることで、現実世界での災厄を抑える、または、時期を引き延ばすことができるかもしれない』ということですか?」

「まぁ、そういうことだ。

 霊界と現実世界は、『表裏一体』の関係にある。

 地球を含む宇宙全体が、霊界では『息づく生命体』として動いているらしい。

 霊界と現実世界は、お互いに影響を及ぼし合っている。

儂自身、オロチと闘うなんて『荒唐(こうとう)()(けい)』じゃないかと思わないでもない。

だが、『剣姫』の血を引き、使命を担う者としては、やらなくてはならない。

真偽は別として、試してみるべきだろう」

「なるほど。

具体的には、どのように?」

「正直言ってわからん。

 ただ『何か、起こる』ということだけは、確かだろう。

 それを待つしかない」

 源造は、首を軽く左右に振ってから言った。

(フウカに、どのようなことが起こるのだろうか?)

 滝子は、不安になった。

 ある程度、覚悟して二年前からフウカに「『気』を操る」修練を施してきた。

「気」は、霊界に属していると考えられる。少なくとも質量を持つ「粒子」としては、認められていない。

「気」の存在は一般に周知され、鍼灸(しんきゅう)など東洋医学では治療の前提概念となっているほどであるが、現代医学では説明がつかない。「気(()(けつ))」が流れているとされる「経絡(けいらく)」など、解剖(かいぼう)しても存在しない。しかしながら、経絡の「ツボ((けい)(けつ))」に(はり)を打ったり、(きゅう)を据えたりすると治療効果が表れる。ツボの位置は、長年の治療経験から見出された。

つまり「物理原則からは外れている」のに、「物理的効果が表れる」のだ。

これも「霊界」へのアプローチが、「現実世界」へ影響を及ぼしている一例として見ることができるかもしれない。

千竈家に伝わる技法は、身体の「気」を凝らし丹田から全身に巡らすこと、空中の「大気」を吸入・排気したり、または動かしたりすることの二つである。

要するに特殊な呼吸法で「体内の気」を活性化させ、さらに「大気」と循環させるのだ。

呼吸法の名を「息吹(いぶき)」という。

身体の内と外の「気」を同調させることで、風を操ったり、ある程度ではあるが身体を浮遊させたりすることができるようになると言い伝えられてきた。

だが、これまで一族の義務として何となく修練を施してきたが、事態が差し迫ってきたのを感じると、居ても立ってもいられないような気持ちに襲われた。

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