嘘も方便という言葉知ってるかな?
「ミズハさん?今日はここの村で止まりたいです!たまにはゆっくり休みたいです!」
とは言われても…
「一応聞きたいのだが宿に泊まれるのか?」
「えっと…まあ、費用はないって言うか…稼げればワンチャンあるのですか。」
「今日は泊まります!もうずっとお風呂に入っていないです!」
あわわ!それは僕も気にしてるんだから言わないで!
「…あー、ちょっと今日は私の家に泊まっていかないか?」
え?
「あれだ。妻と二人暮らしでな。息子らは既に都会に出てしまってな。たまには賑やかな…」
「お、お願いします!…あ、だけど家賃が…」
「いや、1日ぐらい気にしなくて大丈夫さ。ただ…」
「ただ?」
「事情を聞かせてほしいな。十代後半の青年と前半の少女が二人で旅するなんて何かしらあるんだろ?
なに、私は手を貸したいだけだ。」
うーん。事情らしい事情は無いんだけど…。ただ、断れない。僕はまだしもアマミちゃんが我慢の限界。
「はい!よろしくお願いします!」
アマミちゃんも即答か…まあ、警察じゃないんだし尋問はないかな。
ということで、恐らく50代位のおじさんの後を付いていくことに…。
「ここだ。妻に話してくるからちょっと待ってな。」
「はい!」
「わかりました。」
にしても助かった。取り敢えず今日は持ちそうだ。流石に明日も泊まるわけにはいかないが、暫し大きな休憩が取れる。今までは野宿だったからろくに休憩していないんだよね。野生生物に襲われる心配もあったから僕は気配を展開して回りを監視していたこともあったし…今日はそれをしなくて済む。
「今日は一杯休みます!明日も元気に冒険です!」
さっき今後の旅について物凄く嫌そうな顔していなかった?
「アマミちゃん、ごめんね。早々からこんな大変な目に…」
「大丈夫です!今日は思いっきり休めますから!」
それ解決策になってる?死が1日後ろ倒しになっただけだよ?
「あらー、お若いのに旅なんて…無謀なことをするものね。ほら、上がって上がって。これから買い物に行って来るわ!」
「おう。すまないな。」
「いいのよ。たまには賑やかってものも必要でしょう?貴方も息子達に早く独立して出ていけって言っていた割には、出ていったら萎れちゃって。」
「………」
どうやら夫婦結果は妻の勝利のようである。うん?これは夫婦喧嘩ではないのか?知らない。
「アマミです!今日はよろしくお願いします!」
挨拶早!いいなあ。僕もこれぐらいコミュ力があれば…
「ミズハと言います。お手数をお掛けして申し訳ありません。本日はよろしくお願いします。」
「あらー、かしこまらなくていいのよ。じゃあ貴方。この子達を宜しくね。」
妻の方はそう言って出掛けていった。
「うん?妻も言っておっただろう。早く入りな。立っていては疲れるだろう。」
「あ…じゃあ、お言葉に甘えて…」
「久しぶりのお家でーす!!」
ちょっとアマミちゃん!はしゃぎすぎ!ここはよそ様の家だよ!
「あ、アマミちゃん!?」
「気にしなくていいぞ。その子の年頃的にはまだはしゃぎたい気持ちも残っているだろう?」
いや、それは年齢的問題より性格的問題だから。明るい性格だけど色々扱いにくい子だから。大変だから!
そんなこんなで靴を雑に脱いで家の中へ駆け込む少女を眺めながら靴の整理整頓をしておく。
そして居間に案内された。これはソファーかな?
「ここに座りなさい。疲れているだろう?」
「ありがとうございます!うわ、柔らかいです!気持ち良いです!」
おい寝転ぶな。私が座れない…と言うよりソファーが汚れるからやめて!僕達着替えの服とか持ってきていなかったから1週間前から同じ服なんだよ!野宿もしてるんだよ!汚いよ!と言うかもう汚れちゃってるんだけど!
「あ…あの…僕は汚れているので立ったままで良いです。アマミちゃんがソファーを汚してしまって申し訳ありません。後に弁償しますので…」
「あー、気を使わせてしまったようだな。気にしないでくれ。君達の外見から既にボロボロの服を着ていることぐらいわかってるさ。」
ボロボロか…実際穴とかは空いていない。ただ汗や泥で汚れているだけ。だけど流石に清潔からはほど遠いか…。
「そんなに気を使うなら先に風呂にでもはいるか?着替えなら…ちょっとお前達には大きいかもしれないが息子達の寝間着服はある。
アマミだったかな?女の子の服はないから我慢してもらいたいが…」
「大丈夫です!嫌ですけど、我慢します!」
おい!本音駄々漏れにするな!…因みに僕は男装しているけど女子なんだよね。まあ、男物の服には慣れているから気にしないけど。いつも男子の服着てるしね。
「すいません。ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。
アマミちゃん。あまりわがまま言っちゃいけないよ。と言うより言える立場じゃないよ。」
「ムーです!」
ほっぺを膨らませたアマミちゃんはかわいい。これ鉄則。