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黒白(2−0)入学 困惑 暗躍

「あなたが、フログさんですね。 お父様からお話は伺っております。

 まずは、当学院にご入学おめでとうございます。

 事前に受けていただいた『入学試験』の結果、フログさんは『クラス・ゼロ』へ転入することになりました」

「? うん? 入学? クラス? ・・・・・、ま、まあ、わかったんだぞ☆」


 フログは困惑していた。

 カエル(父親)に渡されたメモに従って、『学校』という場所に来たのは良いのだが、なぜ自分は学校に入学できたのかが、全く理解できなかったからだ。

 目の前の女性が言う『入学試験』など受けた記憶もないし、そもそも自分の父親は『カエル』である。

 割と常識的な知識が身についているフログには、カエルが入学の手続きや交渉をする様子を全く想像できなかったのだ。


 つまり、口では「わかった」と言っておきながら、実際のところは「何もわかっていない」のだが、目の前の女性はそんなことには気づかずに話を続けている。


「いきなり『クラス・ゼロ』ということで戸惑うことや、苦労することもあるかもしれませんが、困ったときは一人で解決しようとするのではなく、周りの力を借りるようにしてください。

 もちろん私も、困ったことやわからないことがあったらいつでも助けてあげますので、気軽に声をかけてくださいね」

「わ、わかったんだぞ☆」


 実際のところは、カエル(父親)が約6年の歳月をかけて編み出した『人化の術』を使ってで人の世界に紛れ込み、そこから4年間かけてフログが学校に入れるだけの根回しをしていたのだが、当のフログは父親が人の姿に化けることも、実は影で暗躍していて、世界中の要人たちと繋がりを持っていることも知らない。

 だから当然、実は父親に「学力を試すためにちょうど良い」と言われて受けたテストが『入学試験』であったことにも気づいていないし、実は知り合いのカエルたちはほとんど全員が『人化の術』で人の姿になれることも、そして実は、父親はカエル語だけでなく人語も話せることも、フログは気づいていない。


 つまり、フログからすれば「なんで自分が入学することになったのか、まずはそこが分からない」といった状況なのだが、当然そんなことを聞けるはずもないのでまた、何もわかっていないのに「わかった」と言うことになってしまう。


「学院長、そろそろ・・・」

「そうですね。

 それでは、ここから先は『クラス・ゼロ』の担任の先生に変わります。

 フログさん、この人はエイジ先生。 あなたの所属する『クラス・ゼロ』の担任の先生です。

 それでは、エイジ先生、あとはよろしくお願いしますね」

「了解です、学院長!

 よう! お前がフログか!

 『入学試験』では満点をとったらしいな。 すげぇじゃねぇか!

 ・・・っと、すまないが、もう始業まであまり時間がないから、細かい話は後にするぞ!

 っと言うことで、学院長! フログのことは確かに預かりました!

 よし! 行くぞ、フログ!

 教室に着いたら自己紹介してもらうつもりだから、何を話すか簡単に考えておいてくれ!」

「わ、わかったんだぞ☆ 任せるんだぞ☆」


 フログの父や、周りのカエルたちがフログに内緒で計画を進めていたのは、「フログにはできるだけ良い環境を用意してあげたい」思いと、「フログにはカエル社会のことを忘れて、人間として生きて欲しい」という考えがせめぎあった結果である。

 つまり、「カエルが人間に化けることを知ってしまうと、フログから見た『人間』と『カエル』の境界が曖昧になってしまうかもしれない」と考えたのだ。

 まあ、当のフログはそんな気遣いなどなくとも「カエルはカエル。人間は人間」と言うことを理解していたので、結果的にはフログに余計な混乱を招くだけになってしまったのだが。

 ただ、父親に渡されたメモに『細かいことは気にせず、学院生活を楽しんでください』と書いてあったのを読んで、素直に従ってしまえるフログの性格を考慮すれば、案外これが最善手だったのかもしれない。

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