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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
8/45

第8話 実は……人ホイホイなんです


 部屋へ戻る途中、心が少しやさぐれたので中庭に行ってみることにした。

 するとなにやら作業している人がいた。


 


「こんにちは。今日はここ入れないんですか?」


「あ、そんなことないんですが、近くにいらっしゃると砂埃とかが」


「もしかして植え替えですか?」


「そうです。この辺りの花が枯れてきましたので」


 見ると枯れた花というのはあのバニラもどきだった。


「その枯れた花はどうするんです?」


「全部燃やしてしまいますが?」


  わー、燃やされたら一大事!


「ちょっと待ってて貰えますか?そのまま置いといてください、すぐ戻ります!」



 ポカーンとしている侍女さんをよそに急いで部屋へ戻りカリサを呼んできた、入れ物持参で。



「カリサ急いで、この黒くて丸い部分を摘み取って」


「あ、これこの前の……、わかりました」


 作業していた侍女は驚いて見ている。


「あのー」


「あぁ、ごめんなさいね、作業のじゃまして。燃やす前に欲しいものがあるので摘んでもいいですか?」


 てかもう摘んでるけど


「それはかまいませんが……。何を摘まれてるんです?」


「この花の枯れた後にできるこの黒い種よ」


「そうなんですか……。それじゃお手伝いしますね」


 暫く三人で枯れたバニラもどきを摘み、大体摘み終わった頃サンディさんが通りかかった。


「ラヴィアン様ごきげんよう」


「サンディさん、こんにちわ」


「あぁ、この前の」


「そうなんです、燃やすというので急いで集めていたんです」



 サンディは考えた、少し分けてもらうかどうか。しかし使い道が思い浮かばない。

 この前のアイスというものを何度か挑戦してみたがあの道具がないと無理のようだった。



「あっ、そういえばモウの乳が明日あたり届くようですよ」


「本当ですか! それじゃ明日お昼すぎに受け取りに行きます!」


 サンディさんは昼食の用意があるというので引き上げていった


 バニラもどきもだいぶ集まった。これならここにいる間は困らないだろう


「お邪魔しました」


 



 ほくほくしながら部屋へ戻り、先ほどの続きを始める。


 小さな蓋つきの瓶に野菜の粉砕と干し肉の粉砕、別の瓶に野菜と干した魚の粉砕それぞれに塩と胡椒を混ぜ3瓶づつできた。



「お嬢様、これは何ですか? 今更ですけど」


「カリサお湯を持ってきて、器も一緒に」


 肉を混ぜた方と魚を混ぜた方別々にお湯で溶いた。


「少し飲んでみて?」


 匙ですくってそれぞれを飲んでみるといろいろな野菜の風味と肉の旨み、魚の方も同じくやさしい味わいがある。 なんちゃってコンソメの出来上がり。


「まぁ…、いろいろな香りと味わいが、やさしい味ですねぇ」


「ふふ、これでスープも簡単にできるしベースの出汁としても使えるわよ」


「ダシ? よく解りませんが素晴らしいです、お嬢様」


「少し余ったからサンディさんへ持って行ってあげて?」


「わかりました。瓶を借りてきますね」


 



 さて、この前漬けておいたドライフルーツはどうなっているかなぁ?


 この世界のスイーツはドライフルーツと果物が主流だ。砂糖が貴重なのとクリーム等乳製品がまだ多く出回っていない。

 動物の乳は地球では大昔から飲んでいたみたいなのになぜなんだろう? 不思議だ。



 「毎日蓋を開けないとね~。酵母♪酵母♪」


 




 「お嬢様、入れ物借りてきました。 もうすぐ昼食ですよ」

 


 なんちゃってコンソメのおすそ分けを持たせ、帰りに昼食を運んで来た。

 早速スープに少しコンソメを混ぜるとまぁまぁ満足のいくスープになった。


 瓶とか色々欲しい食材等の注文は3日前にサンディさんに頼んである。


「本当は全部自分で作りたいくらいなんだけど~」


「えっ……、私そんなにレパートリーありませんけど」


「私が教えるわよ~。  とは言っても毎日の事となると大変は大変か」


 ほっとしたカリサだった。 

 

 



 ところでお嬢様、どこで料理を覚えたんですか? に対し


 夢でみた。 の繰り返しでもう質問すらしなくなったカリサだった。



 

 ドンドンドンドン!


 えらい勢いでドアと叩く音がして、二人でビクッとした。


「ラヴィアン様! ラヴィアン様!」


 なっ何事!?  ドアを開けると


「はい、どうしました? サンディさん」


「さっ、先ほど頂いた粉なんですが!」


 あー、おいしかったんですね、わかります。


「あ、あれはなんですかっ?」


「えーと、コンソメ(もどき)ですけど」


「初めて見たものなんですが香辛料とかそういうものですか? どこで販売しているんでしょうか?」


「販売はしてないでしょうね~。作った物ですから」


「!! つ、作り方を教えてもらえないでしょうか?」


 うーむ、どうするか。家の領での特産品にしたかったんだけどなぁ。


「このレシピは門外不出でサリスフォード領の特産品になる予定の物なので……」


 と、大げさに言ってみたがいきなりシュンとしたサンディさんを見たらなんか気の毒になったので


「教えてもいいですが決して他の人、つまり外部に漏らさないでくださいね?」


「もっもちろんです! お約束しますっ」


 


 簡単に作り方を教え、借りていた粉砕機を返却がてら厨房へおじゃました。


 夕食に美味しい物が食べたい。



「サンディさん夕食の献立はもう決まってますよね?」 


「はい、たいした献立ではありませんが…」


「献立の一皿、作ってもかまいませんか?」


「え?はい!それくらいならかまいませんがっ」


 なにやらサンディさん、期待で鼻が膨らんでいる。 


「それではお手伝いお願いできます?」


 




 三種の余り肉、あるだけの野菜、特にトマトに似た野菜を大目に用意してもらう。

 そして、いよいよ虫よけ野菜の出番だ。



「サンディさん~、この虫よけ野菜使いますよ?」


「え? 結構匂いがきついと思うんですが……」



 周りも少しひいていたがかまわず、生姜もどきとニンニクもどきをみじん切りにし大き目のスープ鍋に油を大目にひき温まる前に投入、じっくりと香りを出す。油で炒めると、とてつもなく香ばしい香りが立ち籠め食欲をそそる。


 香りにつられてざわざわしてきた



 クス 虫よけというより人ホイホイだね。



「炒めるとこのように香ばしい、何とも言えない美味しそうな香りがするんですね~」


 サンディさんが鍋を覗きこみながらつぶやいた。


 

 二センチ角位に切ってもらっていた三種の肉を炒め、大振りに切ってもらった野菜を投入、大き目の鍋がほとんど野菜で埋め尽くされ、最後にトマトもどきに十字に切れ込みを入れ野菜の上に並べて入れる。先ほど作ったコンソメも適量、塩も少々振り蓋をする。


 味付けはまだ決めない。


「後は極弱火で半刻ほどこのままで」


「――あのぅ…、お水を忘れているようですけど?」


 厨房係の一人がおずおずと進言してきた。


「大丈夫ですよ、この弱火のまま決して蓋を開けないでくださいね」


 今回は無水料理に挑戦してみる。厚手の鍋で蓋のしっかり閉まるものならできるはず。

 そうだ、この前乾燥した野菜の中に香草っぽい葉物があった、食糧庫を見回しそれを見つけ少しだけ鍋に入れ後は待つだけだ。




「そういえばモウの乳は飲むんですか?」


「味や香りがどんなものかまずは飲んでみますけど他にも色々用途があるんです」


「そ、そうなんですか。でも大丈夫なんでしょうか?」


「きちんと殺菌しますから平気なはずですよ」



 生クリーム、バター、ヨーグルト、楽しみだなぁ。フフ


 あれぇそういえばヨーグルトは菌がないなぁ。どっかで作ってないのかなぁ……。


 


 


「そろそろ半刻たちましたけど~」


 

 鍋の蓋を開けるといい感じに水分が出ている。トマトもどきの皮も取り除いて軽く攪拌してから味見をして塩、胡椒で味を決める。



「味見します?」


「ええ、是非!」


 人数分の小さな皿に少量ずつよそう。


「どうぞ」


「水を入れてないのにこんなに水分が……?」


「野菜の水分だけなので美味しいですよ」


 それぞれが味見を始めた。



      ああ、美味しい。 



 よく日本で作っていた無水で作るラタテュユもどきトマト仕立て(勝手に命名)。

 少し香草が足りないけど野菜の甘味、肉の出汁、なんちゃってコンソメ、塩味だけなのにとてもおいしい。


「ああ、なんて深い味。ほぼ野菜だけなのになんて美味しい……」


 野菜だけの水分ということに驚きつつ、それぞれが笑顔を見せている。

 今日の夕食はちょっと楽しみになった。



「さっき昼食を食べたばかりなのにこれだけじゃ足らないわ……」


「夕食でお願いします。クス」



 それから手作りコンソメについて色々聞かれたりしていたら夕食の準備が始まるというのでその場を辞した。


  今日の夕食 楽しみ~♪



猫をなでると眠くなりませんか?


いえいえ決して逃避している訳ではありません。

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