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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
35/45

第33話 釣りのエサは○○でした。

   ――回想――



「え?エンゲキ?ですか?」


「そう、演劇。演じる、と言えばわかります?」


「エン汁?――何かの液体ですか?」


 汁じゃねいっ!


 皆の頭の上にはクエスチョンマークが出ていた。いや、視覚的に出ていたわけではない。

 ていうか、汁って……、わざとか?わざとなのか?


「いや、汁じゃなくてですね、えーと、物語に出てくる人物になってセリフを言うのです」


「誰がです?」


「私達が」


「「「「 …………… 」」」」 


 十四名の反応がこれから先の茨の道を示していた。早々に折れそう。


「それじゃまず、これを読んでみてください」


 自領で作った紙に物語の草案を書いたものを渡し読んでもらう。




「ぐふっ、ラヴィアン様……。これはっこれはっ悲しすぎます」


 回し読みしている令嬢達は、読んだ傍から涙ぐんでいた。


 あー、最後何か救いのある終わり方しないとこのままじゃダメかなぁ?


「取り敢えずこれはまだ粗筋なので、これを脚本として仕上げたいのですが」


「脚本とは?」


「物語の中の人の話言葉とかを考える?創る?――例えば~、取説、これ読んでみて?」


 取説にちょっとだけ書いたセリフを見せた。


「えーと、『ロミリオ、行かないで!』ですか?」


 棒読みを絵に描いたようだ。


「それを感情こめて言う、併せて顔を作る、体も動かす、それが演技です。そして物語の流れを細かく決めていくのが脚本です」


「もしや、それを皆の前で披露する、ということですか?」


「そうです。それについては役の方に追々教えますので、今は色々決めたいことがあるんですよ。皆様の意見とかも伺いたいので、お茶でもしながら話し合いをしませんか?」


 そう言いながらカリサに目配せし、侍女達にお茶の用意をしてもらう。お菓子は作り置きしておいたプリンとジャムを挟んだクッキーを用意した。

 食べたことのある三人は大喜び、その他の令嬢達も最初は恐る恐るだったが食べ始めた途端に目の色が変わった。プリン恐るべし。


「たまにお茶菓子も出しますよ?そのプリンも含めて」


 そういうと、全員が期待の眼差しを向けてきた。 ふっふっふ。釣れた釣れた。


「――ということで、全員参加と考えていいですね?」


「……ええ」「う~ん、はい」「何かよくわかりませんけれど、よろしくてよ」「プ、プリンですね、わかりました」「このクッキー?も気に入りましたわ」


 返事の内容が若干ずれているけど、全員釣り上げた、ゴホン、全員の了承を得た。


「えーと、それでは話を戻しますね。ではまず出演者から、主役二人は誰にしましょうか?」


「えーと、ロミリオは誰にというか一人しか該当しませんよね?皆さま」


 ラー博が言うと、全員がラヴィアンを見てウンウンと頷いた。


 あー、やっぱりか~、出来れば裏方に回りたかったなぁ。小学校の学芸会以来演技なんてしてないからなぁ。ぶつぶつ。


「そ、そうですね、言い出した私が出ないと納得しませんよね。わかりました、ロミリオは私がやります。それでは相手役はどなたがやっていただけますか?」


 皆それぞれの顔を見回している。おずおずと赤扇が手を上げた。


「ジュリア役はイザベラ様がよろしいと思います」


「まっまぁ!何をおっしゃっているんですの?いきなり、そ、そんなこと!」


「それでは~、マニュアル様はいかがですか?」


 ラー博が取説を推薦する。


「えっ!む、無理です無理です!――ヘレナ様はっ?」


 それを聞いた全員が(Qちゃん含む)、いや、無理無理というように手を横に振った。

 まぁ、確かに、絶対倒れるわな。

 ここは侯爵令嬢のイザベラ様がやることで丸く収まる気がする。時間かかってメンドウだしっ。


「では、相手役ということで私が決めてしまっていいですか?イザベラ様、どうか相手役をお願いします」


 と言いながらイザベラ様の手を取って頭を下げた。イザベラ様は扇で顔をほとんど隠しながら、


「し、仕方ありませんわね。そこまでおっしゃるならそのお申し出お受け致しますわ」


 ふー、やっと一つ決まった。やれやれだ。


 そこから、あーだこーだのやり取りをして各役割を決めていった。



 一~二日して脚本らしきものが出来上がってきた。ラー博と令嬢数名による脚本は……。

 これはあかん。


「あー、ラー博さん?この初めて逢ったところの挨拶がちょーっと長すぎる気がするんですが?」


「え?そうですか?しかし、初対面では色々と説明が必要かと思うのですが?」


「その辺は陰で簡単に説明を流せばいいと思うのですよ、逢っていきなり自分の事を滔々とうとうと語りだすというのはおかしいと思うのですよね?」


 脚本という概念が無い上、物語も本が貴重なこともありほとんど無い。しょうがないと言えばしょうがないのだけども……。

 初めましての挨拶に○○領出身の○○家何代目、親戚には○○がいて、○○領はこれこれこういう所で、王国の名前と王は誰それ王家の紹介、その王国のどこら辺に自領があり云々かんぬん。――大幅な手直しが必要だ。ふぅ。

 ある程度手直しをして、セリフはなるべく短く、劇もあまり長くならないようにと注意を添えて書き直してもらう。

 その間、衣装やら効果音やらの確認、最後は歌も入れることになり歌詞を覚えてもらう。

 やり始めてすぐに後悔したが後へは戻れず、なるようになれ!で進めて行った。




「それではイザベラ様、セリフ合わせをしましょう」


「そ、そうですわね」


 なんかガチガチに緊張しているイザベラ様、大じょーぶかぁ?

 雰囲気を作るために音楽も奏でて貰う。~~~~♪


「いっ愛し、しの、ラ!ラヴロッミ リ オ、は、はなはなれっ!」


 ふぅ~……。






 パーティまでの日々を思い出して、クスっと笑う。よく成功したよなぁ。自分を褒めてやりたい。

 と、そろそろいいかなぁ?後ろを見ると厨房の面々とカリサがナイフを片手に待っていた。

 今現在ラヴィアンはキャラメルを作っている。

 火から上げて伸ばした後、すぐに切らないと大変なのだ。昔失敗して手と包丁をダメにした経験がある。生キャラメルなら切るのに力は要らないんだけど、少し硬い方が保存できるしね。でも、とても熱いので注意が必要なのだ。この前サンディさんがちょっと火傷してた。


「そろそろいきますよ~」


 きらっと目が光り、待ってましたと言わんばかりである。キャラメル好きだよね~みんな。クス。


 パーティが終わってから一週、十日が過ぎた。令嬢達はあの忙しい日々から解放されたが、心なしかボーっとしていた。何かをやり切った後の喪失感?燃え尽き症候群というのだろうか。何となく元気がない。そして、昼過ぎにはそれぞれがお茶会を開くのではなく、ダイニングフロアに集まって来るようになった。


「ラヴィアン様!ごきげんよう。今日はキャラメルとこれは?」


 Qちゃん達がやってきた。


「ラスクですよ~」


 パンが多く余った時はラスクが簡単で美味しい。オーブンで一度空焼きをして、シュガーバターを塗ってからまた焼けば出来上がる。


 すっかりおやつが定着してしまった。予算は大丈夫なんだろうか?まぁ、二~三日置きにバーンズさんが取りに来るから王様達の為と思えばいいのか。

 結局、全員がフロアへ集まりお菓子を摘みながら雑談をしていると、ルナディ様がやってきた。


「皆さま、ご歓談中に失礼しますね。丁度全員集まっていますので今月の孤児院慰問のメンバーをお伝えします。今月はラヴィアン様、レドベリ様(赤扇)、ラーミン様のお三方です」


 ローズガーデンでは、ご令嬢が定期的に国管理の孤児院の慰問に行くことになっている。休養日に丸一日使うので嫌がる令嬢もいるのだが、ラヴィアンは外に出れるので早く自分の番にならないかと待ち望んでいた。


 うっほー、やっときたー♪





赤扇さんレドベリって名前だったんですね~

それよりも、ハロウィンですね~。

風邪ひいちゃいましたね~。

ああ、ねもい(  _*`ω、)_

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