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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
33/45

第31話 『王宮主催パーティ』その6 新たな扉とShall we ダンス?

 演劇が終わり、パーティー衣装に着替え再びパーティー会場へ顔を出した途端、ワラワラと人が集まってきた。皆口々に演劇の感想をいい、称賛された。それぞれ、家族やら知り合いやらが群がっている。



「ラヴィ!!」  うぷっ!


 ドン! と、何かがぶつかってきた。と同時に抱きつかれていた。

 よく見ると、シル王女が私の腰に腕を回しお腹に顔を押し付けている。


「王女様!どうしました?」


 顔を上げた王女の顔は、鼻は赤く目は泣き腫らした後で、まだグズグズ鼻を啜っている。


「ラヴィ!ロミリオは死んではダメ~!!ううぅ」


 ああ、まだ引きずっていたのか。感受性が強い子なのね~。


「王女様、あれは物語ですから。もう泣き止んでください? あ、そうだ、いいもの差し上げますよ」


 そう言って手持ちの小さい袋から小さい瓶を出し、その中のキャラメルを一つ王女の口に放り込んだ。


「っんっっん!!!」


 王女様はいきなり口の中に甘い物が放り込まれ、もごもご言いつつ笑顔になった。


 このキャラメルはローズのメンバーの緊張をほぐす為に用意していた物だ。


「おいひい!!」


「ふふ、良かったです。それじゃ王様に挨拶へ行くので一緒に参りましょう」





 

 宰相はちょっとした騒ぎになっている場所を見つめつつ、王太子や王子に、ラヴィアンをどう引き合わせるか思案していた。今だ男装のラヴィアンではダンスにも誘導できない。


 うむむむむ。


「エドヴァルト、――宰相?」


「――はっ!なんでございましょう?陛下っ」


「何を考え込んでおる?」


「いえ、ラヴィアン殿には驚かされてばかりだな、と」


「ふむ、確かにな。本日のパーティは実に愉快だ。クク、あの腕のみで戦うあれも愉快であった。アイスクリームも、そして先程の演劇?とやらもな。どこまで我らを愉しませてくれるのか。――あの令嬢が動くと退屈が吹き飛ぶ。ふふふ、わははは」


「あら、あなた珍しいですわね、声を上げて笑うなんて。私なんてまだ先ほどの劇を引きずってましてよ、グス」



 シル王女と連れ立って、王様達へ挨拶の為話かける。


「失礼します、両陛下。私からの、というよりローズガーデンからのプレゼントはいかがでしたでしょうか?」


「うむ、ラヴィアン嬢。大儀であった。愉しませて貰ったよ。物語は人が演じると心に迫るものがあるのだな」


「ありがとうございます」


「ラヴィアンさん、私なんてまだ泣きそうよ?ふふ。――あら?シル、何を食べているの?」


「キャメル?ラヴィに貰った~」


「キャラメルですよ、王女様。王妃様もいかがですか?」


 と言いながらキャラメルを一粒取りだし王妃に渡す。


「ラヴィっ、私ももう一つ!」


 催促されたのでもう一つ口に放り込んだ。


「ん~~~」


 王妃様は今のやり取りを見て、キャラメル、王女、私を順に見た。


 え?王妃様、あ~んして欲しそうな目で見ないでください。 ――ふふ~ん、よし。


「王様!お手をお願いします」


 びっくりした王様が出した手の平の上にキャラメルを一粒乗せ


「王妃様へどうぞ」


 更にびっくりした王様、王妃様はちょっと恥ずかしそうにしている。私とシル王女はニヤニヤして見守った。


「う、うむぅ」


 何やらモゴモゴ言いながら、王妃様の口にポンと入れた。王妃様はちょっと顔を赤らめ口元に手の平を添えている。

 仲の宜しい事で。この両陛下なら国を傾けることはないだろうなぁ。


「まぁ!これも美味しいわね~。――ところでラヴィアンさん、聞きたいことがあるのだけど?」


「? なんでしょうか?」


「貴方を含め、ローズの令嬢の髪の毛がとても綺麗なのよね。何かあるのかしら?」


「母様、そうなのっ、ラヴィはいつもいい匂いなのっ!」


 シル王女、それは食べ物の匂いの事じゃないよね?


「あー、それはですね、家の領で扱っている湯浴みセットを紹介しました。今度王宮へお持ち致しましょうか?」


「まぁ、嬉しいわ!楽しみにしてますよ?」


 そんな話をしているとダンスの為の音楽が流れだした。


「それでは、私はこれで失礼します」


「うむ、そなたの家族もずっと待っておるようだな、行ってやりなさい」


 宰相はラヴィアンを王太子達に引き合わせる事も叶わず、引き留める事もできず「ぐぬぬぬぬ」と一人苦悶していた。





 家族のいる場所まで来ると、いきなりエレ兄様に抱きつかれた。 


 ぐえっ! ちょ、ロープロープ!


「に、兄様ぐるじい」


「あっああ、悪かった、ラヴィ。――もしっ!万が一っ、ラヴィに愛する人が出来たとしてもっ、は、反対はしないぞ?大丈夫だっ任せろ。反対はしない、しないから一度位は湖に沈めるとかしてもいいよな?いやいや、大丈夫だ、直ぐに引き上げるからっ。それか、グリフォンとかワイバーンに括り付けて大空の観光を一人で楽しんで貰うというのもいいな!」


 それ、完璧に殺す気だよね?兄様。父様も母様も呆れ顔ですよ?

 反対すればさっきの劇の様に死んでしまうとでも想像したのか、ぷぷ。


「兄様、それ、殺人になるのでやめてください。それに私はまだ一二ですよ?結婚とか考えてませんし、それより兄様こそ、そろそろ婚約位してもいい年では?今日はご令嬢も沢山いらっしゃいますし、ダンスとかお誘いしたら?」


「おお!そうだなっラヴィ!いつもの様に踊ろう」


「え゛」


 聞いてねぇー。いや、ここ家じゃないし、私男装だし、他の令嬢誘ってくださひ。BLな世界は遠慮します。


「ちょ、ちょ!」


 体格的に敵わずホールの真ん中へ引きずられて来てしまったので、仕方なく一曲相手することにした。


 あ゛ー。見られてる見られてる。勘弁してほしい。――てか、なんでみんなキラキラした目で見てんの?特に女子達!男同士じゃないからね?  兄様も無駄に美形だからなぁ、中身残念だけど。

 目の端に映ったあれはなんだろう?一心不乱にこっちを見て羊皮紙に何かを描いているけど……。ああ~、また別の扉が開いてしまったのか。描いているのはやっぱり女子だった。 見なかったことにしよう。忘れよう。


 一曲終わった。兄様は満足したようでニコニコしてる。はぁ~~、一気に疲れた。

 ちょっと周りを見回してみると、ローズの面々がまた集まっていた。


「父様達、ちょっとここ離れますね」


 家族の元を離れ、集まっていた令嬢達に声を掛けた。


「取説、取説、どうして集まってるの?」


「あ、ラヴィアン様っ!、ちょっと真ん中の方へ入ってくださいっ。――皆様っ、端へ寄ってください。ガードしますわよっ」


 え?何を?


「ふ~、ラヴィ様、大変だったんですのよ?断るのに」


「そうなんですよ、そうなんです。皆、今日の演劇の事を根掘り葉掘り聞かれて、最終的に色々考えたのはラヴィアン様ですと答えてしまって、そしたら、紹介しろ紹介しろと」


「それと、どこからか湧いてきた令嬢達が、あのロミリオ役の人を紹介しろ紹介しろと」


 どこからか湧いてきたって……、同じ貴族ジャネ?


「ラヴィアン様は私達のものですから、そんなに簡単に紹介などできませんわっ」


「「「そーです、そーです」」」


 物じゃないんですけど。貴方たちの物でもないんですけど……。


「そうしたらダンスが始まってしまって、あれを見た令嬢の更なる攻撃に一人では対抗できずにローズで固まるしかなかったのですわ」


「あー、それはご苦労かけました。――でも、折角ですから皆さんパーティーを楽しんでくださいね?やっと緊張から解放されたことだし」


「そうだわっ、ラヴィアン様、私とダンスをしましょう。それはもう華麗に難易度の高いものを。その辺のご令嬢方に尻込みしていただきましょう!」


 ラー博が鼻息荒く嘆願してきた。断れない雰囲気だったので仕方なくまたフロアに戻り、これでもかっ、という位の難易度のダンスを披露した。


 ラヴィアンのダンスを見ていた宰相は王太子達に引き合わす手立ても考えつかず、人知れず歯嚙みしていた。


 宰相様、歯、欠けますよ?





王太子様達、影うすっ!

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